老師オグチの家電カンフー

AI、三日会わざれば刮目して見よ!

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
文字起こししてくれるボイスレコーダー、ソースネクスト「オートメモ S」。ディスプレイが備わって格段に操作性も高まった

録音した音声を文字起こししてくれるAIボイスレコーダー「オートメモ S」。発表当初は、正直インタビュー仕事では使い物にならない印象でしたが、ここ最近ぐっと認識精度が上がってきました。

もちろん、誤認識されるフレーズは多々ありますが、聞き直して部分的に修正するだけで良いレベル。今まで1時間の取材を文字に起こすのに3時間はかかっていたのが、1時間聞き直すだけでほぼ意味の通る文章にすることができます。今まで無料ユーザー(文字起こしは月に1時間まで)だったのですが、月に30時間までのプレミアムプランにアップグレードしたほどです(3カ月無料キャンペーンだったこともあり)。

機械学習の結果なのでしょうが、AIって突然賢くなりますね。「男子、三日会わざれば刮目(かつもく)して見よ」と言いますが、「AI、三日会わざれば刮目して見よ」ですね。

機械学習といえば、ルンバの新製品も、ケーブル類やスリッパなどの障害物を物体として認識し、自動的に回避できるようになりました。これもユーザーの使用状況が反映され、今後さらに賢くなっていくようです。認識するアイテムの追加も期待できるでしょう。

iRobot「ルンバ j7」シリーズは、前面カメラで認識したケーブル類やスリッパ、ペットの排泄物などの障害物を自動回避する

ここからは近未来の想像ですが、AIは家電への採用も当たり前になるでしょう。カメラを内蔵した冷蔵庫は、現状ではただ中の物を撮影してスマホで確認できるだけ。これが機械学習と連携すれば、自動的に食材や調味料の種類や量を教えてくれるようになる。「キャベツ2分の1」「卵はあと3個」「ブルドックのトンカツソース」みたいな感じでスマホで確認できる世界です。

ドアホンもすでにカメラ搭載が当たり前ですが、これも画像解析で宅配便やウーバーイーツの配達人など、認識してくれれば便利そうです。トイレであれば、排泄物の状態や量をカメラで解析し、健康状態がチェックできる便器も想像できます。

場合によっては家電側にカメラを搭載する必要すらないでしょう。カメラ付きスマートグラスが普及すれば、買ってきた食材を冷蔵庫に入れる時に認識して登録できるでしょう。Google フォトなどは、すでにアップした写真の人物やシーンを自動的に認識しています。スマートグラスを使えば、目の前にいる人物の名前を覚えていなくても教えてくれますし、感情の解析も可能になるでしょう。今、妻の機嫌は悪いから話しかけない方がいい、などと分かるようになる。これは向こうにしたら「そんなもんに頼らず、オマエの頭で気づけよ」って話でしょうが。

と、ここまでの原稿はオートメモに吹き込んだ音声を基に作成しました。その途中、「Google」という言葉にスマートスピーカーが反応し、長々と顔認証について解説を始めたのは誤算でした。原稿書き(話し)を邪魔され、「黙らんかGoogle!」と叫んでしまいました。すでに「このユーザーは怒りっぽい」「敵だ」と学習している途中かもしれません。「ターミネーター」の世界にならないことを祈るばかりです。

日立の冷蔵庫「まんなか冷凍 HXCCタイプ」は扉を開くとカメラで撮影、スマホで内部が確認できる
小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>