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産業用から付加価値のある住宅用へ~2014年の太陽光発電はこう変わる

 7月30日~8月1日の3日間、東京ビックサイトで太陽光発電に関する総合イベント「PV Japan 2014」が開催されている。

太陽光発電に関するイベント「PV Japan 2014」が、東京ビッグサイトで8月1日まで開催される

 主催者である太陽光発電所協会(JPEA)によると、国内での太陽電池の出荷量は2011年に1,404MWだったのが、2012年には3,809MW、2013年には8,546MWと急増しており、2014年もその伸びは続いているという。

 そうした中で開催されたPV Japan 2014は昨年同様、多くの企業が出展するとともに、太陽光発電の設置業者や販売店の人を中心に、多くの来場者で賑わっていた。

メガソーラーから住宅用の高効率型、省エネ型へシフト

 一昨年、昨年は固定価格買取制度(FIT)のスタートにより、PV Japan会場においてもメガソーラーをはじめとする産業用が大きな目玉となっていたが、今年はやや雰囲気も変わってきた点も感じられた。

 太陽光発電のモニタリングーサービス、エコめがねを展開するNTTスマイルエナジーの代表取締役社長である谷口裕昭氏は、「FITによる特需で、設置業者も、ここ2年は産業用にシフトしていましたが、各社とも“住宅に力を入れたい”と言っています。やはりFITの価格が下がってきたことで、将来への危機感が出てきているのだと思いますが、現実的には産業側での工事残も多く、動けていないようですね」と話す。

 会場を見回してみると、確かに国内メーカーを中心に「狭い屋根でも多くの発電ができる高効率型」、「蓄電池を組み合わせた災害時に強いシステム」、「HEMSと連携させた、省エネ型」などが目立った。

パナソニック――リチウムイオン電池とパワコンを合わせた「創蓄連携システム」を展示

 パナソニックでは「創蓄連携システム」として4.56kWhタイプ、9.3kWhタイプのリチウムイオン電池とパワコンを組み合わせた製品を展示。4.56kWで191万円、9.3kWで336万円と高価ではあるが、普段ピークシフトなどで電気代を削減できると同時に、災害時にも大きな威力を発揮させられるという。

 また同社では、これまでもHIT太陽電池という高効率な太陽電池セルで業界をリードしてきたが、さらに性能を上げ、研究レベルにおいて世界最高のセル変換効率25.6%を達成したという開発中のセルの展示も行なっていた。

4.56kWhタイプ、9.3kWhタイプのリチウムイオン電池とパワコンを組み合わせた創蓄連携システム
研究レベルにおいて世界最高のセル変換効率25.6%を達成した開発中のセルも展示されていた

京セラ――スマホやPCと連携する住宅向けのHEMS機器に注力

 一方、京セラは、これまで多結晶シリコンの太陽電池メーカーとして長い歴史を歩んできた企業だが、住宅でより高効率を目指すため、今年4月から単結晶シリコンのモジュールの販売を開始している。

 現行商品では48セルで210Wという製品だが、今回参考出品していたのは、セルベースでの出力をさらに向上させ、同じサイズながら220Wのもの。まだ時期は未定だが、来春くらいの発売を目指しているという。

 さらに、同社では太陽電池製品と組み合わせて使うHEMS機器にも力を入れている。現在大きく3つのラインナップがあるが、いま売れているのが「Smart-REACH HEMS」という製品で、太陽光発電の出力をクラウドに記録していくと同時に、PCやスマホでその状況を確認できるというもの。

 こうしたモニタリングに加え、「ECHONET LITE」を利用してスマート家電と連携させたり、蓄電池と連携した電力管理ができるようになっているという。

単結晶シリコンのモジュールを展示する京セラブース
住宅用の高効率単結晶太陽電池モジュール
「ECONONAVI IV」「Smart-REACH HEMS」「HOUSMILE-Navi」の3種類のHEMS機器を紹介している
Smart-REACH HEMSでは、太陽光発電の出力をクラウドに記録しながら、PCやスマホでその状況を確認できる

三菱――世界初となる電力供給システムを公開

 また、三菱電機は太陽光発電、電気自動車を組み合わせた世界初という電力供給制御システムを展示した。従来、電気自動車から住宅への電力供給であるV2Hを行なう場合、電力会社からの電力供給を切断する非系統連系型となっていたが、今回の「SMART V2H」では太陽光発電も絡めた上で、すべてが接続できるようになっている。

 この際、ダブル発電にならないよう、太陽光発電による売電がスタートしたら、電気自動車からの電力供給がストップするように制御される仕組みになっているそうだ。

太陽光発電と電気自動車を組み合わせた、世界初の電力供給制御システムを展示
太陽光発電での売電が始まったら、電気自動車からの電力供給は止まるという

MAXEON SOLAR――住宅の屋根により多く設置できるハーフタイプモジュールを投入

 東芝に高効率太陽電池モジュールを供給している米サンパワー(ブランド名 MAXEON SOLAR)は、より多くのモジュールを屋根に設置できるよう、出力125Wのハーフタイプも投入したという。また現在は東芝だけでなく、シャープへのOEM供給を始めているが、高効率太陽電池へのニーズはさらに高まっているという。

米サンパワー(MAXEON SOLAR)は、東芝に高効率太陽電池モジュールを供給している
出力125Wのハーフタイプの投入で、より多くのモジュールを屋根に設置できるようになる

ソーラーシェアリングなど産業用の太陽光発電システムも

 そのほか、産業用でもさまざまな製品が展示されていた。

 丸文が展示していたのは、農地で営農しながら太陽光発電も行なうソーラーシェアリング用のパッケージシステム「SOLAR営農(そらぁええの~)」。単管パイプを使い比較的シンプルな架台とソーラーパネル、パワコンなどをセットにして12kWで420万円というパック。農地での太陽光発電が認められたことで、大きな需要を見込んでいるが、現状では地域ごとにソーラーシェアリングに関する考え方に違いがあり、まずは実績を作っていきたいと話していた。

 岡山のソーラー架台専門メーカー、茂山組は油圧による太陽追尾型の架台の模型を展示し、受注を開始したという。同社によると、通常のアルミ架台は1kWあたりの単価が3万円程度であるのに対し、追尾型は8万円程度。ただ、効率よく太陽を追いかけて発電できるため、より多くの出力が見込めるという。

丸文は、ソーラーシェアリング用の「SOLAR営農(そらぁええの~)」を展示
油圧を利用した太陽追尾型の架台の模型を展示した茂山組

 FITの価格の低下により、単純に大規模なメガソーラーなどの国内需要は減っていきそうだが、家庭用、産業用含め、より付加価値を高めた太陽光発電システムへとシフトが始まっている。

藤本 健