長期レビュー

シャープ「プラズマクラスター空気清浄機 KC-Z80」 前編

~賢い加湿にパワフルな吹き出しの加湿空気清浄機
by 藤山 哲人

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



シャープが11月に発売した「プラズマクラスター空気清浄機 KC-Z80」

 ただでさえ空気が乾燥している冬。ファンヒーターなどの暖房器具は使いたいが、逆に部屋の空気はさらにカサカサに乾燥してしまう。そんなときに重宝するのが加湿器だが、最近では加湿と同時に部屋の空気もキレイにできてしまう“加湿空気清浄機”が流行っているらしい。

 そこで今回は、11月にシャープから発売された加湿空気清浄機「プラズマクラスター空気清浄加湿器 KC-Z80」を、2回に渡って紹介しよう。


空気をキレイにして、乾いた空気も潤して、イオンも出しちゃう最高級モデル

 何でシャープの空気清浄機かというと、以前にシャープのプラズマクラスターイオン発生機をレビューで使ったから。その流れで、今回もシャープを選択した。

 過去にレビューしたのは、「プラズマクラスターイオン発生機 車載タイプ IG-BC15」。この製品は、空気中を漂うカビやウイルス、菌などの作用を抑えたり、ダニのふんや死骸といったアレル物質を分解・除去させ、さらには消臭効果も期待できる「プラズマクラスターイオン」を放出するための装置。先のレビューでは、湿ったパンを放置してカビの培養実験を行なったが、プラズマクラスターを当てていたパンにはカビが発生せず、何もしていないパンはカビだらけになり、その効果を実感できた。詳しくは、過去のレビュー記事を見てほしい。

過去のプラズマクラスターイオン発生機のレビューでは、パンを放置した際のカビの発生具合を見る実験を行なった。写真はそのまま1週間放置したパン。違いは歴然だこちらはプラズマクラスターイオンを当てながら1週間放置したパン。カビはまったく生えておらず、効果テキメンだ ※前回レビューした「IG-BC15」を使ったものです。今回の「KC-Z80」によるものではありません

 で、今回紹介する「KC-Z80」は、このプラズマクラスターイオン発生機能に加えて、空気清浄機能に加湿機能も備えた高級モデル。加湿方式は、超音波で水を震わせてミストを放出したり、加熱して蒸気を出すタイプではなく、フィルターに水を吸わせ、風を当てて加湿する「気化式」。蒸気や霧は発生しないため見た目で加湿されてているかどうかを目で見て確かめられないが、フロントパネルに搭載されているデジタル湿度計で効果を確かめられるようになっている。

加湿機構はフィルターに風を当てて蒸発させる「気化式」。本体内で円形のフィルタがゆっくり回り、下の水受けの水分を空気中に蒸発させる空気清浄の機構。左から本体、集じんフィルター、脱臭フィルター、プレフィルターとなっている

 空気清浄機能としての機能は、3層のフィルターでホコリを取る。部屋を立体的に流れる気流を作り出し、大きなホコリなどは本体に背面の「プレフィルター」で、臭いはその奥にある「洗える脱臭フィルター」で、小さなホコリやウイルスや菌、そしてアレル物質を取り去るのが、さらにその奥にある「集じんフィルター」だ。

 もしかしたらここで「あれ?」と思う人もいるかもしれない。というのも、空気清浄機の効果である「ウイルスやアレル物質を取る」というのは、最初に紹介したプラズマクラスターの機能と、フィルターの機能の一部がダブっているのだ。

 これにはもちろん違いがある。プラズマクラスター発生機は、イオンを放出することで、カビやウイルスなどの作用を抑えたり、ダニやアレル物質の分解・除去をするというもの。対するプラズマクラスター加湿空気清浄機は、同イオンを発生するのに加えて、本体内のフィルターでカビやウイルスを捕らえる。イオン発生機にはないフィルターを搭載している点で、加湿空気清浄機の方が風邪や花粉対策により効き目がありそうだ。

 また、プラズマクラスター発生機の弱点だった花粉も、フィルターでキャッチできる。プラズマクラスターイオン発生機のカタログをよくよく見てみると、花粉についての効果は触れられていない(筆者も最初はカン違いしていた)。しかし、プラズマクラスター加湿空気清浄機なら、フィルターでしっかりキャッチして除去できるというわけだ。


インテリジェントな自動加湿運転。湿度は温度に合わせて細かくコントロール

操作パネル。運転に使うのは中央の大きなボタン3つ。そのほかは補助的な機能の切り替えに使う

 このKC-Z80は、洋室なら21畳、和室なら13畳まで加湿空気清浄運転ができる、ラインナップで最高級モデルに当たる製品だ。8畳間で利用した場合、8分で空気清浄できるという。

 まずは加湿機能の性能をチェックしてみよう。ファンヒーターと併用した場合の24時間の温度・湿度の変化を調べるために、床から150cm程度のところに温湿度計をセットした。ちなみに部屋は12畳ほどで、3畳ほどのキッチンとつながっている。

 基本的な運転モードは全部で3つあるが、今回は「加湿空気清浄」を選択。運転の切り替えは、上部パネル中央にある大きいボタンで行なう。

 データ取得には時間がかかるので、ここで加湿に関わるパーツや機能を紹介していこう。まずは加湿用の水タンクだ。本体側面はごっそり水タンクをセットするようになっており、容量は4L(KC-Z80の場合)。我が家の石油ファンヒーターの燃料タンクと同じぐらいだった。実験と前後するが、24時間稼動させておくと、ちょうど1日でタンクが空になるといった感じだ。

 タンクには、バネで自動的に開く取っ手が付けられており、これが本体へのロック機能の兼ねている。またタンクを流しに持って行き、水を注ぐときには取っ手がタンクの足となり、手で支えなくても注水できる。これはとても便利だ。水を満タンにすると4kg程度の重さになるが取っ手が太く大きいので、楽々持ち運びができ、タンクのセットも楽チンだ。石油ファンヒーターの針金のような取っ手を違い、指に食い込んで痛いということもない。

タンクの取っ手は、本体のロックとなる給水時は取っ手が足となってタンクを支えるので、両手がふさがらない。これは便利水タンクは水を入れると約4kgと重い。しかし、取っ手は太く大きいので、手に食い込まない

 本体サイズは416×295×643mm(幅×奥行き×高さ)と大きく、重量も約11kgと重いが、左右に可動できるキャスターがついているので、水タンクが満タンであっても、移動は簡単。ただし、じゅうたんとの段差を越えたりすると、水受けが浅いため水がこぼれやすいのが難点だ。また本体背面と壁の間をセッティングするには前後に動かさねばならず、キャスターは前後に動かないため、苦虫をかむ思いをするだろう。キャスターが付いていること自体は非常にうれしいが、前後にも可動できたら、個人的には言うことナシだ。

 今回は加湿空気清浄の自動モードで運転しているが、動作音はほとんど気にならない程度。大半は一番弱い静音で運転され、機器から2m離れた場所での音は37dB程度。これは、深夜の住宅地レベルの静かさと一緒ということになる。タバコを吸うと若干ファンが速く回るものの、それでも47dBとのこと。昼間の住宅地と同じレベルの静かさで運転してくれる。

 試しに手動でフルパワー運転にしてみたところ、「ゴー」という風切り音がうるさくなり、テレビのボリュームを1段ほど上げたくなった。説明書によれば、これは「会話程度」という59dB。ただし、自動運転でフルパワーにになることはなかった。

通常は静音モードで運転されるのでとても静か。テレビで映画を観ていてもまったく気にならないタバコを吸うと若干うるさくなるが「あ、ファンが強くなった」と気付く程度。これまた映画の雰囲気を損なうことがないフルパワーの「強風」で運転するとうるさく感じるが、そもそも自動運転ではここまで送風しない

 さて、24時間の運転が完了し、湿度と温度のグラフが取れた。結果は以下の図を見ていただきたい。

16時に実験をスタートして、翌日の16時まで加湿自動運転を行なった。かなり細かく湿度をコントロールしてくれたようだ。なお、途中でファンヒーターをつけている

 グラフを見ると細かく湿度をコントロールしているのが分かるだろう。そして夜中の3時を過ぎたあたりで18℃を割ると、湿度設定を65%に変えて加湿し始めているようすも現れている。

 通常の加湿器だと湿度を「50%」「60%」など手動で調整するものが多いが、この製品の場合、インテリジェントに湿度を設定してくれるので便利。18℃までは65%、18~24℃は60%、24℃以上は55%というように、室温によって自動で湿度をコントロールするようになっているらしい。

湿度を「%」で指定する加湿専用機「FE-05KLU」。加湿フィルターに温風を当てる、いわゆる「ハイブリッド式」を採用する

 比較用として、我が家に前からあったハイブリッド式の加湿器も使ってみた(気化式+温風。パナソニックの「FE-05KLU」)。その結果が、以下のグラフだ。


小型の加湿専用器(ハイブリッド式)を24時間運転した。こちらもパワフルに加湿できるが、湿度の振れ幅がかなり大きい

 グラフは設定湿度を60%にして自動運転したデータだが、上下の触れ幅がかなりあることが分かるだろう。さらに水タンクが小さいため、運転開始から16時間を越した8時半に水切れを起こしてしまっている。安定して加湿するには、本製品のような加湿空気清浄機がピッタリだろう。

 細かいことを言うと、自動運転だと暖房器具で室温が上がった時に、それに影響されてしまう点が惜しい。グラフのピンク色の部分に注目して欲しいが、超音波式の加湿機は、ヒーターを運転中でもさらに加湿するパワーを持っているが、プラズマクラスター加湿空気清浄機では、現状維持がやっとというところだ。

 とはいえ、パサパサに乾燥することはないし、基本的には振れ幅も少なく微妙に湿度を制御してくれる。「実用的な問題はない」といっていいだろう。


ライター泣かせの空気清浄の性能はいかに?

 続いて、臭いや空気のキレイさなど、空気清浄運転に関する効果を検証してみたいが、客観的な指標に乏しいのでこれを文字で表現するのはほぼ不可能に近い。いっつもコレで泣かされるのが、家電ライター稼業の性なのだ(涙)。ということで、ここでは本体に設置されている、センサーを元に調べてみることにしよう。

本体前面についているモニター部分。上の「53」は湿度。中段の2つの光は、左が加湿中のサイン、右が臭いセンサーのレベル。下段の四角いサインはホコリなどのハウスダストセンサーとなる

 本製品は「ニオイ」と「ハウスダスト」2種類のセンサーを備えている。本体正面のモニター部で、「~」というマークで示されるのがニオイモニターだ(KC-Z80/Z65のみ搭載)。その下にある四角いインジケータはハウスダストモニターとなっている。

 臭いセンサーが感知するのは、タバコやお線香、化粧品やアルコール、またスプレー類などの臭いという。一方、ハウスダストセンサーが感知するのは、ホコリやダニの糞・死骸、カビの胞子や花粉にタバコの煙などとなっている。

 まずは手っ取り早く、座布団を叩いてホコリを出すという原始的なやり方で様子を見た(笑)。バフバフやり始めると、5秒ほどでセンサーの色が緑から赤に切り替わり、ホコリを感知したようだ。


座布団を叩く前は、四角いハウスダストサインは全体がグリーンになっている数秒も叩きまくっていると、下の方から赤くなってきた髪の毛を振り乱しながら、さらに10秒も叩くと、インジケータは真っ赤になる!

 今度はもう少しエレガントに、夕食のフライであまった小麦粉を奥さんからもらって、空気清浄機のまえでパラパラ落としたり、手をはたいてみた。

 最初は1つまみの小麦をバットの上に落としたが反応せず。次に5本の指で小麦をつかんで落としても無反応。が、手についた小麦ををパンパン!とはたくと、とたんにセンサーが感知した。小麦粉のような細かい粒子でも、センサーは敏感に反応するようだ。

 次はタバコの実験だ。マニュアルによれば、臭いセンサーでも検知するほか、煙の粒子に反応してハウスダストセンサーも検知するという。そこで、一服して煙を清浄機に吹きかけると……。

手についた小麦粉は、パラパラと落としているぶんには反応しなかった。しかし、はたくとセンサーが反応したタバコは小麦粉と違い、ハウスダストセンサーも臭いセンサーも真っ赤になった

 一気に2つのセンサーが真っ赤に変化し「臭い!」と怒られた。しかも3mほど離れて吸っていても、両センサーが感知して運転音が変わるという敏感さ。喫煙者は家族だけじゃなく、空気清浄機にも嫌われているようで、ちょっと凹む……。

 センサーの反応が良いことは分かったが、肝心のホコリや花粉、ダニの死骸などをフィルターでキャッチできているのかは、正直これだけでは分からない。しかも、そのほとんどはごく小さく、目で見ることができない。

 そこで、かなり強引だが、空気清浄機の空気取り入れ口に、目の細かい大きな黒い布をかぶせて、どのぐらいのホコリをキャッチできるかを実験してみた。

 下の写真の黒い布は、空気清浄機に24時間取り付けて、普通に生活したあとの状態だ。部屋にはコタツもあり、13畳のリビング全体には毛足の長いじゅうたんを敷いてあるので、フローリングの部屋よりはホコリの立ちやすい部屋になっている。布に入っている横線は、空気清浄機のフィルターの支持で、その間にうっすらとホコリが積もっているのが分かるだろう。これをかき集めると、500円玉程度のホコリが取れていることが分かった。

 粒子の大きいホコリがコレだけ取れているのであれば、おそらく内部の集じんフィルターでも花粉やアレル物質、ウィルスやカビ菌、タバコの粒子などをキャッチしていることだろう。

これが背面の空気吸入口を覆うようにして、1日放置しておいた布。白いのはホコリホコリを集めてみると、こんなになった!

 なお集じんフィルターは、掃除機で軽く吸い込むだけで繰り返し使えるという点もうれしい。通常利用での交換の目安は10年に一度というから、機器の寿命まで使えると考えてもいいかもしれない。また、もう1枚内蔵されている脱臭フィルターは、水で洗いすると繰り返し利用できる。これはとくに交換の目安は設けられていないようだが、洗ってもタバコ臭などが消えない場合は、交換部品を購入することも可能だ。

 フィルターは消耗品として数年に一度買い換える必要がある。しかも、意外に高い! 安いけれど頻繁にフィルターを交換しなければならない空気清浄機に比べたら、ランニングコストは安いと言えるだろう。


斜め後ろと前方の2つの気流を活かす配置がポイント

KC-Z80では部屋の空気を効率よく循環させるための気流を発生する仕組みになっている。空気中の微粒子を回収するための誘導路を作り出しているってわけだ。画像はシャープのWebサイトより抜粋

 さて、ここでシャープの空気清浄機が他社のものと異なる点を指摘しよう。それは“気流”だ。

 Webページには「空気力学を応用したエアロフォルム採用でスピード集じん」と書いてあるが、KC-Z80では、斜め後ろに風を送り出すことで、部屋全体に気流を行き渡し、空気中の微粒子を空気清浄機に効率よく集めるようにしているという。また前方に吹き出す空気は、集めた微粒子が天井に飛び散らないように機能している。つまりこの「斜め後ろ」と「前方」への2つの気流で、微粒子の誘導路を作っているというわけだ。

 だからこの空気清浄機の性能を100%発揮させるには、設置の際にちょっとしたポイントがある。それは、

・家具など置いていない壁に設置すること。
・機器を壁に密着させず、壁から30cm程度離すこと。
・浮遊物を含んだ空気は機器の左右から背面に回りこむので、左右にも隙間を設けること。

 の3点だ。

 またマニュアルには書いてなかったが、吸気が非常に強いため、カーテンの前に置くと吸入口にピッタリ張り付いてしまう。筆者が気付いた点として、一応指摘しておきたい。

 では実際にどのように風を送っているのか。それを調べてみたのが次の写真だ。

空気の流れは、吹き出し口と渦の中心あたりを結ぶ方向(写真中、矢印の部分)に向いている。角度は水平に対してほぼ上向きだ上部に吹き出す風は、水平に対して約74度ほどとなる

 写真は装置を真横から見たところで、右側が前面になっている。空気はやや上向きで、約18度といったくらいに吹き出しているが、左右にも振れ幅を設けているので、実際には立体的な風を送風する。

 後ろに吹き出す風は、右の写真の通り、空気はほぼ74度の向きに吹き出している。確かに、シャープの説明の通り、斜め後ろに気流を発生しているようだ。

 吹き出す風の強さは、実感だと、前方に吹き出す風を1とすれば、後方には相当強い10ほどの強さがあるようだ。

 一方、吸気系は、側面から背後に回るような感じになっている。清浄機前面の下部にある口のような部分は吸気をしていないようだが、これは気流を後ろに効率よく回すための「気流ガイド」というものらしい。

空気は側面を回りこむように吸気する吸気口は背面にある。吸い込みはパワフルだ

赤と黄色と緑のLEDに加え、ブルーのLEDが映える

 今回は、加湿器と空気清浄機でもホコリなどの微粒子の除去という点にフォーカスして見てきた。感度の良いセンサーを搭載し、集めた部屋のホコリを見る限りパワフルに空気を清浄しているように感じた。

 あと、これは余談ではあるが、LEDなどの光りモノ好きにとっては、夜中にイルミネーションとしても楽しめちゃったりする。これが結構キレイなんだ(笑)。

 次回は、空気清浄機の臭いの除去効果と、プラズマクラスターイオンの効果について、見ていくことにしよう。




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2011年1月5日 00:00