家電店ちょっとイイ話

PayPayに続き、「au PAY」キャンペーンも家電量販店が主役

本連載では、家電量販店業界を20年にわたりWatchしてきた筆者が、お得な買い方、店頭で見つけた面白い商品、家電製品を買う時に注意したいことなど、家電購入時に役立つちょっとイイ話をお伝えしていきます

 2月10日からau PAYによる「毎週10億円もらえるキャンペーン」がスタートしました。キャンペーン第1週は、2日目の11日に10億円に達し、あっという間に終了。11日が祝日だったこともあって予想以上に早く終了してしまいましたが、第2週はさらに早まり、17日のたった1日で終了してしまいました。何が起こっているのでしょうか。

PayPayは7割以上が家電量販店で利用

 1年ほど前の2018年12月4日からPayPayが始めた「100億円あげちゃうキャンペーン」による家電市場の狂乱ぶりを覚えている人も多いでしょう。100億円分のキャッシュバックを約束した大盤振る舞いキャンペーンで、当初は翌年3月31日まで実施するとしていたものが、わずか10日間で100億円に達し、予想を遥かに上回る早さでキャンペーンが終了しました。

 その理由は、家電量販店での買い物が対象になったこと。購入金額の20%を還元、最大5万円のキャッシュバックを受けられるキャンペーンなので、商品購入額の上限は25万円となりますが、そのような高額製品を扱っているのはPayPay加盟店の中では当時、家電量販店しかありませんでした。

 そのため、キャンペーン初日から都心の家電量販店には買い物客が殺到し、PayPayのシステムが処理しきれずダウンする騒ぎまで起こりました。この結果、キャッシュバック100億円のうち、実に70%以上が家電量販店で使われたと見られています。

 12月の10日間だけで売り上げ的には300億円強の特需が生まれたわけですが、PayPayキャンペーンに参加した家電量販店はその10日間の売り上げが前年比120~130%、中にはビックカメラのように200%もの売り上げを達成した店舗もありました。

 今回のau PAYのキャンペーンも同様に、家電量販店に購入客が殺到しています。キャンペーンの内容は、決済金額200円(税込)ごとに40ポイント(20%)を還元するというもの。3月末までを3つのステージに分けて、第1ステージ(2月10日~3月1日)が最大3万ポイント、第2ステージ(3月2日~3月22日)も最大3万ポイント、第3ステージ(3月23日~3月29日)は1万ポイントの還元となります。

 期間中、1人あたり最大で合計7万ポイントの還元が受けられるのです。つまり、購入金額で15万円、15万円、5万円の3回、合計35万円の買い物が対象となるわけです。ただし、1週あたりの還元総額は10億円が限度となり、10億円に達し次第、その週は終了となります。

 なお、2月24日開始の第3週目からは、1日あたりの還元上限が変更され、1日最大6,000ポイントに改められました。これまでは15万円の商品購入で上限の3万ポイントが還元されましたが、2月24日以降は1日に6,000ポイントとなるため、20%還元が受けられる商品価格の上限が3万円までになります。

au PAYキャンペーンは第1週は2日間、2週目は1日で終わってしまった

一部量販店ではショップポイント8%も付与

 今回も対象金額が大きいことと、ビックカメラやヤマダ電機のようにショップポイントをつけている店ではさらに最大8%が加算されることもあり、家電量販店が賑わうこととなったのです。実際に、先週の各量販店の売り上げを見ると、参加していないヨドバシカメラ以外は、前年同日比で130~150%の伸びとなっている模様。PayPay同様、今回も家電量販店での利用が大半を占めるでしょう。

 商品の売れ方を見ると、PayPayの時とほぼ同じ傾向を示していました。まず人気だったのは、パソコン・タブレット、ゲーム機。通常のショップポイントが低いのと、Windows 7からの買い替えのタイミングもあってパソコンがよく売れました。また、パソコンとゲーム機はリセールバリューが高いこともあり、今回も転売ヤーがうごめいているようです。

PayPayの時と同様に、パソコン関連とゲーム機がよく売れている(写真はイメージです)

 また大画面4Kテレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンの売れ行きもよいです。PayPayキャンペーンおよび昨年9月の消費増税駆け込み需要期にも、フラグシップモデルを中心とした高級白物家電がよく売れましたが、今回も価格の高い機種から先に売れていっています。

 家電量販店はこれから3月末に向けて、決算大セールをスタートさせます。例年であれば、年度末に数字を積み上げるため、多くの在庫を抱えて薄利多売の大安売りをする時期なのですが、近年は状況が少し変化しています。

 売り上げ金額よりも利益を重視する傾向にあり、昔ほど価格が下がらなくなりました。特に、PayPayキャンペーン、消費増税駆け込み、そして今回のau PAYキャンペーンで共通する消費行動として、「高い機種から売れる」「安くなくても売れる」という傾向が顕著になっているため、メーカーも量販店も無茶な値引きを控えるようになっているのです。

大画面テレビや洗濯機の売れ行きも好調。高額な商品をこの機会に購入するお客が多い(写真はイメージです)

 加えて、最近よくメディアの記事で目にする「ダイナミックプライシング」導入の影響もあります。従来は人の手で一枚一枚プライスPOPを貼り替えており、手間がかかるため一度価格を下げると3~4日、1週間も同じ価格を表示していました。競合店やネット価格が下がれば新価格を上から貼り付けるか、接客で値引きすればよかったのです。

 しかし、電子プライスの導入により価格の改定が容易になり、下げるのも一瞬ですが、上げるのも一瞬でできるようになってしまったのです。ネット価格も、いつも安いわけではなく上下します。そのタイミングで店頭の価格も合わせる。量販店とて企業ですから、多くの従業員を雇っていくためには利益を出したい。安く売る必要のない時に安く売りたくはないのです。

 また近年、メーカーと量販店のリレーションがより緊密となり、需給バランスの改善が進んでいます。つまり、過剰な在庫を持つことがなくなっているのです。メーカーが新製品を発表した後は、新製品の立ち上がりをスムースにするため、旧モデルの在庫処分セールが始まるのですが、一昔前は半額まで下がったこともありました。しかしこの1~2年の状況を見ていると、そこまで下がることはまれです。

価格が下がりづらい今が逆にチャンス

 何が言いたいかというと、家電製品の価格が下がりづらくなっている現在、au PAYキャンペーンはお得に買い物ができる大きなチャンスだということです。還元上限が1日6,000円に制限されても、量販店のショップポイントにプラスして20%が還元されるのですから、ある程度の価格帯まではお得と言えます。ショップポイントのない量販店での買い物も同様です。ただし、auPAYを利用するとショップポイントが10%から8%に下がってしまうので、高額商品を購入する際には現金支払との差を計算し、お得な方を選びましょう。

 また、PayPayキャンペーンの時には予期せぬ売れ行きで在庫がなくなった製品が多々ありました。今回はメーカー・量販ともに、もともと決算セールに向けて在庫を確保していたため、現在のところ目立った欠品は起こっていません。

 なお、3万ポイントが還元される第2ステージは3月22日までですが、配達・設置を伴う大型家電はできれば急いだほうがよいです。というのも、3月は卒業・入学の引っ越しシーズンが重なることでトラックの手当が厳しくなります。月末になるほどに配送状況は逼迫するため、配達が4月にずれこむ可能性もあります。

 先週の店頭を見ていると、既に新生活の家電製品一式をau PAYキャンペーンを使って購入しているお客も散見されました。また近年、家電量販店では家具やスポーツ用品、アウトドア用品、生活雑貨など家電以外の商品の扱いも多くなっていますので、この機会に欲しい物をゲットしてみてはいかがでしょうか。特に、価格変動があまり起こらない電動アシスト自転車は今がチャンスです。

電動アシスト自転車は3~4月が販売のピーク。価格変動が少ない商品なので今がチャンス(写真はイメージです)

近藤 克己