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100年生き続ける街、パナソニックの「Fujisawa SST」とは
(2014/11/28 00:00)
パナソニックは、2014年11月27日、神奈川県藤沢市のFujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)のグランドオープン式典を、同所の特設会場において開催。パナソニックの関係者のほか、Fujisawa SST協議会参加企業の関係者が参加した。
Fujisawa SSTは、パナソニックが1961年に初めて関東に進出した藤沢工場の跡地を活用した街づくりプロジェクト。東京ドーム4個分にあたる、約19ha(約6万坪)の土地に建設中のスマートタウンプロジェクトであり、約1,000戸の住宅と3,000人が暮らす街を構成。商業施設、公益施設などを配置する。総事業費は約600億円を見込んでいる。
同社では、100年続くサスティナブルな街づくりを目指し、これを「Fujisawaモデル」と定義。街づくりに向けた新たなソリューションや、新しいライフスタイルの提案に向けたタウンサービスを確立し、今後、横展開をしていくという。
2014年4月に、第一期の戸建街区が完成。約100軒が入居し、「街びらき」を行なっていたが、この度、中核施設となる「Fujisawa SST SQUARE」および複合商業施設「湘南T-SITE」が竣工。「街をつくる」ステージから、「街を育む」ステージへとフェーズチェンジしたとして、このほど、グランドオープン式典を行なった。
街を育て、100年生き続ける街づくりを目指す
挨拶したパナソニック ソリューション営業担当役員 ビジネスソリューション本部長の井戸正弘氏は、Fujisawa SSTについて次のように述べた。
「Fujisawa SSTは、パナソニックがデザインし、オールパナソニックの商品を活用する初めての取り組みになる。この街を作ることがパナソニックの目的ではなく、三世代、100年に渡り、生き続ける街づくりをパナソニックが主導していくことを目指した。街づくりから、街を育てるフェーズとなることで、それに向けた取り組みがいよいよ本格化する。Fujisawa SSTは、BtoB、BtoG、BtoCという3つの観点から取り組むことになるが、ToにはTogetherという意味を持たせ、BtoCのCにはコミュニティという意味がある。Fujisawa SST協議会参加企業には、今回新たにヤマト運輸と湖山医療福祉グループ社会福祉法人カメリア会が参加し、18社の協業体制となった。藤沢市とともに、県、国と連携しながら街を育て、街に関わる人とともに未来をつくることにも取り組む。また、パナソニックは、成長戦略のフィールドとして、Fujisawa SSTを位置づけている。パナソニックは、全国に遊休地があり、Fujisawaモデルをここに展開していく。まずは、神奈川・茅ヶ崎、神奈川・綱島、大阪・茨木の各遊休地がその対象になる。詳細については、来年春以降発表する。Fujisawaモデルの取り組みは地方創生、東北復興にも活用したい。さらに海外にも展開し、世界のFujisawaとしてブランディングしていきたい。2020年の東京オリンピックや東京パラリンピックに向けたパナソニックの提案活動のひとつにもつながる」
Fujisawa SSTでは、街全体で3MWの太陽光発電を実現。また、一軒あたり平均4.7kwの太陽光発電量を実現しているほか、3MWの蓄電をコンパクトな街のなかに実現しているのも特徴であり、こうした新たなエネルギー活用の提案も行なっていくことになる。
また、井戸役員は、「今日、11月27日は、創業者である松下幸之助の誕生日であり、ちょうど生誕120年を迎える。松下幸之助は、1977年に大阪・枚方パナタウンで、パナホームによる初めての街づくりを行なった。その際に、立派な街づくりが、生活向上、発展につながるとした。Fujisawa SSTが、幸之助生誕の日にグランドオープンを迎えたことは、この上ない想いがある」と述べた。
街の中心となるFujisawa SST SQUARE
このほどオープンしたFujisawa SST SQUAREは、「住人活動の拠点」と位置づける場所で、湘南T-SITEと一体的に整備。マネジメント機能、迎賓機能、コミュニティ醸成機能を備え、「街を育む中心的役割を担う」としている。
Fujisawa SST SQUAREの敷地面積は6,453平方m、延床面積は1,485平方mの鉄筋構造の地上2階建ての建物となっており、これを拠点として、Fujisawa SSTマネジメントが、エネルギー、セキュリィ、モビリティ、ウェルネス、コミュニティの5つのタウンサービスをパートナー企業とともに提供。街全体の環境、エネルギー、安心・安全に関する情報を集約、管理することになる。
Fujisawa SST SQUARE内には、憩いの場であり、環境教育やイベントも実施するカフェ&キッチンコーナーを持つ「SQUARE Center」、住民参加型ワークショップを展開する色とモノづくり工房である「SQUARE Lab」、環境にやさしい移動手段を提供する「SQUARE Mobility」などを設置する。
ツタヤをはじめとした湘南T-SITEで、新しいライフスタイルを提案
Fujisawa SST SQUARE南側に位置する商業施設である湘南T-SITEは、12月上旬に開業予定で、カルチュア・コンビニエンス・ストアが展開。ツタヤ書店が入居するほか、約30のテナントが入居することになる。単に商品を売る場所に留まらず、住人はもちろん湘南の地に訪れる人々の感性を刺激し、新しいライフスタイルを育てるとともに、この街で生まれる新しいライフスタイルを世界に発信し続ける拠点としている。
カルチュア・コンビニエンス・クラブの武田宣副社長は、12月開業予定の湘南T-SITEについて次のように述べた。
「湘南T-SITEは、代官山T-SITEに続く、2つめのT-SITEとなる。T-SITEは、本屋というよりも、時間を豊かに過ごすための生活提案を行なう場。Fujisawa SSTでは、どのようなことができるかを考えた結果、スローライフ、スローフードの生き方を提案し、子供が来て楽しめる、また子供と来て楽しい店舗とした。店内には、世界一となる120mのマガジンストリートを作り、コンシェルジュとコミュニケーションし、本を通してなにかを発見してもらいたいと考えている。また、ネットに代替されないことを実現する施設にしたい。街の人たちとのコミュニケーションの場として、イベントを月100回ほどやりたい。湘南T-SITEには、30店舗のテナントが入るが、すべての店舗で本を扱ったり、ツタヤ書店が各テナントの商品を扱うことも視野に入れている」
カーシェアリングや物流サービスなどとも協業
さらに、Fujisawa SSTの新たな取り組みとして、エコカーシェアリングやレンタカーサービスを活用して、車を所有しないことでの経済的な負担軽減と、敷地の有効活用が可能な戸建住宅の「カーフリー街区」を、第2期販売区域に設定。「クルマを多様に選びながら、新たなアクティビティにつなげるようにしたい」(Fujisawa SST マネジメントの宮原智彦社長)という。
また、環境にやさしい物流サービスを提供する物流拠点の準備を進めることを新たに発表した。物流サービスでは、ヤマト運輸と協業。
ヤマト運輸関東支社・田中一典支社長は、「近隣に辻堂の物流拠点を持つが、ここを活用して、Fujisawa SSTに地域貢献ができないかを考えた。エコな集配や安全な環境の実現といった点で、Fujisawa SSTの東側に物流センターを新設し、住人の声を聞きながら、単なる宅急便のお届けだけに留まらず、便利で快適な生活を支援できる物流サービスの提供を検討したい」と語った。
Fujisawa SST マネジメントの宮原智彦社長も、「ラストワンマイルのサービスとして、Fujisawa SSTだけに留まらず、近隣地域へのサービス向上にも貢献できると期待している」と述べた。
2018年度の完成に向けて、未利用地では東京オリンピックに向けた実証実験も
そのほか、2018年度に最終期の完成予定として、現在、未利用地となっている西側管理地を、パートナー企業との協業により、次世代ライフスタイルとビジネスの創出に向けた実証を行なう場として活用。12月に開業予定のEVの展示と試乗が可能な施設「カーライフラボ」では、次世代モビリティに向けた実証や、モデルハウスによる次世代ライフスタイルの検証を行なうなど、新たなイノベーションを生み出す場として活用する。
カーライフラボでは、「モビリティにおけるライフスタイルの提案、最先端ロボット技術の紹介、検証を行なう場にしたい」(カルチュア・コンビニエンス・クラブの武田宣副社長)という。
Fujisawa SST マネジメントの宮原智彦社長は、「未利用地となっている西側管理地を、Wonder! なフィールドとして活用したい。住むだけで子供の頭が良くなる部屋、自動運転や無人運転の実証実験、新たな公園のあり方も考えていきたい。企業の事業創造の場、次世代技術の提案、藤沢市の環境行動都市モデルとしても活用。東京オリンピックおよび東京パラリンピックに向けた提案に関する実証実験も行ないたい」述べた。
Fujisawa SSTでは、「まち親」という呼称を使い、住民一人一人が街の未来を育てていくという方針を打ち出しているのも特徴だといえる。
グランドオープン式典に駆けつけた神奈川県の黒岩祐治知事は、「3年8カ月前に知事に就任したときは、福島第一原発の事故により、原子力発電には限界があり、ソーラーパネルを持ちながら選挙戦を展開した。知事就任後、パナソニックのFujisawa SSTの計画を聞き、驚くとともに、100万の味方を得たと感じた。神奈川県からエネルギー革命を起こすとともに、超高齢化社会に向けたヘルスケアのニューフロンティアを実現し、健康寿命を伸ばす提案ができる。課題解決に向けたモデルをFujisawa SSTで作り上げていくことができるだろう。神奈川県も全力を尽くす」と挨拶。
また、藤沢市の鈴木恒夫市長は、「今日は富士山が見える素晴らしい天気。これをスマート日和と呼びたい」と前置きし、「世界にスマートタウンの姿を発信できることは誇りに思う。藤沢市全体とも連携して、お互いの向上につなげていきたい」と語った。