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100年生き続ける街「藤沢SST」に、保育から介護までサポートする複合施設「ウェルネススクエア」
2016年8月29日 00:00
パナソニックが神奈川県藤沢市で推進しているスマートタウンプロジェクト「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)」において、このほど、複合施設「Wellness SQUARE南館」が竣工。2016年9月1日に、Wellness SQUARE(ウェルネススクエア)としてオープンする。
Fujisawa SSTは、2014年の街開き以降、段階的に開発が進んでおり、現在、330世帯が暮らしているという。
Wellness SQUAREは、Fujisawa SSTの基本コンセプトである「100年生き続ける街」の実現において、子供から高齢者まで、世代を超えて医療サービスおよび学習サービスを提供する中核拠点に位置づける。南館と北館で構成され、医療、看護、介護、保育などが連携し、ICTや先端技術を活用したウェルネスサービスを実現するという。
Wellness SQUAREでは、パナソニックのほかに、学研グループやアインファーマシーズ、社会福祉法人カメリア会なども参加する。
南館においては、運営の中核が学研グループとなり、同社が運営するサービス付き高齢者向け住宅を中心に、クリニック、薬局、通所介護、訪問介護施設が入居。その間で、ICTを活用した情報連携や各事業所間の人的交流を通じて、地域包括ケアネットワークの構築を目指すという。
今回竣工した南館に続いて、2017年4月には北館の開業を目指しており、Wellness SQUAREはこの2棟で構成することになる。南館と北館をあわせた敷地面積は6,891m2、延床面積は1万1,530m2。南館は地上4階、北館は地上5階となっている。
高齢者向け住宅から保育所まで、多世代の交流を促す
南館には、サービス付き高齢者向け住宅、居宅介護支援施設、訪問介護施設、通所介護(デイサービス)施設、訪問看護施設、クリニック、薬局、認可保育所、学童保育施設、学習塾が入居。そのほか、多世代の交流を促す交流ホールや、カフェなども併設する。
北館には、特別養護老人ホームや、短期入所生活介護施設が入居する。
高齢者住宅にはスマートエアコンみまもりサービスを採用
サービス付き高齢者住宅「ココファン藤沢SST」は、学研ココファンが運営。24時間ケアスタッフが常駐するほか、全室にパナソニックの「スマートエアコンみまもりサービス」を採用。
スマートエアコンとセンサーが入居者の活動量や在不在を見守り、施設職員と入居者に負担なく、介護に必要な情報を集約できるという。
「スマートエアコンみまもりサービスは、新たに開発したものであり、今回、初めて市場導入する。電波センサーで夜間の後継者の体動を検知して見える化したり、居室の温度を遠隔操作することができる」(パナソニック 役員 ビジネスソリューション本部長の井戸正弘氏)としたほか。
「電波センサーを活用することで、ベッドに横になっていても、覚醒しているか、睡眠しているかといったことがわかる。高齢者のなかには、昼夜逆転現象が起こったり、エアコンをつけずに、熱中症になってしまうというケースがある。監視カメラではプライバシー侵害の問題もあるが、それに対して、緩い形で見守りができるのが電波センサー。見守られる側にはやさしく、見守る側は確実に管理ができる。安心、安全なサービスを実現したい」(パナソニック アプライアンス社カンパニー戦略本部事業開発センターの岩井利明所長)と述べた
介護サービスでは認知症予防プログラムも
なお、パナソニックもサービス付き高齢者住宅などの介護施設事業を行なっているが、今回の主体は学研グループとなっている。
この点について、Fujisawa SST マネジメント 代表取締役社長の宮原智彦氏は、「パナソニックが展開している介護事業に比べると、Wellness SQUAREは規模が大きいため、学研グループのノウハウを活用することになった。パナソニックのサービスや介護事業のノウハウも提供していく」という。
居宅介護支援および訪問介護、通所介護を行なう「学研ココファン藤沢SST」も、学研ココファンが運営。高齢者住宅および地域の在宅高齢者に対して、ケアマネージャーがプランを作成。
介護事業者との調整をするなど、高齢者の介護の総合窓口としての役割を担うほか、ヘルパーが食事や入浴、移動時などの日常生活におる介護サポートを行なう。
通所介護では、学研が開発した認知症予防プログラム「脳元気タイム」を導入したデイサービスを提供。館内には24時間体制でスタッフが常駐するという。
学研ココファンの五郎丸徹社長は、「交流ホールは、デイサービスの送迎時間と学童保育の子どもが同じ時間に出会うこともできる。子供との触れあいは、高齢者にとっての認知症予防にもつながる。建物のなかのサービスだけでなく、サスティナブルタウン全体や地域に向けたシームレスで、包括的なサービスを提供する。ICTを活用して、従業員の負担をどう減らし、働き方を変えるのかといったことにも挑戦したい」と語る。
また、「サービス付き高齢者住宅は70室あるが、全居室に予約が入っている。部屋を見学する前に予約するという例もあり、どの部屋でもいいから入りたいという声も出ていた。こんな経験は初めてである」とした。
訪問看護の「学研ココファン・ナーシング藤沢SST」は、学研ココファン・ナーシングが運営。病気や障害を持った人が自宅などで過ごすことができるように、自宅を訪問。薬局やクリニックと連携した介護予防のほか、重介護や終末期ケアへの対応も行なう。
内科や小児科、在宅医療を提供する「スマートタウンクリニック」
一方、「藤沢スマートタウンクリニック」は、藤沢駅前で戦前から地域医療に携わってきた山内医院が初めて開業するクリニック。内科、小児科、整形外科、在宅医療を提供するほか、もの忘れ外来も行なう。
医療法人山内龍馬財団の平井 寛則理事長は、「サスティナブルとは継続可能であるという意味があるが、そのほかにも人にやさしい、環境にやさしいという意味もある。このような街に住んでいる子供から大人までが訪れやすいクリニックを目指したい。山内病院の理念は、謙虚な気持ちで、親切、丁寧、適切な医療を行なうことである。信頼を裏切らないようなクリニックになりたい」と語った。
薬局では電子おくすり手帳と居住者向け情報サービスを連携
アインファーマシーズによる「アイン薬局Fujisawa SST店」では、電子おくすり手帳とFujisawa SSTが提供する居住者向けの情報サービスとの連携により、適切な服用方法や季節ごとの健康サポート情報などを提供するという。
アインファーマシーズの大石 美也社長は、「現在、70%の人が調剤薬局で薬を購入している。一方で、処方箋がなくても、薬局で話を聞いてみるといったことが少なくなっている。新たな街がスタートするタイミングで、なんでも相談できる薬局として、3,000人の住民の全員に選んでいただける薬局になりたい。
また、Fujisawa SSTは、リテラシーが高い人が多く、そうした人たちに喜んでもらえる薬局になりたいと考えている。当社にとっても、チャレンジする薬局のモデルにしたい。様々なイベントも企画したい」と語った。
特別養護老人ホームは2017年春にオープン
また、2017年春に北館でオープンする、特別養護老人ホーム「カメリア藤沢SST」および短期入所生活介護「ショートステイカメリア藤沢SST」は、湖山医療福祉グループ 社会福祉法人カメリア会が運営。管理栄養士による栄養マネジメントや、見えるキッチンを活用したおいしい食事の実践、短期入所者に対する日常生活の介護や機能訓練などを提供し、地域の介護ニーズへの対応を行なう。
湖山医療福祉グループ・湖山 泰成代表は、「北館は来年3月25日に竣工式が行なわれる。外装デザインも、内装デザインも南館と同じ。施設を間違える可能性がある。ローマ字を名前にした特別養護老人ホームは日本で初めてではないか。それは、Fujisawa SSTのモダンなコンセプトを遵守するためである。
新たな時代の医療、介護、看護を実現する場になり、文化的で、明るい生活が、人生の最後まで送ることができる。また、介護福祉の資格を3年間で取得できる研修施設もあり、地元のケアワーカーに頼るだけでなく、新たな需要に向けて人を育成し、世の中に出していくこともできる」などと述べた。
単なる学習塾ではなく子供たちの教育をサポート
一方、学習塾では、学研エデュケーショナルが運営。幼児から中学生を対象に、全国1万5,000教室を展開し、基礎学力と考える力を養う「学研教室」による対面指導や学習コンサルティングと、ICTを活用した新オンライン学習サービス「学研ゼミ」とを組み合わせた新たな学習拠点として「学研スクエア」を展開。学研Fujisawa SST教室としてスタートする。
学研エデュケーショナルの出口鯉一社長は、「単なる学習塾ではなく、教育相談、進路相談、教育イベントなど、学研スクエアのなかで地域の子供たちの教育をサポートしていく。学研スクエアは全国第1号店であり、これを今後、全国に展開していきたい」と語った。
高齢者と子供の交流を図る保育サービス
学研ココファン・ナーサリーが運営する、認可保育所「ココファン・ナーサリー藤沢SST」および、学童保育「ココファン・キッズFujisawa SST」では、養育と教育の一体化を実践。少人数と学びで、有意義な放課後の時間を提供することができる。ココファン・キッズは学研の学童保育の新たなブランドであり、今回の拠点がその第1号となる。
Wellness SQUAREでは、これらの施設を連動させることで、今後、高齢者と子供が一緒に参画するイベントやサークル活動を企画していくという。
学研ココファンホールディングス 代表取締役社長・小早川 仁氏は、「藤沢市の認可保育園として展開する。単にお預かりするだけでなく、しっかりと幼児教育も行い、教育と保育を一体的に提供するものことになる。学研のなかで一番信頼の高い園長を投入する。期待してほしい。学童保育は、早朝から午後10時まで対応し、待機児童の問題を解消する取り組みのひとつになる」と述べた。
屋上には太陽光発電や蓄電池を備え、環境負荷を低減
一方、Wellness SQUAREの屋上には、2棟あわせて約64kW(南棟32kW、北棟36kW)の太陽光発電のほか、ガスジェネレーションシステムや蓄電池を備え、環境負荷の低減も図れるという。屋上には非常時に稼働させることができる電源設備も用意している。
健康という観点から取り組むスマートシティ
2014年に街開きしたFujisawa SSTは、パナソニックの藤沢工場の跡地を活用。スマートタウンとして再開発を行ない、東京ドーム4個分にあたる約19ha(約6万坪)の土地に、約1,000戸の住宅と3,000人が暮らす街を建設。
現在は330世帯が暮らしており、商業施設や公益施設なども進出している。総事業費は約600億円を見込む。
Fujisawa SST マネジメント 宮原 智彦社長は、「現時点では計画の約半分が完成した。今年秋には次世代物流施設を開所する予定であり、2020年には400戸の集合住宅が完成することになる」と話す。
食べる、健康、働く、学ぶ、遊ぶ、住む、育む、つながる、集うという9つのテーマにフォーカス。これをコミュニティ、モビリティ、エネルギー、セキュリティ、ウェルネスの5つのサービスによって実現することになるという。
「多くのスマートシティはエネルギーを重視した取り組みが多いが、今回のWellness SQUAREは、健康という観点への取り組みにおける中核拠点。世界的にも例がないものだといえる。地域と多世代が共生していく街を実現するサービスを生み出す。Fujisawa Wellnessは、健康という名の生きるエネルギーを発信するとともに、健康だけでなく、福祉、教育を組み合わせて、街に関わる人が触れあいながら、健やかになる街を目指す」とした。
学研ココファンホールディングス 小早川社長は、「日本は、超高齢化への対応、待機児童の問題、21世紀型教育の提供といった直面する課題がある。Wellness SQUAREでは、薬局、医療、看護による『健康』、在宅介護、高齢者住宅、介護施設による『福祉』、学童保育、学習塾、保育所による『教育』を提供することになる。健康、福祉、教育を融合し、これを一体化して提供する。
また、あらゆる世代とのつながりを創出する。Fujisawa SST型地域包括ケアを実現し、ICTを活用したシームレスな連携、住民と高齢者の互助システム、世代を問わない未病教育とともに、街に関わる人が集い、ともに暮らす街を目指し、人が本来あるべき豊かに暮らしを届けたい。Wellness SQUAREは、業種を越えた連携、世代を越えたつながり、エリアを越えたつながりを実現することになる。Wellness SQUAREは、日本で考えられる最高のチームで展開することになる」などと述べた。
サスティナブルな街作りには多世代が共生する施設が重要
午前10時30分過ぎから、Fujisawa SSTのWellness SQUAREで行なわれたオープン式典では、パナソニック ビジネスソリューション本部長の井戸 正弘役員や、学研ホールディングスの宮原 博昭社長、学研ココファンホールディングスの小早川 仁社長、神奈川県の黒岩 祐治知事のほか、パートナー企業関係者、地元関係者などが出席した。
パナソニック ビジネスソリューション本部長の井戸正弘役員は、「0歳児からお年寄りまで、多世代共生をさせる中核施設がWellness SQUAREになる。サスティナブルな街を実現するために重要な施設になり、多世代のつながり、多機能のつながり、多業種協業という3つを実現する。健康と毎日の生活を支援する場所になる」と挨拶。
「パナソニックは知恵を活用して、今後も社会課題の解決と、空間価値の向上に取り組む。神奈川県、藤沢市、パートナー、地域の方々と、周辺の事業と暮らしに貢献したい。藤沢におけるスマートタウンへの取り組みは、2020年の東京オリンピック/パラリンピック、そしてその先のレガシー形成に向けた新たな日本の社会、街づくりにつなげたい」と述べた。
また、学研ホールディングスの宮原博昭社長は、「Wellness SQUAREは健康、福祉、教育のサービスを提供する拠点。学研グループが展開するサービス付き高齢者住宅、介護サービス、認可保育園、学童保育、学習塾を展開する。他社の多数のサービスと一丸となって、サスティナブルタウンに住む人、周辺地域に住む人にサービスを提供していく。これは日本が抱える高齢者問題、待機児童問題、21世紀の教育の課題解決につながる新しい街おこしにつながると考えている」と語った。
神奈川県が目指す「いのち輝く街」
神奈川県の黒岩 祐治知事は、「この街が進化していることを心強く思っている。こういう街こそが、神奈川県が目指している『いのち輝く街』である。エネルギー自立型の街であり、そこにヘルスケアを融合させている。神奈川県では未病ということに取り組んでいる。健康と病気は白か赤という明確な色の違いで示すのではなく、白から赤にグラデーションのように変化していく。このグラデーションの部分が未病。少しでも白い方に持って行く努力が必要である。生活の現場から医療を変えていくことが大切である。
Wellness SQUAREは、それを実現するものになる。神奈川県では、未病センターを県内13カ所で認定しているが、14カ所目の未病センターとして認定する。こうした街が、みんなが目指している街であるということを堂々とアピールしていきたい」と語った。
また急な公務のために欠席となった藤沢市の鈴木恒夫市長の挨拶を、藤沢市子ども青少年部・平岩多恵子部長が代読。
「藤沢市では、藤沢市こども子育て支援事業を実施し、未来を作る子供が健やかに育ち、子育てに優しい街を目指している。Fujisawa SSTの街づくりの理念が、各地の街づくりに貢献することにも期待している」とした。
一方、感謝状を受け取った建設を担当した鈴与建設の相澤隆社長は、「Wellness SQUARE南館は官民が一体となって推進する先進的なスマートタウンプロジェクトであり、昨年、地鎮祭を行なって以来、周辺住民のご理解もあり、本日を迎えることができた。Wellness SQUARE南館は、世代を超えた人が集い、交流する場になると期待されている。
少子高齢化の日本において、その課題解決に向けた具体的なアプローチになる。先進的なプロジェクトに参加できたことは光栄であり、貴重な経験になる。社会に敵に意義の高いプロジェクトに、今後も参加していきたい」と述べた。