家電製品ミニレビュー
もちもちからしゃっきりまで! 小容量も美味しく炊き分ける「象印 南部鉄器」
by 藤原 大蔵(2015/11/4 07:00)
より美味しいごはんを炊き上げるべく、各社から様々な趣向を凝らした高級炊飯器が家電売場を賑わせている。そんな中から今回は、象印の「南部鉄器 極め羽釜 3.5合炊き NP-QS06」を紹介しよう。
メーカー名 | 象印 |
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製品名 | 圧力IH炊飯ジャー 南部鉄器 極め羽釜(3.5合炊き) NP-QS06 |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 83,846円 |
最大の特徴は、少人数向けの3.5合炊きタイプの内釜に、南部鉄器製の「極め羽釜」を採用したこと。同社はこれまでにも、岩手の伝統工芸品である「南部鉄器」を採用した高級炊飯器を販売してきたが、小容量タイプは初のラインナップとなる。
もう1つは、「圧力IH」を採用している点。南部鉄器というだけに、内釜の材質は鉄。鉄はIHと相性が特に良く、高い発熱効率が望める。圧力はお米の芯から糊化(α化)させ、モードを選ぶだけで圧力が可変(1.0~1.3気圧)し、好みの食感に炊き分けられる。
内釜の羽は飾りじゃない
極め羽釜の大きさは、265x320x225mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約6kg。3.5合炊きでもズシリと重い。釜厚1.7mmの南部鉄器の内釜の重さは約1.1kg。重いが、羽釜なので指がかかりやすく扱いやすかった。
ヒーター部は、底のIHヒーターに、ふた、さらに釜の羽に密着する「かまどヒーター」を採用。上下だけでなく、羽も加熱することで釜全体に熱を効率良く行き渡らせ、沸騰前から炊きムラを抑えるという。
しかも、かまどヒーターはスプリング構造。炊飯中は、羽釜と本体がピッタリ密着して大火力を閉じ込め、ごはんの粘りや弾力を引き出すという。羽は飾りではなく、美味しくごはんを炊き上げる工夫に繋がっている。もちろん内釜にはフッ素加工が施されているので、サビやごはんはこびり付かず手入れも簡単。3年間の保障も付いている。
内ぶたはふきこぼれを抑え、保温時のうるおいもキープするよう、「内ぶた」と「外ぶた」の二重構造のセットになっている。どちらもわかりやすいオレンジ色の止め具を操作するだけで、簡単に取りはずしてお手入れできる。
使い方は一般的な炊飯ジャーと大差ないだろう。基本はお米を計り、内釜のまま洗米し、水を適量入れ、炊飯ボタンを押すだけだ。
炊飯ボタンを押す前に、使用するお米に応じて「白米」「無洗米」「玄米」の3種類が、お米選択ボタンから選べる。
驚くのは、白米と無洗米の炊き分けメニューの多さだ。しゃっきり〜もちもちまでの5段階に、じっくり時間をかけてお米の甘み成分を引き出す「熟成」に、おこげが楽しめる「かまど極め」の2種が加わって7種類。さらに、「急速」「炊きこみ」「すしめし」など、目的に応じた炊き方が13種類も加わり、炊き方は合計20種類にも及ぶ。「金芽米」専用メニューもある。
だが、それらの選択は「メニュー選択」の矢印ボタンを押すだけで簡単に選べる。ボタンを押す毎に、メニューが順番に点滅していくのでわかりやすい。また、ボタンを押すと表示部が明るいバックライトで照らされるので確認しやすい。
実際の炊飯にあたり、お米は5kgで1,980円の、石川県産のこしひかりの新米を使用。お米の選択は「白米」を選んだ。お米の量は2合に統一。水量は新米なので、内釜の目盛りより若干少なめにしている。
5段階のもちもち度の炊き分けは、同じお米、水加減なのに、味が違う! 食感が違う!
ごはんのもちもち度は、「しゃっきり」「ややしゃっきり」「ふつう」「ややもちもち」「もちもち」の5段階に炊き分けられる。その中から「ふつう」、もちもち度の弱い「しゃっきり」と、もちもち度が強い「もちもち」の3種類を炊き比べてみた。
せっかく炊き比べるので、ごはんの味、食感だけでなく、メニューの違いによる炊き上がりまでの時間、電気量も追ってみた。
【ふつう】 極め羽釜の標準的なもちもち度
まずは、標準のもちもち度に炊きあげるという「ふつう」を選択。炊飯ボタンを押すと、炊き上がり予測時間が58分と表示され、炊飯が始まった。
炊飯の初期は、圧力はかけずにお米の吸水・予熱に充てられる。その時の火力(消費電力)をワットチェッカーで計測すると、4〜35Wを行き来するのが主で、時折813Wまで火力が上がった。
23分過ぎに本体が「カチャン!」と鳴り、「圧力」がスタート。火力は一気に840〜910Wとなった。その時から表示部に「圧力」サインが表示され、安全のためにふたはロックされる。
30分を過ぎた頃、火力は30〜692Wと弱まるにもかかわらず、ふたの上部から蒸気が立ち上り、ごはんの炊けるいい匂いが漂う。結局、最大910Wの強火は7分ほどと言えるだろう。
37分頃には、火力は4〜100Wとぐっと弱まり「蒸らし」がスタートし、53分で炊き上がった。16分間の蒸らし中も、圧力の表示は炊きあがるまで消えなかった。トータルの電気量は0.15kWhだった。
炊き上がったごはんはツヤツヤ!「ふつう」で、もっちり感、ふっくら感がバランス良く、甘みも感じられる。適度な粘りもあった。必ずしも高いお米ではないのに、とても美味しい!
【しゃっきり】 粘り少なめ、しゃっきりごはん
「しゃっきり」は42分で炊き上がった。
炊き上がったごはんは「ふつう」よりもハッキリと粘りが少なく、ほろっと口の中で崩れる。あっさりとした口当たりの美味しいごはんで、甘み、弾力が少なめ。そのぶん、カレーなどには相性が良い。その一方で、冷めると固くなるので、お弁当やおにぎりにはあまり勧められない。
電気量は0.14kWh。ふつうよりも早く炊ける分、電気量が少ない。
【もちもち】 強い粘りにしっかりした弾力
「もちもち」は炊き上がりまでに67分かかり、電気量は0.16kWhだった。
ふつうよりも14分も時間がかるのだが、おかず無しでもパクパク食べてしまうほど美味しい!とても5kgで1,980円のお米とは思えない仕上がりだった。も〜っちりとした噛みごたえに粘りがあり、甘みもハッキリと感じられる。食べていて贅沢な気分になるほど、個人的には特に好きだった。冷めても固くならないので、お弁当やおにぎりにするならコレだ。
この3つを炊き比べて驚いたのは、同じお米、水量で炊いたのに、炊き上がったごはんのキャラクターがまるで違う点だ。食事の献立に合わせて、積極的に炊き分けたいと思ったほどだった。
「もちもち度」とは別に、美味しさを引き出す多彩なメニュー
「しゃっきり〜もちもち」の炊き分け以外に、多彩なメニューが搭載されている。
【熟成】 じっくり時間をかけて米の旨味を引き出す
「熟成」は炊き上がりまでに79分もかけてじっくりと炊き上げる。炊き上がったごはんは、甘く、ふっくら感が際立ち香りが良い。思わず、もう一膳!となるほどごはんの旨味が楽しめる。「もちもち」とは違う美味しさがあった。
炊飯の様子を追っていると、圧力炊飯がスタートするまで吸水と予熱に43分もかけている。圧力がかかる直前のお米を見てみるとたっぷり水分を吸って、すでに柔らかそうにさえ見える。炊き上がった米粒は、炊飯前の2倍以上も粒が大きく、芯は微塵も感じられぬほどふっくらと半透明。良いお米を手に入れたら、このメニューでとことん味わってみたいと思った。
炊き上がりまでに時間はかかるが、主に吸水・予熱に時間をとるので、電気量はもちもちと同じ0.16kWhだった。
【かまど極め】 おこげの香り、食感を楽しむ
「かまど極め」は炊飯ジャーなのに、意図的な”おこげ”が楽しめる。炊飯時間は72分と長め。強めの火力が30分近く続くためか、電気量は最も高い0.2kWhだった。
おこげの香りが楽しめるものの、今回使用した石川産のこしひかりとは相性はいまひとつで、おこげは固くて食べづらい。粘りの少ないお米の方がより楽しめるだろう。とはいうものの、焦げの無い部分のごはんは相変わらず旨い!
さらに、おこげで作る「湯の子」メニューも搭載されているので、おこげの風味が加わったおかゆも楽しめる。
【炊きこみ】 調味液をしっかり含ませてから炊き上げる
炊き込みは、もち米を加えたかのようなもちもち感に驚いた。一般的な炊飯器で炊いた 炊き込みご飯は、調味液のためかお米に芯が残りやすい場合が多かったが、これはふっくらもちもちで弾力があり、とても美味しい。
炊き込みごはんを作った後の内釜には、たっぷりの糊が残るほど、おねばがしっかり引き出されていたのがわかる。調味液をしっかり含ませるため、炊飯時間は80分かかるが、いままでウチで食べた炊き込みご飯の中でも、最上級の出来と言っても過言ではないほど、美味しかった。なお、炊き込みごはんの最大炊飯量は2合までだ。
【やわらか】 お米の弾力も残しつつ、やわらかに仕上げる
極め羽釜の特徴として、最大炊飯量は1.5合となるが、ベチャベチャにならない柔らかいごはんも炊ける。粘りがあるのに、軽く噛むだけで米粒が口の中でつぶれる。個人的には固めのごはんが好きなのに、炊きたてらしい風味、香りもあり、ふっくらと美味しい。
1合で炊いてみたが、60分で炊き上がった。さらに柔らかく炊き上げる「よりやわらか」メニューもある。
【おかゆ】 お米の甘さ、香りが抜群
もちろんお粥も炊ける。お米の甘さがしっかり引き出され、米はふっくらと香りが良く、味を足さない素のおかゆのままでも、優しく美味しい。最大炊飯量は1合。0.5合のお米からたっぷり3膳分の量ができた。ひとつまみの塩を入れるだけで、食欲はさらに増し、一気に平らげてしまった。
炊飯時間は54分。体調がすぐれない時はもちろん、朝食にも楽しみたい。
その他、2合のお米が41分で炊きあがる「急速」に、消費電力を抑えて炊く「エコ炊飯」 も搭載されている。
「急速」は甘みも感じられて美味しいが、食感は粘り気が少なく、どこか水っぽい。「エコ炊飯」は消費電力を抑え、最大574Wの火力の炊き上げるため、70分と時間がかかる。それなりに美味しいが、もちもち感、おねばも少なく、せっかくのお米本来の美味しさが引き出しきれていない印象だった。
それでも、急いでいる時や、別の調理器具を同じコンセントから取る時には便利なメニューだろう。
半日以上保温しても、しっとりツヤツヤ、変色なし
長時間ジャーで保温したごはんは、今までの常識では必ずしも美味しいものではなかった。炊きたてとは程遠く、水分が飛んでパサパサと固くなり、色も黄色っぽく変色してしまっていた。
ところが、極め羽釜に搭載されている保温機能は、長時間保温していても驚くほどごはんはパサパサにならず、つややかなまま。変色もほとんどしない「うるつや保温」がすごいのだ。
保温は2つ選べる。ごはんの劣化(乾燥・変色)を抑える「うるつや保温」は最大30時間も保温ができる。温度を高めにして、ごはんのニオイの発生を抑える「高め保温」は、最大12時間の保温が可能だ。炊飯が終わると自動で保温状態になるので、炊飯の前に設定しておく。もちろん保温無しも選べる。
今回は「うるつや保温」を試した。「ふつう」で2合炊いて1膳食べ、5時間後にもう一膳、13時間後にもう一膳、18時間後に残りを全て食べきるというように、一膳ずつごはんを減らしながら保温の状態を観察した。
5時間後
炊きたてと比べてもっちり感が少々減り、温度も少しぬるい。単に炊きたてのごはんが少し時間が経ったような印象で、普通に美味しい。5時間経っても、色の変化もニオイもまったく感じられなかった。
13時間後
半日以上保温したにも関わらず、正直言って5時間後との違いがわからなかった。相変わらずしっとりとツヤがあり、美味しいままだった。
18時間後
18時間後、残りの一膳を食べようとふたを開けた時、ほんのり「保温したごはん臭」がした。だが、ご飯茶碗によそい、口に運ぶ時にはそのニオイは感じられなかった。食感、見た目も5時間後と遜色ないのは驚きだ。
炊きたてから順に撮影したが、画像からは大きな違いがわからないほど、色もツヤもほとんど変わらない。家族の食事に時間差がある場合には、とても便利な保温機能だと実感した。
とは言うものの、保温している間は1〜195Wの電力を消費する。電力量は炊き上がり時0.15kWhだったが、保温時間が長くなるほどその分電力を消費する。
使用した電気量の変化を追って行くと、5時間後は0.24kWh(保温に0.09kWhを消費)、13時間後は0.40kWh(0.24kWh)、18時間後は0.52kWh(0.37kWh)と、ワットチェッカーの数値が上がっていく。
この結果から、半日保温するなら新たに炊いたほうが電気代はセーブできると言えるだろう。10分程度で再加熱はできるが、美味しさは炊きたての方に軍配が上がる。
極め羽釜は、ご飯茶碗1膳分の0.5合から美味しく炊ける。手間はかかっても美味しさを優先するならば、食べる都度に炊いた方が良いだろう。0.5合を「もちもち」で炊いた場合、67分の時間はかかるが、電力量は0.12kWh。13時間保温の半分の電気量で、炊きたての美味しいごはんがいただけるからだ。
お米本来の美味しさを引き出し、追求できる圧力IH炊飯ジャー
筆者はかれこれ13年以上、他社の圧力IH炊飯ジャー(当時10万円以上した)を使い続けており、毎度満足の行く美味しいごはんをいただいていた。「南部鉄器 極め羽釜」も圧力IHだから、それほどの違いはないだろうとタカをくくっていたのだが、それは大間違いだった。
「南部鉄器 極め羽釜」で炊いたごはんは、とても同じお米とは思えないほど、一粒一粒がふっくらと大きく、もっちり&ツヤツヤに炊き上がり、思わず旨い! と唸ってしまった。高級炊飯器はこれほどまでに進化したのかと、正直言って衝撃を受けた。
さらに南部鉄器 極め羽釜は、ごはんの「かたさ」と「粘り」を微調整して、紹介したメニュー設定以外に、なんと49通りの自分の炊き方が追求できる「わが家炊き」メニューも搭載されている。米の産地や性質に合わせて、象印最上位機種らしく、美味しさがより追求できるのだ。
高級炊飯器で迷っている方はもちろん、毎日のごはん一膳一膳を丁寧に、美味しくいただきたい方にこそ、是非検討してほしいオススメの炊飯ジャーだ。