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光・風・音・香りで「屋久島の自然」も再現、五感を刺激するパナソニックの空間提案「Reboot Space」を一足先に体験

 デパートなどが照明や内装で「高級感」「非日常感」を演出するように、商業施設やマンションのエントランスなど非住宅空間の多くもターゲットユーザーにあわせた空間演出をしている。そんななか、とくに「空気質・水質」にこだわった空間演出の提案しているのが、パナソニック エコシステムズだ。

 同社8月5日、愛知県春日井市のパナソニック敷地内に、五感を刺激するような空間演出を体験できる価値提案スペース「Reboot Space(リブート・スペース)」を開設。オフィスや商業施設などのオーナー、設計担当者といった非住宅分野向けに展開する。オープンに先立って、プレス向けの体験会が開催された。

 Reboot Spaceではパナソニックのさまざまな技術を駆使して、空気や光や音、映像などをコントロール。「臨場感を感じられる空間」「清潔・安心感のある空間」など4つのコンセプトで空間演出を体験できる。

パナソニックの技術を組み合わせて、さまざまなコンセプトの空間演出を展示する「Reboot Space」

気流と香りを組み合わせて「臨場感」を演出

 最初に体験したのは「臨場感」がテーマの体感スペースだ。ここでは、大きな液晶画面で映像を再生しつつ、画面から映像にあわせた香りが風にのって流れてくる。たとえば、花の映像には画面から花の香りが漂い、森の映像に切り替わるとヒノキのような香りが感じられる。

ビルのエントランスにドンと設置された大画面ディスプレイ。花の映像には甘い花の香り、森の映像にはシダー系の香りと、映像とリンクした香りを演出。ディスプレイの映像から直接吹いてくるような風も面白い。商業施設やビルのエントランス、待合スペースなどで利用するのに向いている演出だという

 ここで使われている技術は大きく2つ。ひとつはディスプレイの中央から風が吹いているように感じる技術。もうひとつがピンポイントに香りを届ける技術だ。

 映像の中央から風を起こす技術は、画面の上下から中央にむかって気流を発生させることで実現。ディスプレイ上下のベゼルから排気された気流が画面中央でぶつかり、衝突した気流が画面前方に向かうことで、あたかもディスプレイ中心から風が発生しているようような風が作り出せるという。

ベゼルの上下には1cmほどのスリットがあり、ここから発生した風が画面中央でぶつかることで風の方向をコントロールする

 「ピンポイントに香りを届ける技術」とは、気流をコントロールすることで香りの持続性をコントロールする技術のこと。パナソニックによると、アロマなどを拡散させる一般的なディフューザーは、一度強く香ると1分以上香りが空間にとどまるという。

 しかし、今回体験した「臨場感」のスペースでは、空間にしっかりと香りを広げながらも20秒ほどで香りが拡散して消えた。映像と香りが切り替わったときには、前の香りが消えているので、複数の香りが混じることがないというメリットがあるという。

香りがどれくらいの強さで空気中に残留するかグラフ化したもの。黒い点線は従来型ディフューザー。1分ごとに香りを発生させると、香りが常に空間に残っているのがわかる。赤い折れ線は、今回のReboot Spaceでの計測。30秒以内に香りが消えている

「屋久島の自然」を再現。木の葉の影、床に落ちる水音、そよ風などで五感を刺激

 ビルのエントランスや休憩スペースなどでは、室内に「自然感」を演出するために植栽を配置することがある。Reboot Space2つ目の空間演出は、この「自然感」の演出の進化系だ。

 植栽後方からは風が吹いて葉をそよそよと揺らし、後方両脇からは雨のような水が落ちてくる。天井に映る水の反射や、風に吹かれてユラユラと揺れる木の葉の影、床に落ちる水音、肌に感じるそよ風の心地よさなど、さまざまな要素で五感を刺激。屋内にいながら「自然」を感じさせてくれるのがこのスペースの特徴だ。

自然界のような空間を演出する「自然感」がテーマのスペース。閉鎖された屋内でも自然を感じられる工夫を随所に用意。リラックス効果があるので、ビルのエントランスや待合室。オフィスの休憩スペースなどへの利用を想定している

 ここで使われている技術は「自然界のような風」を作る気流技術。扇風機を使用した従来の風は、どうしても身体の一部にピンポイントで風が当たる。

 一方、今回のスペースで発生する風はパナソニック独自の「誘引気流」を採用することで広い面に均一に風が当てることができる。さらに、今回は「屋久島の自然」を再現するため、屋久島に吹く風を実際に計測し、自然な風の「ゆらぎ」まで再現している。

風を生んでいるのは植栽後方にある木製スリット。木製の板中央にある細い隙間から勢いのある風を送風することで、板と板の間の空気が巻き込まれて滑らかな風を作り出す。さらに「自然界では風の強さは常に変化する」ため、実際に屋久島で吹く風を計測して風速のゆらぎも再現
風だけではなく、水流も重要な演出のひとつ。見た目と水音でリラックス効果を誘引。自然界にある「水が流れて海水として溜まり、雨で軟水化され、土を通ってろ過される」という循環システムをコンパクトな空間内で再現する

 このほか、時間の経過とともに光や音、香りなどが変化するのも特徴だ。朝は寒色系の照明を使いつつ鳥の声を再現。さらに柑橘系の香りや強めの送風をすることで、よりリフレッシュし、活動的になりやすい環境を演出。

 一方、夕方からは暖色系の照明に変化させ、虫の声を再現。ウッド系の香りに優しい風を送り、より落ち着いてリラックスしやすい環境にできるという。視覚だけではなく、聴覚、嗅覚、触覚にも訴えかけてくるのが面白い。

座るだけで作業がはかどりやすくなる「集中サポート」空間

 3つ目の空間は座るだけで作業がはかどりやすくなる「集中サポート」がテーマ。具体的には、椅子に座ることで卓上にスポットライトが点灯。手元の狭いエリアだけを照らすことで、周りのノイズを知覚しにくくして没入感をアップさせる仕組みだ。

 また、人が座った瞬間を狙って、集中に適したローズマリーとユーカリの香りの気流を発生。その後も、集中力が切れやすいタイミングで間欠的に送風。風と香りの刺激を与えることで、集中力が途切れたり、眠くならないようにサポートする。

光や香りの効果を応用して、集中力を高めつつ持続させやすくする空間演出。図書館や学習塾の自習スペース、オフィスの作業スペースなどへの利用を想定
椅子に座るとこのような視点に目の前の黒くて長いスリットが送風口。風が顔に当たる刺激で集中力を途切れさせない
机の下には人感センサーがあり、人が座った瞬間香りを放出。「これからやるぞ!」という気持ちの導入に最適だそう
一定のタイミングで気流と香りを送風。間欠的に刺激を与えることで集中力が落ちにくくなるという

気流のカーテンを使って「清潔安心」の空間を作り出す

 最後の展示は、風の力で空気をゾーニングし「清潔安心」できる空間を作り出すスペース。ここでは円形のソファの上にドーム状の傘天井が配置されており、この傘の下のみ除菌力のある次亜塩素酸が放出されている。

ドームの下に除菌空間を作りだす「清潔安心」を演出。人の多い商業施設や病院の待合室などを想定しているという

 ここでの特徴的な技術は、なんといっても空気のゾーニング。風をドームに向かって送風して循環させることで、ドームの下とソファーの周りにだけ独立した空調空間を作り出せる。

 今回の展示では、この独立した空間内に殺菌作用のある次亜塩素酸を放出。次亜塩素酸の濃度は傘の下だと約10ppbあり、これは約5分で浮遊ウィルスを99%除去できるレベルの濃度だという。

気流をコントロールすることで、空気の層を使って広い場所でも独立した空間を作り出し、除菌力のある次亜塩素酸を逃がさないようにするという
送風口はソファー中央の植栽の中に配置。ここから上部に吹き付けられた気流がドームで渦をつくり風の膜を形成。効率のよい気流を作るため、ソファの下には吸気口がない。送風口横にある小さな黒い円形パーツはスピーカー。音をドームに反響させることで、天井から降り注ぐような音響を楽しめ、ゾーニングされた内部にのみ音を効率よく伝えるので、ソファーに座っていない人には音がほとんどわからないという
ドーム内はドライヤーの弱風ほどの風を感じられるが、ドームから一歩離れると、風や音はほとんどわからない

 Reboot Spaceのオープニングにあたっては、パナソニック エコシステムズ 代表取締役社長・小笠原 卓氏が登壇。

 小笠原氏は「これまで我々は業務用や家庭用の空気温度をコントロールするエアコンや、空気を清浄化する空気清浄機などで『不快ではない空気』を作ってきた。これらは家電や換気システムなどの『モノの提供』だが、今後はこれらの技術に心に訴えかける体験や空間価値をグレードアップさせる価値を付加することで『コト(体験)の提供』を目指していきたい」とコメントした。

パナソニック エコシステムズ 代表取締役社長・小笠原 卓氏