日立アプライアンス、2012年度の国内家電シェア28%を目指す
日立アプライアンスの山本晴樹社長 |
日立製作所は、2011年6月16日に開催した「Hitachi IR Day 2011」において、日立アプライアンスによる空調事業および白物家電事業に関する中期経営計画について明らかにした。
2006年4月の日立アプライアンス設立時には、白物家電主要5製品(冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジ、ジャー炊飯器)において、17%だった国内市場シェアが、2010年度には24%と7ポイント上昇。これを2012年度には28%にまで引き上げる計画を明らかにした。
日立アプライアンスの山本晴樹社長は、「白物家電は国内の販売構成比が高く、日本での成長が大きなポイントとなる。2011年度以降の国内白物家電市場は低迷が予想されるが、それをはねのける省エネ性能と使い勝手を追求した製品を提案し、さらなるシェアアップを図る」と意気込みをみせた。
■震災後の課題には「日本の復旧、復興に向けた社会的責任を全うする」
日立アプライアンスでは、2010年度の売上高は前年比13%増の5,026億円。営業利益率は2.2%。そのうち、空調事業の売上高が前年比14%増の2,666億円、白物家電事業の売上高が前年比11%増の2,360億円。空調事業の売上高構成比が53%、家電事業が47%を占めた。海外売上高比率は32%となった。
空調事業においては、国内ではエコポイントと猛暑の効果があり、海外でも中国、インド、ブラジルなどでの売上げ拡大がみられたほか、白物家電事業においては、国内エコポイント効果や東南アジア、中東なのどでの売上げ拡大が影響した。
また、2010年10月に合併した照明事業により、家庭用から産業までの空調環境商品、白物家電事業に加えて、オール電化とLED照明による環境新分野への製品展開が可能になったという。
2011年度には売上高5,400億円を目指すが、「5,400億円の売上高計画は、昨年度の中期計画では2012年度での達成を見込んでいたものであり、1年前倒しで進んでいる」とした。
そのうち、空調事業の売上高が前年比9%増の2,900億円、白物家電事業の売上高が前年比6%増の2,500億円を見込んでいる。海外売上高比率は35%、営業利益率1.9%を目指す。
昨年のエコポイントの反動や猛暑効果の反動は、現時点ではみられていないが今後も注視していく必要があるとしたほか、新興国での競争激化、素材価格の高騰は引き続き課題として捉えている。
日立アプライアンスの山本晴樹社長は、「震災後に発生した部品調達、電力不足、不透明な需要というこれまでに経験したことがない3つの課題に対応していくことで、日本の復旧、復興に向けた社会的責任を全うする」と語った。
日立アプライアンスの2010年度の売上高は前年比13%増の5,026億円。そのうち、空調事業の売上高が前年比14%増の2,666億円、白物家電事業の売上高が前年比11%増の2,360億円を占める | 白物家電の国内シェアは2012年度で28%を目指す | 2011年度の業績計画の中に、震災後発生した課題を盛り込んだ |
■2015年には海外売上45%を目指す
また、2012年度の売上高目標5,600億円のうち、35%を海外売上高比率とし、2015年度には売上高で6,550億円、海外売上高比率は45%にまで引き上げる。営業利益率は2.7%を目指す。
中国、インド、ブラジル、欧州、東南アジア、中東といったグローバル事業の拡大による「地産地消」の促進を掲げ、空調事業では20拠点、家電事業では9拠点の合計29カ所の生産/販売拠点を展開している強みを生かす考えだ。
家電と空調の2つのジャンルで売上拡大を図る | 2012年度は35%、2015年には45%を海外売上高比率とする | 家電事業では9拠点、計29カ所の生産、販売拠点を構える |
山本晴樹社長 |
「グローバル戦略では、地産地消を前提としており、例えば、タイでは現地で設計する体制をとり、タイで生産し、消費地に送り出す仕組みとなっている。ここに省エネ技術が必要な場合には、日本の設計部門が支援する形になる。また、ソリューションプロジェクトと呼ばれる期に一度、営業部門、開発部門が集まる会議を開催しており、今後、それぞれの地域でどんな製品を投入すべきかを議論している」(山本晴樹社長)という。
インドでは1999年から現地企業に資本参加し、全土に約2,500店舗の販売、サービス網を構築していることを背景に、家庭用空調タイプのブランド形成に力を注ぐ。ブラジルでは、1972年から参入し、日系として唯一の生産拠点を持つ長年の経験を生かし、チラー(冷却器)および設備用セパレートエアコンでの高いシェアを維持。
1970年に現地法人を設立して41年間の歴史を持つタイでは、冷蔵庫、洗濯機、掃除機などの生産拡大および東南アジア各国や中東への出荷を拡大するという。タイ国内では2ドア以上の冷蔵庫において、日立がナンバーワンシェアだという。
「空調ビジネスでは、インド、ブラジル、中国に早い段階から進出し、生産/販売拠点を展開。家電ビジネスでもタイの生産拠点と、東南アジアと中東の販売拠点を活用できる。成長が著しい新興国において事業を積極拡大することにより、グローバル事業を拡大していくことができる」(山本晴樹社長)とした。
空調事業においては、インドで強い家庭用空調機器の販売インフラに、業務用空調機器の販売を乗せるほか、ブラジルでは逆に業務用空調機器の販売インフラに、家庭用空調機器の販売を乗せるなど、販売網の拡大に取り組む。さらに、欧州での環境規制対応製品の拡大などに取り組み、今後5年間で生産、販売に関して、240億円の投資を行なっていくという。
家電事業においては、今後5年間で170億円の投資を予定。タイの生産拠点を核にした東南アジア、中東、北アフリカでの積極的な事業拡大、日本で生産したMade in Japan戦略によるプレミアム家電製品を、日本製を好む中国、アジア主要都市において拡販するほか、冷蔵庫のキーコンポーネントである圧縮機生産の拡大に取り組む。今後、新興国におけるブランド認知度向上に向けたブランドキャンペーンも展開していくという。
90年代の早い時期から資本参加してきた強みを活かす | 現地で築いたインフラを最大限活かしていくという | 海外においての基本方針として地産地消、プレミアム戦略を掲げる |
■オール電化やIHクッキングヒーターは「震災後の影響をみていく」
一方、LED照明やオール電化などの環境新分野への取り組みとしては、現在340億円の売上高を、2012年度には500億円に拡大。2015年度には750億円にまで引き上げる。
これまでのエコキュートとIHクッキングヒーターのシェアアップによるオール電化事業の拡大に加えて、LED照明事業における製品力強化、品揃え強化により事業を拡大。ソーラーフロンティアとの連携強化により太陽光発電事業の拡大を図るという。
日立コンシューマ・マーケティングの中村晃一郎社長 |
「2009年からソーラーフロンティアと提携しており、2010年度は2,000システムを販売した。地域店での取り扱いを拡大したいと考えている。東日本大震災以降、太陽光発電への問い合わせが増えており、家庭用途以外にも問い合わせがある。BtoBにも応用範囲を広げていきたい」(日立コンシューマ・マーケティングの中村晃一郎社長)と語った。
また、「現時点では、IHクッキングヒーターは前年比10%増、エコキュートは3%減。停電で料理ができなかったことで、IHクッキングヒーターに対する懸念の声もあったが、ライフラインで最初に復旧したのが電気であり、その点で評価する声もある。また、エコキュートは、貯湯式であったため、水が確保できたという声もある。震災後の評価が、今後、どう影響するのかをみていきたい」(日立アプライアンスの山本社長)という。
日立アプライアンスの山本社長は、中期的な方向性について、「家電と空調の日立アプライアンスは、日立グループにおいて社会・生活インフラを担う企業と位置づけられる。伸びる新興国市場の攻略と、高まる省エネ指向のなかで、グローバル環境貢献企業として成長していく」とした。
LED照明やオール電化などの環境新分野は、拡大路線を目指す | 家電と空調という日立アプライアンスの強みを活かして、生活インフラを担う企業への成長を図る |
■コンシューマ事業成長の鍵は空調と家電
日立製作所では、コンシューマ事業(デジタルメディア・民生機器事業)全体の基本戦略を、「省エネ・環境配慮型生活インフラ事業の創生、拡大」とし、そのなかでも、家電・空調事業においては、「グローバル事業拡大」、「環境新分野の育成」の2つを掲げた。また、映像・コンポーネント事業では、「光ストレージ、液晶プロジェクタでのグローバルナンバーワンの創生」とした。
日立コンシューマエレクトロニクスの渡邊修徳社長 |
日立コンシューマエレクトロニクスの渡邊修徳社長は、「コンシューマ事業の成長は、日立アプライアンスの空調、家電を強化していくことで実現することになる」とした。
コンシューマ事業の2010年度の売上高は9,515億円。そのうち、白物家電事業を担当する日立アプライアンスの2010年度の売上高は5,026億円となり、コンシューマ事業全体の53%を占める。
2011年度におけるコンシューマ事業の売上高は9,500億円を目指し、そのうち日立アプライアンスの売上高は5,400億円。2012年度ではコンシューマ事業全売上高は1兆円とし、日立アプライアンスは5,600億円の売上高を目指す。
また、コンシューマ事業全体における2012年度の海外売上高比率は50%、営業利益率は2.0%を目指すという。
さらに、2011年度から、EMS(Energy Management System)事業をスタート。従来からのオール電化、LED照明、空調、液晶テレビなどの省エネ製品に加えて、太陽光発電による発電システム、蓄電池やEV充電機器による蓄電システムとを組み合わせたライフライン確保型HEMS(Home Energy Management System)へ展開するとしており、将来的にはビルまるごと、町まるごとのエコサービスとの連携を図ることになるという。
2011年7月からは、企業や店舗向けの省エネ支援サービス「Eco・pom・pa(エコ・ポン・パ)」により、消費電力の「見える化」、ピーク電力削減の「デマンドカット」、ASPサービスとを組み合わせて、HEMSの事業化を本格化するという。
白物家電事業を担当する日立アプライアンスの売り上げはコンシューマ全体の53%を占める | 日立全社における、日立アプライアンスの位置づけ | 企業や店舗向けの省エネ支援サービス「Eco・pom・pa(エコ・ポン・パ)」により、ライフライン確保型HEMS(Home Energy Management System)に展開していくという |
(大河原 克行)
2011年6月17日 00:00