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シャープ、プラズマクラスターのカビ抑制効果を生育ステージ別に実証

 シャープは、広島県立広島大学 森永 力特任教授監修の下で、プラズマクラスター技術によるカビ抑制効果を生育ステージ別に実証し、その結果について説明会を行なった。この実証結果を受け、今後はプラズマクラスターを、医療系、食品系、農業系などにも提案していきたいとしている。

プラズマクラスターがカビを生育ステージ別に抑制できることが実証された

 プラズマクラスターは、プラスとマイナスのイオンで空気を浄化する、シャープの独自技術。従来の空気清浄機のように吸い込んだ空気のみに効果があるのではなく、室内にプラズマクラスターを放出できるため、能動的な空中浄化ができる点が特徴。プラズマクラスター放出による空気浄化は、すでに除菌・消臭効果、静電気除去効果、肌保湿効果が実証されている。

シャープ 健康・環境システム事業本部 久保幸弘氏
プラズマクラスター3つの基本作用

 これまでシャープでは、全10世代のプラズマクラスター発生機を製品へ搭載しており、第10世代目にあたる最新の「プラズマクラスターNEXT」は、プラズマクラスターイオンを5万個/cm3の濃度で放出できる。

プラズマクラスター各世代の年代と市場投入時期
全10世代のプラズマクラスター発生機

 今回の実証実験で使用したプラズマクラスター発生装置は第8世代の「プラズマクラスター25000」相当で、製品搭載時のプラズマクラスターイオン濃度は2万5000個/cm3

 実験では第8世代の発生装置を、直径22cm、高さ50cmの円筒容器内へ設置して行なったため、プラズマクラスターイオンの平均濃度は2百万個/cm3となった。

実験の円筒容器と、8世代の発生機

 実証実験は、広島県立広島大学 森永 力特任教授監修の下、カビ5種類をについて、生育ステージ毎に「胞子の発芽・生長」「菌糸の成長・胞子の形成」「胞子」の3段階に分けて行なった。

実験の方法について語る、広島県立広島大学 森永 力特任教授
森永教授によれば、カビそのものが病気の原因になる場合もある

 教授によれば、カビにはキノコや酵母も含まれるため、例えば日本酒や味噌を作ったり、抗生物質の元となるといった、人体に良い作用もある。その一方で、食品を腐敗させたり、毒素を放出したり、病気やアレルギーの原因や、植物の病気の原因にもなるという。

 実際の実験は、カビ生育のいずれの段階でも胞子を寒天培地へ撒いたり植えたりした上で、プラズマクラスター照射ありとなしの環境で3日間培養し、育成したカビのコロニーの数をカウントした。「胞子」については、照射培養後に、さらに別の寒天培地で培養した結果を検証したもの。

カビの生育ステージ「胞子の発芽・生長」「菌糸の成長・胞子の形成」「胞子」の3段階
「胞子の発芽・生長」段階の検証方法
「菌糸の成長・胞子の形成」段階の検証方法
「胞子」段階の検証方法

 5種類のカビは、JIS工業規格のカビ抵抗性試験に沿ったもので、家庭に浮遊しアレルギーなどを引き起こす「アスペルギルス(黒コウジカビ)」、家庭に浮遊し食品などに生えるうえカビ毒を生産する「ペニシリウム(青カビ)」、家庭に浮遊し浴室に生える「クラドスポリウム(黒カビ)」、家庭に浮遊はしていないがムコール症の原因となる「リゾプス(クモノスカビ)」、家庭い浮遊していないが穀物や書物、衣類などに生える「ケトミウム(ケタマカビ)」。

 検証結果は、「胞子の発芽・生長」段階では、5種類中4種類のカビでコロニーが検出されず、検出された「リゾプス」でもコロニー数は8となり、総合的に99.9%の抑制率が実証された。

「胞子の発芽・生長」段階の検証結果。抑制率は99.9%にもなった

 「菌糸の生長・胞子の形成」段階では、プラズマクラスター照射の有無で、明らかな差が出る結果となった。また、プラズマクラスター照射があっても、コロニーが観察できたものについては、寒天内に菌が植え込まれた部分だったという。

「胞子の発芽・生長」段階の検証結果。プラズマクラスターが生長を抑制していることが分かる

 「胞子」の段階では、「アスペルギルス」「ペニシリウム」「ケトミウム」の3種類について、抑制効果が優位に認められることが実証された。一方抑制効果の薄かったものについては、胞子がむき出しではなく胞子のうの中に包まれているものなどがあり、プラズマクラスターが当たらなかったのではないかとした。

「胞子」段階の検証結果。「アスペルギルス」「ペニシリウム」「ケトミウム」の3種類で、抑制効果が優位に認められた

 今回の実験でプラズマクラスターが、生長ステージ別のカビへの抑制効果があると実証されたことを受け、今後シャープでは、介護施設や病院などの医療系、スーパーや野菜工場などの食品系、農業系など、B to Bでの利用も積極的に提案していきたいとしている。