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象印マホービン「南部鉄器 極め羽釜」【前編】

~希望小売価格13万円、南部鉄器でできた炊飯器のおいしさに迫る

内釜に岩手の伝統工芸品・南部鉄器を使った「南部鉄器 極め羽釜」。メーカー小売希望価格は13万6500円と非常に高いが、おいしいと評判で、2013年1月時点で品薄となっていた

 おいしいと評判で、生産が追いつかない炊飯器がある。100%鉄製の内釜を採用した、象印マホービンの「圧力IH炊飯ジャー『極め炊き』NP-ST10 南部鉄器 極め羽釜」だ。

 この炊飯器の希望小売価格は13万6,500円。この不景気に、こんな高い炊飯器が売れる理由はただ1つ。「おいしいごはんが炊ける」ということにほかならない。

 家電量販店では発売開始から品薄状態が続き、メーカーに増産の望む声が多く届いているが、一般的な炊飯器のように量産することができない。なぜならその炊飯器の内釜は、岩手県の伝統工芸品「南部鉄器」で、職人が1つ1つ手作りをしているからだ。高級鉄器として名高い南部鉄器は、アルミの板を機械でプレスするだけで作れる一般的な炊飯器のアルミ製内釜と違い、溶かした鉄を型に流し込んで作る鋳物なので、手間と時間がかかるのだ。

 家電Watchのレビューで紹介したが、ごはんの甘さ1つとっても、これまでの炊飯器よりも格段に甘かった。食感や風味は、昔ながらの羽釜で炊いたごはんにそっくり。フライや味の濃いおかずを用意しなくても、お漬物や味噌汁だけでもごはんがすすむほどの旨さだ。

こちらが鉄100%の内釜。しかし、なぜ鉄100%にこだわる理由があったのか?

 しかし、改めて考えると、この極め羽釜についていくつかの疑問が頭をよぎる。まず第1に「内釜の形や材質は、それほどまでにごはんのおいしさを左右するものなのか?」という疑問だ。素材は鉄100%、釜の外側には羽釜のような突起部が設けられているが、うがった見方をすれば、“南部鉄器”というブランドや、“羽釜”というデザインを利用して、付加価値を高めているようにも受け取れる。

 第2の疑問は、「なぜ、100%鉄製の内釜を採用したのか?」。他社の炊飯器でも、銅や炭素などを使った内釜を持つ炊飯器があるが、なぜ誰でも思いつきそうな鉄の内釜が他社では採用されず、この極め羽釜でのみ採用されているのか、腑に落ちない。

 最後の3点目は「いくら南部鉄器の内釜とは言え、価格が高すぎるのではないか?」という疑問――いや、疑念だ。一般的なアルミ製の内釜を持つ炊飯器なら3~4万円で買えるのに、極め羽釜はそれより10万円高い。単純計算すると南部鉄器の内釜は、アルミ製に比べ10万円高いことになる。南部鉄器はそんなに高いのか? と疑わざるを得ないのだ。

 これらの謎を突き止めるため、象印の開発担当者に話を伺ってみることにした。しかし、その答えにたどり着くまでの道のりは、意外と長かった。

内釜は炊飯器のおいしさの大きなウェイトを占める

象印マホービン株式会社 第一事業部の後藤譲マネージャー。極め羽釜のおいしさの秘密を知るキーマンだ

 「『南部鉄器 極め羽釜』のコンセプトは、“おいしいごはんが炊ける”というものも当然ありますが、“炊飯器と一緒に日本の伝統文化を伝えたい”という願いも込められています。キザな言い方になってしまいますが、日本人のDNAが詰まった炊飯器と言えるでしょう」

 「南部鉄器 極め羽釜」の特徴をひとことで説明するのは、象印マホービン株式会社 第一事業部マネージャーの後藤 譲氏だ。極め羽釜のプロジェクトリーダーとして数々の難問と戦い、誰よりも南部鉄器 極め羽釜を知る男である。

 まず後藤氏に伺ったのが、内釜の素材や形状が、ごはんに与える影響だ。おいしいごはんを炊くためにそんなに重要なものなのだろうか?

 「炊飯器は、内釜と本体、そして炊飯フローが一体となっておいしいごはんを炊くので、一概にどのぐらいという言い方はできません。ですが、内釜はおいしさの大きなウェイトを占めています」

 象印が内釜に羽釜のように羽が出っ張ったデザインを採用したのは、2010年の「極め羽釜 NP-SA10」が初めて。そしてその翌年の「NP-SS10」で、100%鉄製の南部鉄器の内釜を採用している。

 「実は2007年頃から、内釜を鉄器にするというアイディアはあり、当時から試作などもしていました。しかしコストや製造技術などの問題があり、“これは製品にならない”ということで、開発を凍結していました。当時、象印の炊飯器は今でいう中~低価格帯が主力だったという理由もあります」

2010年に発売された「極め羽釜 NP-SA10」。羽釜のように羽が出っ張った内釜を採用したのはこれが最初
極め羽釜シリーズの歴代モデル。2010年に羽釜デザインの内釜を使用し、2011年には素材に鉄100%の南部鉄器モデルが発売された

 価格が10万円前後の“高級炊飯器”が登場したのは2006年頃から。それ以前の炊飯器は、高くても5万円以下というのが常識だった。しかし他社からは、高級炊飯器が次々発売され、象印は高価格帯の中で遅れを取ってしまった。

 「いったん凍結していた鉄釜の炊飯器ですが、高級炊飯器の登場によって開発が再開しました。“本当にお客様に満足していただける炊飯器をつくろう”ということで、高級炊飯器プロジェクトが立ち上がりました」

大阪・堺の“メシ炊き仙人”に学んだこととは

 高級炊飯器のプロジェクトを開始に当たって、後藤氏らプロジェクトメンバーは「おいしいごはんとは何か」「どんなごはんを目指すのか」という理想を求め、全国何十件もの店を食べ歩いた。そこで、一件の店に出会った。

 「最終的に大阪にある『銀シャリ屋 ゲコ亭』(大阪府堺市)という定食屋に出会いました。ごはんがおいしいと評判の店で、店主の村嶋さんは“メシ炊き仙人”という異名を取るほど。その道47年という職人ですから協力していただけるか非常に不安だったのですが、お話してみると非常に気さくな方で、炊飯している様子やそのデータを取らせてもらえることになりました」

大阪府堺市堺区にある定食屋「ゲコ亭」。営業開始は9時からだが、象印によれば13時半頃には売り切れて閉店してしまうとのこと。6月から8月の3カ月間は休みなので、店に行く際はご注意
“メシ炊き仙人”の異名を持つ、ゲコ亭店主の村嶋孟(むらしまつとむ)氏。象印の炊飯器の開発に協力した

 後藤氏をはじめとしたプロジェクトのスタッフは、“メシ炊き仙人”がおいしくごはんを炊くために、さまざまな工夫を取り入れていることを学んだ。

 「特徴的なのは、非常に浅い鍋で炊いていたという点です。これなら対流もしやすく、下のほうにあるお米が重みで潰れることもありません。なにより驚いたのは、大きく浅い鍋なのに温度を測ってみると、どこも均一だったことです。

 そしてかまどにも発見がありました。当時はかまどの鍋のすき間を店主自身が粘土で埋めて、熱を逃さないように工夫していました」

 対流とは、鍋の下から加熱すると熱せられた水や米が表面に移動し、表面で冷えたものは鍋の底に下りていく現象。対流しやすい鍋で炊飯すると、鍋全体のお米に均一に火が入るだけでなく、炊飯中にごはんをかき混ぜるという効果があり、おいしいごはんを炊くための重要なポイントとなるという。

 「ごはんの炊き方にも驚かされました。炊飯中に電話が鳴なっても店主は出ようとしません。店主によれば、細かな火力の調整をしなければならないので“電話に出たら負け”だそうです」

伝統の真空釜を捨て、社運を賭けた羽釜デザインに挑戦

 プロジェクトメンバーは、“メシ炊き仙人”から学んだことを社に持ち帰り、検討を重ねた結果、炊飯器の内釜に着目した。

 「たいていの内釜は、上部と下部が同じ直径の寸胴ナベのようなものが使われています。しかし、この形状は高さがあるため、対流しづらいデメリットがあります。そこで、店で見聞きしたことを踏まえて、さまざまな試作を繰り返し、1つの形状にたどり着きました。それがすり鉢型の内釜の外周に羽(突起)をつけた、この形です(左下の写真の内釜)」

アルミ鋳造モデル極め羽釜(NP-SC10)の内釜。外周には2つの羽(突起)があるのが特徴。また、一般的な内釜と違い、底に行くほど細いすり鉢状になっている
こちらは筆者の家にあった、中級モデルの一般的な炊飯器の内釜。寸胴なべのように上部と下部は同じ直径になっているが、これだと底のごはんは上のごはんに押しつぶされ、熱の対流が悪いという

 側面に突起を設けた、極め羽釜独特の内釜のフォルムは、羽釜に似せて作ったわけではなく、おいしくご飯を炊ける釜の形状を突き詰めた結果できたもの。本体には、ちょうど羽に引っかかるようにリング状のヒーターが埋め込まれており、底からはIHで加熱、側面からは羽、上部からはフタを経由して内釜全体を加熱し、釜全体がむらなく加熱できるのだ。

 しかし、それを作るには、製造上の問題点が山積みだった。

 「寸胴タイプの内釜は、1枚の金属板をプレス機で型押しすれば、高い精度で量産できます。しかし私たちが求める複雑な形状は、プレス機では生産できません。理想の内釜を作るには、溶かした金属を鋳型に流し込む『鋳造』しかないという結論に至ります」

 外から見るとただのすり鉢状の内釜にしか見えないが、部分部分で厚みが違うため、断面図を見るとかなり複雑な構造になっている。しかも、単に浅く広くすると、炊飯器のサイズが大きくなってしまうので、対流のしやすさと、従来の炊飯器本体に納まるサイズという、矛盾した問題も解決しなければならない。極め羽釜シリーズが5.5合炊きのみのラインナップになっているのは、これが理由だ。

 また、鋳型に溶けた金属を流し込む方法でも「どうしても小さな気泡が入ってしまい、製品にならない」(後藤氏)などの問題点があったという。

 「しかし、試行錯誤を繰り返すうちに解決方法が分かりました。元の大きさの数倍もの鋳物を作り、そこから内釜を削り出せば気泡は入りません。生産効率は悪いのですが、こうして理想の内釜を手に入れることができました」

 おいしいごはんが炊ける理想の内釜ができたものの、社内にはこの釜の形状を不安視する声も多かったという。それは老舗ゆえの象印の宿命でもあり、いわば社運をかけた決断とも言えるものだった。

極め羽釜が登場する前の象印の炊飯器では、内釜の側面を真空にした「真空かまど釜」がブランドとして定着していた

 「これまで象印の炊飯器と言えば、内釜の側面内部を真空にして断熱性を高めた“真空かまど釜”がブランドとして定着していました。しかし新しい内釜は、釜の底と側面から加熱するために断熱層が邪魔になってしまい、真空層を捨てざるを得なかったのです。

 これは炊飯を制御するフロー(手順)をゼロから作るというだけでなく、営業面でも『軽くて断熱性の高い内釜』というセールストークを、180度転換することになります。しかもこれまで見たことのないシルエットの内釜がお客様に受け入れられるかと心配でした」

 こうして製品化に至るまでさまざまな苦境があったものの、2010年9月に、この理想的な釜の形状を持つアルミ製内釜の炊飯器「極め羽釜 NP-SA10」が発売された。この炊飯器で初めてごはんを炊いた時のことを、後藤氏は忘れられないという。

 「今でもはっきり覚えています。炊き上がったごはん粒を見てみると、ものすごくふっくらして、粒が大きいんです。“こんなにごはん粒が大きくなるのか!”と我ながら驚いてしまいました」

 いざ製品が発売されると、心配された内釜の形状も消費者にすんなり受け入れられ、おいしいごはんが炊けると、人気の商品となった。理想的な形状の内釜が完成したことで、次はいよいよ「鉄」という素材に挑戦することになる。

なぜ“100%鉄製”の内釜にこだわるのか?

 「極め羽釜 NP-SA10」で成功を収めた開発チームは、2007年当時から試作していた“100%鉄製”の内釜の製作に本格的に取り掛かった。理想の形を極めたところで、今度は“理想の素材”を極めようというワケだ。

 しかし、なぜそんなに鉄にこだわるのか? その理由は「発熱効率」だ。

 「炊飯器の加熱はIHという加熱方式が主流です。このIHに最適な素材は、発熱効率が82.7%と非常に高い鉄です。多くの炊飯器ではアルミ+ステンレス(発熱部)の内釜を使っていますが、ステンレスの発熱効率は78%程度と、鉄より4%ほど低いのです。しかも、純鉄製の内釜を使った炊飯器は、どこにもありません。なにより前のモデルで形を極めておいしいごはんが炊けたので、鉄の内釜にすればさらにおいしいごはんが炊けるはずだと確信していました。内釜が100%鉄でできているのは、今(2013年2月)のところ象印だけです」

内釜の素材の違いによる発熱効率の違い。鉄は非常に発熱効率が高い。多くの炊飯器では、アルミ+ステンレス(発熱部)の内釜が使われている。ニッケルは2010年のアルミ製極め羽釜に採用されている

 しかし、鉄はアルミに比べると熱の伝わり方が遅いため、火力が弱いのではないか、という疑問が浮かぶ。しかし後藤氏によれば、この熱の伝わり方の遅さ、イコール蓄熱性が、鉄のメリットなのだという。

 「鉄のメリットは発熱効率がいい点と、真空断熱層などを作らなくても蓄熱性が高いという点です。おっしゃるとおり熱伝導性は悪いのですが、前のモデルで採用した側面から加熱するヒーターを併用すれば、釜でごはんを炊く時に理想とされる“はじめチョロチョロ、中パッパ”の“中パッパ”に必要な大火力は、問題なく得られます」

 炊飯器の内釜に最適な素材は、単に発熱効率が高いものが良いという訳ではないらしい。熱伝導率が低く冷めにくい一方で、加熱時には熱しやすいという、相反する条件をクリアする必要があるようだ。

こちらは内釜金属の違いによる熱伝導(熱の伝わりやすさ)の違い。銅は熱が伝わりやすいが同時に冷めやすく、鉄は熱が伝わり辛いが冷めにくいという特徴がある。(「W/m℃」は熱伝導率の単位。数値は筆者調べ)
写真中で指差ししている部分にヒーターが内蔵されており、羽釜の羽と密着することで、側面からも釜に大火力が掛けられる。これにより、熱が伝わり辛い鉄でも大火力で炊けるのだ
底からはIHで加熱。釜と本体の間にはすき間があり、空気が断熱材として機能する。さらに側面に2つとフタにヒーターが内蔵され、釜全体を大火力で包み込んで加熱する

コンマ数ミリの誤差も許されない……鉄100%の内釜を作る難しさ

 鉄の内釜なら、さらにおいしいごはんが炊けると確信していた後藤氏だが、問題はそれを実際に作れるかどうか。これについては、象印もまったくの未知数だった。

 「鉄釜と決まったものの、象印には鉄の鋳造技術なんてありませんから、協力してくださる会社を探さねばなりません。そこで白羽の矢が立ったのが、岩手県の盛岡市や奥州市の南部鉄器です。製造技術も優れ、鉄器産業がさかんな街ですから、炊飯器の内釜を作ってくださる工場もあるだろう思っていました。しかし工場に伝手があるわけではないので、1件1件工場を尋ねて“こんなものを作って欲しい”とお願いするものの、見事に断られるばかりでした」

 南部鉄器といえば職人が作る伝統工芸品。ただ盛岡や奥州で作った鉄器というだけではなく、技術や施設などが認められていないと、南部鉄器とは認められない。職人の手にかかれば、炊飯器の内釜を作ることなど造作もないのではと思ったが、100%鉄製の釜を作るのは相当に難しいことだった。

 「実は問題だらけでした。まず、手作りなので量産できません。こちらとしては1日100個は欲しいところなのですが、実際の生産量は桁違いに少ないものでした。さらにアルミのときと同様に、鋳造すると気泡が混入するため、削り出しをする必要があります。

南部鉄器の内釜は精度が大事。直径1mmもない気泡があるだけで「不合格品」となってしまう。写真は不合格品の釜のアップ写真

 さらなる問題は精度です。炊飯器は内釜の上の羽部分を規準にして設計していますが、内釜の大きさはもちろん、羽の位置や大きさ、本体と底のすき間がコンマ数mmでもズレると、設計上の火力が出ません。伝統工芸品の南部鉄器は基本的に1個ずつ作られるものなので、家電が求める量産や精度というものに大きな隔たりがありました」

 肝心の協力会社が見つからなければ何も始まらない状況だったが、地道なローラー調査の末、何とか協力会社が見つかり、試作に着手することができた。

 「同地区の工場を巡っては頭を下げて、なんとか理解していただき協力してもらうようお願いしました。ようやく“非常に難問ではあるものの、ともにチャレンジしたい”と名乗りを挙げていただいた工場が見つかり、南部鉄器の内釜の試作に着手しました」

 内釜を製造する工場が見つかったものの、前述の気泡の問題や、歩留まり(生産した製品から、不良品を差し引いた割合)を向上して、生産性を製品レベルまで高めるには、相当な苦労があったという。

 「工場の担当者とアイディアを出し合いながら、そしていくつもの試作を作っては試しの繰り返しの毎日でした。内釜が改良されるたびに、熱の伝わり方なども変わるので、炊飯のプログラムも変更しなければなりません。それはもう大変な作業でした」

紆余曲折ありつつもおいしいごはんが炊ける、南部鉄器の内釜を搭載した炊飯器が完成した。写真は2012年モデルのNP-ST10

 象印の開発陣と南部鉄器を製造する工場の二人三脚の末、100%鉄製による炊飯器「NP-SS10」が、2011年9月に誕生した。100%鉄製の内釜を持つ炊飯器が、象印のほかに出てこないのは、手間がかかりすぎて「作れない」と言ったほうが正しいようだ。

次回は極め羽釜の内釜製造工場に潜入!

 後藤氏に話を伺ったことで、極め羽釜のおいしさに込められたこだわりはよく分かったが、未解決の疑問がまだ残る。それは、後藤氏が言う“大変な作業”は何かという点。話しを聞いてわかったような気にもなるが、内釜を作っている現場をこの目で確かめなければ、内釜の製造にどれほどの手間がかかっているのか、なぜこんなに値段が高いのか、という疑問の解決にもならない。

 そこで後藤氏に、ダメもとで内釜工場の取材をお願いしてみた。

 「いいですよ。製造技術の難しさの説明も兼ねて、製造現場を見ていただくのが一番分かりやすいでしょう。象印としてもカタログやWebなどで内釜の製造工程などを紹介していますが、どれほど職人の手によるものなのかを語るのは非常に難しいんですよ。協力していただいている社名を出さないという条件なら、岩手県の内釜工場を特別にお見せしますよ」

 なんと取材OK! さっそく一路、岩手県奥州市にある、極め羽釜の内釜工場へ向かった。そこで見た光景は、13万円以上という価格にも納得のいくものだった。なにより職人のこだわりと知恵と技にあふれ、正真正銘の南部鉄器、いや南部鉄器以上の内釜だったのだ。(後編に続く)

次回は内釜の製造工程を徹底取材。職人の技術や、南部鉄器を作る難しさを紹介するぞ!

藤山 哲人