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最速0.2秒! ほぼリアルタイムで翻訳してくれるウェアラブル音声翻訳デバイス「イリー」

 ログバーは、世界初のウェアラブル音声翻訳デバイス「ili(イリー)」を、今年の春から事業者向けにサービスを開始すると発表。価格は1アカウントごとに3,980円。なお、コンシューマー向け端末の販売時期は未定。

ウェアラブル音声翻訳デバイス「ili(イリー)」

 話した言葉を一瞬で音声翻訳するウェアラブル翻訳デバイス。発表会では、同機の特徴が4つ挙げられた。まず、シンプルなインターフェースで、誰でも簡単に使えること。インターネット不要で使える点。独自技術「STREAM(ボイス・ストリーミング・トランスレーション・システム)を採用し、最速0.2秒で翻訳してくれること。旅行に特化した辞書を搭載し、旅行シーンでの誤訳が少ない点などが挙げられた。

 インターネットに接続不要で、旅行中でも通信状態に関わらず、その瞬間に使える。さらに直感的に操作できる、自然に話すようにスムーズに気持ちを伝えられるという。

正面にある大きなメインボタンを押したり離したりすることで、話した言葉を翻訳してくれる
側面にある電源ボタン
リピートボタン
本体底部
本体がコンパクトなため、ポケットに入れて持ち運べ、どこででも取り出せる

 対応言語は、日本語/英語/中国語、さらに今後は韓国語/タイ語/スペイン語に対応予定。

 詳細な仕様は公開されなかったが、搭載するCPUは、スマートフォンやノートPCで使われるような、汎用プロセッサーを採用しているという。小型マイクを2つ搭載し、空間の中からユーザーの声の方向を的確に検出。周囲の雑音を抑えて音声取得する。また、スマートアンプを内蔵し、小型ボディでも大音量かつクリアなサウンドを実現した。

 バッテリーについては、“だいたい”1日くらいは使えるとする。ホテルを出て、1日観光してホテルに戻ってくるくらいの時間は持つと想定される。

翻訳エンジンやマイクやアンプを凝縮した小型ボディ
マイク位置(声の入力)と、スピーカーの位置を一直線に配置したことで、聞く相手が違和感なく話を聞ける

イリーを使えば、旅行がもっと楽しくなる

 発表会では、ログバーの代表取締役社長CEO 吉田卓郎氏が登壇。自身の旅行体験が、イリーを開発するきっかけとなったと語った。

 「今、英語を話すことはできますが、中国語やスペイン語はまったく話せません。中国を旅行した時に、言葉がまったく分からずに困りました。アメリカ留学時もそうでしたが、辞書や電子辞書は持っていきますが、そうしたものは会話には役立ちません」

ログバーの代表取締役社長CEO 吉田卓郎氏

 会話をする上で重要なのが、相手とのリズミカルなやり取り。辞書などで単語の意味などを調べているうちに、相手は徐々に遠ざかっていってしまうという。スマートフォンの自動翻訳アプリなども有用だが、インターネットに繋がらなければ、翻訳してくれず、電波が弱い場所では翻訳までのタイムラグが長くなってしまう。

 「そうした旅行で必要なのは、まず旅行レベルの翻訳をすぐにしてくれるもの。インターネット接続が不要なもの。かつ、サッと取り出してサッとシンプルに使えるもの。この3つの条件が必要だと考えました」

旅行で必要な翻訳機の条件は、翻訳速度が速く、インターネット接続が不要で、小さくサッと取り出して簡単に使えるもの

 続けて、ほとんど日本語で旅行できると言われているハワイへの旅を想像してみてほしいという。

 「まずは空港に着き、タクシーでホテルに行きます。タクシーの運転手に、行き先を伝えなければいけません。また、よくアメリカのタクシーは窓が開いていて、風がものすごく吹いている。そこで『窓を閉めてください』と伝えます。ホテルに着いてチェックインの時に、僕がよく聞くのが、『朝食は何時からですか』という質問です。これらがサッと取り出したイリーで出来る。イリーがあると、現地の人たちと軽いコミュニケーションが取れて、世界がブワァっと広がったような気がするはずです」

 そんなイリーの吉田氏自身が実演した。

ログバー「ili(イリー)」の実演

 外国語の習得レベルは、4段階に分けられるという。吉田氏が挙げたのは、「まったく通じない」、「少し通じる」、「まぁまぁ通じる」、「通じる」の4段階だ。この中で、旅行をしていて楽しいのが、「少し通じる」と「まぁまぁ通じる」レベル。

 この「少し通じる」や「まぁまぁ通じる」レベルまで外国語が話せるようになるには、莫大な時間が掛かる。イリーを使えば、そうしたレベルに一瞬で到達できるのだという。

イリーを使えば、外国語が「少し通じる」や「まぁまぁ通じる」レベルに一瞬で到達できる

「イリーには出来ないことも多い」

 最速0.2秒で翻訳するために、イリーが削ぎ取った部分は少なくない。まず、最初に挙げられたのが、「旅行に特化した辞書を搭載していること」。

 吉田氏は例として「たかい」という言葉を挙げた。

 「『たかいです』という言葉には、代表的なもので2つの意味があります。1つは『It is expensive』で、もう1つが『It is high』です。旅行で使われる頻度が高いのは『It is expensive』です。だからイリーは、『たかいです』と言えば、『It is expensive』と訳します。ここで、この場合の『たかい』はどちらだろうと迷ってしますと、翻訳速度が落ちてしまうんです」

 また、ワンフレーズにフォーカスしているという。「〜〜だから、〜〜で、〜〜したいです」などの長文には対応していない。これは使用時のポイントでもあるとし、短文=ワンフレーズごとに使ってもらいという。

旅行英語に特化して開発
長文には弱い

 もう1つは、双方向の翻訳に非対応という点。「日本語→英語」など、一方向の翻訳にのみ対応している。この点について、開発段階では双方向に翻訳できるよう進める案もあったという。だが、実際にテストを行なうと、双方向で翻訳できる機能を搭載すると、会話がスムーズにいかなかったという。それは、イリーを知らない人に、その場でイリーを渡して、使い方を理解してもらわないといけないからだ。そこで、一方向だけの翻訳に絞り、その分、データ容量に余裕を持たせ、翻訳スピードをアップさせたという。

これまでのイリーと、今後の広がり

 既にイオンモールでは、実際の店舗でイリーを使った実証が行なわれたという。同社の営業統括部 インバウンド推進グループ マネージャー 趙明氏が登壇し、次のように語った。

 「1回目は、インフォメーションスタッフだけに持たせ、2回目はお客様に持ってもらいました。3回目は双方が持って試してみました。3回目が一番、言いたいことが通じ合えているようでした。今後もお客様が、自分が言いたいことを自由に伝えられるような環境を作り、楽しく買い物をしていただけるようにしたいです」

左から、イオンモールの趙明氏、ビジョンの佐野健一氏、吉田氏、東京地下鉄の小泉博氏

 続いて登壇したのは、東京地下鉄(東京メトロ)の経営企画本部 企業価値創造本部の小泉博氏。

 「これまで東京メトロでは、旅客案内所を設け、英語の研修も行なうなどして、海外からの旅行客に対応できるようにしています。ただ、今後まだまだ海外からの旅行者は増えていき、英語、中国語、韓国語以外の言語も必要になっていくんじゃないかと思っています。そうした場合に、通信が不要で、場所を問わず使え、スムーズに会話できるイリーは魅力的です」

 3人目として登壇したのは、ビジョンの代表取締役社長、佐野健一氏。同社は、旅行用のモバイルWi-Fiルーターのレンタルサービス「Grobal Wi-Fi」を展開。4月下旬から、イリーのレンタルを開始する。

 「初めてイリーを知った時に、これは海外に行く人たちの行動ライフが劇的に変わるだろうなと思いました。それがとうとう4月下旬からレンタルを開始できることになり、今後が楽しみです」

 最後に吉田氏は次のように語り、発表会を締めくくった。

 「ある統計では、海外旅行する人は世界で10億人もいるらしいです。この10億人の全員に、数年後にはイリーを持ってもらい、海外旅行を楽しんでもらいたいと思っています」