藤山哲人の実践! 家電ラボ
空気清浄機の消臭機能はどこまでホンモノか!? ブルーエアのニオイフィルターモデルで実験!
空気清浄機の消臭機能はどこまでホンモノか!? ブルーエアのニオイフィルターモデルで実験!
2016年7月20日 07:30
空気清浄機の機能のひとつに消臭効果がある。プラズマクラスターなどイオン系の消臭効果は以前「シャープ プラズマクラスター空気清浄機 KC-Z80 前編」でお伝えしたが、古式ゆかしい王道の活性炭系の効果は数値化していなかった。
活性炭とは簡単に言えばニオイを吸収する炭のこと。靴の底敷きで足のニオイを消臭する「オドイーター」(直訳するとOdor Eater=ニオイ食い! )や、冷蔵庫や下駄箱の消臭剤「キムコ」や「脱臭炭」「ノンスメル」には、みな活性炭が使われている。
ちょうどインスタントコーヒー(粉じゃなくツブツブタイプ)のような大きさに砕いた炭で、どの製品も振るとカサカサと音がするのが特徴だ。
何十年も販売されているこれらの製品だけに、脱臭効果は確かにあるのだろう。でも人間の鼻は「慣れ」で臭いを感じなくなったりする、かなりいい加減な器官。そのクセ、2~3日も旅行してから自宅に帰ると、普段は臭わなかった自宅のニオイを感じたりする。
今回はニオイを数値化できるニオイセンサーを使って、あまりにもアナログでトラディショナルだが、王道の活性炭がどれだけ消臭能力を持っているのかを調べてみた。
恐るべき活性炭の消臭力! 一瞬でコーヒーの香りがなくなる!
実験に使ったのはブルーエアの「Blueair Classic 450E ニオイフィルターモデル」。国内では数年前から発売されており、スウェーデン製の製品だが、そのデザインと性能が口コミで広がり、現在大手の家電量販店ではBlueairコーナーができるほどになっている。
メーカー名 | ブルーエア |
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製品名 | Blueair Classic 450E ニオイフィルターモデル |
適用畳数 | 21畳 |
実売価格 | 87,480円 |
活性炭を使った消臭機能を持つ空気清浄機は他にもあるが、ニオイフィルターモデルはその量がかなり多く、カセット式フィルターを持つと(炭なのに)ズッシリ重い。実際に測ったわけではないが、筆者が知る限りでは一番大量の活性炭を使っている部類だ。これなら実験結果も白黒ハッキリでるはず! というのが、この機種を選んだ理由。
なお、「Blueair Classic」はニオイフィルターモデルのほか、通常のダストフィルターモデルも用意されている。こちらはスタンダードなモデルで、花粉やPM2.5などの粒子を除去してくれる。それぞれ適用畳数に合わせて3タイプあるが、我が家のリビング&キッチンが15畳なので、今回は適用床面積が約21畳の450Eを選んだ。
まずはレギュラーコーヒーを挽いたパックを使って実験。ご存知のとおり封を開けた瞬間に、コーヒーのいい香りがする。そこでパックを空気清浄機の吸入口の前に置き、排気口でニオイをかいでみた。
なんと! 吸入口側では、芳しかったコーヒーの香りだが、排気口ではまったくニオイがしない! えーっ! ってぐらい。その驚きはまるで手品。
表現がオーバーすぎるだろ! って思われてしまうかもしれないので、5日間のレンタルで3万円! (高っ! )という業務用のニオイセンサーで数値化してみた。すると吸入口のコーヒーの香りは、214(単位はない)というかなり高い数値にも関わらず、排気口では20と1/10以下になっていた。
何が驚きって! 測定器のレンタル代! ……じゃなくて、コーヒーの香りは、焼き肉なみに強いってことだ。カゼをひいて鼻が詰まっても、コーヒーはわずかに臭うって経験があったのにも頷ける。
そんな強烈なコーヒーの香りだが、1秒もかからない一瞬のウチに、活性炭に吸い取られてしまったということにビックリだ。
ペットのトイレのニオイ対策にも超強力
次に実験したのはペットのトイレをどれだけ消臭できるか? という疑問。ワンちゃんやニャンコを飼っているウチは切実だろう。かくいうウチにも、マルチーズの定吉くんがいるのだが、ジメジメしたこの時期はとくにケモノ臭い(笑)。中でも気になるのは、オシッコ臭。
ペットを飼っていない人は驚きかもしれないが、ペットフードの進化でほとんどウンチのニオイはしない。ただし人間と同じものを食べさせると臭い(笑)。でもオシッコだけはどうしても臭ってしまう。
そこでさっそく定吉のトイレを置いて実験! といきたいところだが、画的にあまりよろしくないので、ここでは薬局で仕入れてきたアンモニアで代用した。
その結果は驚きの数値に! なんとコーヒーと同じく1/10の17に! ちなみに実験前の何も臭わない部屋は7を示していたが、17を示すアンモニア臭は、筆者にはまったく分からず無臭と感じた。吸入口から吸った174の強さのアンモニア臭は、排出口では17まで脱臭されたということ。Blueair Classicのニオイフィルターは、ニオイほほぼ1/10にしてくれるようだ。
逆に言うと、ニオイの90%を一瞬にして活性炭が吸収しているということになる。効いてるんだか、いないんだか分からなかった活性炭だが、効果絶大ということが判明した。
恒例の焼き肉実験で部屋のニオイをチェック!
部屋のニオイで最も気になるのは焼き肉をやったあとのニオイ。ヘタをすると3日も4日もニオイが残り、その残り香でお腹一杯になりそうになる。というわけで、毎回恒例の焼き肉ニオイ実験をしてみた。決して実験経費で焼き肉を食べられて、肉も仕事もウマーってワケじゃない。ほんとだよ(遠い目)。
まず宴の前にニオイを測定したところ11となった。本来は焼き肉をしながら空気清浄機を運転したほうが、空気中に飛び交う油の微粒子を濾し取ることができる。しかし今回は焼き肉のニオイの測定もしたかったので、焼き肉の宴の最中は清浄機の運転を停止しておいた。
さて焼き肉前の臭いレベルは11と低かったが、真っ最中では224と臭いの強さをアピール。直後は少しレベルも落ち着き161まで下がっていた。先のコーヒーやアンモニアは局所的な場所での数値だったが、部屋全体が161なので、かなり手ごわい。しかも焼き肉のにおいは家具やカーテンにも染み込むので、なかなか臭いが消えないので辛い。
ではここから空気清浄機の運転を開始して、部屋を消臭してみよう。部屋を締め切った状態でにし、オートモードで2時間運転した結果は次の写真だ。
さすがに部屋全体が臭いレベル161になると、消臭にも時間がかかるようだ。しかし空気清浄機を運転しなければ、何日間も臭い続ける焼き肉臭は、「たった」2時間で半分以下の70まで消臭できた。筆者の感覚では、翌日会社から帰ってきた部屋のにおい程度という感覚だった(翌朝起きたときより、ずっと臭わない)。
先人たちの知恵袋の活性炭の消臭効果は、半端ないことが分かった。
活性炭でニオイが消える不思議な現象の謎
ただの黒いツブにしか見えない活性炭だが、そこには目に見えない科学の力がある。次の写真は活性炭の顕微鏡写真だ。ただの黒いツブに見えた活性炭には、無数の穴が開いている。
一方ニオイの元は、空気に浮いて飛んでいる目に見えない粒(通常のフィルターでは濾し取れないほど小さい)。活性炭は、多数の小さな穴に粒を捕らえてニオイを消すのだ。また臭いの粒は空中に浮遊するより活性炭にくっついていた方が安定する。つまりいったん活性炭に捕らえられると、ニオイの粒子は居心地が良いので、くっついたままの状態になり、臭いが逃げないというわけだ。
冷蔵庫やゲタ箱の消臭剤などは受動的。活性炭のある場所を通った空気中に含まれるニオイが吸収されるので、空気が滞っていてはそれほど消臭力が期待できない。
しかし空気清浄機はアクティブだ。部屋の空気を循環させ、ものの数十分の間に部屋全体の空気を清浄する。部屋の空気は澱むことなく、すべて活性炭を通るため消臭効果も非常に高い。さらに言うなら、フィルターに入っている活性炭の量が多く、臭いを吸着する表面積が多い方が、より消臭力が高いといえる。
もちろん空気清浄機なので花粉やカビ対策もOK
今回は空気清浄機の消臭効果に特化した実験を行なった。でも活性炭を使った「ニオイフィルター」は、消臭だけをするのではなく、通常の花粉やPM2.5などの粒子を濾し取るダストフィルターもついている。これはブルーエアに限らずどのメーカーも同じだ。
ニオイフィルターに取り替えたからといって、空気清浄機が脱臭器に変わるのではなく、空気をキレイにしてなおかつ消臭もするという点に注意して欲しい。
なお、ブルーエアではフィルターの手入れは不要とする代わりに、6カ月に1回のフィルター交換を推奨している。今回使った「Blueair Classic」は、ニオイフィルターと通常のダストフィルターどちらにも対応するため、夏は消臭に特化したニオイフィルター、冬は空気清浄メインでダストフィルターに切り替えといった使い方も可能だ。交換用フィルターの価格は、450Eの場合でニオイフィルターが15,000円、ダストフィルターが8,000円(税抜)。
とくにジメジメしてカビが発生しやすいこの時期。空気清浄機を運転しておけば、消臭機能でカビ臭さがなくなるだけでなく、空中の浮遊するカビ菌自体も空気清浄機が捕らえるので、カビの発生も抑えられる。
活性炭を使った空気清浄機は、アナログで伝統的ではあるが、非常に高い消臭能力を持っている。タバコやペットのニオイ、この季節のカビっぽいニオイや部屋干しのニオイなど、気になるニオイには活性炭フィルターを持つ空気清浄機を導入してはどうだろう?