家電製品ミニレビュー
パナのロボット掃除機は日本の間取りにあった動きが秀逸! おにぎり型の「ルーロ」
by 藤山 哲人(2016/1/5 07:00)
家電量販店のロボット掃除機コーナーでも、ひときわ目立つ存在がパナソニックのルーロだ。おにぎり型と言ってしまうとそれで終わりなのだが(笑)、実はこの形、メカ好や数学好きな人にとっては「やるなぁ!」と思わせる形なのだ。
メーカー名 | パナソニック |
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製品名 | ロボット掃除機「RULO(ルーロ)」 |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 73,500円 |
第一印象はとても静か。さらに部屋の角という角を徹底的にキレイにしてくれる。これだけていねいに部屋の隅を掃除するロボットは見たことがなく「さすがは国産パナソニック」と思わせる。
今回はルーロのできばえをチェックしてみよう。
実はおにぎり型デザインじゃない! 袋小路でもUターンできる不思議な三角
このおにぎり型は、すごく不思議な形でその名も「ルーローの三角形」と言われている。お気づきの通り、製品名はここから取っている。他のロボット掃除機は、9割が丸型。
これには理由があって、ダイニングテーブルのイスの隙間を縫って袋小路に入り込んでしまっても、まんマルなので180度反転して、脱出できるからだ。つまり袋小路で立ち往生しない。だからロボット掃除機はみんな丸いのだ。
一方このおにぎり型ことルーローの三角形。ダイニングのイスの間に入ったら、いかにも引っかかりそうな形をしているのだが、実は180度ターンができる。
ルーロはこんな感じで前進する。そのまま幅ピッタリの袋小路の奥に付き当たってしまった場合を見てみよう。
丸型のように反転するのではなく、右に左に後ろにと難しい車輪の動きをしなければならないものの、ちゃんと180度Uターンできるのだ。
しかもおにぎり型はロボット掃除機にとって理想的な形。丸型のロボット掃除機が各社アレコレ工夫を凝らしている、前方の回転ブラシ。これは前方のゴミを集じんする機能もあるが、丸いロボットでは絶対掃除できないコーナーの死角を掃除するためのもの。
丸い掃除機はいくら壁に寄せても、四角いコーナーとの間にスペースができてしまう。いわゆるデッドスペースだ。これをなくすために前方に回転ブラシを持っているが、あまり大きくすると、コーナーのゴミは取れるが部屋の中央ではゴミを蹴散らしてしまう。しかも自分の車輪でブラシを踏んでつまずいてしまいかねない。逆に小さいとコーナーの隅々まで届かない。
でもルーローの三角は、丸に比べて圧倒的にデッドスペースが少ない。つまり小さいブラシでコーナーの隅々まで掃除できるのだ。
ルーロがおにぎり型なのは、単なるデザインではなく、丸いロボット掃除機には絶対真似でない、部屋のコーナーをう一番キレイにしてくれる三角形でかつ、丸と同じように袋小路でUターンできるからなのだ。
走行パターンは壁周り+ランダム
ルーロの走行パターンは、まず部屋の外周を壁にそって掃除し、その後部屋全体をランダムに走り回る。おそらく最初の壁伝い走行で部屋全体の大きさや形を認識しているのだろう。また見ていて気になったのが、部屋をいくつかの四角形に分割して掃除しているような動きを見せていたことだ。
たとえば廊下でつながっているリビングとキッチンなら、細長い廊下の四角、細長く小さい四角のキッチン、大きな正方形のリビングという区域に分割しているように感じた。実際のプログラムがどのようになっているかは、エンジニアに聞いてみないと分からないが、区域に分割することで第2段階のランダム走行で効率よく掃除をしているように見える。
部屋を一巡すると部屋をジグザクと走り回るランダム走行になる。ランダムといっても掃除する場所によってムラがあるわけでなく、同じ箇所をだいたい2~3回通るようになっているようだ。この走行パターンは一番売れているロボット掃除機「ルンバ(980以外)」とほぼ同じに見えた。
通常使う自動モードは、このような動作で部屋を45~60分でキレイにしてくれる。それ以外にもよりキレイにする念入りモード、作業をした1.5m程度の範囲のみを掃除するスポットモードも備えている。
なお毎日の予約運転は、曜日指定ができないタイプ。指定時間後に、運転を開始するタイマーなどもある。出かける時間などにセットしておけば便利だろう。スマホと連携して、曜日ごとに細かく運転時刻を設定できる機種もあるが、筆者が使っている分には予約機能はあまり必要ない。だって出かけるときにスタートボタンを押せばいいだけだから……。
隅っこのキレイさはロボット掃除機No1!
特徴的なのは、角を見つけると「ここぞ!」とばかりに徹底的に掃除するということ。まずは車幅ギリギリまで壁に寄せ、頭を左右に振ることでコーナーのゴミを吐き出す。これを吸い込み終えると、いったん少しバックしてもう1回同じ動作を繰り返す。
この動作は、ルーローが「隅」と感じたところすべてに対して行なわれる。壁沿いに部屋を周回している場合はもちろん、ランダム走行中でも家具による「隅」ができている場合なども、隅っこ清掃動作をする。
デッドスペースの少ないルーローの三角形と隅っこ清掃動作のマッチングは、これまでに類を見ない隅っこのキレイさを誇っていた。
エリア登録機能でキッチンだけ自動清掃
ルーロを便利に使う機能の1つでオススメしたいのが、エリア登録機能。通常のロボット掃除機は、床がつながっていればリビングからキッチン、廊下まで掃除する。メーカーや機種によっては、部屋の間仕切りをするジュース缶程度の装置を置くと、そこから先に侵入しないようにできる。
ルーロは一歩進んでいて、間仕切り装置を置かなくても、キッチンだけ掃除ができる賢い機能を持つ。それがエリア登録機能だ。
使い方は簡単で、リモコンを使ってルーロを充電器からキッチンまで移動させる。移動の要領はラジコンと同じなので簡単だ。最後にリモコンのエリア登録ボタンを押す。
ルーロはこれで充電器からキッチンまでの道のりを覚え、キッチン(と思われる領域)のみを掃除するようになる。たとえばお菓子作りをしたので、キッチンだけ掃除機をかける場合は、エリアボタンを押すだけ。ルーロは自動的に充電台を離れキッチンまで向かい、一通り掃除を終えると充電台に戻る。
エリアは2箇所まで登録できるので、キッチンと廊下などを登録しておくといい。実際使ってみると、利用頻度が高くとても便利に使える機能だった。間仕切り装置のように、かがんでスイッチON/OFFをする必要もなくスイッチひとつで特定の部屋だけど掃除できる機能は、今後スタンダードな機能になっていくかも知れない。
国産ロボット掃除機として、一番最後に登場しただけに、色々洗練されている。運転音の静かさもそのひとつで、フローリングなどさほど吸引力を必要としない場所では自動的にモーターを静かにして運転する。また目に見えないほどの微粒子のゴミでも、そこにゴミが多ければセンサーが検知し、吸引力を高めるようになっている。
パナソニックのルーロは、じゅうたんを敷いていなければ、寝ている間に掃除させておいても、安眠を妨害されることはないだろう。ただしふすま越しだと音が響いてくるので、あくまでドアで仕切られた寝室限定だ。
ダストカップが小さいのでこまめにゴミ捨て
気になったのは、ダストカップの容量。容量は0.1L、つまり100ccしかない。
いつもの実験のように床のアチコチに擬似ゴミを撒いて、清掃テストしたものの、カップの容量をオーバーしてしまい実験は失敗。そこでルーロは擬似ゴミの量をいつもの半分にして再実験した。
他のロボット掃除機に比べるとカップの容量が半分ほどしかなく、ゴミ捨て時ににも注意してカップを引き上げないとゴミがこぼれてしまうなど、ダストカップの改良点は残る。
ロボット掃除機としての性能は優秀!
清掃性能のレベルはかなり高い部類で、優秀なロボット掃除機の部類に入る仕上がりだ。ブラシはキャニスター型のヘッドと同じ回転式で、異なる2種類のブラシでゴミを掻き出しながら吸引する。
なお実験では擬似花粉を使い、排気で舞ってしまわないかのテストも行なったが、なんと排気口はデザインに隠された上部スリットから出ているため、床のゴミを散らかすこともない。
コーナーのキレイさ、床の仕上がりともに、国産ロボット掃除機の中では1,2を競えるだろう。ナンバーワンシェアのルンバと比べるなら、エントリーモデルの600シリーズより高機能、800シリーズまでは僅かに至らないという感じだ。
最後発だけにイイトコ取りの静かな掃除機
これまでのパナソニックなら当然丸型のロボット掃除機を出すものだろうと踏んでいた筆者。しかし丸型ではなく、あえて制御の難しいおにぎり型のルーローの三角形にしてきたあたりが、ロボット掃除機への意気込みを感じられる。なによりすべてにおいて平均点だったパナソニックが、尖った「何か」を盛り込んでくるようになった。
ルーロはその尖った技術をチョイチョイつぎ込んで、国産ロボット掃除機としては最高峰に近い性能を見せてくれた。後発だけに各メーカーの問題点もよく考慮されている。
日本人ならではの静かさや隅っこのキレイさを求めるなら、ルンバよりパナソニックを選ぶという選択肢もありだろう。