家電製品ミニレビュー

変わったのは掃除ではなく“自分”。一人暮らしにもルンバi7は劇的に便利

引っ越しを機にロボット掃除機のルンバ「i7」を購入した

引っ越しを機にロボット掃除機としてアイロボットの「ルンバ i7」を購入した。一人暮らしの筆者でも便利に使えるものだろうか? と少し不安もあったが、さまざまな面で革命的な製品だった。

筆者はこれまでロボット掃除機を使ったことはなかった。というより、ずっとワンルームのアパートで暮らし、床が見えないほどモノで溢れていた部屋だったため、普通の掃除機で床を掃除するといったことが難しかった。定期的に掃除機をかけるという習慣がなかったため、広くなった引っ越し先で掃除をする習慣ができるのか、自分でも疑問だったが……。引っ越しを機にロボット掃除機を導入すれば、掃除をする習慣が身につかなくてもいろいろ解決するのではないか? と横着にも思いついてしまったわけだ。

ルンバシリーズの中でも「i7」(直販価格99,880円)は上位のモデルにあたる。ただ購入したモデルに自動ゴミ収集機は付いていない。上位モデルを選んだのは、筆者がロボット掃除機の初心者で判断基準がなかったことや、できる限り掃除をサボりたいので、できる限り優秀なヤツがいいという正直な気持ち、もとい期待の大きさの表れだ。とはいえ、各機能を使いながら吟味して、自分なりに取捨選択ができるようになれば、今後の買い替えで下位モデルを選ぶということはあるかもしれない。

公式Webサイトによれば、「i7」がルンバのほかのモデルと比較して優れているのは、吸引力(下位モデルの10倍)、学習機能、ダスト容器の水洗いなど。ハード/ソフトともに上位モデルとして差別化されているようだ。

パッケージを開けてから使い始めるまでは簡単で、充電のためのベースを設置し、スマートフォンアプリでセットアップ後、清掃の開始を指示するだけだった。初回の掃除は50分ほどかかったが、以降の掃除は毎回30分程度で終了している。動作音は予想の範囲内で、掃除機としては普通か少し静かなぐらいだと感じた。

ホームベースを設置し充電が終われば、アプリで開始ボタンを押すだけ。本体のボタンでも可能だ

筆者宅は2DKのマンション、38.3m2で、このうちルンバが進入できないのは、床から一段上がっている洗面室とトイレ、一段下がっている玄関(たたき)だけだ。廊下、寝室、ダイニング、仕事部屋のいずれもルンバがスムーズに移動できる。今のところ床にカーペットはなく、子育て中で床には食べくずが……ということもないので、環境としてはそもそも汚れにくいほうだと思う。

スマートフォンのアプリには、スケジュールの設定や掃除の結果を確認する機能のほか、「スマートマップ」の作成や活用機能も用意されている。これは、ルンバが部屋の状況を学習・記憶するモードで、進入禁止エリアを設定したり、部屋別に掃除を指示したりといった、細かな活用も可能になる。さらに、8月に発表されたアプリとファームウェアの大幅アップデートで、さらに踏み込んだ使い方もできるようになるとのこと。

アプリはボタンをタップするだけとシンプルに設計されている
掃除が終わると結果も表示してくれる。ダートとは重点的に掃除した場所だ
掃除と一緒にスマートマップを学習中。筆者宅では完了まで3回ぐらい必要なようだ

ベッド下がキレイに、少しの段差もカバー。賢く動いてくれる

ルンバ「i7]を使い始めて良いなと感じたのは、自分の代わりに掃除機をかけてくれるところ。「お前は何を言ってるんだ」と思われるかもしれないが、基本的にすべて自分でやらなければならない一人暮らしにおいて、誰かが(ロボットだが)家事をやってくれるというのはスゴイことなのだ。

もちろん「i7」は性能が高く、吸引力は高いし、スマートマップではソフトウェアやAIと組み合わせた高度な利用も可能。動いている様子を見ても、机の脚の周りをぐるぐる回って掃除するなど、高度なことをやっているんだなと感じる。

家具の脚の高さが10cm以上なら、その下に進入できる。最近は10cm以上の脚が付いたチェストなどロボット掃除機を考慮した家具も増えているようだ。筆者宅では、ベッドの下が最も恩恵を受けている。引っ越しに伴ってベッドを購入したのだが、ロボット掃除機が入りやすいよう、脚付きで引き出しが付いていないタイプを選んだ。手で掃除機をかけるとなると苦労しそうな狭くて広い範囲を、すべて掃除してくれる。埃っぽくなりがちな寝室の床をほとんど自動で掃除してくれるのはありがたい。

手で掃除機をかけるのは面倒なベッドの下

段差の踏破は、上りの段差は思ったよりも「チャレンジする」印象。2cmぐらいの段差ならけっこう強引に越えていく。厚めのラグにも上ると謳われているが、筆者宅で厚いのはテレビの壁寄せスタンドの土台で、スチール製のため「ドガン」と大きな音をたてて上った。エラーが出るわけではないが、ルンバのパーツの耐久度が心配なので、進入禁止エリアにしてもいいかもしれない。

なお、このような固い段差で本体が斜めに傾いてしまって、うまく前進できなくなった場合は、自動でバックして復帰する。ケーブルを踏んだ際も、バックで戻って巻き込みを回避する動きになっていた。このあたりのロジックは長年のノウハウが反映されているのだろう。

下りの段差は、センサーが鋭く反応して動きを止めるため、段差の下に落ちることはない。ただ、筆者宅では玄関のたたき(靴を脱ぐタイル張りのところ)に落ちかけて自力で戻れなくなったことが一度だけあった。これは、廊下の終端にくっつくように靴を置いていたのが原因だった。センサーが靴を「床の続き」と誤認、そのまま靴の上まで走行してスタックし、戻れなくなったのだ。自力で復帰できなくなるとエラー音が出るほか、スマートフォンには「助けを必要としています」とプッシュ通知でメッセージが表示された。

このように靴などをくっつけていると、止まらずに乗ってしまい、戻れなくなる
スマートフォンアプリを使わなくても、進入禁止エリアを設定できるマーカーがパッケージに同梱されている
直線で区切って進入禁止にするモードと、円形の内側を進入禁止にするモードを選択できる。直線は3mまで、円形は半径30cmだ

ちょっとした工夫で、より掃除が効率的に

ロボット掃除機も完全無欠ではない。35cm程度の本体幅より狭い場所には進入できないので、例えば脚の間隔がせまいダイニングのイスは、あらかじめ別の場所に退避させておくといった工夫をしておくと、より「掃除できなかったエリア」を減らせる。

椅子などは奥の洗面室に退避させておく

ほかに工夫という点では、ロボット掃除機特有の「頭突きチェック」を考慮しておくことだろう。センサーが進化しているためか、全速力でぶつかるといったことはないが、「ここは行けるのか? 無理なのか?」とでも言うように、壁や机の足を、軽い頭突きでチェックしていくのだ。軽いものはこの頭突きで移動してしまうし、立て掛けてあるものは転倒してしまう可能性がある。こういったものがあるなら掃除前には退避させておく必要がある。また、前述のようなことから玄関では靴を廊下の終端から離しておいた。

こうした準備が面倒と思えるかもしれないが、「ほとんどの床掃除をやってくれる」ことに比べたら「イスをどかすぐらい、お安い御用です」と思えるのだ。

従来型の掃除機が一切不要になるかというと、さすがにそこまでではない。充電用のホームベースの周辺は少し掃除があまい印象があるのと、進入しない/できない場所は従来型の掃除機の出番だ。筆者宅では、PCの前で使っているオフィスチェアの退避先がないので、PCデスクの下はロボット掃除機が進入できないエリアになっている。

とはいえ、自宅の8~9割はロボット掃除機が勝手に掃除してくれるので、残りの1~2割は小型の掃除機で済むし、それもすぐに終わるので苦にならない。

ダストボックスは、本体から外し溜まったゴミを直接捨てるタイプ。ダストボックスの一部のパーツは半透明なので、ルンバを裏返すとどれぐらいゴミが溜まっているか見えるようになっている。また設定により、掃除の途中で満杯になった場合、掃除を続けるのか止めるのかを選択できる。筆者宅では1回約30分で12回ほど掃除をして、ゴミの溜まった量はダストボックスの7割程度だった。

ルンバ「i7」のお腹。写真下部のダストボックスは半透明になっている

ダストボックスのフタはボタンのワンプッシュで開くため、手がそれほど汚れるわけではない。ただ、捨てる時にダストボックスをバンバン叩いて執拗に中身を出そうとすると、粉状のゴミが落ちて粉塵が出た。このモデルはダストボックスを水洗いできるため、綿状になったゴミをあらかた出したら、粉状のゴミを無理に出さず水洗いしてしまうのも手だろう。ダストボックスに付いているフィルターは水洗いできないので、外して、乾いたブラシなどで掃除する。

本体から外したところ。左側にフィルターが付いている
上のボタンを押してフタを開けたところ
ダストボックスの水洗いが可能。フィルターは外しておく

変わったのは掃除の仕方ではなく“自分”だった

購入前は機能に注目しがちだが、初めてロボット掃除機を導入した後は、生活に与える変化の大きさのほうに驚かされた。それは家電製品というより「家事代行製品」だからだ。

一人暮らしにおいて、「自分は何もしていないのに床が綺麗になる」というのは、衝撃的ですらある。「あぁ床掃除をしなきゃ」という心理的負担がゼロのまま、「床掃除が終わった」という結果だけが手に入るのだ。

例えば外出時、玄関を出るタイミングで掃除を開始しておけば、帰宅した時には床掃除が終わっている。客観的な事実を並べると単純なことだが、主観では掃除している様子を見ていないので、「いつのまにか床が綺麗になってる。ラッキー! 」と錯覚してしまう。

これを体験して、本当に「革命的だ」と思えた。ロボット掃除機の働きとは、これまでの人生にはまったく存在していなかった利便性だ。

勝手に床掃除をやってくれるというのは、体験するとインパクトを感じた

ほかにも、せっかく綺麗にしてくれるのだから、なるべくロボット掃除機の動作を邪魔しないように心がける、というポジティブな心境の変化もあった。引っ越しと同時にロボット掃除機を購入したため、そもそも家具選びやその配置もなるべくロボット掃除機を考慮したが、新しい生活が始まっても、余計なものを床に置かなくなり、整頓もこれまでよりするようになった。

床が綺麗になったのだからと、棚や机の上の掃除も、以前より頻繁にするようになっている。デスクトップPCは、PCデスクの下の床に置いていたが、キャスター付きの小さな台車の上に置いて、床の掃除をしやすくした。ここは前述のように手で掃除機をかける場所なのでロボット掃除機は関係ないが、これまでならここまで床掃除のことを考えなかっただろう。掃除をたいしてしなかった自分がこまめに掃除をするようになったのだから、自分にも革命的な変化が起こってしまったといっても過言ではない。

夏は裸足で過ごすことも多いため、掃除したてのツルツルの床を歩くのは気持ちがいい。床掃除の手間がほとんど省けて、残りのわずかな部分の掃除も苦にならなくなった。引っ越しに伴って購入した家電の中で、最も革命的で、有り難さを実感しているのがロボット掃除機だ。

太田 亮三