藤山哲人の実践! 家電ラボ
OHラジカルって何? 本当に脱臭できるの? パナソニックの「ナノイー」に迫る!
OHラジカルって何? 本当に脱臭できるの? パナソニックの「ナノイー」に迫る!
2018年10月19日 06:00
メーカーのみなさんには大変失礼な話だが、オゾンやらナノイーやら、イオンを放出して除菌や消臭をするという機能は、イマイチ効果が分かりづらい。もっと直球で言っちゃうと、マユツバ(笑)なのかと思ってしまう。ユーザーの中には、そう思っている人もいるのではないだろうか。
これまで、これらイオンを使った除菌や消臭については、メーカーさんにインタビューしたり、自分で色々実験して効果の真偽を調べてきた。その結果、菌を退治する効果は、はっきりと証明できた。
だが、問題はニオイ。人間の鼻は、玄関を開けた瞬間「自宅と他人の家との微妙なニオイの違いを嗅ぎ分けられる」のに、3分もするとニオイに慣れてしまって、鼻が馬鹿になってしまう。人間の鼻と同等レベルの"万能なニオイセンサー"がないために、消臭実験の結果を数値化できず、レビューしようと思っても「ニオイが少なくなった感じ」ぐらいにしか書けない。
パナソニックが作る靴や服の脱臭器の秘密に迫る!
そんな中「空気をキレイにする」ことに注力しているパナソニックが、これまでのナノイーをさらに強力にした「ナノイーX」を搭載した機器を次々に発売。
空気清浄機に始まり、エアコンや冷蔵庫、果ては靴や衣類の脱臭器まで絶賛発売中! そう、ボクらレビュアー泣かせの、脱臭機能を前面に打ち立てた製品を相次いで販売してきた。
ここまでくると、ナノイーとナノイーXの違いなんて鼻で嗅ぎ分けることもできない上、効果の強さの数値化も難しい。なので今回は、2001年からナノイー発生器(デバイス)の開発を一筋に行なっているパナソニック彦根工場にお邪魔して、怒られるんじゃないか? というぐらい失礼な質問(下記のような項目)を投げつつ、僕らの疑問に答えてもらった。
・そもそもOHラジカルって何なのか?
・本当に効いているのか? (発表会では禁句だ!)
・花粉も抑制できるって本当なのか? (ヤバイ、やばい!)
・ナノイーXの何がそんなにすごいのさ? (ケンカ売ってる?)
またナノイーから、ナノイーXへの進化の過程では、技術的に大きなブレイクスルーがあったとも聞く。他社のイオン系の進化スピードが鈍った中、大きな進化を遂げたナノイーXの技術にも迫ってみた。
よく聞く「OHラジカル」って、そもそも何?
これまでナノイーを始めとしたイオン系の除菌・消臭機能は、あくまで製品の付加価値で、カタログでも大きく丁寧に説明されることもなかった。どのメーカーも、O(酸素)とH(水素)がくっついたOHラジカルという分子が働いて、菌をやっつけたり、ニオイを分解したりする図が掲載されている程度(オゾンの場合は3つのO)。
どうやら「OHラジカル」というのは、非常に乱暴者(心が不安定)で、スキがあれば他の人が持っているHを横取りして、Hに0が2つという分子になりたがる。そうH2O、つまり水だ。
一方、Hを1個取られてしまった分子は、別の分子に変化する。たとえば鉄のクギをしばらく放置しておくと、表面がボロボロに錆びて鉄とは違う物質になってしまうのと同じだ。これは「酸化」という現象で、鉄が鉄でなくなってしまったというわけ。
さて、科学の不思議なところだが、ある物質に酸素がくっつくから「酸化」というのは納得できるが、OHラジカルのように、ある物質からHを奪ってしまうことも化学の世界では「酸化」というらしい。これ以上、突き詰めると泥沼にはまりそうなので、「OHラジカルもニオイや菌を"酸化"させることで、菌を抑制したり消臭したりしている」と考えて問題ないらしい。
そしてもう1つの特徴がある。OHラジカルさんはスキあらば他の物質が持つHをひったくろうとするので、OHラジカル発生器で生成され、空気中に放出されると、空気と一緒に漂う色々な物質から手当たり次第にHをひったくり、極短時間しかOHラジカルとして生きられない。
実はOHラジカルさん、強い酸化能力を持っているものの、虚弱体質で数ミリ秒しか生きられないという短命なキャラなのだ。
【ここでのポイント】
・OHラジカルは他の分子のHをひったくり相手を酸化する
・OHラジカルは非常に短命で、生きていられるのは数ミリ秒間
・「酸化」という現象が、除菌や脱臭をする基本原理
酸素が他の分子にくっ付いて酸化させるオゾンとどう違う?
消毒やニオイ消しとして古くからあるのが「オゾン」という気体を使ったもの。オゾンは、O2(酸素)にもう1個のOがくっついたもので、化学式で書くと「O3」。
Oが2つのO2は、カップルのように結びつきが強いのだが、余分にくっついてしまったOは、どちらかの親友がたまたまデートについて来ちゃったみたい(僕らの世代は「コブ付きデート」で通じたんだけど、今は何て言うの?)に、すごく居心地が悪い。
コブのOは、スキを見てO2から離れたいのだ。だからO3が空気中に放出されると、シングルのOがスキあらば周りにある分子にくっつき酸化する。こうして2人で安定したO2と、Oにくっつかれた「酸化○○」という分子になるのだ。だからO3も非常に短命。
OHラジカルに非常によく似ているが、相手の分子を酸化させ、除菌や消臭を行なうところは一緒。また短命という点でも一緒。違いは相手の分子を酸化させる力が「OHラジカル」より少し弱く、相手を酸化させたあとに残るのは、OHラジカルが「水(H2O)」で、オゾン(O3)が「酸素(O2)」という違いだ。
オゾン自体はそれほど危険なガスではない。スーパーに並ぶ野菜は大半がオゾンを水に溶かしたオゾン水で洗浄されているし、トイレ自身が自分を洗う高機能トイレにもオゾン水が使われている。昔は「塩素」を含んだ薄い漂白剤で洗うのが主流だったが、塩素は残留するため、現在は野菜に限らず肉や魚、食品加工工場などでもオゾンに切り替えてきている。
また、病院やホテルの清掃などにもオゾン(気体)が使われているほど一般的。ただし、狭い空間に長時間オゾンを放出する(高濃度になる)と、人に害を及ぼす場合がある。とはいえ、一般家庭用として販売されているオゾン発生器は、非常に低濃度なので、危険性を心配することはない。あくまで高濃度オゾンを発生させる業務用機での注意だ。
【ここでのポイント】
・オゾン(O3)も酸化作用はあるが、OHラジカルに比べると酸化力が弱い
・OHラジカルは非常に短命
・高濃度のオゾンは人に害を及ぼすが、家庭用の発生器は低濃度で安心
ナノイーはOHラジカルを水のカプセルに閉じ込め、寿命を10分に延長
パナソニックのナノイーが、他社のイオン系の除菌や消臭効果と決定的に違うのは、OHラジカルの寿命だ。OHラジカルそのものを空気中に放出した場合の寿命は、およそ数ミリ秒程度とされている。
しかしパナソニックのナノイーは、(酸化できる力を持った)OHラジカルを最大で10分間も空気中に浮遊させられるそうだ。その秘密は、「OHラジカルを水のカプセルに閉じ込めて」飛ばしているからだという。
その水滴の大きさは、直径約5~20nm。霧吹きでシューッとやると、水滴が白く見えるほど大きいが、沸騰したやかんから出る水蒸気は目に見えないほど小さい。ほとんど目に見えない花粉をゴルフボールぐらいの大きさとすると、ナノイーの水のカプセルの大きさは、小さなビーズほどしかない。
と、ここでツッコミを入れる方も大勢いるはず。「水は"H2O"なので、OHラジカルはHを取り込んで機能しなくなっちゃうじゃん!」というものだ。その点をエンジニアに聞いてみると、FAQでもあるかのように即答。
「OHラジカルは水に溶け込むと過酸化水素に変わります。過酸化水素は、一部OHラジカルに戻るので、時間が経っても反応性を維持できます」
OHラジカルとして、十把一絡げにされてしまうパナソニックのナノイーだが、実はOHラジカルの効き具合が他社とは桁が違うほど強力なのだという。
つまりOHラジカル単体を直接空気中に放出している場合は、発生器の近くでは効果を発揮するものの、発生器から遠くにある場合、衣類やじゅうたんなどに染み込んだニオイや菌には、ほとんど無力というわけ。
その点ナノイーは、空中に浮遊できる時間が長い上に、水のカプセルにOHラジカルが入っているので、機器から遠い場所やカーテン、じゅうたんなどにも有効。それはなぜか? カーテンやじゅうたんなどに水のカプセルが付着すると、水カプセルが割れてOHラジカルが一斉に染み出すから(クラスター爆弾や散弾銃、カプセル状の薬のようなイメージ)。なので、衣類の中などに染み込んだニオイも消臭できるというわけ。
パナソニックが、衣類の脱臭ハンガーや靴の脱臭器を売り出している(売り出せる)のには、そういう裏話が隠されているというわけだ。
【ここでのポイント】
・パナソニックのナノイーは、OHラジカルを水のカプセルに閉じ込めている
・OHラジカル単体で放出するより10万倍寿命が長くなる
・極小の水カプセルは繊維の奥まで入り込むので、染み込んだニオイを根本から消臭できる
ナノイーの水カプセルの水はどこから?
ほとんどカタログやWebでも語られておらず、筆者も初耳だったのは、ナノイーを発生させるデバイス(素子)には、ペルチェ素子が使われているという点だ。化学番組が好きな方は、これだけで見出しの答えを導き出せるかも!?
ペルチェ素子というのは、電気と熱エネルギーを変換する素子。簡単に言うと、ベルチェ素子に電気を流せば、片面がドライアイスのように冷たく、もう片面がチンチンに熱くなる。逆に片面をキンキンに冷やして、反対面を火であぶると電気が起きるという、とても面白い電子部品だ。
OHラジカルの発生は各社どこも同じで、針状の電極に高電圧をかけて、小さな雷を発生させている。パナソニックの場合は、この針をペルチェ素子で冷やして結露(冷たいコップに水滴がつく原理)させ、水のカプセル用に使っているのだ。
今では2cm角ほどの小さなデバイスだが、時を遡ると面白い。最新のデバイスは、熱を出すペルチェ素子の反対側を、金属のステーに逃がして放熱している。しかし10年遡ると、ペルチェ素子は大きく、熱を逃がすためにパソコンや家電によく使われる放熱器(ヒートシンク)が入っている。
しかも遡るごとに放熱器が大きくなっているのが面白い。さらに時代を遡り、初代ナノイー発生装置になると、放熱器がなくなり、コップのようなものが! これは空気清浄機用のナノイーデバイスだが、ヒートシンクはなく、その代わりに直接コップに水を入れておくというものだ。技術の進化を感じる。
福井県鯖江のめがね職人でOHラジカルを10倍に!
ナノイーデバイスが開発されたのは2003年(ペルチェ式)。さらなる脱臭効果・除菌力、そして即効性を向上させたナノイーXが2016年に登場する。従来のナノイーはOHラジカルの発生量が4,800億個/秒だったが、ナノイーXはコレを10倍に増加。OHラジカルの発生量を4兆8,000億個/秒にし、酸化力をさらに高めたのだ。
現在発売されている機器のほとんどはナノイーXに置き換わり、除菌・脱臭効果が高くなっている。
しかしナノイーからナノイーXへの機能強化には、困難なブレイクスルーがあったという。ナノイーデバイスの中では、たとえ小さいとはいえ高電圧の雷を発生させている。並大抵の金属では放電が繰り返されるうちに、針状の先がどんどん劣化してしまう。そこで各社「チタン」という金属を使っている。チタンは、軽くて錆びづらく、非常に硬いので、めがねのフレームとしてもよく使われている金属だ。
しかし、難点は硬すぎて加工しづらいこと。とくにナノイーデバイスの中に入っている針は、長さ5mm、太さ1mmほどのものだ。硬い上に小さいため、加工中の部品を固定するだけでも大変。
またナノイーXでは、それまで幅を持って放電していたエネルギーを、4箇所の針状の部分に集中させ、より多くのOHラジカルを生成する。そのため針先や取り付け位置などに精度が要求され、針の製造の難しさに加えユニットとしての製造も非常に難しい。
そこでパナソニックは、チタン製のめがねの極小部品を作ることに関しては日本一の技術を持つ、福井県鯖江市のめがね工場に協力を依頼し、特殊なナノイーX用の針の部品供給を受けている。
数年前は、数多くのメーカーが「イオン! イオン!」と謳っていたが、今ではその声を潜めてしまっている。唯一大きな声を上げているのはパナソニックで、10倍のOHラジカルを発生できるようになり、水のカプセルで長時間浮遊し、衣類などに染み込んでいるニオイや菌も撃退できる。これらは福井県鯖江市のめがね職人の協力と、製造技術のブレイクスルーがあってからこそなのだ。
ナノイーXのカビの抑制や脱臭効果
世の中には色々なカビがあり、数えたら限りない。ナノイーはどれほどのカビを撃退できるのかを聞いてみた。
「カビの種類は多すぎて全部に関してテストすることはできません。しかもナノイーデバイス単体でテストするというわけではなく、エアコンや空気清浄機に組み込んだ状態で、機器ごとにテストしなければならないのです。それゆえ"どのカビ"に対して有効かは、機器ごとのカタログを参照していただくほかありません。たた、カビの種類は特定できないのですが、カビをジャンル分けしてマッピングすることはできます。そのマップ上のカビのジャンルに対し実験をした結果は、ほとんどのカビに対して有効であるという結果が出ました」
ナノイーの水カプセルは、カビに付着するとカプセルが割れ、中に入っている大量のOHラジカルを放出。するとカビ菌が持っているHをOHラジカルが奪い取り菌を酸化。多数のOHラジカルが同様にしてカビを攻撃するので、結果としてカビの生育を抑制する、というのがナノイーXの戦法だ。
また一度発生させてしまったカビの生育を抑制させることも可能。ただカビキラーのように目地にまで染み込んでいかず、カビの漂白作用はない。表面に生えたカビの生育は抑制するが、目地の中までは取れない。
ニオイに対してもカビと同様。ニオイの分子は複雑な分子になっていることが多く、OHラジカルがニオイの分子構造を破壊してニオイを発する分子構造を変えてしまう。そのため消臭できるというわけだ。
当日、消臭効果の実験を見せていただいたのは、布に染み込ませたカレーの匂いの消臭だ。まずはナノイーを当てる前の布のニオイをチェック! ん~! うまそうなカレーの匂い。
しかし数分間ナノイーに当てておくと、カレーの匂いがまったくしなくなる。
また展示会などでよく見かけるのは、ゴミ箱程度のケースにナノイー発生器とカレーのルーを1欠片入れた実験だ。ナノイーなしは、帰りに立ち食い蕎麦屋で絶対にミニカレーを食べたくなるような、かぐわしきカレーの匂いがする。しかしナノイーをONにしていると、カレールーがソコにあるのに、カレーの匂いがしないという、奇妙な事態になる。これならミニカレーのセットにせず、盛り蕎麦だけで済みそうだ。
このようにナノイーは、空気中のニオイだけでなく、ソファやカーテン、壁紙などについてしまったニオイまで脱臭できるので、一般的なOHラジカルでは脱臭できない焼肉やタバコの臭いに対しても、強力な脱臭力を持つのだ。
花粉も分子構造から破壊するナノイーの威力
各社が取り組むイオン発生装置。しかしメーカーによっては花粉を撃退できないのをご存知だろうか? もちろん、パナソニックのナノイーXは撃退可能。なぜなら水のカプセルの中に大量のOHラジカルを閉じ込めているので、花粉にカプセルが当たり破裂するとOHラジカルの酸化の猛攻撃が始まるからだ。
花粉は、カビやニオイの分子などに比べると30μmと大きい。目には見えないが、ガラスの曇りや床を触ってザラツキ感が分かるときもあるほどだ。そのためOHラジカル単体で放出しても、分子構造がなかなか壊れないのだ。
例えるなら運動会の玉入れを1人でやっているようなものだ。カゴが花粉だとすると、ぽつぽつと何個かのOHラジカルの玉入るだけ。しかしナノイーの場合は水のカプセルが破れ、クラス全員のOHラジカルで一斉に玉を入れるので、酸化力が強く、大きな花粉も撃退できるというわけだ。
また、1年中日本全国のどこかで飛散する花粉をほとんど無力化する。筆者もスギはまったく大丈夫なのだが、稲とブタクサがダメ。
花粉や菌を撃退する実験も実演してもらった。写真で注目するのは、板に描かれた模様。おそらくバイバ~イ菌♪をイメージしたものだ(笑)。
この絵は、菌が生きている(分子の構造が変わらない)と、ブラックライトに反応して光り、分子の結合が壊れるとブラックライトに反応しなくなるというもの。まるっきり菌ではないものの、それに近い物質と思っていただいていいだろう。
右はそのまま放置したもの。絵の輪郭ははっきり残っているのが分かる。そして隣の時計は47秒を指しているのも分かるだろう。一方左側は、上部にナノイー発生器を置いたもの。たった40秒だが、発生器に近い絵の上部はほとんど消えており、全体的に輪郭が細くぼんやりとしているのが分かるだろう。
即効性では活性炭、経済性ではナノイーX
そして、おそらくニオイに一番困っている人は、ペットのご主人様たちだろう。ウチにも犬(マルチーズ)の定吉くんと、猫(メインクーン)のドミーちゃんがいて、ニオイにはいつも悩まされる。
スーパーなどでも購入できるニオイ消しスプレーは、別のニオイで、元のニオイをマスキング(覆い隠す)するタイプと、科学的にニオイを分解する成分を噴霧するものがある。またペットのご主人だと、別の化学系の消臭剤を噴霧している方も多いだろう。
これらの製品を否定する気はないが「本当に安全なのか?」というと疑問が残るところ。化学薬品を噴霧するので、乾燥した後は何かか残るはず。「人間には害は一切ありません」とされているものの、体の小さいワンちゃんやニャンコなどのペットには安全? もっと小さな小鳥やハムスターは?
オゾンも人間には低濃度で影響なくても、体の小さな動物たちにはどうだろう?という疑問が残る。
しかしナノイーならOHラジカルなので、残留物は水だけ。危険なものが一切残らない。もちろんペットやもっと小さな小動物にも影響ない。
また残留物が残らない消臭と言えば活性炭だ。空気清浄機に内蔵されているものも多い。安全性はナノイーと同じでまったく問題ない。
ナノイーに勝っている点は、消臭のスピードだ。活性炭の消臭は、科学変化によるものではなく、活性炭の極々微細な穴にニオイ分子を吸着するからだ。だから消臭のスピードが速い。デメリットは、活性炭はニオイの元は断てないので、壁や床に付着したニオイに対しては効果を発揮しないこと。ナノイーはそういった付着臭の除去を得意としており、活性炭と併用することですべてのニオイ問題を解決できるという。
ナノイードライヤーが髪を美しくする秘密
ナノイーの効果の中でひときわ異質ながら、女性から多く支持されているのは、ナノイードライヤーを使うと、髪の毛のクシの通りや、指どおりがよくなるという点。その口コミが大きく広がり、アマゾンではベストセラーに入り、多くの量販店でも上位にランクインしているほど。
その秘密は、ドライヤー専用にチューニングされたナノイーデバイスの効果だという。そう、エアコンや空気清浄機、冷蔵庫などに使われているナノイーデバイスと、ドライヤーのナノイーは別物なのだ。しかもドライヤーごとにチューニングをしているという。
髪がきれいになるしくみはこうだ。痛んだ髪というのは、髪の毛の表面を守るキューティクルが開いた状態になり、髪の水分が奪われてパサつくという。その結果痛んだ髪は、アルカリ~中性になってしまう。
そんな髪にナノイーを発生するドライヤーを使うと、ナノイーの特徴の1つである弱酸性により、髪の毛の中まで弱酸性の水が浸透し髪全体が弱酸性になるため、キューティクルが引き締まり、クシや指どおりのよい、艶のあるしなやかな髪になるというのだ。言うならば「弱酸性」を謳ったシャンプーで髪を洗うのと同じ効果が得られるということ。
ただエンジニアが言うには2つのポイントを守ると、さらに効果てきめんだという。
1) 髪はよく拭いてからドライヤーする
2) 頭のトップ(髪の毛の生え際)から髪の先へナノイードライヤーの風を当てる
1)は、ここまで読んでいただいた方は、もうお察しの通り。水でびっしょり濡れた髪だと、ナノイーの効きが悪い。ナノイーの水のカプセルが破裂したのに、濡れた髪が邪魔をしてナノイーとして機能できないのだ。だからよくタオルで拭いてから、ナノイードライヤーの風を当てると、効果的に効くということだ。
2)のキューティクルは、魚の鱗のように1つの方向性を持っている。ナノイードライヤーの風を、髪の毛の根元から毛先に向かって当てると、キューティクルをよりしっかり髪になじませられるという。
ナノイーの美肌効果も、やはり肌を弱酸性に保つことにあり、さらにナノイーの水のカプセルが水分補給となるため、1カ月ほどエアコンを使っていると肌に変化が現れるという。これは肌の角質が変わるタイミングで、古い角質が落ちるとナノイーでケアされた角質層が現れてくるからだという。
鉄道や公共機関などにも採用されるナノイーは対応製品が楽しみ
普通のインタビューは1時間ほどで終わるものだが、今回はパナソニックのエンジニアのみなさんも、筆者もノリノリで2時間以上もブッ通しで話し続けるというロングインタビューだった。
いつもは製品の付加価値としてのナノイーだが、今回ナノイーにフィーチャーして取材したので、今まで聞いたことのない話なども多々あり、あっという間の取材だったことも付け加えておこう。それを記事にまとめて、こんなに長くなってしまったのに、最後まで読んでいただいた読者のみなさんにも、ありがとうございました! と言いたい。
OHラジカルの秘めたる効果はまだまだありそうなので、今後の応用製品が楽しみだ。また今回は筆者独自の実験はできなかったが、次回はぜひ実験メインの記事をお届けする機会を設けたい。