家電トレンドチェッカー
ドラム式洗濯機は一人暮らしに必要か? 編集部で徹底討論!
2024年5月3日 08:05
洗濯という家事は、なかなか骨の折れるもの。できれば他の人に代わってもらうか、家電製品に肩代わりしてもらいたい。特に一人暮らしを始めてすぐの場合だと、そう考える人も多いだろう。だが、例えばドラム式の洗濯乾燥機や食器洗い乾燥機など、服や食器を入れてスタートボタンを押せば、あとは出して使える状態にまでしてくれる、ユーザーがラクできる高性能な機器ほど、一人暮らし向けのラインナップがまだ少ないのも現状。
今回は「乾燥機能を備えたドラム式の洗濯機(以下:ドラム式洗濯機)」は、一人暮らしにおすすめなのか? を、家電 Watch編集部内外のドラム式洗濯機ユーザーで集まって、検討してみた。
メンバーは、一人暮らしのドラム式洗濯機ユーザーである、編集長の中林と、Impress Watch編集部の太田、家族と暮らす西村、鄭(それぞれ2~3人世帯)を加えた4人で討論。進行は、3人世帯で縦型洗濯機(乾燥機能非搭載)ユーザーの河原塚が担当した。生活スタイルによって「縦型で十分」「ドラム式にしてラクになった」など意見が分かれるテーマで簡単に正解は決められないが、今後の洗濯機選びの参考にしてもらえたら幸いだ。
乾燥までしたいならヒートポンプ式を選ぶべき
河原塚:それぞれの使用状況を教えてください。
中林:東芝ライフスタイルから2020年に発売された、ドラム式洗濯機「ZABOON TW-127X9」を使っています。いつも洗濯から乾燥まで自動で行なっています。洗濯機から出したら、すぐに着られる状態なのでラクです。
太田:私は、2019年発売のパナソニック「キューブル NA-VG740L」です。洗濯が終わったら洗濯物を出して、浴室乾燥機を使って乾燥させています。
河原塚:洗濯機で乾燥させないんですか?
太田:私の場合は、引っ越しを機に、ドラム式洗濯機に買い替えました。乾燥機能も何度か使いましたが、部屋の中の湿気がすごいことになって、窓に結露まで……。おかしいなぁと思って説明書を読んだら「乾燥機能の使用時には窓を開けるように」と書いてあって……。それに、意外と乾燥までに時間がかかるんだなぁという印象で……。ちょうど浴室に乾燥機能がついていたので、それを使うようになりました。
西村:太田さんが使っているパナソニックの「キューブル NA-VG740L」は、乾燥機能がヒートポンプ式ではなく、ヒーター式(ヒーター/排気式)なんですよね。それだと乾くまでに時間がかかるし、部屋に湿気がこもってしまうかも……。
太田:とにかく引っ越したらドラム式を買おうと決めていました。それで、設置できるサイズであることを第一に選んだため、当時はヒートポンプ式ではない、ということに気が付きませんでした。
鄭:60×60cm(幅×奥行き)というのがドラム式洗濯機で一番小さいサイズで、一般的には一人暮らし向けの部屋にも設置できるといわれています。ただし、ただし、このサイズのドラム式洗濯機はそもそも少なくて、ヒーター式である場合が多いです。
中林:うちの場合(ヒートポンプ式)だと、分量にもよるけれど、長くても4〜6時間くらいで乾燥できている印象です。湿気も出ますがドアを開ければ気にならない程度で、乾燥が終わったら、すぐに服を着られる。日常的に乾燥機能まで使うつもりなら、ヒートポンプ式を選びたいですね。ヒートポンプの構造が小型化されて、小さめの機種にも、多く搭載されるようになればいいですけど。
鄭:ちなみに、パナソニックの最新のドラム式洗濯機を仕様表で比べてみると、ヒーター/排気式の「キューブル NA-VG780L」だと、乾燥容量が3.5kgで、標準乾燥モードでの洗濯乾燥時間の目安は約200分です。一方でヒートポンプ式の「ななめドラム洗濯乾燥機 NA-LX113CL」だと、乾燥容量が約1.7倍の6kgもあるのに、時間は約半分の約119分で乾かせます。
乾かしてもシワシワにならない服を選ぶ?
河原塚:方式によって、乾燥時間はそんなに違うものなんですね。でも、ドラム式洗濯機で乾かすと、服のシワなどは気にならないんですか?
中林:やっぱり綿100%のシャツを乾燥させるとシワシワになることは多いです。でも、アイロン掛けするよりは、いっそのこと部屋着や運動着など一部を除いて綿100%の服を着るのをやめて、外で着るのは化繊のものだけにしています。
みんな:え? その服って、アイロン掛けしていないの!?
中林:ええ、していませんよ。乾燥後に洗濯機から出してハンガーにかけておいて、着ています。ただ、衣類のタグに付いている洗濯表示をみると「タンブル(タンブラー)禁止」も多いので、選ぶのは簡単ではないです。
みんな:それはすごい! そんなにピシッとしているのに……。洗濯機よりも、その服の性能がすごい!
中林:もちろん、服によっては乾燥で傷んだり縮むリスクはあるので、万人におすすめとはいえません。以前、ライオン社の「お洗濯マイスター」さんに取材したときは、「タンブル禁止の衣類だけを分けて洗濯ネットに入れておいて、乾燥の前に取り出す(干す)」というやり方も教えてもらいました。そうしたひと手間を加えれば、衣類をダメにする心配は減りそうです。
河原塚:今のところ、中林さんはドラム式洗濯機にして満足しているようですね?
中林:はい、とても満足していますし、一人暮らしにもあった方がいいと思います。出かけるタイミングで洗濯を始めて、帰ってきた時には終わっています。ただし、使っているのがヒートポンプ式だから、ということになります。
太田:そうですよね。わたしのはヒーター式だから、乾燥機能を使う時には、窓を開けなきゃいけない。外に出かける時に、窓を開けたままにはしていけないしなぁ。
河原塚:それにしても、搭載されているのがヒーター式だと、乾きが遅いうえに湿気対策も必要な点は、要注意ですね。太田さんは寛容ですけど、一般ユーザーとしては、乾燥機能がついているから「これからはラクができる!」って考えて購入するんでしょうから。
西村:乾燥方式については、どこのメーカーの製品サイトやパンフレットでも、パッと見て、ヒートポンプ式なのかヒーター式なのかが、分かりにくいです。洗濯容量や乾燥容量などと同じように、すぐに分かるように表示してほしいですよね。
中林:まずは家電 Watchで記事を載せる時にも、目立ちやすいように容量の次くらいに書くことも考えた方が良いかもしれないですね。
浴室乾燥との併用がベスト!?
河原塚:太田さんは、洗濯が終わってから、浴室に干し直すというのを、面倒に感じないんですか?
太田:いやまぁ面倒といえば面倒ですけど、今までの経緯があるので……。引っ越す前は、縦型洗濯機を使っていて、いちおう乾燥機能も搭載されていたのですが、やはり乾きが良くない。それで、近くのコインランドリーへ通っていました。その時と比べると、今は洗濯機の隣にある浴室で乾かせるので、それほど大変だと思わないです。
河原塚:以前よりは、かなりラクになったということですね。だけれど「ドラム式洗濯機にして、手間がなくなると思ったのに!」といった悔しい気持ちはないんですか?
太田:それはあまりないです。浴室に衣類乾燥機能があって良かったとは思いますけど。狙ったわけではなく、入居してから知ったので、ラッキーだったなと思っています。
河原塚:外には干さないんですか?
太田:住んでいる環境が問題なんです。うちの場合は、すぐ下に焼き肉屋と焼き鳥屋ととんかつ屋が並んでいて、外に干せる時間が、飲食店の仕込みなどが始まる15時から16時くらいまでと決まっているんです。一度、洗濯物を外に干したのを忘れたら、服なんかが焼き肉臭くなって、もう一回洗う羽目になりました。つまりは、実質、ベランダで干せないんです。それに洗濯頻度が週末の1回。その週末の朝に、ちゃんと起きて洗濯するなんて生活はしていないので(笑)。
河原塚:駅前で一人暮らし向けの物件だと、そうした環境も少なくなさそうですね。では、縦型にしろドラム式にしろ、まずは物件の浴室に、衣類乾燥機能の有無を確認した方が良いってことですね。
太田:浴室乾燥は、あったほうがいいです。まぁかなり古い物件でもない限りは、浴室乾燥はたいていついているようですけどね。
複数人世帯でも浴室乾燥との併用が多め
太田:そういえば、洗濯容量と乾燥容量が、ぜんぜん違うっていうことも今まで知らなくて、買う時に知りました。例えば洗濯容量は7kgなのに、乾燥容量は半分の3.5kgだったり……。ドラム式洗濯機で乾燥までする人って、洗濯が終わったら、洗濯物を半分出してから乾燥に進むんですか?
西村:うちは、ドラム式洗濯乾燥機で乾かすのは、タオルと靴下などだけにしていて、あとは浴室乾燥を使っています。タオルがふかふかに乾かせるのは、ヒートポンプ式の乾燥機のメリットです。逆に、うちの場合は浴室乾燥でタオルを乾燥させると、乾き過ぎてカッピカピになっちゃって……。
鄭:私もタオルや下着類、それに部屋着は乾燥までしちゃいます。外で着る服などは、浴室乾燥か部屋干しです。やっぱりドラム式洗濯乾燥機で乾かすとシワッシワになるので、アイロン掛けしないと外では着れないなぁと。それで今の形に落ち着きました。
河原塚:じゃあ、よくいわれているような、洗濯機にポンッと服を入れてスイッチを押して、乾いたらそのまま洗濯機から出して着るということは、難しいんですね。そういう使い方ができているのは、この中では中林さんだけ。
中林:そうですね。いろいろ割り切らないと難しいでしょうね。でも割り切れば、洗濯に関連する労力はほとんど気にならないほどになるのでおすすめです。
鄭:ただし、ヒートポンプを搭載しているドラム式洗濯機は、本体サイズが大きいんですよね。そうすると一人暮らし向けの物件だと、部屋に設置できないこともありそうです。
やさしく服を洗ってくれるドラム式洗濯機
河原塚:でも、ドラム式ではなくても良かったな、とは思っていないんですか?
太田:それもあまり思っていないです。縦型よりもドラム式洗濯機の方が、洗濯時の服へのダメージが少なそうですから。あと、節水にもなっているようですし。
鄭:基本、縦型洗濯機は揉み洗いで、ドラム式洗濯機は叩き洗いといいますよね。縦型洗濯機だと洗い終わった後に、衣類が絡み合うこともあって、生地が傷みやすい。でもドラム式洗濯機は、そこまで絡むこともないので、比較すると服にやさしいです。
河原塚:なるほど。だから泥汚れの多い子供などがいる家庭には、縦型洗濯機が向いているといわれているんですね。
ドラム式洗濯乾燥機のメリットとは?
河原塚:ここまで聞いた感じでは、ドラム式洗濯乾燥機のメリットは、乾燥機能まで使わない前提ですが、服が傷みにくいということ。あとは、タオルがふかふかに乾かせる。さらに中林さんのように、着る服を選べば、洗濯から乾燥までを全てお任せできることですよね。その他にありますか?
西村:乾燥方式がヒーター式だと、ヒートポンプと比べて乾きにくかったり、湿気の問題もありますが、それでも縦型洗濯機に比べれば、構造的に乾きやすいです。だから、どうしても明日までに乾かさなきゃいけない! っていう時には、乾かせますよ。特に保育園児がいると、たくさん保育園へ服を持っていく必要があるので、服がない! っていう時には、夜中に乾燥できます。あと、天気に関係なく洗濯乾燥できるのはいいですよ。
河原塚:子供の服の問題はありますよね。小学校の体操着とか。
鄭:一人暮らしでも、明日はこれを着たいのに、洗濯し忘れてた! といったケースはありそうです。そんな時に、洗濯乾燥機能があるのは心強いですね。
全員、次もドラム式洗濯機を買う
河原塚:ちなみに、みなさんは次に買うとしたらドラム式の洗濯乾燥機を選びますか? 浴室乾燥できる家なら、中林さん以外は、縦型洗濯機でも良いんじゃないか? とも思ったのですが。
西村:わたしは洗濯機を買い替えたばかりです。ベランダ干しが禁止で乾燥機能は必須なので、今回もドラム式洗濯乾燥機にしました。
鄭:わたしもドラム式を選ぶと思います。乾燥機能についても、外出着以外は乾かしているので、けっこう活躍してくれていますよ。
太田:そういわれると悩みますけど、やっぱりドラム式って最先端って感じがするんですよね。今から縦型洗濯機に戻すのかぁ……って考えてみると、それはないかなぁ。
中林:わたしは、もちろん次もドラム式洗濯乾燥機を選びますけど、今ちょっと気になっている機能が、アクアの「エアウォッシュプラス」のように、上着など水洗いできない衣類を消臭したりリフレッシュしてくれる機能です。他社では別のアプローチで消臭や除菌などをする機種もありますが、もし買い替えが必要になったら、同じドラム式洗濯乾燥機でも、こうした機能が搭載されているものを選ぶかもしれません。
河原塚:色々とドラム式洗濯乾燥機のデメリットも見えてきましたが、みなさん次の買い替えでもドラム式洗濯乾燥機を選ぶということは、おおむね満足しているということでしょうね。
一人暮らしにドラム式洗濯機は必要か?
ドラム式洗濯機ユーザーの話を聞いてみて、縦型洗濯機ユーザーかつ狭いマンションの1室に暮らす筆者(河原塚:家族3人)が感じたのは、まずは「早くヒートポンプを小型化して、60×60cm(幅×奥行き)のドラム式洗濯機にも搭載してほしい!」ということ。とはいえ、技術的に難しい課題なので、搭載されるにしてもまだ先の話になりそうだ。
では現状の、ヒーター式のドラム式洗濯機でも、一人暮らしに必要なのか? と考えると、「できるだけ服をやさしく洗いたい」という人以外には、必須とはいえないという印象。
一方で、もしワンサイズ大きな、よく乾くヒートポンプ式のドラム式洗濯機が設置できるのなら、かなりおすすめだと思う。上述した中林の話でも感じたが、洗濯から乾燥までを全自動で行なってくれるのは、特に一人暮らしには魅力だろう。
まずは自宅のドアから洗濯機置場まで、ヒートポンプ式のドラム式洗濯機を運べて、設置できるのかをチェックしてみてほしい。あとは価格との相談になるだろうが、洗濯に費やす自身の労働コストは、かなり抑えられそうだ。