藤山哲人の実践! 家電ラボ

新型スティック掃除機がキャニスターを超える!? パナソニックが地元最強モーターメーカーとタッグ!

新型スティック掃除機がキャニスターを超える!? パナソニックが地元最強モーターメーカーとタッグ!

 先日発表されたパナソニックのコードレススティッククリーナー「パワーコードレス」。機能の詳細は既報のとおりだが、ここでは内部の技術や部品にフィーチャー! そして「なぜパナソニックのスティック掃除機が凄いのか?」を紐解いていきたい。

コードレススティッククリーナー「パワーコードレス」
掃除機のコアとなるモーター、バッテリー、センサーも部品単位で解説。部品の素晴らしさが分かれば、必然的に性能も見える!
構造体や試験・製造工程。そして最新の真空射出成型まで! ってなんか、業界紙みたいになっちゃうなぁ

トレンドにアンチテーゼを唱えるパナソニックの理由に驚愕!

 ここ10年近く続いてきたサイクロン掃除機ブーム。それまでの掃除機は「吸引仕事率」という吸引力がどれだけあるか? というのが、掃除機の性能そのものだった。吸引仕事率が400Wの掃除機が出れば、それを上回る450Wの製品、500Wの強力掃除機でメーカーは競い合っていたのだ。

長年の歴史の中で、掃除機に求められるものが刻々と変化してきた

 しかしサイクロン掃除機が出る直前あたりから、パワーヘッドなるものが登場する。今ではおなじみの床を掃除するヘッドにブラシを装着した掃除機だ。時は過ぎ掃除機がサイクロン一色になる2000年を過ぎると、吸引仕事率競争が終焉を迎える。

 なぜならブラシの進歩により、掃除機の性能は吸引力だけで測れないということが世間に認知されてきたからだ。各メーカーは、軒並み大型モーターを小型化して軽さをアピール、そして先端のブラシのしくみや構造を追及し始める掃除機の乱が始まった。

 流行のスティック掃除機もまたしかり。各社はブラシの性能と利便性、そして軽さで凌を削っている。モーターの一部を樹脂化して、うるさいけれども軽いメーカーもあれば、モーターを小さくして吸引力を落としても軽くするメーカーもある。

パワーコードレスに備えられた「親子&ガバとりノズル」で吸引。とネーミングセンスはアレだが、性能は素晴らしい回転ブラシヘッドだ

 今回パナソニックが発表したパワーコードレスは、そんなスティック掃除機の数々にアンチテーゼを唱えた。「ゴミがしっかり取れなくて何が掃除機か!?」と(※かなり筆者の演出バイアスがかかっています!)。

 今コードレススティック掃除機を求める人は、なんと82%がメインの掃除機として使い、キャニスターからの買い替え需要が多いというのだ。

 つまり市場は、軽いに越したことはないけれど、キャニスターなみにパワフルで長時間使えるコードレススティック掃除機を求めているというわけ。

 「いやいや、そんな矛盾する要求に応えられるワケないっしょ!」というのが、ボクをはじめとした一般のエンジニア(笑)。しかしパナソニックは、この問題をブレイクスルーしたのだ!

コードレススティック掃除機購入者の調査。メーカー各社では、スティックをメインで使う人が大半を占めるという(出典:パナソニックの資料より)
昨今のコードレススティックには、吸引力が求められている

強力な吸引力を生み出すモーターは日本電産製!

 掃除機の心臓部となるモーターは、最も重要な部品となるため自社製品を使うのが当たり前。自前のモーターを持っていない会社は、他社から供給を受ける。もちろんパナソニックは古くから自社製モーターを作っている。興味のある人は、1953年の当時、松下電器産業の科学映画を見てみると面白いだろう。

昔はどのメーカーも「モーター」じゃなくて「モートル」って言ってたらしい

 パナソニックのモーターは性能も折り紙つきで、初期のダイソンはパナソニック製を組み込んでいたほどだ。

 しかしパワーコードレスに利用したモーターは、日本電産製。通称「Nidec(ニデック)」。あまり耳にしたことがない会社だが、モーター業界では知らない人はいない超有名で優良な会社。なにせ「ブラシレスDCモーター」という、昨今で一番トレンディなモーターの世界シェア50%を牛耳る会社なのだ。

新幹線で京都から大阪に向かう途中、桂川を過ぎて3列シートのA席に乗っていると見える日本電産。ちなみに鉄道ファン向けに言うと、旧向日町運転所があるトコ

 言うなれば村田製作所やローム、堀場製作所というような会社に並ぶ、京都発の一流企業なのだ。筆者が思うに、あと数年もすればオムロンや京セラ、任天堂やワコールのように、誰もが知るところになるだろう。

 そう。パワーコードレスはパナソニック製のモーターではなく、Nidecに委託・共同開発することで、床置きのキャニスター型なみの吸引力を生み出しているのだ。

基板にもNidecの文字が! プラシレスDCモーターは、モーターと制御回路とソフトウェアで性能が決まるから難しい
従来型モーター(左)に比べると、ハイパワーモーターは直径も奥行きも大きくなっているが分かる
モーターが大きくなったのでファン自体も大型化でき、風量を稼げるようになった

 従来スティック型に内蔵していたモーターに比べると、直径と奥行きが1.2倍ほど大型化。回転数は毎分7万5000回転と、最新のスティック掃除機用モーターに比べるとやや遅いが、ファンが非常に大きいため、最大20,000Pa(パスカル)の吸い込み力(真空度)を持つ。

 とはいえ、筆者にもその感覚がサッパリだったが、実験を見れば一目瞭然。7kgのペットボトルをラクラク持ち上げるほどの力だ。

ペットボトルに7kg分のパチンコ玉を入れて吸い上げる実験。床置き式のキャニスターよりも早く吸い上げてしまうほどパワフル

 さらにファンが大きいため、最大で毎分1.3m3の空気を吸い込める。大きな引越し用ダンボールがだいたい12個分ぐらいという感じだ。これもイマイチ感覚的に掴みづらいので、風船に入れた空気を吸ってみると、30秒間でこのぐらいの違いが出る。

風船の空気をどちらが先に抜くことができるか、一般的な掃除機と比較。パワーコードレスの方が倍の風量があるという印象だ
シャフトに直結されてている磁石はこれまで1層構造だった(それが普通なんだが……)。こうすると磁石の表面が熱を持ってしまう(IHヒーターと同じ原理)。つまりエネルギーのロスが発生。そこで磁石を3層化したことで、熱の発生を抑えエネルギーを効率よく回転力に変えられるようになったというころだ。つき詰めてるなー!
外側の鉄板部分も、従来品より板を薄くして枚数を多くしたことでパフォーマンスのアップにつながっているという。この中に入っているのが、さっき説明した3層磁石とシャフト

長時間ハイパワー駆動させる大容量バッテリー

 モーターを駆動するための電池も重要だ。だがこちらは革新的な電池を使うというわけではなく、電池の温度管理とつなぎ方を変えているという。

 みなさんも小中学生で習ったとおり、電池2本の繋ぎ方には直列と並列つなぎがある。電池を並列につなぐと、電圧は変わらないけれども、電池の持ちが2本分で2倍長持ちするのが特徴だ。

並列つなぎにすると電圧は1.5Vのまま電池が2倍長持ちになる。豆電球の明るさは、電池1本のときと同じ

 かたや直列つなぎは、電池の電圧が2倍になり豆電球が明るく、モーターは早く・力強く回転するようになるけれど、電池の寿命は1本分のときと代わらない。

直列つなぎにすると、電圧が2倍の3Vになって電球が明るくなるが、電池の持ちは1本のときと同じ

 そこで多くのスティック掃除機は、1本3.6Vのリチウムイオン電池を4本セットにして14.4Vの電池として使い、これを並列つなぎにして駆動時間を稼いでいる。とくにロボット掃除機は、長時間運転するのでこのタイプが多い。

 パソコンや電動ドリルのバッテリパックで、よく見かける「14.4V」というのは、リチウムイオン電池を4本(直列に)セットにして使っているためだ。「7.2V」というのもよく見かけるマジックナンバーだが、これは2本セットになっているというわけ。

リチウムイオン電池の場合は、1本あたり3.6Vなので2本セットの直列にすると7.2V、4本だと14.4Vというよくバッテリパックで見かけるマジックナンバーになる

 でもこの並列つなぎで、今回のハイパワーモーターを駆動するとよりたくさんの電流が必要になり、電池が加熱して危険。だからモーターのパフォーマンスを引き出せない。

 そこでパナソニックは14.4Vのセットをさらに直列にして、28.8Vにしたバッテリーパックとなっている。こうすると電圧が高いぶん、少ない電流でハイパワーモーターを駆動できるので、強い吸引力が得られるというわけだ。

大電流を流すと電池は熱を持ちパフォーマンスが悪くなる
電池が全部で8本直列つなぎになったバッテリパック。モバイルバッテリにしたら12,800mAhになる

 こうしてパワーコードレス用のバッテリパックは、28.8Vのリチウムイオン電池で1,600mAhの容量を持つ電源から、低い電流でハイパワーモーターのパフォーマンスを引き出している。結果としてバッテリーが熱くならず、熱エネルギーとしての損失も抑えているのだ。

クリーンセンサーで必要以上の手間をかけさせない工夫

 ハイパワーモーターを使いつつ、長時間掃除するという矛盾の解決には、もうひとつのアプローチがある。それがゴミセンサーだ。パナソニックでは1988年から搭載しているが、今年で31年目を迎え名称も「クリーンセンサー」に変更。その進歩は、精度と基板の小型化に現れている。

1988年のセンサー回路は、非常に大きく部品点数も多い。2015年以降は半導体も小さくなり、高密度実装された基板で2cm角ほどに小さくなった

 このセンサーは本体の吸い込み口に搭載されており、赤外線を使ってゴミを吸い込んだかどうかを判断している。識別できるゴミの大きさは20μmというから、だいたい花粉のツブ1個を吸い込んだかどうかが分かるという、驚きの精度だ。

写真のように2つのLEDが吸い込み口に向かい合って設置されていて、ここをゴミが通ると赤外線の光量が変化するのを見極めている

 しくみは簡単で昔の自動ドアや駐車場の遮断機の手前にあるセンサーと一緒。何もないときは、両側のセンサーの間を赤外線が通るが、人などが通ると赤外線が遮断されたり、光量が変わるので、何か通ったことが分かる。

 パワーコードレスは手動で「強/弱」モードを切り替えができるが、自動モードを使えば、きれいな所は吸引力を落とし、汚れが目立つ部分は吸引力を上げて掃除するため、バッテリーが非常に長持ちする。

自分でパワーを切り替えるより、パワーコードレスのゴミセンサーに完全お任せするのが一番。最高のパフォーマンスと、最長の掃除時間の両立ができる

 強モードで連続利用した場合は、およそ6分でバッテリ切れしてしまうが、自動モードなら汚れにあわせて、人間では調整できないほど細かく強弱を使い分けるので、18分~40分と最大7倍長持ちにできるというわけだ。

吸引力とブラシの力で、じゅうたんのゴミの取れ方がまったく異なる

 また床面を見分けるわけではないが、フローリングではスグにゴミを吸うためパワーを抑えて掃除。

 逆にじゅうたんなどは、毛足の根元に入り混んだ多数の花粉を吸い出すのに時間がかかるので、センサーで「きれいになった!」と判断できるまでパワーを強めて掃除してくれる。このようにクリーンセンサーは、あたかも床面を見分けて掃除しているかのように賢く振舞うのだ。

ゴミを見つけると本体上部のバーが赤く点灯する。と同時に、吸引力をアップ
キレイになるとバーが青く点灯し、吸引力を落としてバッテリーを節約する

軽く頑丈な筐体を作る新素材とハニカム構造

 ハイパワーモーターの搭載で従来より80g増量。さらにバッテリーが従来機より110g増量してしまったパワーコードレスだが、そのままで終わらないのがパナソニックのエンジニア。本体の樹脂部分に新素材を用いたり、極限まで薄くした特殊構造で補強したりと工夫を凝らしている。

セルロースファイバーは、もともと住宅用建材の防音・断熱材として使われていた。パナソニックはその繊維を練りこむことで樹脂を強化している
同じ強度の部品を新しいセルロースファイバー樹脂(左)と従来のABS樹脂(右)で作ったもの
セルロースファイバー樹脂は、20gほど軽くなった。これは従来の樹脂よりも強いので、部品を薄くできるため

 まず本体の一部に利用しているのが「セルロース・ファイバー樹脂」だ。ご存知天然繊維のセルロースを樹脂に混ぜ込み、元の樹脂を強化している。これにより軽くしなりに強い樹脂となり、同じ強度で10%軽くできたということだ。

漁で使う中が空気のガラス玉を、極々小さい粒にして樹脂に混ぜ込むと、発泡プラスチックになる
中空ガラス配合軽量プラスチック(左)は108.7gと軽量だが、従来品は147.6gもある。その差およそ40g。これは手に取って「軽い!」と分かるほど違う

 さらにヘッド部分も新素材を採用。こちらは「中空ガラス配合軽量プラスチック」を採用している。いわば発泡スチロールならぬ、発泡プラスチックで、樹脂の中に中空の小さなガラス球を均等に混ぜ込み成型したものだ。これは手に取ると軽さが分かるほどで、これまでおよそ150gあったヘッドが、110gまで軽くなっている。

ハニカム構造が分かるスケルトンモデル。製造工程(真空射出成型)でハニカム部分に均等に樹脂が回るようにするのが難しいと

 さて重くなったバッテリとハイパワーモーターは、いずれも本体手元に内蔵されている。そんな重い部品を確実に取り付け、倒れたときの衝撃を吸収しつつも本体が壊れないようにするために、白いサイドパネル部分は正六角形柱をすき間なく並べた「ハニカム構造」を採用している。この構造により、少ない材料で構造部を形成でき、効率よく“軽量と強度”を実現したのだ!

左から三角に組んだコピー用紙を4個組み合わせたもの、四角を組み合わせたもの、六角形(ハニカム)を組み合わせたもの。この上に箱を置き、重りを入れる。どれが一番頑丈か?
三角と四角で組んだ構造は、パチンコ玉の重さに押しつぶされてしまったが、六角形のハニカム構造はさらに重りを足しても持ちこたえている

 ハニカム構造とは、ハチの巣のような六角形を組み合わせた構造物。ハニカム構造をサンドイッチするように板で挟むと、中空で軽いのに非常に強い材料になる。なので飛行機などでは多用されるほか、新幹線の床材としても利用されている。

 パナソニックの場合は樹脂でハニカム構造に成型することで、左右のサイドから床にぶつかった場合の衝撃を受け止めるようになっている。主要部品が重くなったにも関わらず、本体重量は2.5kgと、一般的なスティック掃除機と同じもしくは少し軽いぐらいに仕上がっている。

掃除機の開発で吸い込み力を強くするというアプローチは、ある意味原点回帰で正しい方向だ

吸引仕事率が200Wという強力スティッククリーナー

 こうして完成したのが、コードレススティックながら吸引仕事率が最大で200Wというパワーコードレスだ。一般的なコードレススティックの吸引仕事率は2桁がいいところ。

 200Wがどらぐらいか? というと、キャニスター式サイクロン掃除機と同じくらいと考えてもいいほどだ。なにせ同社の最新モデルのサイクロン式キャニスター掃除機も最大の吸引仕事率は200Wなのだ。

パナソニック製の最新サイクロン式キャニスター掃除機と同等の吸引力! 何もパナソニックの吸引力が低いというワケでなく、サイクロンはだいたいこの程度
他のスティック掃除機と一番差が出るのは、じゅうたんやカーペットなど。圧倒的な吸引力の違いでゴミの取り残しがない

 実際に掃除してみたところ、弱い吸引力に慣れていた自分に改めて気づかされる。とくにスティック掃除機は、小型モーターを高回転で回して吸い込む風量を確保するので、ヒュンヒュン! 甲高い音がする。しかしパワーコードレスは大型ファンを低速で回すので静か。おそらくペットが怖がることもないだろう。

フローリンクの目に逆らって掃除をするシーンは少ないが、家具の配置によっては、こんな場所もある。一般的な掃除機では、目に詰ったゴミはまったく取れなかった
パナソニック独自のV時配置のブラシは、常にゴミを中央の吸い込み口に集めるので、ブラシと吸引力でフローリングの目に詰まったゴミもスッキリ!

 また独自のパワーヘッドは、フローリングの目に詰まったゴミも、ブラシと吸引力で吸い取る。通常は木の目に沿って掃除をするものだが、家具の配置などでどうしても目に沿って掃除できないご家庭では、掃除後の床に大きな違いがでるだろう。

グリップの下にバッテリ、グリップの前にモーターがあるので、どうしたも重さが手首にかかり気味。グリップ形状が代わると、体感の重さも変わるかもしれない

 唯一の弱点は、全体的には軽量化されたものの、モーターとバッテリの重さがグリップにかかってくるため、他の掃除機よりも重く感じたことだ。お部屋の掃除ではそれほど感じないかも知れないが、階段の掃除や年末の大掃除で壁まで掃除するとなったときに、重さを感じるかもしれない。

【おまけ】工場ご自慢の真空射出成型&実用試験

 ちょっとパワーコードレスと離れてしまうが、滋賀県にあるパナソニックの八日市工場は、最新の樹脂製系技術がご自慢。プラスチックなのに金属や木の質感をつけたり、複雑な曲面に柄をデザインできる。そんな最先端の真空射出成型と呼ばれる樹脂の成型加工ラインや、掃除機の実用試験のテストの数々を見られたので、最後にご紹介しておこう。

パナソニックでは、世界各国向けの掃除機を製造している。国によって特徴も異なる
パイプ1本作るにしても、質感を出したり強度や軽さを求めるため、複数の工程に分けて成型する
パイプ成型工程の一部
部材を入れ、成型機で熱を加えて変形させ取り出す。写真はキャニスターの成型
質感や柄は印刷ではなく、成型時にフィルムを挟み込んで成型と一緒にフォルムを貼り付ける。3D画像のレンダリングに詳しい方なら、物理的なテクスチャでをバンプマッピングしているのだ! スゲー!
昔のシルク印刷に比べ、より解像度が高く、複雑なデザインを樹脂そのものにラッピングできるようになった
実際に閉空間で掃除して性能検査。吸い込ませる試験用のゴミも色々ある
ヘッド用のブラシも色々。毛足の長さの違うもの、硬さの違うもの、素材の違うものなど、最適な組み合わせをテストする
機械化した耐久テスト工程。ヘッドのジョイント部分も耐久性や、叩きつけたときの衝撃なども調べる
モーターも部品単位でパフォーマンスをチェック。車で言うシャシダイナモのような試験機

フローリングにカーペットやラグを敷いているご家庭にお勧め

 技術面から見てきたパナソニックのスティック掃除機「パワーコードレス」。フローリングには何も敷いていないというご家庭なら、一般的なスティック掃除機でも大丈夫だ。

 しかしラグやカーペットを敷いたり、冬場はフローリングを覆うようにじゅうたんを敷いたりというご家庭にはピッタリの掃除機だ。これまで取れなかった毛足の奥のゴミまで、ごっそり取れるだろう。

 また大型ファンを低回転で動かすという新型スティッククリーナーの試みは、高い音を怖がるペットのいるご家庭にもお勧めできる。運転音は10万回転クラスのモーターに比べると、格段に静かになっているからだ。

 吸込仕事率からの呪縛をのがれた掃除機開発は、もう10年以上にもなろうかという今年。あえて吸引力を見直したパナソニックのアプローチには驚かされた。おそらく、これに追従するメーカーも出てくるはずなので、掃除機選びもまた少し難しくなりそうだ。

藤山 哲人