家電のしくみ
ドラム洗濯機、どうやって服を乾燥するの? ヒートポンプとヒーターの違い
2025年11月19日 08:05
1台で洗濯も乾燥もできて便利なドラム式洗濯機。その乾燥機能には、ヒートポンプ式とヒーター式の2種類がある(風乾燥式は含まず)。2つの方式を比べると、実はどちらかが一方的に優れているということはない。ドラム式洗濯機を購入する前に、まずはそれぞれの一長一短を知って、どちらが自分のライフスタイルに合うかを考えれば、後悔のない選択になるだろう。
大まかにそれぞれの特性を記しておく。ヒートポンプ式は、比較的早く乾かせて電気代が安く抑えられる。また本体サイズが大きめで、大事なポイントだが本体価格は高い。一方のヒーター式は、電気代も水道代もかかるが、構造がシンプルなため、本体価格は比べるとリーズナブル。ドラム式洗濯乾燥機を選んでいる時に「うちは洗濯機を置くスペースが狭いけれど、これなら入るな」とか「意外と安いな」と思ったモデルは、たいていがヒーター式となる。
| 特徴 | ヒートポンプ式 | ヒーター式(水冷除湿) |
|---|---|---|
| 乾燥の仕組み | 除湿して空気を再利用 | ヒーターで熱風を作り、水で除湿 |
| 電気代 | 比較的に安い | 比較的に高い |
| 水道代(乾燥時) | かからない | かかる |
| 衣類への優しさ | 優しい | 縮みや傷みに注意 |
| 本体サイズ | 大きめ | 小さめ |
| 本体価格 | 高め | 安め |
見比べてみると、大きな違いがあることがわかる。次項からは、それぞれの仕組みや違いを、細かく解説していく。
効率よく空気をあたためるヒートポンプ式
両方式は、循環させる空気をどうあたためるか……ヒーターとヒートポンプのどちらであたためるか……が大きな違い。
「ヒーター式とヒートポンプ式は、部屋をあたためる際に使う、電気ストーブとエアコンに置き換えて考えると分かりやすいです。同じ広さの部屋の空気をあたためたい場合、ヒートポンプ式のエアコンの方が圧倒的に効率よくあたためられます。つまりヒートポンプ式の方が省エネでランニングコストが低いです」(藤山さん)
ヒートポンプ式は、冷媒という熱の上げ下げに敏感な物質をチューブ内で循環させている。この冷媒を圧縮すると温度が上がり、膨張させると冷媒の温度が下がる。洗濯機には、この仕組みを利用したヒートポンプユニットが内蔵されている。
ヒートポンプ式の場合は、「冷媒」を循環させるチューブと、衣類から湿気を奪う「空気」を循環させるチューブとがあるイメージ。「冷媒」は「熱」を運び、「空気」は「熱」と「湿気(水分)」を運び循環する。
そうイメージしたうえで、ヒートポンプ式の洗濯乾燥機の仕組みを見ると……まずヒートポンプユニットの「冷媒」は圧縮され熱くなる。その「熱」を「空気」に放出または引き渡す。
そうして「熱」を含んだ「空気」は洗濯槽の中に送り込まれ、「熱」を衣類に渡し(「空気」は少し冷え)つつ、衣類が持つ「湿気(水分)」を受け取る。
次に「湿気(水分)」を内包した「空気」は、洗濯槽からチューブを通って、ヒートポンプでキンキンに冷やされた「冷媒」のもとへ行く。そこで「冷媒」が、洗濯槽から来た「空気」から「熱」を奪う過程で、「空気」内の「湿気(水分)」が放出され、洗濯機外へ滴り落ちていく。
さらに「冷媒」は、「空気」から「熱」を奪いつつ次のステップで圧縮されて「熱」を溜め込む。その「熱」を、先ほど冷やされてカラッカラに乾いた「空気」に、放出または引き渡す。この一連の「熱」と「湿気(水分)」の受け渡しを繰り返すと、衣類の繊維が溜め込んでいた「湿気(水分)」が、洗濯機外へ排出されていき、じょじょに衣類が乾燥していく。
一方のヒーター式は、取り込んだ「空気」をヒーターであたためて、熱い風を洗濯槽の中へ送り込み、衣類をあたためて乾燥させる。
ヒーターであたためられた「空気」は、「熱」を衣類に渡しつつ衣類の「湿気(水分)」を受け取り、またヒーターへ向かう。その過程で「空気」は、比較的に冷たい水道水が流れるチューブで冷やされる。まぁまぁあたたかい「空気」は、この「水」に接触して冷やされることで「湿気(水分)」を放出し、またヒーターであたためられて洗濯槽へと送り込まれる。これを繰り返すことにより、衣類が乾燥していくという仕組み。
問題は、あたたかい空気を冷やす「水(水道水)」が循環されずに、そのまま洗濯機外へ放出されてしまうこと。そのため、ヒーターの電気料金とともに水道代もかかるため、ヒートポンプ式と比べてコスト高になってしまう。
「そのほか、乾燥させる仕組みとして、ヒーター式はヘアドライヤーのように、どうしても高温にする必要があります。ヒーター式では熱い空気が必要なのに対して、ヒートポンプ式は乾いた空気なので“ぬるめの”空気で十分に衣類を乾燥させられます。ヒーター式は、衣類が縮んだり傷んだりするリスクが高いといわれるのは、そのためです」(藤山さん)
そのほかヒーター式の場合は、最後の、洗濯機から送られてくる「衣類から奪った湿気(水分)」と「熱」を、「水(水道水)」で奪い返す工程がうまく働かないと、モヤッと湿った空気でランドリールームが充満してしまうという問題が起こる。
以上の観点から“のみ”結論づけると、ヒートポンプ式の乾燥機の方が、ヒーター式よりも利点が多い。
ヒートポンプ式の最大の弱点は「ホコリ」
前項では、ヒートポンプ式は効率が良く、ヒーター式よりも利点が多いと記した。
ただしヒートポンプ式の場合、「空気」を循環させているために、「ホコリ」問題が起こってしまう。衣類を温めて「湿気(水分)」を奪った空気はヒートポンプユニットへ送り込まれて、そこで「湿気(水分)」が回収されて洗濯機外へ排出する仕組み。だが、「湿気(水分)」は回収できても、微細なホコリは全てを回収できない。
もちろんフィルターを配置してホコリを除去しようとするのだが、微細なホコリはフィルターをくぐり抜けてしまい、ヒートポンプユニット……特にヒートポンプユニット内の熱交換器に付着してしまう。
エアコンでも同様のことが起きるが、ヒートポンプユニット内の熱交換器にホコリが溜まってしまうと、「空気」が通り抜けづらくなり、「熱」と「湿気(水分)」を回収しづらくなる。
「じょじょにこびりつくホコリが溜まっていき、乾燥能力が落ちていきます。そのためヒートポンプ式の寿命は、4~5年くらいです。そうなると、洗浄サービスを依頼するかユニットごと交換するしかありません。洗浄してもらったり交換すれば、また乾燥能力が上がりますけれど、購入時に、この洗浄または交換費用……数万円はかかる費用を、ランニングコストとして把握しておかないと『えぇ〜、聞いてないよぉ〜』ということになります」(藤山さん)
だがエアコンの場合は、機内を自動で水洗いしてくれる機能を備えたモデルも少なくない。ヒートポンプ式に、そうした機能を搭載したモデルはないのか?
「ここ数年で、ヒートポンプユニットを自動で水洗いして、熱交換器についたホコリを洗い流す機能を備えたモデルが出てきました。具体的には、パナソニックのヒートポンプ式の洗濯乾燥機は、一度の洗濯が終了するたびに、ヒートポンプユニットに水をぶっかけて、ホコリを洗い流してくれます。また、日立や東芝も異なる方法で、同じように掃除してくれる機能を備えたモデルがあります。そうしたモデルであれば、乾燥能力が落ちづらくおすすめです」(藤山さん)
でも……ヒーター式の方が安いしコンパクト
ここまで聞いていると、やはり欲しいのは自動掃除機能を備えたヒートポンプ式ということになりそうだ。では、ドラム式洗濯機の購入時に、ヒーター式は候補に挙がらないのか?
「ヒーター式の最大のメリットは、導入コストが安いことです。ただし、例えば毎日洗濯から乾燥までする家庭は、その分のランニングコスト……電気代や水道代が多くかかりますから、電気代が比較的に安く乾燥時の水道代がかからない、ヒートポンプ式の方がおすすめです。逆に、うちは週に1回しか洗濯しない……もしくは、晴れている時には外に干していて、天気が悪い時や急いで乾燥させたい時にだけ乾燥機能を使うよ……といった人は、ヒーター式でも良いですよね」(藤山さん)
その他、ヒーター式のメリットの1つとして、コンパクトなモデルが存在する点も挙げられる。
「ヒートポンプユニットは、冷媒を圧縮/膨張させるコンプレッサーや、熱を奪ったり放出させたりする熱交換器を内蔵しています。ユニットの大きさが30cm角くらいなので、その分、どうしても洗濯機の本体サイズが大きくなってしまいます。一方のヒーター式は、ホットプレートで使われているようなシーズヒーターが入っているだけなので、ヒートポンプ式と比べてコンパクト化しやすいんですよ」(藤山さん)
おそらく、厳密にはホットプレートとは異なるヒーターなのだろうが、いずれにしてもヒートポンプユニットよりも、ヒーター式は機構がシンプル。その分、コンパクトにしやすい。週に1度か2度しか乾燥機能は使わない……けれど乾燥機能は必須な、一人暮らしなどの少人数世帯に、ヒーター式はフィットしそうだ。
蛇足になるが、コインランドリーにある乾燥機は、ガス式の乾燥機を使っている。そのため、熱が強力で、大量の衣類を早く乾燥できる。
「うちがそうなのですが、週末に一気に洗濯する家庭であれば、洗濯までは自宅でして、乾燥は近所のコインランドリーで済ませるというのもおすすめです。その方が断然早いし、費用面でも安くなる可能性もあるんじゃないですかねぇ」(藤山さん)
という身も蓋もない話も出てきたが……。次回は、藤山さんおすすめのドラム式洗濯乾燥機を教えてもらって紹介したい。




