“蒸気カット”の炊飯器は子供のやけど防止に有効――国民生活センター

炊飯器をスライド式の食器棚においた際のイメージ図。子供のやけど事故が多数発生している

 国民生活センターは、炊飯中に蒸気を外に出さない“蒸気カット”式の炊飯器が、子供のやけどの防止に有効と発表した。

 同センターによると、2004年度から2009年度までに、炊飯器でやけどを負った事故事例が177件発生している。このうち、10歳未満の子供が全体の84.7%となる150件、4歳未満に限ると78.5%に当たる139件と、被害者のほとんどが乳児・幼児となっている。


炊飯器によるやけど事故のほとんどが、4歳未満の乳児・幼児となっている

 事故原因では、「炊飯器の蒸気に手をかざして」「つかまり立ちをしようとして炊飯器の蒸気が出る部分に手を置いて」「炊飯器の上に座って」など、蒸気や高温部に触れるものが多くなっている。中には、傷が深いため植皮手術が必要となった事故事例も4件あったという。

 そこで同センターでは、パナソニック・日立アプライアンス・三菱電機の3社の炊飯器において、蒸気および吹き出し口など、本体上部の温度や注意表示の調査を実施。蒸気を本体外に吹き出す“従来タイプ”と、蒸気や排気温度を抑える機構を搭載した“蒸気カットタイプ”の両者を比較した。

蒸気の温度調査に使用された炊飯器。メーカーはパナソニック・日立アプライアンス・三菱電機の3社で、蒸気や排気温度を抑える“蒸気カットタイプ”と、蒸気を本体外に吹き出す“従来タイプ”の2タイプを比べる

 従来タイプでは、いずれの製品についても、本体上部の蒸気吹き出し口から98℃以上の蒸気が出ており、身体を数秒でもかざすと、やけどの危険性があったという。さらに、吹き出し口の上方10cmでも、最高66℃と高温だったという。

 一方、蒸気カットタイプでは、蒸気吹き出し口の温度は高いものでも55℃、上方10cmでも最高31℃と、従来タイプよりも大幅に温度が低い結果となった。また、本体上部の温度についても、従来タイプよりも低いものが多かった。ただし、一部で最高67℃を越えるものがあったため、同センターでは注意が必要としている。

蒸気を本体外に吹き出す“従来タイプ”の炊飯器。いずれも吹き出し口・吹き出し口上部が高温となっている一方、“蒸気カットタイプ”では、従来タイプよりも蒸気と本体温度を大幅に抑えている
各炊飯器の最高温度。なお「6」の三菱電機・蒸気レスIHには、蒸気を給水タンクに戻す構造となっているため、吹き出し口が設けられていない

 国民生活センターでは消費者に対するアドバイスとして、炊飯器の蒸気は数秒触れただけでもやけどの危険性があるため、子供の手の届かない場所に置くことと、蒸気カットタイプの炊飯器がやけど防止に有効ということを述べている。また、業界に対しては、蒸気カットタイプの炊飯器の拡充を望むとしている。





(正藤 慶一)

2011年3月23日 13:36