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作動しなかった火災警報器は600件。設置後10年経った住宅用火災警報器の買い替えを推奨

 パナソニック エコソリューションズ社は、豊洲のハウジングショールームにて、住宅用火災警報器の「10年交換啓発セミナー」をメディア向けに実施した。

 住宅用火災警報器とは、火災を感知すると警報(アラート)を発し、居住者に知らせるもの。2006年に消防法が改正され、新築および既築住宅への設置が義務化された。そのため、義務化直後の2006年~2008年の住宅用火災警報器の納入台数は、4,720万台にのぼるという。

パナソニックの住宅用火災警報器
住宅用火災警報器の検定申請数の推移。2018年度に設置後10年を迎える機器数は4,720万台超

 一方で、住宅用火災報知器の耐用年数の目安は、約10年。古くなると電子部品の寿命や電池切れなどで、火災を感知しない恐れが出てくるという。つまり義務化直後に設置された約4,720万台の住宅用火災警報器が、交換時期に来ているのだ。

 住宅火災が発生したにも関わらず、住宅用火災警報器が作動しなかったケースが、過去5年で600件余あったと判明しているという。そのため、消防庁も適切な維持管理を呼び掛けている。

住宅用火災警報器の設置により

防災・危機管理アドバイザーの山村 武彦氏

 セミナーでは、防災システム研究所の所長、山村 武彦氏が登壇。住宅火災における住宅用火災警報器の有効性や機器交換の重要性について、防災・危機管理アドバイザーの視点から説明した。

 「2014年の消防白書によれば、建物火災による死者の約80%が住宅火災です。その住宅火災で犠牲になった方々の半数以上(56.4%)は逃げ遅れによるものです。そして、建物火災による死者の70.5%が65歳以上の高齢者でした。なぜ逃げ遅れるのかといえば、それは火災の発見が遅れるからです」

住宅火災の犠牲者の半数以上が逃げ遅れによるもの

 もっと早く火災に気が付いていれば、こうした犠牲を減らすことができたかもしれないと山村氏は指摘する。そして、火災に気が付くためにとても有用なのが、住宅用火災警報器だという。

 「消防庁は、住宅用火災警報器を未設置の場合と設置済みとでの被害の比較を発表しています。それを見ると、設置済みの場合は、死者数が3割以上減り、焼損床面積は5割近く減り、損害額は4割強減っています。住宅用火災警報器を設置することで、多くの資産損失や人的被害を減らせていることが実証されているのです」

住宅用火災警報器を未設置の場合と設置済みとでの被害の比較

 山村氏は、火災発生時の優先時を説明。まずは家族や近所に火災が発生したことを大声で知らせることが一番に必要だという。

 「消化や救助活動などよりも優先すべきことは、火事だあ!! と叫ぶことです。この一言には、火事の発生が伝わるだけでなく、助けてくれ、逃げてくれ、応援頼む、消防署に連絡してくれな全てのメッセージが入っているんです。

 自分だけでなんとかしようと思うと、煙にまかれたり逃げ遅れたりします。火災の場合は、知らせることで、逃げ遅れを防げるはずなので、早期に知らせることが大事です。住宅用火災警報器は何もしなくても、この通報を周りにしてくれるものなのです」

火災発生時の優先順位。まずは火災を知らせることが重要

 有用性の高い住宅用火災警報器だが、過去5年間に起こった火災の中で600件については、警報器が作動していなかったことが分かっているという。

 「作動しなかった要因ですが、ほとんどの場合はバッテリー切れだったようです。こうしたことは設置して10年経つと、確率は高まることで、今後急激にバッテリーが切れた火災警報器が増えていきます。特に命に関わる問題なので、深刻に受け止めて欲しいですね」

連動型の火災警報器がお薦め

 一般社団法人 日本火災報知機工業会では、設置から10年経った住宅用火災警報器については、買い替えを奨励している。電池を交換しても、古い火災警報器は、電子部品の寿命などで火災を感知しなくなることがあるためだ。

パナソニックの住宅用火災警報器
電池は交換できるが、10年をめどに買い替えを奨励

 また、単独型ではなく連動型の火災警報器への買い替えがお薦め。セミナーではパナソニックの住宅用火災警報器のアラートを実際に鳴動させ、火災場所とは違う部屋での、アラート音の聞こえ方を比較した。

 最初に単独型の警報音を、部屋のドアを開けた状態で聞く。静かにしていれば、よく聞こえるが、テレビを付けていたり、窓を開けていたりする場合は、聞き取りづらい。

 次に単独型の警報音を、部屋のドアを閉めた状態で鳴らす。静かにしていても、かすかに聞こえてくる程度。テレビを見ていたり、料理をしたり、家族で会話していれば聞こえることはないだろう。

 次にワイヤレス連動型の住宅用火災警報器を使った。他の部屋で警報音が鳴った後に、自分がいる部屋の火災警報器が鳴り始める。と同時に「他の部屋で火事です」と声で知らせてくれる。比べるまでもなく、ワイヤレス連動型のアラームはハッキリと聞こえ、寝ていても気が付くだろう。

単独型と連動型の住宅用火災警報器の聞こえ方の違い

 設置が義務付けられている住宅用火災警報器。だが、まだ設置率は100%には至っていない。また、特に戸建てでは電池が切れていたり、正常に作動するかをチェックしていない住宅もあるだろう。自宅の火災警報器をいつ設置したかは、本体に記載されているはずだ。これを期にチェックをし、10年経っていれば、買い替えるよう心がけよう。