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プラズマクラスターで車の運転能力が向上? シャープが検証

シャープは運転支援研究が専門の芝浦工業大学 SIT総合研究所 特任研究員の伊東敏夫博士と共同研究を実施。写真はドライビングシミュレータ実験の様子

シャープは9月26日、同社のプラズマクラスター技術について、運転能力向上効果の検証を行なったと発表した。芝浦工業大学 SIT総合研究所 特任研究員の伊東敏夫博士と共同研究を実施し、運転中のヒトに対しプラズマクラスターイオンを照射することで、運転能力が向上することを確認したという。

今回の実験は、2020年に実証した集中力維持効果だけでなく、運転者の運転行動(認知、判断、操作)に関する能力向上にも効果が期待できるとの考えのもと、手動運転と自動運転について、ドライブシミュレータを用いて行なった。

高速道路を模した走行コースを手動あるいは自動運転で走行する

プラズマクラスターイオンによる運転能力向上効果検証の試験概要は以下の通り。

試験空間は芝浦工業大学の実験室。被験者は20~24歳の男女20名。

試験方法は、高速道路を模した走行コースを手動あるいは自動運転で走行する。自動運転の試験はハンドルに手を添えた状態で行ない、前方に障害物が現れた際は手動運転に切り替わる設定で実施する。試験装置はプラズマクラスター技術搭載試験装置、ドライビングシミュレータ(DS)。試験条件は「a.プラズマクラスターイオンなし(送風のみ)」と「b.プラズマクラスターイオンあり」の各条件下で実施。

ドライビングシミュレータでの運転中にプラズマクラスターイオンを照射

手動運転では、集中力維持が前方の早期認知によるブレーキ操作およびハンドル操作に影響すると考え「1:ブレーキを踏むまでの反応時間」「2:ハンドル操作の滑らかさ」で評価。試験時間は各40分。

自動運転では、運転支援により注意力が低下し、眠気増加および手動運転への切り替え時の反応遅延が懸念されるため「3:顔表情評定による眠気評価」「4:テイクオーバー後のハンドル操作の滑らかさ」を評価。試験時間は20分間で、3のあと4を行なった。

なお、プラズマクラスターイオン濃度は被験者位置で約100,000個/cm3

顔表情評定による眠気評価と、テイクオーバー後のハンドル操作の滑らかさ評価を実施

試験の結果、手動運転についてはブレーキを踏むまでの反応時間短縮と、ハンドル操作性向上の効果が確認できたとする。

自動運転については、眠気抑制、さらに自動運転システムで対応できずヒトが運転しなければならなくなった時(テイクオーバー)のハンドル操作性向上の効果を確認したという。

共同で研究を行なった伊東敏夫博士(芝浦工業大学 SIT総合研究所 特任研究員)は、本試験について次のようにコメントした。

「手動運転の試験における反応時間測定の結果によると、プラズマクラスターイオンを照射することによって、異常検知から通常より約0.5秒早くブレーキを踏むことが確認できた。これは時速50kmで走行中であれば、約7m手前で停止できることとなる。また、現在の自動運転は、あくまで主体は運転者である『部分運転自動化』といわれるレベル2に該当し、自動運転システムが対応できない状況になると、運転者による手動運転に切り替わる可能性がある。自動運転中は運転者の注意力が低下しやすいため、眠気を抑制しハンドル操作性を向上可能なプラズマクラスター技術を応用すれば、急に手動運転に切り替わった場合でも、事故を防ぐ可能性が期待できる」。

さらに、「今後もさらなるプラズマクラスター技術の応用に期待したい」と続けた。伊東博士は運転支援研究が専門。