藤原千秋の使ってわかった! 便利家事アイテム

昔ながらのカネヨのクレンザーでフライパンの焦げ落とし

家事アイテムオタクなライター藤原千秋が、暮らしの不具合等々への現実的対処法とともに、忌憚ないアイテム使用感をご紹介していく連載記事です
カネヨのクレンザー

先日、ある原稿のチェックをしているとき、不思議な文言を目にした。

「粉のクリームクレンザー」。

読んでいて、書き手の人は「クレンザー」を実際に使ったことがないのかもしれない、と思った。家事に関する記事を見ていると、残念ながらわりと想像上の内容が書かれていることがある。読む人が読めば、まあ分かるのだけど。

と、家でぶつぶつぼやいていると、家人が「そういうけど、そもそもクレンザーって、自分も使ったことがない。なんのためにあるのか、いつどのように使うものなのかもわからない」のだと言う。

「ウソでしょ」

驚いたが、家にあっても使い方のわからない洗剤? 道具? は、まるっとスルーされるものだと知った。同じ家に暮らしていてもわからないものだ。ビックリした。

そう、カネヨ石鹸のクレンザーは、ずっと家にある。いつからかは定かでない。何十年単位のことだからだ。

筆者はよく、世の主婦(主夫)の家事というものは、その親の世代の模倣であることが多い、とか指摘してみせるのだけど、クレンザーが家にあるのはその筆者自身の模倣活動に他ならない。見事なブーメランである。

クレンザーというものは、使い出したら、なくてはならなくなる道具だ。キッチンの焦げには、絶対に欠かせない。鍋底、フライパン底、コンロの五徳、金属や陶器の食器のこびりつき汚れを手っ取り早く落とすのに普通の食器用中性洗剤ではまどろっこしいときに、手早く確実に汚れを落とすことができる。

カネヨの赤丸筒クレンザー。主な成分は研磨材93%、界面活性剤4%。意外にも液性は弱アルカリ性だ。キッチン周りの油ぎった焦げ汚れ落としに特化した洗剤といえる。そして長年、クレンザーは「キッチン専用」であると私自身も思い違いをしていた。

液性は弱アルカリ性

用途を改めて熟読してみると、浴室や洗面所の陶器タイルや陶器ボウルの汚れ落としにも向いているとある。知らなかった。思い返せば、小中時代の手洗い場やトイレ掃除で与えられていたのは謎の一斗缶に入っていたクレンザーの粉であった。

カネヨのクレンザーは、発売開始から90年。歴史が長すぎてすごい。食器用中性洗剤が隆盛を誇りだしたころクレンザーの液体化(クリーム化)が起こったのだが、それすらも50年ほど前のことである。なるほど、いわゆる「クリームクレンザー」しか知らない人がいても、不思議ではないのだ。

そしてその液体化に伴いクレンザーの食器用洗剤化が進んだ。筆者が長年、クレンザーをキッチン専用だと思い込んでいたのも、やんぬるかなというわけだ。

そんなクレンザーの研磨剤の主成分は、「白土」という自然物であり、赤筒のパッケージは紙製で、実はものすごく今っぽくエコでサステナブルな生活雑貨だ。

「とりあえず、うちだとフッ素加工のフライパン以外なら使えるから、ちょっと試してみてよ」

使い出したら、絶対なくてはならない道具になるから。90年も市場に在り続けるのだから。

藤原 千秋

主に住宅、家事、育児など住まい周りの記事を専門に執筆するライターとして21年目。リアルな暮らしに根ざした、地に足のついたスタンスで活動。現在は商品開発アドバイザリー等にも携わる。大手住宅メーカー営業職出身、大1、中3、小5の三女の母。『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)、『ズボラ主婦・フニワラさんの家事力アップでゆるゆるハッピー‼』(オレンジページ)など著監修書、マスコミ出演多数。