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実売9万円! 高級ブレンダー「Vitamix」の魅力をCEOに聞く

実売9万円のコンパクトブレンダー

Vitamixの新製品「S30」使用イメージ。本体カラーは写真のブラックのほか、グリーンやレッドなど全6色をラインナップ

 高機能ブレンダーで知られるVitamix(バイタミックス)は、パーソナルモデルの「S30」を4月20日より発売する。販売価格89,000円(税抜)のブレンダーとしては“超”が付くほどの高級ブレンダーだが、日本では一定のファンをつかんでいる。なぜ、高くても売れるのか、バイタミックスとはどういう会社なのか、発売に合わせて来日したCEOのJodi L. Berg(ジョディ・バーグ)さんに話を聞いた。

 今回発売したS30はVitamixの従来のラインナップに比べると、本体サイズ、容量とも小さく、パーソナルユースを想定して開発されたもの。持ち歩きが可能な容量600mlの「TO GOカップ」が2つ、容量1,200mlのコンテナが1つ付属する。本体カラーも6色用意するなどこれまでにないポップなデザインが特徴だ。

 とはいえ、600WのモーターとVitamixならではのレーザー・カットのステンレス・ブレードを備えるなど、機能は本格的。ピーナッツやディップなど粘度のあるものから、氷など固いものまで幅広い食材とレシピに対応する。

製品本体
容量1,200mlのコンテナ(左)と、容量600mlの「TO GOカップ」が2つ付属する
本体カラーは6色をラインナップする

 しかし、容量1~2人分のコンパクトモデルの価格が約9万円というのは、やはり高い。国内のジューサーやミキサーと比べると、圧倒的な価格差がある。

実売9万円以上! それでも売れ続ける理由

Vitamix CEOのJodi L. Berg(ジョディ・バーグ)さんと、4月20日発売のパーソナルモデル「S30」

 しかし、ジョディさんは「高すぎるとは思っていない」と語る。

「一般的なミキサーやブレンダーとは口当たりの良さが全く違う。Vitamixで作ったスムージーは非常になめらかで、絹のような優しい口当たりを実現する。しかも、使い始めたその日のクオリティをずっと保つことができる。モーターやブレード、全ての部品が長期間使用に耐えられるように設計されており、7年間の保証期間を設けている」

 最近日本では、回転数を抑えたスロージューサーなども人気だが、ジョディさんは健康面を考えたら、Vitamixの製品の方が優れていると語る。

 「ジューサーはフィルターで濾すことによって繊維を取り除いているが、栄養素というのは、繊維の中にこそある。Vitamixは、栄養素はそのままに飲みやすいクリーミーな口当たりに仕上げることができる。例えば、ニンジンを使ってジュースを作ろうとした時、ジューサーではたくさんのニンジンからほんのわずかなジュースしか作れない。Vitamixならば、ニンジンを無駄にすることなく、おいしいジュースができる。さらにいうならば、繊維は満腹感を得ることができるので、ダイエットにも効果的」

S30のブレード部分
一般的なブレンダーやジューサーとは口当たりの良さが違うという

 ジョディさんはさらに、Vitamixは人生のあらゆるシーンで活用できると語る。

 「Vitamixは、離乳食から始まって、年老いて固いものが食べづらくなった時まで全てのライフステージに対応している。特に離乳食など幼少期の食事というのはとても大切だと考えている。小さい時に何を食べたかというのは、その人の生涯の食事を形成することになる。おいしくかつ、栄養価の高い食事をするのが重要」

ファミリービジネスが長続きする秘訣は「一歩引くこと」

Vitamixのポリシーが書かれているドキュメントカード。全社員が携帯しているという

 そもそもVitamixが日本での展開をスタートしたのは、2009年。グリーンスムージーや、オーガニックフードなどに代表される健康志向が強まってきたことによって、この10年で急激に成長したという。日本では割と新しいメーカーのイメージだが、本国・アメリカでの歴史は古い。1921年創業で、それから4代続く、家族経営の老舗メーカーだ。Vitamixの偉業は様々あるが、特筆すべきは1949年に史上初のテレビ通販番組を制作したことだろう。製品のデモンストレーションを映像で伝えることにより、人々にその魅力を伝えた。

 「Vitamixは、アメリカでも珍しい、4世代続くファミリービジネスの会社。4世代続いている家族経営の会社というのは、アメリカ全土でも4%以下しかない。次の世代を担うことになる、私の娘への教育も既にスタートしていて、今回の来日にも同行している」

 日本では最近、家族経営の会社で父と娘が社長の席を争うという出来事があったばかり。アメリカでも家族経営をしている割合が少ないのは、やはり難しい一面があるからだろう。長く続ける秘訣は何か。

 「自分達がどんな会社にしたいのかポリシーを貫くことが大切。Vitamixでは、食べ物や飲み物を通じて、自由や活力を得て、世界を変えていく、というのがポリシー。ただ単に製品を売るのではなく、健康的なライフスタイルを啓蒙していくことを目的としている。

 私たちは、家族だけでビジネスをしているわけではなく、従業員もいて、関連会社もいる。お客様のニーズをつかんでいき、ファミリーメンバーだけではなく、みんなでやっていくということが重要。あとはもう1つ、次の世代に経営を託したら、前の世代は一歩引くことも大切」

日本人は健康に対する意識が高い

日本人の健康への意識は高いという。写真は先日行なわれたS30のプレス会見の時の様子

 Vitamixでは日本市場をどう捉えているのか。

 「日本は大好きな国の1つで、これまでに12回以上来日している。非常に強い絆を感じており、Vitamixの考え方との共通点が多い。まずは、食べることに対する価値が高い。日本の平均寿命は世界でも1、2位であり、生活意識が高く、健康に対する関心が高い。真の価値があるのなら、お金を払うことをいとわないという面がある。

 また、日本人は凄く働きもので、仕事に多くの時間を割いているが、Vitamixなら簡単に栄養価の高い食事を作ることができる。S30はコンパクトで、日本の住宅にもマッチする。日本のみなさんによりヘルシーで快活な生活を送っていただきたい」

 最後に新製品のS30でオススメのレシピを聞いた。

 「とても難しい質問。Vitamixでは何千ものレシピがある。全て、製品の特性を考えて、作られたもの。例えば、日本で販売している製品には、日本向けのレシピを掲載している。様々なレシピにチャレンジして、Vitamixをよりエンジョイしてもらいたい」

阿部 夏子