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魚の切れ端を用いたバイオプラスチックが国際最優秀賞 ~「ジェームズ ダイソン アワード 2019」

 一般財団法人・ジェームズ ダイソン財団は、「問題解決のアイデア」をテーマにした、学生~若手エンジニア向けの国際エンジニアリングアワード「ジェームズ ダイソン アワード 2019」(James Dyson Award、以下JDA)の選考結果を発表した。国際最優秀賞は、イギリス・サセックス大学の学生1名が開発した、魚廃棄物を活用したバイオプラスチック「Marina Tex」。

魚廃棄物を活用したバイオプラスチック「Marina Tex」

 JDAは、エンジニアリングやプロダクトデザインなどを専攻している18歳以上の学生(専門学校、高等専門学校、短期大学、大学、大学院)、または卒業後4年以内の人を対象にした、国際エンジニアリングアワード。今年で15回目の開催となり、参加対象国は計27の国と地域。

 選考フローは、まず各国が国内審査で最大3作品を選出。その中の1作品が国内最優秀賞に決定。その後国際審査に進み、ダイソンのエンジニアが第1審査通過作品を審査し、国際TOP20を選出。最終審査では、ダイソン創業者であるジェームズ・ダイソン氏自身が、国際TOP20作品から国際最優秀賞1作品、準優秀賞2作品を選出する。

国際最優秀賞:魚廃棄物から生成されたバイオプラスチック

 国際最優秀賞は、イギリス・サセックス大学の学生1名が開発した、魚廃棄物を活用したバイオプラスチック「Marina Tex」に決定。水産加工において排出される魚の切れ端を用いており、魚廃棄物から抽出したタンパク質を、紅藻類と結合させる製法でバイオプラスチックを開発した。

魚廃棄物から抽出したタンパク質を、紅藻類と結合させる製法で開発したバイオプラスチック「Marina Tex」

 強度と柔軟性を備えた透明なシート状素材で、見た目も触り心地もプラスチックと変わらないように見えるという。4~6週間で生物分解し、家庭でのたい肥処理に適し、毒性物質が浸出しない点が特徴。大西洋タラ1匹で、Marina Tex1,400袋分を生み出せるとする。

 開発に伴う実験のほとんどが、学生寮のキッチンで行なわれ、専用の廃棄物処理施設を必要とせずに生成可能。また、水産業の副産物を利用するため、購入・使用・廃棄という流れを変え、製品寿命を循環型へとシフトさせる助けになるという。使い捨てプラスチックと、水産加工において排出される魚廃棄物という2つの社会課題に取り組んだとする。

 「Marina Tex」を開発した、ルーシーヒューズ氏は以下のようにコメント。

 「プラスチックは優れた素材です。優れているがゆえに設計者もエンジニアもプラスチックに頼りすぎるようになりました。寿命が1日もないような製品に高耐久性素材であるプラスチックを使うことは意味をなさないと思います。MarinaTex は、持続可能性、地元調達、循環型という価値観を設計に取り入れることによる素材イノベーションの形です」

国際準優秀賞

 国際準優秀賞は、イギリスのインペリアルカレッジロンドンの学生が開発した、喘息管理ウェアラブルデバイス「Afflo」と、オーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学の学生が開発した、湾岸線での移動を容易にする脱着可能な手動車椅子タイヤ「Gecko Traxx」。

喘息管理ウェアラブルデバイス「Afflo」
手動車椅子タイヤ「Gecko Traxx」

国内優秀賞

 日本国内では、過去最多となる51作品が集まった。国内最優秀賞は、法政大学大学院チームが開発した、子ども用自転車のヘルメットとロックの連動システム「PROLO」に決定。

子ども用自転車のヘルメットとロックの連動システム「PROLO」

 国内準優秀賞は、盲ろう者のコミュニケーションをサポートするウェアラブルデバイス「Ubitone(ゆびとん)」(大阪大学大学院と大阪市立大学のチーム)と、遠隔のユーザーと身体的な動作共有を可能にする身体代理システム「Fusion: Full Body Surrogacy for Collaborative Communication」(慶應義塾大学大学院と東京大学大学院のチーム)。

 なお日本国内から国際TOP20に選出されたのは、「PROLO」と「Ubitone」の2作品。

ウェアラブルデバイス「Ubitone」
身体代理システム「Fusion: Full Body Surrogacy for Collaborative Communication」