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パナソニックの家電製品、過去30年間で最高の国内シェア27.5%を達成

家電製品の国内市場シェアは27.5%。過去30年間で最高を更新

 パナソニックは、2017年5月30日、アナリストを対象にした「Panasonic IR Day 2017」を開催。パナソニック アプライアンス社の本間哲朗社長が、家電事業に関する2017年度事業方針について説明した。

パナソニック アプライアンス社の本間哲朗社長(写真は2017年3月に中国で撮影したもの)

 本間社長は、「地域、国に適合したプレミアム商品提案を通じて限界利益を向上。日本では新たな群マーケティングを展開し、シェアナンバーワンを拡大する」などと述べ、「2017年度には、白物家電の海外増販、プレミアム化のさらなる加速で、売上高2兆7,500億円、営業利益で1,120億円、営業利益率4.1%を目指す。また、2018年度には、安定成長領域、高成長領域を中心に、売上高2兆8,000億円、営業利益率4.5%の着実な達成を目指す」とした。

 パナソニックの家電製品の国内市場シェアは27.5%と、過去30年間で最高を更新。ルームエアコン、レンジ、シェーバー、食洗機、IHコンロ、ドライヤー、ドラム式洗濯機、レコーダー、固定電話でトップシェアを持っているという。

 好調の理由について、大手家電メーカーの不振、買収などが影響しているかどうかについては、「確かに、他社の国内家電ブランドには元気がない状況もあるが、トップシェアの勢いを緩めることなく、お客様のライフスタイルにあわせて、多様な群マーケティングを展開していく」とする一方、「日本での成長を計画に織り込むと計画が緩くなる。国内での市場シェア拡大は、あえて計画の中に入れていない」などと述べた。

 アプライアンス社では、エアコン、食品流通、スモール・ビルトインにおいて非連続投資を行ないグローバルな成長を目指す「高成長事業」に位置づけたほか、メジャー(洗濯機、冷蔵庫など)、デバイスを安定的な収益拡大を目指す「安定成長事業」に、テレビやデジカメなどのAVCは、リスクを最小化し、黒字化の定着を目指す「収益改善事業」に位置づけた。

エアコンを高度成長事業に位置づける。写真は温度の異なる2つの温風を同時に吹き分けられるルームエアコン「エオリア」

 「エアコン、食品流通、スモール・ビルトインが好立地にあり、それに対して、AVCは儲かる立地を探す段階にある。食品流通、エアコンの収益性を継続し、AVCが下振れしないようにコントロールしていけば、営業利益率5%はいけると考えている」とした。

中国、アジア、欧州においてまとまった事業を持つ、ユニークな立場

 また、本間社長は、「グローバルで展開している家電メーカーが少なくなっており、多くのメーカーが、母国で展開していることになる。パナニックは、中国、アジア、欧州に展開するとともに、エアコンや食品流通など含めて、まとまって事業を持っているという点でユニークな立場にある。こうした家電メーカーはパナソニックだけである。収益性を高めることで、企業価値の改善ができると考えている」と述べた。

 2017年度の事業方針として掲げたのが、家電事業では、「地域、国に適合したプレミアム商品提案を通じ限界利益を向上」、「日本における新たな群マーケティングを展開、シェアナンバーワンを拡大」、「海外において全地域黒字化、アジア、中国、インドで組織能力を向上し、事業成長を加速」の3点。さらに、BtoB事業では、「非連続、IoT活用で事業基盤を強化、地域別販売体制で増収増益を加速」とした。

 すでにプレミアム家電の構成比は、日本では46%に拡大。アジアでは38%に、中国では55%にそれぞれ拡大しており、「これをインド、欧州にも展開していくことなる」とした。

エアコンは、業務用販路開拓で、利益率改善を目指す

 エアコン事業に関しては、2017年度の売上高が前年比11%増の5,145億円を計画。「RAC/大型空調一体により、商品力と空調販路を強化することで増販させ、過去最高益更新を狙う」と語る。

 これまで流通在庫などが問題となっていた中国のエアコン事業については、「課題となっていた問題が解決し、2017年度は健康空調の訴求を軸に、着実に高中級機にシフトしていく。Wナノイーやエネチャージの認知向上を図ることで中国における事業拡大を目指す」とした。

 ここでは、パソナニック アプライアンス社のエアコン担当の高木俊幸上席副社長が補足。「エアコンの利益率では、業務用では専業メーカーとは差があるが、家庭用エアコンではそれほど差がないと感じている。業務用エアコンの商品ラインアップを刷新しており、今後は、これらの刷新した商品ラインアップと、これまで弱かった業務用販路を開拓することで、業務用空調の利益率改善を目指す」との考えを示した。

メジャー事業は地域密着型のプレミアム戦略を加速

 冷蔵庫や洗濯機など大型家電を含むメジャー事業については、2017年度の売上高は前年比4%増の5,150億円を計画。「アジアにおいては、現地完結型の企画、開発、製造による訴求力を生かし、シェアを拡大していく。また、地域密着型のプレミアム商品の開発を進めるとともに、グローバルプラットフォーム方式の活用により、地域適格化とコスト力を両立した展開を進める」とし、「家電事業は、食文化や衣類の文化などに密接に関連するものである。技術は日本から持って行くことになるが、それを活用して、各国への合わせこみを現地で行なえる体制が整った。これは他社には見られないことである。それぞれの文化に適用した製品を開発することでプレミアム戦略を加速できる」と述べた。

洗濯機や冷蔵庫などのメジャー事業は国内では高いシェアを獲得。各国への合わせ込みを進めることで、海外でもプレミアム戦略を加速させる

 炊飯器やドライヤーなどを含むスモール・ビルイトン事業では、2017年度には前年比5%増の4,088億円の売上高を目指す。「日本でのナンバーワンの強みを生かし、海外市場を再強化する。インバウンド需要により、日本の近隣国に対して、パナソニックの小物家電や調理小物家電の強みが理解されていることは追い風になっている」とした。ドライヤーや男性用シェーバー、食洗機では国内ナンバーワンシェアを獲得していることを改めて強調。さらに海外展開では、中国が重要な市場になると見ており、同市場において、小物家電におけるEC販売構成比を拡大させるほか、食洗機の販売拡大、スチームオーブンの投入などによる新規需要拡大、美容製品のプロルートへの販売強化を進めるという。

中国でも好調なヘアードライヤーナノケア

テレビ事業は文明の事業。持つ重要性はある

 AVC事業については、2017年度に売上高で前年並の6,522億円を目指す。

 有機ELテレビを、欧州に続いて、日本でも投入。さらにデジカメのGH5において4K HDRに対応。「4K HDRワールドをリードしていく」と述べた。

 また、黒字化したテレビについては、地域適格プレミアムの拡大による収益力の強化に取り組む考えを示し、「液晶モジュールの内製化など、製造のグローバル最適化で限界利益の改善に取り組む」とした。

 本間社長は、「テレビ事業は文明の事業である。顧客価値を認識してもらうもので、各地域でそれをどう訴求するかが重要だ。テレビ事業で、営業利益率5%を目指すのは困難なターゲットであるが、家電の販売プラットフォームを持つ上で、米国と中国を除けば、テレビ事業を持つ重要性はある」とした。

 食品流通では、2017年度の売上高が前年比4%増の2,722億円を目指す。「ハスマン(パナソニックが2015年に買収したアメリカの業務用冷凍/冷蔵ショーケースメーカー)は、大型店舗に加えて、日本の強みとなる小型店舗、コンビニ事業を強化する。また、S-Cubo(エスクーボ:スーパーやコンビニなどの食品小売企業の効率的な店舗運営をサポートする店舗向けの遠隔データサービス)により、OPEXモデルを開始。運用、保守サポートで継続的な収益確保を目指す」と述べた。

日本の強みでもあるコンビニ事業を強化(写真はエコプロダクツ2014で撮影したもの)

国内ではIoT家電の成長、海外ではインド アプライアンスを設立

 2017年度以降に向けた布石として掲げたのが、「収益を伴う成長の達成に向けた投資や、体制構築を実施する」という点だ。

 ここでは、IoT家電の成長に向けた取り組みについて言及。中国における「軽厨房」ブランドによるスマートキッチン群を、2016年9月から発売し、スマホと連動した利用提案を行なっているほか、2017年1月にはスマートフォンと連携したIoT焙煎機のサービスを日本国内で発表している。また、新規商品や事業創出に向けてオープンイノベーション活動を強化。利益成長に向けた改革として、冷機コンプレッサー事業の本社機能をシンガポールに移転し、海外前線化を図ったこと、不採算関連子会社の6社を清算、譲渡したことなどを示した。本社機能をシンガポールに置くのは同社として初めてのことになる。

スマートフォントと連携し、アプリから操作するコーヒー焙煎機「The Roast」

 また、アジアにおいては、APアジアにおいて、マレーシアの生産拠点に加えて、新たにタイの生産拠点で、50万台体制でエアコンの生産を開始。さらにクアラルンプールのアジアデザイン拠点機能を強化することで、3年連続の2桁成長により、2018年度に売上高3,500億円を目指す。また、中国では、AP中国において、ECチャネルを攻略するための電商本部を新設するほか、外資系白物家電ブランドナンバーワンの確立に挑む考えを示し、2018年度には133億元の売上高を目指すという。

 海外では、製販連結経営をベースに、地域特性にあった経営形態を構築し、収益力を強化する姿勢を示しながら、インドにおいて、地域とAP社の共同責任経営のパナソニック インド アプライアンスを設立したことを発表。ジャジャールでのR&Dセンサーの開設や、バンガロールでのオフショア開発部門の開設、2017年度第4四半期から、インド国内で冷蔵庫工場を年間50万台体制で稼働する計画を明らかにし、衣服についてカレーの染みを落とすことができるカレーコースを搭載した洗濯機や、高音質を実現した液晶テレビなどによるプレミアムマーケティングを展開していることなどを紹介した。

海外家電事業と、BtoB事業に課題

 なお、2016年度のアプライアンス社の業績については、「日本、中国、アジアの家電製品の増販と、ハスマンの連結により、為替を除く実質ベースでは、売上高は前年比6%増、為替影響を含めても1%増となっている。また、プレミアム化の促進により、営業利益は1,000億円超を達成した。限界利益率は1.6ポイント向上し、2年連続で1.5ポイント以上の向上となった。

 日本およびアジアでは、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、掃除機の4大商品でシェアが向上している。営業利益は全11事業部での増益を達成。エコアンは家庭用、業務用もそれぞれ過去最高益を更新した。テレビも限界利益率の改善と、2015年度までの構造改革の完了で、利益は良化している。家電事業全体では、この2年で営業利益を2倍に拡大。企業価値を高めることができた」と総括した。

 だがその一方で、「海外家電事業の収益性と成長性は、業界水準には見劣りする。BtoB事業における高収益化への推進を加速させるといった課題も残っている」とも述べた。

ソーラー事業は苦戦、海外での販売を強化。パナソニック エコソリューションズ社

 一方、ソーラーやライティング、住宅などを担当するエコソリューションズ社については、パナソニック エコソリューションズ社の北野亮社長が説明した。

パナソニック エコソリューションズ社の北野亮社長(写真は2015年5月に撮影したもの)

 北野社長は、「2016年度は、ソーラー事業の減販が大きく影響したほか、為替影響があり、減収減益となった。ソーラーの減販を、ソーラー以外の増販でカバーできなかった。だが、ソーラーおよび為替影響を除くと実質増収である。リフォーム事業の新体制が始動し、エイジフリー事業拡大に向けた仕込みが進んだといった成果があった」と総括。「2017年度は、全事業部で増収を目指し、固定費増加を増販益でカバー。売上高1兆6,260億円、営業利益720億円を目指す。また、2018年度は売上高2兆1,000億円、営業利益率5.0%を目指す」とした。

 事業部別では、ライティング事業においては、国内売上高は規模を堅持し、海外で新事業を拡大。エナジーシステムでは、海外電材事業の拡大とテスラとの協業をテコにした海外でのソーラー事業の拡大を目指す考えを示した。

 また、ハウジングシステムでは商品、顧客接点強化によるリフォーム市場の攻略、新カテゴリーの成長を加速させるほか、パナソニックエコシステムズでは、メキシコ新工場を核とした北米での事業拡大により、IAQ(インドア・エア・クオリティ)事業のさらなるグローバル展開を推進。国内プロジェクト件名の推進によるエンジニアリング事業拡大も目指す。また、エイジフリー、サイクルテックの着実な成長を目指すという。

 注目されるのがソーラー事業。「ソーラー事業は2014年度以降、下降しており、2016年度は赤字に転落した。今後も国内はまだ苦しい状況が続くため、海外での販売を強化および拡大する。テスラとは、米ニューヨーク州のバッファロー工場における太陽電池セル、モジュールの生産協業、長期購買契約を締結している。2019年には1GW超の生産能力を達成する予定である。すでに、屋根材とパネルを一体化したソーラールーフを、5月に試験販売したが、3時間で予約数量に達した。テスラとの協業により、海外での売り上げ確保を進めたい」と述べた。

米ニューヨーク州のバッファロー工場で生産している太陽電池セル、モジュールはテスラのエネルギーストレージ製品「パワーウォール」や「パワーパック」とシームレスに統合するという

 2016年度には、国内7割、海外3割のソーラー事業の構成比は、2017年度には国内、海外を半々にする。だが、「2017年度は黒字化には至らない。2018年度以降に黒字化を目指す」とした。

事業の実態に合わせ、体制を見直し

 なお、エコソリューションズ社では、従来、「住宅」と「非住宅」に分類していた体制を、元請けサービスを行なう「B2C事業」と、電設資材および住設健在で構成する「部材事業」に再編。「住宅と非住宅の分類では、カンパニーの立てた戦略と、事業単位で受ける責任が適合しておらず、事業実態にあわないという課題があった」とし、B2C事業では、直接顧客に対峙する事業として、パナソニックエイジフリー、パナソニックサイクルテック、パナホーム、パナソニックリフォームで構成。部材事業では、ライティング事業部、エナジーシステム事業部、ハウジングシステム事業部、パナソニックエコシステムズに再編した。

 「BtoC事業においては、新築戸建着工戸数では7位、住宅リフォーム売上げでは8位だが、これを業界3位にまで引き上げたい。部材事業では、住宅用照明などの強い商材は高付加価値化を進め、水廻り商品はシェア引き上げに取り組む」とした。

 なお、説明会の冒頭に挨拶したパナソニックの代表取締役専務の佐藤基嗣氏は、「パナソニック全体では、2016年度は、為替影響を除くと、実質増収を達成した。2017年度は増収増益の実現を目指し、2018年度は増収増益を堅持し、営業利益4,500億円、純利益2,500億円以上を目指す」との姿勢を示した。