グッドデザイン賞決定、パナソニックのマッサージソファやダイソンの掃除機が金賞を受賞


 財団法人日本産業デザイン振興会は、2009年度のグッドデザイン賞にて最も優れた作品に贈られる「グッドデザイン大賞」が、JR岩見沢駅の駅舎および複合駅舎に決定したと発表した。

 生活家電、照明分野からは、パナソニックのマッサージチェア「マッサージソファ EP-MS40」、ダイソンのサイクロン式掃除機「DC26 タービンヘッド エントリー」、NECライティングの「+Cline(プラスシーライン)」が、大賞の候補となる「グッドデザイン15」に選ばれていたが、この結果、次点の「グッドデザイン金賞」を受賞した。

パナソニックの「マッサージチェア EP-MS40」。デザインはパナソニック電工が務めるダイソンのサイクロン式掃除機「DC26 タービンヘッド エントリー」。2009年4月に発売したNECライティングの「+Cline (プラスシーライン)」。写真は色付きのタイプ

 グッドデザイン大賞は、6日に行なわれた大賞選出会にて決定された。同会では、グッドデザイン15に選ばれた製品の担当デザイナーが5分間のプレゼンテーションを行ない、グッドデザイン賞の受賞者や審査委員が投票。得票数の上位5位に入った製品で、改めて投票を行ない、大賞を選出する。大賞、金賞受賞作品は以下の表の通り。

メーカー・団体名製品名
グッドデザイン
大賞
ワークビジョンズ+
岩見沢レンガプロジェクト事務局
岩見沢駅複合駅舎
グッドデザイン
金賞
パナソニック電工マッサージチェア EP-MS40
ダイソンサイクロン掃除機 DC26
タービンヘッド エントリー
ロスフィーフラクタルひよけ
三菱電機主軸モータ SJ-Dシリーズ
NECライティング建築化照明器具 
+Cline(プラスシーライン)
MMC07101/09101
日立メディコデジタル超音波診断装置 
HI VISION Preirus
TOTO公共トイレ レストルーム
本田技研工業乗用車 インサイト
サムスン電子ミニノート型パソコン N310
パナソニックデジタルカメラ LUMIX DMC-GF1C
サムスン電子46型 LED液晶テレビ LED7000
ソニー液晶テレビ ブラビア ZX1シリーズ
GREEN TOKYO
ガンダムプロジェクト
実行委員会
GREEN TOKYO
ガンダムプロジェクト


 ここからは、大賞選出会にて行なわれたプレゼンテーションの内容を、生活家電3製品を中心に紹介していく。

マッサージチェアではなく“家具”をデザイン――パナソニック「マッサージソファ」


パナソニック電工 全社綜合技術部門 デザイン部 デザイン開発センター 電器デザイングループ 青木基浩氏
 プレゼンテーションのトップバッターとなったのは、パナソニックのマッサージソファ。パナソニック電工 全社綜合技術部門 デザイン部 デザイン開発センター 電器デザイングループ 青木基浩氏が登壇した。

 マッサージソファは、その名の通りソファ型のデザインが特徴のマッサージチェア。青木氏はデザインの意図について「マッサージチェアで全身をマッサージするのは、一日のうちわずか15分。それ以外の23時間45分の方がもっと重要なのではないかと思い、普段はソファとして使える、従来の“機械っぽいデザイン”のマッサージチェアとは一線を画した、新しい“家具”をデザインしようということになった」と語った。

 青木氏は、最もこだわった点について「本体デザインを『すっきりコンパクト』にすること」と指摘。そのため本製品では、リクライニング機能を省き、背もたれ部分を曲線とした“ラウンドフォルム”を採用している。このラウンドフォルムは「これまでのマッサージチェアをひっくり返し、反対側から座ってみる……という逆転の発想から生まれた」という。

 青木氏は最後に「(マッサージソファは)これからの住空間のあり方、暮らしのあり方を大きく変えられるのではないか」との可能性を示し、プレゼンテーションを締めくくった。

マッサージチェアよりも、“家具”であることを重視したという従来のマッサージチェアは、“家具”というよりかは“機械”というイメージ
背もたれが曲がっている“ラウンドフォルム”は、現行のマッサージチェアを逆に使ったイメージから誕生したフットマッサージャーも付属。首から足裏まで、全体をしっかりとマッサージできるという

日本専用、ダイソンとして最も高性能な製品――ダイソン「DC26」


ダイソン インダストリアルデザインディレクター アレックス・ノックス氏。片手でDC26を持ち、コンパクト性をアピール
 ダイソンのDC26は、マッサージチェアに次ぐ2番手。インダストリアルデザインディレクターのアレックス・ノックス氏がプレゼンテーションの舞台に立った。

 DC26は、床置き面積が「A4サイズ1枚」というコンパクトさが特徴のサイクロン式掃除機。ノックス氏はDC26について「日本市場専用に開発された、ダイソンとして最も高性能な製品。小型化するに当たって、開発段階で実際の日本の家庭においてテストを行なった」と、日本でに適した製品であることを強調。また、「掃除機をたたきつけ、床に落とし、凍らせるというテストを行なった」と、耐久性も備えている点も指摘した。硬い床の上に落とすテストは5,318回、掃除機のヘッドを金属の壁に打ち付けるテストは1万回行なったという。

 ノックス氏はまた、同社の掃除機が“吸引力が落ちない”ことを謳っている理由として、「なぜ、吸引力が低下しないことが重要なんでしょうか? それは、どの部屋からも確実にゴミを取り除くためには、継続した、変わらない強力な吸引力が必要だからです」と説明した。

 ノックス氏は最後に「きちんと機能することによって、製品の本当の美しさが生まれます。真のデザインは生活を良くすることができます。DC26が外観のデザインだけではなく、真の良いデザインとして認められることを望みます」と語り、プレゼンテーションを終えた。

従来モデル「DC22」よりも1/3という底面積の小ささが特徴DC26は日本限定モデル。実際に日本の家庭でテストした
本体を落下したり凍らせるなどの耐久試験をクリアしているというプレゼンテーションの冒頭には、ダイソンの創業者であるジェームズ・ダイソン会長が映像にて登場

LEDよりも長寿命の蛍光灯で“日本で作り、世界で売る”の実現を――NECライティング「+Cline」

NECライティング ライティングビジネス戦略チームマネージャー 粕谷康伸氏
 NECライティングの+Clineは5番手で、ライティングビジネス戦略チームマネージャーの粕谷康伸氏が登壇した。

 +Clineは、蛍光管が直径4mmと細長い蛍光灯「CCEL(冷陰極蛍光ランプ)」を使用する照明器具。一般的なLEDよりも1.5倍長い、6万時間の長寿命も特徴となっている。このほか、色を付けた特殊光、均一な発光、「配線はすべて裏側から接続できるので、表から見えない」(粕谷氏)というすっきりとした外観が特徴となる。

 +Clineは、銀座「フェラガモ」のVIPルームをはじめ、ホテルの洗面所やパン屋などで導入されているという。また、14日にオープンする「H&M新宿店」のファサード前面に、+Clineを2千本使用しているという。

 粕谷氏は、+Clineで一番こだわった部分が“日本製”であることを指摘。「+Clineは日本でデザインし、日本製の部品を使い、日本で組み立てている。テクノロジーだけではなく、デザインとテクノロジーを融合させ、“日本で作り、世界で売る”を実現したい」との展望を語った。

+Clineの特徴は、コンパクトな本体に、LEDを超える6万時間という長寿命。さらに、光が均一、配線が見えないなどのメリットがある一般的な蛍光灯と比べると、蛍光管に加え器具も小さい
+Clineの導入例。インテリアや住宅建材への組み込みが多いパン屋への導入例もある。熱を発しないため、パンに塗ってあるチョコレートも溶けないという


グッドデザイン大賞は“地方の再生”を狙う複合駅舎


グッドデザイン大賞は、受賞者や審査員による投票によって決まる。写真は開票中のようす
 すべてのプレゼンテーションが終わった後、投票が開始。上位5位までに入れば次の投票に進めるが、生活家電3製品はいずれも上位に食い込めなかった。

 大賞に選ばれたのは、2回目の投票で374票を獲得し1位となった、北海道の岩見沢駅および駅舎。2000年に消失した駅舎を、「駅から街づくりへ」をテーマに、駅舎と市民プラザ、自由通路を備えた複合駅舎へと改修。駅舎前には世界中から集められた名前入りのレンガを募り、また結婚式やイルミネーションなどのイベントを開くなど、人と人との繋がりから“地方の再生”を狙う取り組みが評価されたようだ。

第1回目の投票結果第2回目の投票結果。374票を獲得し、2位以下を100票も引き離した岩見沢駅複合駅舎がグッドデザイン大賞に輝いた岩見沢駅のデザイナーを務めたワークヴィジョンズの西村浩氏。赤い服を来ているのは、同駅のレンガ募集のプロジェクトに参加した事務員。“地方の再生”をテーマとしたプレゼンも印象的だった

岩見沢駅の複合駅舎(パンフレットを撮影)。駅と市民プラザ、南北の自由通路を兼ねている市民プラザ内部から外を見た写真。一面のガラス張りで、開放感のある作りになっている。結婚式を開いた例もあるとのこと2006年より、全世界から刻印入りのレンガの募集を開始。現在も駅舎の前に飾られているという



このほかの金賞受賞作品


TOTOの公共トイレは、2回目の投票で岩見沢駅舎に次ぐ2位。統一感のあるデザインで、利用者自身にキレイに使用することを意識づける狙いがある2回目の投票には、液晶テレビが2製品も選出された。写真は、ソニーの「ブラビア ZX1シリーズ」。2回目の投票で3番目の得票数を得た
2009年の夏に、東京・お台場に展示された「実物大ガンダム」も、2回目の投票に選出。得票数では4番目2回目の投票に残ったもうひとつの液晶テレビが、サムスン電子の46型 LED液晶テレビ「LED7000」。得票数では5番目自動車はホンダのインサイト(写真)とトヨタのプリウスが大賞候補となっていたが、いずれも2回目の投票へは進めなかった




(正藤 慶一)

2009年11月6日 22:46