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パナソニックなど横浜・綱島を再開発、次世代スマートシティの創生へ
(2016/3/29 11:54)
パナソニックは3月28日、「Tsunashima サスティナブル・スマートタウン(Tsunashima SST)」のまちづくり構想について発表した。Tsunashimaサスティナブル・スマートタウンは、東急東横線綱島駅-日吉駅間の沿線地域にある、横浜市港北区綱島東の約3万7,900平方mのエリアを、次世代都市型スマートシティとして再開発するもので、2018年の街びらきを目標にしている。
事業の主体となるのは、パナソニックと野村不動産が代表幹事を務めるTsunashima SST協議会。MID都市開発(4月1日に関電不動産開発に社名を変更予定)、ユニー、アップルが幹事会員として、JXエネルギー、パナホームが一般会員としてそれぞれ参加。アドバイザリーとして慶應義塾大学、大林組、東京ガスが参加している。
「10団体と横浜市が、次世代都市型スマートシティ構想の実現を目指すことになる。今後は、セキュリティやモビリティなどのサービス事業者の参画も見込んでいる」(パナソニック 役員 井戸正弘氏)とする。
Tsunashima SST協議会は、このほど、スマートシティとしての環境目標、安心・安全目標、景観や運営規定などを「まちづくり構想書」として策定。横浜市がこれを支援していくことになる。
まちづくり構想書によると、「この街が、未来をつくっていく。Innovating the Future Together.」をコンセプトに掲げ、非居住空間と居住空間を合わせ持つ環境を実現。街に関わる企業や自治体が先進的な知恵、技術、サービスをかけあわせ、イノベーションを育み、街に関わる人々の交流が地域をグローバルへとつなぎ、より良い未来を求めて集う、都市型スマートシティを目指すという。
まちづくり構想書では、具体的な目標として、CO2排出量を2005年度比で40%削減、新エネルギーの利用率を30%以上、生活用水使用料の30%削減などを掲げている。また、CCP(コミュニティ・コンティニュイティ・プラン)は3日間、セキュリティ目標としては、街の見守りにおいては、主要出入口での映像取得率100%、タウン内の発報から駆けつけるまでの目標時間15分を目指す。
パナソニック工場跡地を再開発
Tsunashima SSTは、1960年に当時の松下通信工業が生産拠点として開設した場所。長年、通信機器などの製造を行なっていたが、2011年に閉鎖したパナソニック事業所跡地を再開発する。
Tsunashima SSTでは、約3万7,900平方mの敷地面積のうち、スマート集合住宅の敷地面積として約3,600平方mを使用。そのほか、スマート商業施設が約1万8,300平方m、スマート技術開発施設が約1万2,500平方m、スマートタウンマネジメント拠点が約3,500平方mとなる。
スマート技術開発施設では、アップルが「技術開発センター」を設置する予定。同施設では、屋上の太陽光発電システムの設置や緑化、水の再利用を行ない、従来に比べてエネルギー使用量を削減する。同センターは、すでに着工されているという。
スマートタウンマネジメント拠点内には、タウンエネルギーセンター、水素活用拠点、国際学生寮を設置する。
タウンエネルギーセンターでは、東京ガスグループと協業。同社が同エリアにおけるエネルギー一括供給事業者となる。中圧ガスによるガス系統と、特別高圧による電気系統により、タウンエネルギーセンターにエネルギーを共有。集合住宅や商業施設、研究所などに対して、エネルギーの一括供給を行なうことになるという。クリーンな都市ガスを活用した効率の高いコジェネレーションシステムを導入し、発電時に発生する熱を冷房、暖房、給湯に利用するほか、集合住宅には、エネファームを導入することになるという。
東京ガス リビング本部営業第一事業部長の早川美穂氏は、「東京ガスグループでは、チャレンジ2020のホップ、ステップ、ジャンプのステップ期間にあるが、そのなかで掲げている『総合エネルギー事業の進化』は、Tsunashima SSTの取り組みと合致する。供給安定性、経済の効率性、環境性、安全性の解決策を実現し、コンパクトな複合街区エネルギーとしての特徴を生かし、面的融通を行なえる合理モデル構築を目指す」とした。
また、水素活用拠点では、JXエネルギーと連携し、次世代エネルギーとして注目を集めている情報発信型水素提供フィールドと位置づけ、耐震設計、各種検知機など、様々な技術を活用した水素安全管理システムを採用。燃料電池自動車への水素供給のほか、水素で発電する業務用燃料電池への水素供給も検討し、未来の水素社会に向けた各種取り組みを推進する。
JXエネルギー 取締役常務執行役員 新エネルギーカンパニー・プレジデントの西島弘也氏は、「これまでENEOSの水素ステーションは全国40カ所に展開している。Tsunashima SSTでは、当社が長年培った水素製造、利用の技術ノウハウを生かしながら、パートナー各社との協業を進め、実証のフィールドとして活用したい。2020年にはレガシーとなる水素供給インフラを整備し、水素社会を切り開きたい」と述べた。
パナソニックが開発している純水素型燃料電池などの水素関連技術の実証フィールドになるとも位置づけており、住宅、店舗での水素活用も視野に入れている。
国際学生寮は、慶応義塾大学と連携して行なうもの。同大学日吉キャンパスを中心として、日本人と留学生がともに暮らし、日常的に国際性や多様性を育み、切磋琢磨できる学生寮を目指す考えで、163部屋を用意。寮内での情報発信や交流促進を学生自らが管理できるマルチサイネージシステムや、空間を用途にあわせて様々なシーンに変換できるライトコントローラ、映像によって空間を演出するスペースプレーヤーなどを導入して、学生同士のコミュニケーション活動を促進。さらに、セキュリティシステムの導入や、ウイルス抑制や高速脱臭の機能をもつ広域用空気清浄機の設置も予定している。
慶應義塾大学の岩波敦子常任理事は、「オールパナソニックのソリューションによるスマートシティとしての交流機能を活用。国際交流、地域交流、知の交流を、学生が主体となって挑戦していくことに期待している」と語った。
パナソニック主導のタウンマネジメントを担うのが、タウンマネジメントセンターだ。パナホームがデベロッパーとなって建設するもので、ここでは、都市型スマートタウンの暮らしを支えるマネジメント拠点として、タウン内コミュニティへのイベント情報の提供や、街のエネルギー情報の提供、非常時の避難誘導情報などの発信を行なう。また、街の安全、安心を見守るセキュリティカメラの集中管理や、ビジネス顧客向けのガイドツアー、センターを活用したオフィス機能の提供などを検討しているという。
スマート商業施設としては、ユニーが進出。環境配慮型次世代ショッピングセンターとして、スマートタウンおよび地域の食、健康、コミュニティ醸成の中心を担う役割を果たすという。太陽光発電やタウンエネルギーセンターの余剰廃熱を活用する空調システムの導入など、先進的な環境配慮の取り組みを実現。ネットスーパーの注文商品を店舗で受け取ることができる「街受ロッカー」の設置のほか、店内情報のみならず、気象、防災、渋滞情報、非常時の避難誘導情報などの様々な情報発信が可能なマルチサイネージシステム 、顧客の安全を守りながらマーケティングにも活用可能な多機能監視カメラ、増加する外国人客に対応する多言語翻訳システムなどの導入を検討。さらに、パナソニックの高度環境制御技術を用いて育てた新鮮で安心安全な野菜も販売するという。
ユニーの吉田譲常務取締役は、「GMS(総合スーパー)の存在価値が問われるなかで、新たな時代の新たなGMSを作り上げたいと考えている。また、エコファースト企業である実績も生かしていきたい。綱島、日吉エリアは、ユニーが大変お世話になっている地域。この地域に新たな価値を提供したい。また、Tsunashima SSTでの実績をもとに、次世代GMSモデルを他の地域にも展開していく」とした。
一方、集合住宅では、都市型スマートタウンにふさわしいサスティナブルな次世代型住宅を創造。共用部には、太陽光パネルと蓄電池を連携した創蓄連携システムを設置。再生可能エネルギーの利用効率を高める。また、非常時にはエレベーターと連動させることで、停電時のエレベーター利用も可能にするという。専有部では、エネファームと家庭用燃料電池、スマートHEMSを導入し、快適な暮らしを実現しながらも、居住者一人ひとりが意識的に、エコに取り組み、低炭素社会へ対応した住まいを実現することになるという。フレキシビリティを高める住宅プランを提供するほか、3次元データを用いた住宅販売ツールの活用や、プランセレクトの一元管理なども行なう。
野村不動産の宮嶋誠一社長は、「グローバルな視点でサスティナブルな街づくりを目指す指標として、LEED ND goldを街区全体で取得すること目標にしている。これはオリンピック選手村などにも採用されている基準である。また、各建物でCASBEE横浜Aクラス以上を目指す。さらに、大林組との協業によって、世界で初めてSCIM(Smart City Information Modeling)の試験運用を行ない、スマートシティとしてのプラットフォームを検討。各施設のエネルギーネファシリティ、コミュニティなどの街の情報を一元管理し、住む人、働く人、訪れる人が快適に過ごせるタウンマネジメントを目指す」とした。
なお、野村不動産は、近接する横浜市北区箕輪町2丁目において、敷地面積約5万6,000平方mの日吉複合開発計画を推進しており、これと一体化し、合計で9万4,000平方mの規模感で、環境未来型スマートシティとしての街づくりを進めていく姿勢も示した。
野村不動産の日吉複合開発計画では、分譲住宅や商業施設、保育園のほか、横浜市立小学校の誘致も行なうことになる。
なお、綱島・日吉エリアでは、2019年には相鉄・東急直通線の開通、新綱島駅(仮称)の新設および周辺開発、2020年の区民文化センターの開設、綱島街道の整備の前倒し整備など、エリア全体で新たな街づくりの機運が高まっているところだ。
横浜市都市整備局長の平原敏英氏は、「街のポテンシャルが高まっており、今後は多様な人が住み、働き、暮らしやすい街づくりを目指していくことになる。安全な歩行空間の整備、子育て支援施設の設備、災害時対応の強化、企業の立地環境向上、低炭素社会の実現などにおいては、企業、地域、大学が連携することが大切である」などとした。
パナソニックの津賀一宏社長は、「パナソニックは、かつて工場として、産業や地域の発展に貢献してきた土地を有効活用し、自治体、関係企業のパートナーとともに、持続的に進化する街づくりを通じて、土地や空間が持つ価値を高めるという、新たな貢献を行なっている。藤沢工場跡地を活用した神奈川県藤沢市のFujisawa SSTは、1,000戸の住宅からなる街で、一昨年の街びらき以降、持続的に進化しつづけることをコンセプトとしている。当初は、環境配慮型の街づくりを重視してきたが、その後、住民の声を聞きながら、100年続く暮らしの実現に重きをおき、知恵、技術、サービスをかけあわせて、住みよい街づくりを進めている。高齢化対策、エネルギー問題、安心・安全といった切り口で、街の資産価値、空間価値を高める挑戦を絶えず行なっている。私も何度も足を運んでいるが、訪れるたびに新たな発見があり、進化し続ける街を実現している」という。
「今回発表したTsunashima SSTは、Fujisawa SSTに続く、パナソニック事業場跡地を使った、新たな街づくり事業の第2弾となる。持続的に進化し続けるコンセプトは同じだが、都市型スマートシティへの挑戦という点が異なる。2018年の街びらきに向けて、都市ならではの問題点、社会が変化するなかで生じる新たな課題を明確化し、解決していくことが重要である。ここで得た知見やノウハウは、全世界で求められている次世代都市型スマートシティづくりに大いに生かしていく。2020年に向けて、日本が作る社会や、世界に誇れる街づくりのために、パナソニックの知恵や技術を活用したい」とした。
パナソニックでは、CRE戦略として、工場に代わる新しい地域貢献の形として、街づくりを推進している。パナソニック 役員 井戸正弘氏は、「自社遊休地などの不要資産を、単純売却し、財務面だけの貢献につなげるのではなく、街づくりから事業貢献し、地域の価値創造を目指すのがパナソニックのCREソリューション事業。空間価値の向上を通じて、財務価値の貢献、事業価値の貢献、地域貢献を図る。これらの取り組みによって、オールパナソニックでの先端技術やソリューションの拡大、住宅やクルマといった戦略事業の拡大や新規事業創出、パートナーとの協業拡大、2020年に向けた提案の実現という4つの狙いを実現していく。パナソニックでは、メーカーとしての強み、パートナーとの知恵、Fujisawa SSTのノウハウ活用で、次世代都市型街づくりを主導。達成すべき数値目標や、目標達成のための仕組みづくりなどに取り組んでいく」という。
3つのコードとして、街の景観を構成する要素や意匠に関する規定を行う「デザインコード」、次世代、地球環境を考慮した規定となる「サスティナブルコード」、便利、快適、安心、安全な暮らしに関する規定となる「スマートコード」を制定。さらに、先端技術を活用した街づくりのために、6つのスマートサービスの実現をあげている。
6つのスマートサービスでは、太陽光発電、省エネ技術、純水素型燃料電池などの活用にえる「エネルギー」、高解像度カメラや画像認識技術の活用による「セキュリティ」、電動自転車や先進モビリティインフラ技術を活用した「モビリティ」、保険や医療、フィットネスサービスを支援するICTを活用した「ウェルネス」、多言語翻訳技術やクラウドなどの次世代コミュニケーション技術を活用した「コミュニティ」、電気、水道、ガスなどにおけるセンサー技術を活用した施設インフラによる「ファシリティ」をあげている。
一方、横浜市の林文子市長は、「綱島・日吉エリアは、横浜市域のなかでも、さらなる可能性に満ちたエリアである。産業、大学が集積し、再開発が進んでいるところである。そのなかで推進されているTsunashima SSTという新たな街には、様々な機能が集まり、産官学が結集し、大きなイノベーションが創出されている。横浜市は、国から環境未来都市に選定されており、横浜スマートシティプロジェクトを推進している。横浜市の環境施策は世界をリードしている。Tsunashima SSTでは、業界、業種を超えた連携による、先進的な街づくりには大きな期待を寄せている。横浜市が目指す、企業を引き付ける未来の街づくりを演出するプロジェトである。横浜市として全力で支援していく」と述べた。