家電製品レビュー

録音から自動で文字起こしできる!「オートメモ」は夢のボイスレコーダー

AutoMemo(オートメモ)

ソースネクストからユニークなボイスレコーダー「AutoMemo(オートメモ)」が発売された。

この製品はWi-Fiに対応し、録音したデータを自動でクラウドへ送信してくれる。さらに録音データ(音声ファイル)を、テキスト化してくれるというもの。インタビュー取材の録音データから文字にする「書き起こし」や、会議の議事録をまとめないといけない人たちには、夢のボイスレコーダーのように思える。

ということで、さっそく使って、その実力を試してみた。

少し辛口の感想が続くので先に断っておくと、筆者はこのボイスレコーダーを気に入っている。おそらく今後も使い続けると思う。

メーカー名ソースネクスト
製品名AutoMemo(オートメモ)
実売価格19,800円前後
オートメモ
本体上部のマイク部分
本体下部には充電用のUSB Type-C端子と、マイク端子

録音はとても簡単

オートメモで録音するのは、これ以上ないほど簡単だ。電源ボタンを長押しして、電源がONになったら、「録音」ボタンを押すだけ。録音を完了したい場合は、再度「録音」ボタンを押す。これだけだ。

ただし……簡単なのだけど、オートメモの状態を表すのが、本体正面に大きく配置されている「録音」ボタンと、右側面の「Wi-Fiランプ」だけなので、最初はとまどってしまった。そこで、「録音」ボタンや「Wi-Fi」ランプが、どのように光ると、どういう状況なのかを、少し詳しく記しておく。

[1]本体の右側面の電源ボタンを長押しして、電源をONにする
[2]本体正面の大きな「録音」ボタンの外周を光がくるくると5〜6周回り始める
[3]「録音」ボタンの外周の光が消える
[4]大きなボタンを押すと、ボタンの中心部が「点灯」する。これが録音中を表す

[3]の、外周の光が消えた後に、本体はWi-Fiを検索しはじめる。もし設定したWi-Fi環境下にいると、ボタン外周の光が、本当にゆっくりと明滅。さらに本体側面の、電源ボタンの下に配置されている「Wi-Fiランプ」が「緑色」に光る。これがWi-Fiへ接続した合図だ。

もし登録したWi-Fi下にいない場合は、「Wi-Fiランプ」が「赤色」に光る。

またWi-Fi環境下にあって、「Wi-Fiランプ」が「緑色」に点灯した状態で、「録音」ボタンを押すと、「Wi-Fiランプ」が「赤色」に点灯する。

長々と書いたが、覚えておきたいのは……

「録音」ボタンの中心部が「点灯」したら「録音中」だということ。

これだけを覚えておけば、録音に失敗することはない……と、これは筆者自身に言い聞かせている。というのも、オートメモを使い始めたときに、録音中の状態を覚えていなかったため、「あれ? いまちゃんと録音されているのか?」と不安にかられたことがあったからだ。「中心部が点灯したら録音中」というのを覚えておけば、録音だけは失敗することがない。そして、本機は録音さえ失敗しなければ、良いものなのだ。

「録音」ボタンのスタンバイ状態
「録音」ボタンの中心部が「点灯」したら「録音中」

テキスト化の精度は?

録音した音声ファイルは、デフォルトでは、アップロードされると同時に自動で「テキスト化」されるよう設定されている。後述するが、この自動でテキスト化される設定は「オフ」にしておいた方が良い。

「自動テキスト化」をオフに設定しても、テキスト化するのは簡単だ。

音声ファイルのアップロードが完了すると、登録したスマートフォンに完了した旨を伝えるプッシュ通知が届く。その通知をタップすると「オートメモ」アプリが起動し、アップロードされた音声ファイルの再生画面が開く。テキスト化しなくても再生操作は可能だ。テキスト化したい場合は「音声をテキストに変換」をタップする。音声ファイルの長さにもよるが、目安としては1/3の時間でテキスト化されるようだ。例えば1分(60秒)の音声ファイルであれば、20秒ほどでテキスト化された。

プッシュ通知をタップすると、アプリが起動して再生画面へ
「音声をテキストに変換」をタップするとテキスト化される

さて、気になる精度について。

YouTubeの「文字起こし」機能を使ったことがあれば、あのくらいの精度と考えればよいだろう。録音環境が高ければ、かなり正確にテキスト化してくれる。

試しに家電 WatchのYouTube動画をパソコンのスピーカーで再生した。それをオートメモ本体で録音し、テキスト化してみた。

テキスト化を試みた動画はこちら。

オートメモでテキスト化したものは、改行などが行なわれていないので、読みづらい。そこで、テキストファイルをパソコンへ送り、改行だけを施した。それを、同じ動画をYouTubeの「文字起こし」機能でテキスト化したテキストファイルと比較してみる。

ちなみにこれがオートメモでテキスト化したものを、パソコンに送ったテキストファイル。改行などがされていないので、このままだと読みづらい
左側がオートメモ、右側がYouTubeの「文字起こし」機能の結果

どちらも……加湿器について話しているということを前提にすれば、なんとなく意味が通じる。

書き起こしや文字起こしは、ほかにも有料の専用サービスからスマートフォンの機能などを使えば行なえる。その精度は、実用性で言えば同じ程度という感じだろう。要は、録音環境に依存すると思う。

オートメモの優位性を考えると、まずは全てが自動で行なわれること。録音したものが自動でアップロードされ、自動でテキスト化される。この手軽さとテキスト化までの速さは、他にはないだろう。

録音データを無制限かつ無期限で、クラウドに保存しておいてくれる

冒頭で「ユニークなボイスレコーダー」と記したが、これにはいくつか理由がある。

まず、一般的なボイスレコーダーと異なり、録音はできるがオートメモ単体で再生することができない。 オートメモには再生機能がない のだ。

どうやって再生するかと言えば、同機を登録したWi-Fi環境下に持っていき、音声ファイルがクラウドへアップロードされるのを待つ。と言っても、環境が良いとは決して言えない筆者の自宅のWi-Fiでも、30分や1時間の音声ファイルをアップロードするのにかかる時間は、数分程度だ。

アップロードが完了されると、登録したスマートフォンに「音声ファイルアップロード完了のお知らせ」という、プッシュ通知が届く。

通知をタップすると、オートメモのアプリが起動し、該当する音声ファイルが聞ける状態になる。

あとは、再生ボタンなどを押せば、音声ファイルが再生される。

スマホに届いたプッシュ通知をタップすると、オートメモのアプリが開き、すぐに再生できる

同機がユニークな点は、音声ファイルのテキスト化サービスと連携している点だ。そのためアプリで、再生する音声ファイルを開くと、アプリ画面に大きく「音声をテキストに変換」というアイコンが表示される。同アイコンをタップすると、自動で認識された音声がテキスト化されて表示される。

画面に表示された「音声をテキストに変換」をタップすると、音声が自動でテキスト化されて表示される

オートメモで最も嬉しい点が、録音ファイルは無制限にクラウド(ソースネクストのサーバー)にアップロードできること。しかもこの記事を書いた2020年末時点では、クラウドに無期限で保存しておいてくれていた。

例えば、iPhoneなどのスマホに録音しておいた音声ファイルは、量にもよるがスマホのメモリーを確実に圧迫していく。また機種変更時に、録音したファイルを移行させるか悩んだ経験もあるだろう。だがオートメモであれば、無料でクラウドに保管しておいてくれるのだ……今のところは無制限かつ無期限で。

クラウドにアップロードされているので、例えばインタビューに同席した、または同じ会議に参加していたメンバーに、録音データを共有するのも簡単だ。アプリ画面の右上にある縦の「…(三点リーダ)」をタップし、現れた設定画面から「共有」を選択する。iPhoneの場合は、画面下から共有先の画面が現れる。あとは送りたい相手先やアプリをタップして「送信」するだけだ。

例えば自分のパソコンに送れば、パソコンでも簡単に音声再生が行なえる。

音声ファイルを気軽に共有できる

なにげない日常などを録音・保存しておくのにも適している

オートメモは、「自動で文字になるボイスレコーダー」とうたっているとおり、文字起こしやテキスト起こしに便利なボイスレコーダーだ。例えば、会議の議事録を作る必要がある場合や、筆者のように取材でインタビューした際の音声ファイルを、テキスト化するのに便利だ。

ただし、後述するように基本的には「テキスト化は有料」だと考えた方が良い。

筆者もだが、こうしたサブスクリプション形式で課金されることに、身の毛がよだつほどに抵抗がある吝嗇家は多いだろう。吝嗇といえば聞こえはいいが、基本はドケチということ。そんなドケチな人たちには、オートメモは不要か? といえば、そうではない。

注目すべきは、オートメモで録音したファイルは、 無料かつ無期限で保存しておいてくれる こと。

例えば6歳の息子は、NHK Eテレの「オトッペ」のように、身の回りの音をiPhoneに録音するのが好きだ(写真を撮るのも好きだが、ここでは関係ないので割愛する)。外出中には親のiPhoneを奪い取っては、カエルやセミなどの鳴き声を録音している。

また、保育園で習った歌を、家で歌い始めたりする。これをiPhoneで録音しておくのだが……やはり回数が多いとiPhone内のメモリーを圧迫してくる。

困るのが、iPhoneで撮った写真や動画は、GoogleやYahoo! などのサービスで、保存や保管ができるが、音声ファイルの保管をするのに最適なサービスが見つけられないこと。本来の目的とは違うが、オートメモで録音してクラウドにアップロードしておけば、今のところは無期限・無制限に保存しておいてくれる。

フォルダ分けなどができるようにしてくれるとなお良いと思う。

録音ファイルのフォルダ分けはできないが、アプリで録音ファイルの「タイトル編集」と「ファイル検索」機能を使うことで、ファイルを分けておける。例えば、仕事で取材した場合には「取材_●●●●●●」などとしておき、子供の歌っているのを録ったファイルには、子供の名前などを書き込んでおけばよいだろう。

ファイル名を変えておけば、あとから検索しやすくなる

テキスト化は無料ではない

録音したデータが無制限かつ無期限で保存できるのに対して、留意しておきたいのは、 テキスト化が完全無料ではない点

音声データのテキスト化は、2つのプランが用意されている。無料の「ベーシックプラン」と、有料の「プレミアムプラン」だ。

「ベーシックプラン」は、月に1時間までは無料で利用できる。だが、1時間を超える利用には、月額980円(税込)のプレミアムプランへの申込みが必要だ。同プランの場合は、一気に30時間まで、テキスト化してくれる。

さらに「プレミアムプラン」の30時間分のテキスト化を使い切ってしまった場合に備えて、「10時間チャージ」が用意されている。これは1回980円(税込)のチャージで、10時間のテキスト化が可能。また、10時間を使い切らなかった場合は、翌月以降に繰り越せる。

この課金の件はさておき、さらに留意しておきたいのは、 「必ずテキスト化される」わけではない こと。例えば、雑踏のなかでインタビューした音声ファイルなどは、テキスト化を試みても、テキスト化される可能性が低い。

録音環境は悪いが、それでも「頑張って音声を認識して、テキスト化してくれないかなぁ」なんて思って「音声をテキストに変換」を試みたとしよう。結局はテキスト化されなかったとしても……例えば音声ファイルが1時間だったとすれば、その月の無料枠はなくなってしまう。

音声のテキスト化を試みたものの、一言もテキスト化されないこともある

これは難しいことかもしれないが、例えば期待したようなテキスト化がされなかった場合には、テキスト化した時間にカウントしない措置があれば良いのに……と思ってしまうのが正直なところだ。

また、アプリのデフォルト設定では、音声ファイルをアップロードした時点で、「自動でテキスト化」されるようになっている。テキスト化が1時間までの、ベーシックプランで使い始めるときには、このアプリ設定をオフにしておき、テキスト化するかしないかを、毎回、ユーザーが選択できるようにしておくことをおすすめしたい。

「自動テキスト化」の解除は、「設定画面」から「端末設定」へ進むと行なえる。

設定画面を開き、「端末設定」をタップ
端末を選択したら「自動テキスト化」をオフにする(ボタンの青色が灰色に表示されるのを確認)
発売記念キャンペーンで6カ月間はプレミアムプランが無料

テキスト化できるかできないか、どれくらいの精度でテキスト化できるかなどは、使っていくうちにしか分からない。そのため購入直後ほど、むやみに「テキスト化」することが多いだろう。

そこで、発売キャンペーンとして用意されているのが、「プレミアムプラン 無料キャンペーン」。これは、プレミアムプランの申し込み開始から6カ月間は、月額980円が無料になる。ただし、2021年3月31日までにオートメモを購入し、プレミアムプランを申し込んだユーザーが対象だ。

音声ファイルを気軽に残せてテキスト化できるメモデバイス

最後にもう一つだけ、残念な点というか使っていると思わず何度かボヤいてしまったことを記しておきたい。

それはWi-Fi設定について。オートメモは、アプリで接続先を設定する。筆者ははじめに自宅のWi-Fiに接続するようセットした。だが、この接続先を追加するのが、それほど容易ではなかった。また、iPhoneのテザリングで行なえないかを検討したが、筆者の知識では設定できなかった……。

この接続設定を、もっと簡単にできれば、例えば取材後にすぐにアップロードして、すぐに仕事に取りかかれるのになぁと感じた。もっとスマートフォンとの親和性……接続性を高めてくれればよかったのに、と。そのあたりを、今後のアップデートに期待したい。

それでもオートメモは、手帳にメモ書きをするように音声を録音するのに最適なボイスレコーダーだ。音声ファイルはクラウドに、無制限かつ無期限に保存されるため、スマートフォンの録音機能のように、メモリー容量をほとんど気にする必要がない。

その意味で、もしテキスト化が目的ではなくても、価格に見合うと考えるユーザーは少なくないように思う。

河原塚 英信