藤原千秋の使ってわかった! 便利家事アイテム
カインズのトイレワイパーと溶けやすいクリーナーは地味にすごい!
2023年1月31日 07:05
漢字をジーッと眺めているとゲシュタルト崩壊していくように、長年数多の家事グッズを眺めていると、ふと「だから何なんだ」という気持ちになることがある。
家事グッズの多くは劇的な差異をもつわけでもなく、いわば「似てるけどちょっとずつ違う」ところにのみ存在意義を発揮している。
だから、拡大したそんな差異の説明など一顧だにせず「どれでも一緒だろう」という雑な選び方をしたところで、特筆すべきリスクもない代わりに感心することもない。そしていずれ忘れる。多くのものは消耗品だし、そのなかの一部は使い捨てだ。
いつまで「便利なモノ」を追い続けるつもりか。キリがない。甘えるな。昔ながらのさらしを使え、たわしを使え。ほうきと、灰汁と少しの石けんでいいじゃないか。機械に頼るな、身体を使え。
という裡なる声は、この仕事をしながら、20余年、わりといつでも聞こえている。
「そのほうが環境にも負荷をかけませんよね」「余計な資源も浪費しませんよね」正しいです。仰る通りです。
「今どきの者は二言目には“ラク”だとか“ゆる”だとか……」裡なる声は概念上の鬼姑の外見を得て両目を釣り上げる。頭を垂れる筆者はヌクヌクと温められた便座に鎮座しながらカインズの「伸縮トイレ床ワイパー」で塩ビの床をホイホイと拭く。拭き終わったシートを小用と一緒に水洗する。はい、ラクですみません、ゆるくてすみません。
百数十年の歴史を持つ歌劇を見始めたころは、独特な舞台メイクを施した演者の顔を見分けることはできなかった。「どの人も同じ顔」に見えたからだが、ファン歴が長くなり目の解像度が上がってくるとまるで違う顔なので見間違えるはずがないのだった。
同じように、この、トイレ床とかをシートでちょいちょいと拭くみたいな道具なんてどこにでもあるじゃないの、どれも同じじゃないのというと全くそうではない。違う。
このヘッドが、この軸の部分が、繰り回しの自在度が、シートのにおいと強度と水溶けの速さが全く違う。
タイル張りに陶器の便器、換気扇もない汲み取りの便所と、窓もない換気扇のうなる塩ビの壁と床に囲まれたプラスチック便座のトイレは同じトイレでも似て非なる空間だ。そこで用を足す人間も、進化しているのか劣化しているのか、祖母曽祖母の体高より10cmも20cmも大きい。
掃除にあたっての身体の使い方だって昔のようにはいかない。さらしの雑巾を屈んで腕を伸ばして便器の後ろ側の床に持っていく……。「ピキーン……」アッ……。
す、筋が……。
※半日寝込む
なんてことは、でも、非常に、バカみたいではないかと思うんです。お姑さま(概念)。
筆者はいろいろ使い比べているので、この「カインズの伸縮トイレ床ワイパーと水に溶けやすいトイレクリーナー」のセットが「超すごい」ことを体感しているのだけど、初手でこれを手に取った人にとっては「まあこんなもんか」と思われてしまうのが、少しくちおしい。
身体にも負荷をかけませんよね。余計な気力も浪費しませんよね。
それでいいんじゃないかと思うんです。