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パナソニック、2018年度に向けて家電事業は、エアコン、食品流通、スモール・ビルトインを重点として成長を加速

 パナソニック アプライアンス社の本間哲朗社長は、アプライアンス社の今後の事業方針について説明。2018年度に向けた中期事業戦略の柱として、「高成長事業へのリソースシフト」を掲げる一方、家電事業に関しては、「プレミアムゾーンのさらなる強化」、「日本の勝ちパターンの海外展開」、「アジア・中国、欧州での事業成長を加速」という3点をあげた。また、BtoB事業においては「非連続な取り組みとIoT活用で高収益化」を目指す。

「エアコン」、「食品流通」、「スモール・ビルトイン」の3事業にリソースを重点投下

パナソニック アプライアンス社の本間哲朗社長
「エアコン」や「食品流通」、「スモール・ビルトイン」を高成長領域としてグローバルでの高い成長を目指す

 さらに、高成長領域として、ルームエアコン、大型空調、給湯システムで構成する「エアコン」、ショーケース、厨房機器、自動販売機、ディスペンサなどの「食品流通」とともに、電子レンジ、炊飯器、IHクッキングヒーター、食洗機、美容・健康、調理機器などで構成する「スモール・ビルトイン」をあげ、「これらの分野に対しては、積極的に非連続的な投資を行ない、グローバルでの高い成長を目指す。また、リソースを大胆に拡充し、商品力、営業力を強化する」と述べた。

 具体的には、これら3事業においては、開発人員を現在の1,400人から、4割増となる2,000人に拡大。カンパニー戦略投資額220億円のうち、4分の3を重点投資領域に投下。「高成長事業に対して重点的に投資を行なう」という。

 また、安定成長事業には、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、温水洗浄便座で構成する「メジャー」、コンプレッサー、冷凍機、真空断熱材、燃料電池などの「デバイス」を位置づけ、「メジャーは、中国を含むアジアや欧州市場で成長させることで、安定収益の拡大を目指す」とした。

 成長率が低く、収益率が低い収益改善事業となっているのが、テレビ、レコーダー、オーディオの「AV」である。ここでは、「投資を必要最小限とし、リスクを最小化。黒字化の定着を目指す」とした。

 本間社長は、「食品流通やスモール・ビルトインは市場成長率が高く、業界平均利益率が高い、好立地にあるビジネス。それに対して、AVは成長率と利益率がともに低く、プレミアム化や新たな用途展開など、より儲かる立地を探す必要がある」と語った。

 アプライアンス社の2018年度業績見通しは、売上高が2兆8,000億円(2015年度実績は2兆5,000億円)、営業利益は1,250億円(同546億円)。そのうち、売上成長の67%をエアコン、食品流通、スモール・ビルトインが占めることになる。

 また、本間社長は、「家電事業の勝ちパターンを海外で展開するために、日本で培ったマーケティング手法を地域特性にあわせて海外市場に展開していく」とし、2018年度に3,500億円の売上げを目指すアジア市場においては、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、テレビの主力4事業において、地域に根ざした新たな価値を提案できる商品を強化していく姿勢をみせた。また、アジア市場では、MADE IN JAPANの訴求と、プレミアムマーケティングの実施、プロモーターの強化など、日本のノウハウを生かしたフィールドマーケティング強化を推進する。

中国市場はプレミアム戦略で「あこがれ」を醸成

 また、中国では2018年度に、133億元(約2,240億円)の売上げを目指し、「健康」、「余裕」、「品」に、「スマート」を加え、中国の特性を踏まえた「あこがれ」の醸成で、プレミアムブランドの構築と、商品の差別化を図る考えだ。同時に、マーケティング本部と販売ビジネスユニットを設置。統一マーケティングの実行と、開製販一体体制の強化により、市場対応のスピードアップを図る。

 「中国では、進出が事業ごとにバラバラであったため、マーケティングもバラバラであった。ここにメスを入れた」という。

 本間社長は、「家電事業については、2011年度に着手したデジタル事業の整理が一段落し、収益を伴った成長を目指す環境が整った。地域軸では、日本に加えて、アジア、中国、欧州がターゲットとなる。また、事業軸では、スモールとルームエアコンにおいて、売上げと利益の成長を見込む。今後は、海外販社を、順次、アプライアンス社に移管して、製販連結経営を徹底する」と述べた。

コンシューマー製品のプレミアム化などによる大幅な増益を狙う

 2016年度のアプライアンス社の業績見通しとして、売上高は前年比4%増の2兆6,000億円、営業利益は1,000億円を打ち出した。

 「ハスマンの新規連結や、エアコンやメジャーアプライアンスの販売増加により増収。収益体質の改善に伴うエアコンの増益や、コンシューマー商品のプレミアム化などにより、大幅な増益を目指す」とした。

快適さを向上したルームエアコン「Xシリーズ」

 943億円の増収のうち、エアコンで515億円、食品流通で1433億円、スモール・ビルトインで138億円、メジャーで217億円の増収を見込む。AVは118億円の減収計画。また、454億円の増益のうち、エアコンで115億円、食品流通で158億円、スモール・ビルトインで20億円、メジャーで61億円、AVで113億円の増益を見込んでいる。

 そのうち、エアコン事業は、2016年度に前年比8%増の5,046億円の売上げを目指す。ルームエアコンはグローバルプラットフォーム開発による商品力強化のほか、アジアを中心にした海外での増販効果もあり、営業利益率5%以上を達成。アジアにおいては、速く冷やせる「速冷」のニーズを捉えた「速冷暖エアコン」が好調に推移。2016年4月には、現地通貨ベースで63%増を記録し、シェアナンバーワンを獲得したという。また、中国においては、現地メーカーとの差別化を図るために、健康を軸にした高中級機へのシフトを加速。代理店と一体化した実需営業を増やしているという。2016年度は、高中級機比率を前年度の20%から32%まで高め、売上高で前年比12%増を目指すという。

 大型空調事業については、2015年度に、マレーシアを中心にアジアで2桁成長を遂げたほか、国内でのガス空調機の増販成果があったという。今後は、エネルギーの自由化に対応するために、電気とガスの両方のエネルギーで駆動するハイブリッド空調「スマートマルチ」をガス事業者とともに発売。クラウド技術を統一プラットフォームで展開し、狙う領域に集中した事業展開を進めるという。

 「一時期は、商業用空調にシフトするといった考えもあったが、パナソニックの強みが生かせるのは、ルームエアコン。ルームエアコンの上に、商業向けエアコンを積み上げるという考え方をベースにする」と語った。

 ダイキンとの提携については、「冷凍、空調事業が変化のポイントを迎えており、省エネに対する要求や、環境負荷低減に向ける必要になる。これらを1社でやるのは自信過剰である。いますぐになにかの成果を求めるというものではないが、時代の要請に対して、協力していこうというのが基本姿勢である」と述べた。

日本で培った商品企画力と店頭力を海外に展開していく

 スモール・ビルトイン事業では、日本では、ドライヤーやIHクッキングヒーターなどが高いシェアを獲得し、この分野では高い存在感を持っていることを強調。「スモール事業を支えているのは価値を生み出す商品企画力、顧客が体感および実感ができる店頭力、ナノイーやシェーバー刃のようなコアデバイスを持っていること。ビルトイン事業では品質力や長年培ってきたCSネットワークが強みであり、他社にとっては高い参入障壁があると考えている。2018年度に向けて、こうした日本で培った強みを、海外に展開していく」とした。

中国においては美容商品のラインナップを拡充し、ハイエンドモデルを追加していくとする

 中国では、女性向け美容商品のラインアップに、ナノケアドライヤーなど、日本で販売しているハイエンドモデルを追加。IH炊飯器のラインアップを拡充し、販売拡大を目指すという。また、欧州では、現地メーカーと提携し、欧州デザインやプロ向け技術を採用したシェーバーやトリマーなどのプレミアム商品を投入するという。

 スモール・ビルイトン事業の2016年度の売上高は、前年比3%増の4,149億円を計画。2018年度に向けて、さらなる売上げ拡大を目指すことになる。

 メジャー事業については、「従来以上に、それぞれの地域に適したプレミアム商品で、あこがれの暮らしを提案する」とし、日本では、30~40代のファミリー層をターゲットとしたライフスタイル提案、衣食住の本質訴求を狙った「ふだんプレミアム」を展開していることに言及した。

国内では昨年から、何気ない日常にある“くつろぎ”や“和み”などに価値があるとする、「ふだんプレミアム」をコンセプトとした製品群を、新たに提示している

 一方のアジアでは、日本製品の品質の高さへのあこがれをジャパンクオリティとして訴求しているほか、欧州では鮮度にこだわったプレミアムフラットの冷蔵庫や、ゴレーネと共同開発したドラム式洗濯機の展開に力を注ぐ。また、ASEANの6カ国を対象にした縦型洗濯機では、背面操作などの地域ニーズを捉えた製品企画がヒットしており、業界平均を上回る実績が出ているという。

 「すでに、APアジア設置の成果が表れていると評価している。成長が著しいアジアでは、地域内での商品企画の最適化や、地域内での相互供給によるラインアップの拡充を行なう。事業部長経験者を送り込み、現地でスピーディに決めていくことができるようになり、さらに追加投資もしていきたいと考えている。APアジアによる地域完結経営を加速したい」と述べた。

 なお、メジャー事業は、2016年度に前年比3%増の5064億円の売上げを目指す。

2015年度は、白物家電でのプレミアム製品の構成比が着実に拡大

 2015年度の実績についても総括。売上高が前年比2%減の2兆5,048億円、営業利益は前年比33%増の678億円になったことに触れ、「テレビ販売の絞り込みによる減販を、日本やアジアにおける白物家電の増販でカバーできずに減収。プレミアム戦略による白物家電の収益良化と、テレビ事業の8年ぶりの黒字により増益となった。テレビは、北米や中国での構造改革により大幅な減販。中国の景気減速影響により、ルームエアコンやコンプレッサーの販売不振が響き、営業利益は目標に対しては未達となった。

 だが、アプライアンス社の全11事業部で黒字化を達成。白物家電の5つの事業のすべてで、営業利益率が5%以上になった。戦略地域であるアジア、中国に、約75億円のマーケティング投資を行なっており、アジアでは販売会社と製造会社3社を連結して製販連結経営化。2016年4月には、アジアでの販売実績が前年比34%増と好調で、いち早く成果が出ている。とくにベトナム、インドネシア、フィリピンに積極的に投資している」と述べた。

 テレビ事業は3億円の白字化を目標としていたが、それを上回る13億円と、2桁の黒字を達成したことを自己評価した。

 「日本、アジア、大洋州の収支改善、構造改革効果が出ている」という。

 また、白物家電におけるプレミアム製品の構成比は、日本では、2014年度には31%であったものが、2015年度には44%に拡大。アジアでも24%から34%に、中国は21%から32%へと拡大。これにより、限界利益率は1.5ポイント押し上げることができたという。

 白物家電事業を地域別にみると、欧米、中国の販売減を、日本、アジアでカバーしきれずに減収した。だが、日本やアジアでの販売増や、プレミアム戦略による収益良化などにより増益となった。

 「日本では、家電合計シェアは前年度から1ポイント上昇し、27%となった。過去30年間で最高を記録した」とし、ルームエアコン、電子レンジ、IHクッキングヒーター、食洗機、シェーバー、ドライヤー、ドラム式洗濯機、レコーダーで首位を獲得。「パナソニックが持つ顧客とつながる力、顧客に価値を伝える力、製販連結経営による一体運営の強みが発揮されたもの」と成果について触れた。

住空間価値創出プロジェクトなどにより、今後

 2016年度以降の成長への布石として、北米のハスマンを100%子会社化、洗濯物自動折りたたみ機の商品化を2017年11月に目指して合弁会社を設立したほか、アプライアンスが持つ幅広い製品を生かした提案を実行する住空間価値創出プロジェクトを開始したことにも触れた。

大和ハウス工業などとの合弁会社セブン・ドリーマーズ・ランドロイド株式会社」で開発中の全自動洗濯物折たたみ機「laundroid(ランドロイド)」

 その一方で、北米での掃除機事業の撤退、中国市場における三洋電機のテレビ事業の譲渡を行ない、「戦略的投資による事業ポートフォートフォリオの組み替えを進め、2018年度に向けた企業価値の向上につなげていく」と語った。

大河原 克行