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ソニーが「におい」をビジネスに。新たな装置を発売

におい提示装置 NOS-DX1000の使用例

ソニーは、ニオイに関連した研究や測定を行なうための「におい提示装置 NOS-DX1000」を2023年春に発売する。医療機関や研究機関、自治体などで嗅覚測定や嗅覚トレーニング、ニオイのサンプル確認や検証などの用途を想定しており、価格はオープンプライス。想定価格は230万円前後。

NOS-DX1000は、装置に鼻を近づけて「ニオイがあるかないか」「どんなにおいか」を当てることで嗅覚を測定してアプリに記録できるもの。ソニーはこの製品で「嗅覚をDXする」としている。

におい提示装置 NOS-DX1000
鼻を近づけてニオイをかぐことで測定する

これまで同社は人の五感のうち「視覚」と「聴覚」の領域へ主に取り組んでいる中、新たに「嗅覚」の領域にも技術開発テーマを加える。

嗅覚は、記憶や感情と直結するといわれるが、認知症やパーキンソン病などにおいても、初期の段階で嗅覚が低下することも報告されている。こうした様々な病気の早期発見に向けた研究への活用など、新たな価値創出を目指す。将来的に、VRなどエンターテインメントへの展開も視野に入れている。

嗅覚測定のニーズ

従来の嗅覚測定は30分以上の時間を要するほか、試薬の発する臭気を逃がさないように専用空調設備のある試験室が必要だった。今回のNOS-DX1000での検査は5分~10分で行なえ、空調設備等の環境を気にすることなく手軽な運用を実現。現在の視力測定などと同じく健康診断に採用されることや、保険適用なども見込む。

ニオイの提示を機械化、測定を簡易に

嗅素(ニオイの素)を手軽に制御する「Tensor Valve(テンソルバルブ)テクノロジー」を独自開発し、その技術を応用して装置に搭載。

多数ある嗅素を混在させず均一に提示可能にしているのが特徴で、ニオイの提示を機械化することで、測定のプロセスを簡易化し、室内のニオイの汚染を制御。嗅素を手軽に提示できるという。なお、ニオイを発するのが主な機能であり、感知するためのセンサーは搭載しない。

NOS-DX1000のカートリッジの製造販売は、嗅素や嗅覚測定の国内における代表的製薬企業である第一薬品産業が担う。

カートリッジ

本機では、40種類がアレイ状に連なる嗅素成分を含むカートリッジを即時に切り替え、高出力かつ高ストロークな駆動で、被験者にニオイを届ける「ワイヤ式リニアアクチュエータ」を40機搭載する。

ニオイ漏れを抑制する高気密カートリッジ技術も独自開発したほか、嗅素成分を効率よく被験者に届けるために、これまでパーソナルアロマディフューザー「AROMASTIC」で培ったカートリッジ流路技術を発展させた、らせん流路構造を採用。ニオイの気流が巡るよう設計した。提示後に残るニオイ成分を速やかに除去する脱臭機構も備える。

NOS-DX1000の特徴
アプリに記録して管理/閲覧/転送できる

ソニーは今回のにおい提示装置により嗅覚能力の測定プロセスを簡易化/高精度化することで嗅覚測定の実施のハードルを下げ、鼻科や神経内科などの研究への貢献を目指す。

学術研究分野以外でも、研究開発やユーザー嗜好性のマーケティング調査など様々な用途での活用を想定。さらに、メディカル分野以外にも、他社のサービスやコンテンツと連携することで、エンターテインメントなどの幅広い領域に展開予定。実空間、バーチャル空間の双方での活用を視野に入れている。