ぷーこの家電日記

第479回

富士の樹海でホーストレッキング

友人から「馬乗りに行かない?」と、この友人がいなければ私が一生体験することのなかったであろう遊びに誘ってもらった。「行く行くー!」と即答。「相手(馬)はプロなので、安心していいよ」という言葉とともに、当日のタイムスケジュールに持ち物に服装、そして馬に負担が少ない乗り方の図解までまとめた旅のしおりを用意してくれた。大人の遠足だ! 楽しみにしながらイメージトレーニングに励んでいる間に、あっという間に当日がやってきた。

当日は見事に晴れて、そして30℃を超えそうな夏日になった。友人の車に同乗させてもらって向かうは山梨の河口湖の辺り。前日の夜はまさに遠足が楽しみで仕方がない状態で、寝付けなかったらどうしようかと軽く焦ったけれど、睡眠もしっかり、イメージトレーニングもバッチリ!

ひたすらにワクワクが止まらないので、「途中で車で寝てしまったら申し訳ないな」と思っていたけれど、眠くなるどころかおかしなテンションで饒舌になる。道の駅に寄り道したり、遠足気分が温まったところで牧場に到着した。

「わぁ! 馬だ!」と当然のことしか言えない。人は感動すると語彙力が低下するものだ(笑)。つぶらな瞳に大きな歯、ツヤッツヤに綺麗な毛並みにプニプニで気持ちが良い鼻。もうかわいすぎて、まだ乗ってもいないのにこの日の目標が達成されたような気分になった。

1人ずつの担当の馬が決まっていざ乗馬。今回乗ったのは日本在来馬の木曽馬というお馬さんで、少し小さめでどっしりとしている。華麗にヒョイッみたいに飛び乗るのではなく、台に登ってから乗るので、全然難しくはないのだけれど、乗った瞬間は小さな馬とはいえ凄く高く感じて結構怖かった。高所が苦手なせいもあるけれど、「うわぁ、無理かも」と内心思った。ただ、それは最初の1分程度。すぐに安定した座り心地と馬の包容力に恐怖心は無くなる。手綱の握り方、発進、停止の合図に曲がり方など、基本的なことを軽く教えてもらって、いざホーストレッキングへ!

富士の樹海を馬に乗ってのお散歩。原生林が茂って木や草が青々としていてとにかく綺麗で、それだけで心が洗われるような気分になる。しかもその綺麗な光景を私は馬に乗って散歩しているのだ。非日常どころか特別感が半端ない。時間の流れも空気も気分も何もかもが普段と違う。

暑い日だったけれど、山の中は少しだけひんやりしていて最高に気持ちが良い。先導してくれている方が「これは桑の実で、こっちが胡桃です」とか、「この紅葉は秋になると真っ赤になって綺麗ですよ」とか、「これは溶岩なんです」とか、色々教えてくれるのもとても楽しかった。目に入る光景が何もかも初めてでずっと感動しっぱなし。

そして乗っている馬は、友人が言っていた通りとてもプロフェッショナルといった感じで、優しく穏やかなだけではなく、「左に曲がるには手綱をこうやって……」と私が考えている間に馬が「はい、ここ左ですよね」とむしろ誘導してくれる。もう半自動運転だ(笑)。私は完全に馬に委ねっぱなし。

そして優しく寛大に私を誘導しながらも、途中で隙あらば道の脇に生えているススキの新芽を摘み食いしちゃうお茶目さ。「これぞ文字通り道草を食うだ!」と、語源となる光景を目の当たりにしてちょっと感動してしまった。

道草を食ってばかりはいられないので、なるべく道の真ん中を歩くようにお願いし(命令というよりもお願いに近い。笑)、テクテクと山の中を歩いていく。写真も撮りたいなとカメラを肩から掛けていたけれど、もちろん私にそんな余裕があるわけもない。歩いてサポートしてくださっている方が、途中で「カメラ預かりましょうか? というか写真撮りましょうか?」と言ってくれたのでお願いしたら、素敵な写真と動画をたくさん撮ってくれていて、ここは馬も人もホスピタリティが高すぎると猛烈に感動した。

そんな楽しいお散歩の時間はあっという間に終わってしまった。最初は「そんなに乗っていられるのだろうか」と思っていたくらいなのに、終わる頃には「もう1周行きたいです!」というくらいの気分。夢のような時間が過ぎたあとは、厩舎に戻った馬にお礼を言いながらひたすらに撫でて愛でて触れ合う時間。

みんな可愛いのだけれど、やっぱり自分を乗せてくれた子が特別になっている。完全に推しメンってやつである。もう離れがたい! たくさん写真を撮って、たくさん撫でてたくさんお礼を言って、夢の国を後にしたのでありました。

帰ってから、思い出を反芻するようにビールを飲みながら撮ってもらった写真を取り込んだり友人に共有したり。写真の中でも私はひたすらにずっと笑っていた。帰ってきたばかりなのにまたすぐにでも行きたいほど楽しかったホーストレッキング。

普段使わない筋肉を使うもんだから、帰りにはみんな「内ももがヤバい!」「お尻が割れる!」と言っている中、私1人でケロッと平気だった。「もしや私の筋肉だけまだ損傷に気づいていない!?」と思わなくもなかったけれど、数カ月前にマラソンも走り切ったし、毎週家庭菜園で軽く体動かしてるからかなぁ。などと呑気に思っていた。

しっかり寝て起きた翌日も、ちょっと足に違和感、レベルの軽い痛みが出た程度で平気だった。「これくらいのダメージなのか、なーんだ」なんて思っていたら、2日後に筋肉痛のピークがやってきて「完全に加齢じゃん!」と盛大に苦笑いしたのでありました。

初めてのホーストレッキングはとにかく楽しく癒された。また絶対に推しメンに会いに行きたいなと思っているのであります。

徳王 美智子

1978年生まれ。アナログ過ぎる環境で育った幼少期の反動で、家電含めデジタル機器にロマンスと憧れを感じて止まないアラフォー世代。知見は無いが好きで仕方が無い。家電量販店はテーマパーク。ハードに携わる全ての方に尊敬を抱きつつ、本人はソフト寄りの業務をこなす日々。