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象印の高級炊飯器に見る、10万円を超える炊飯ジャーは何が違うのか

 象印マホービンは、5.5合炊きの圧力IH炊飯ジャー「極め炊き 南部鉄器 極め羽釜 NW-AS10型」を8月21日に発売するにあたり、記者発表会を開催した。価格はオープンプライスだが、店頭予想価格14万円前後と「高級炊飯器」に位置付けられるモデルだ。

 同社が「極め羽釜」シリーズを発売してから、7代目となる新モデルはどのように進化したのか、話を聞いた。

8月21日発売の極め炊き 南部鉄器 極め羽釜 NW-AS10型
会場には歴代の「極め羽釜」も展示

さらなる粘りと甘みを引き出す「大火力」と「高圧力」

 ここ数年、炊飯ジャーの市場動向は、安価なマイコン式よりおいしく炊けるといわれるIH式にシフトしており、おいしいご飯にこだわる人が増加している。価格帯別には、今年度の販売数量は33%が19,800円以下の製品である一方、金額で見ると79,800円以上の高級モデルが24%を占めると予測されるなど、高額でもおいしく炊ける炊飯ジャーのニーズが高まっているという。

業界の動向および新製品について説明する第一事業部の後藤譲マネージャー
金額で見ると、高級炊飯ジャーのシェアが伸びている
炊飯ジャーのメーカー別シェアでは、同社が28%とトップ。「極め羽釜」シリーズが奏功しているという

 そこで同社は新モデルを開発するにあたり、従来モデルNP-Wを超えるおいしいご飯がどのようなものかを追求。様々な調味料や食材、添加物を追加し、食味検証を繰り返した結果、甘さと粘りがさらに増すと、よりおいしく感じられることが分かったという。これらを引き出すために欠かせないのが、「“大火力”と“高圧力”」と後藤マネージャーは話す。

業界最高火力の“中パッパ”工程で甘みを引き出す

 「大火力」を実現するため、極め羽釜の形状については、羽釜の“羽”を従来モデルより広げ、外釜との間の空間を広げることで、熱が対流しやすくした。さらに羽を斜めに降ろすことで、熱を閉じ込めやすくしたという。またなべ底に角度をつけることで、なべ肌から中心に向かって上がった泡がぶつかりあい、激しい対流を生み出すことができるという。

従来モデルより羽を伸ばしたことで、羽の下の熱ポケットにかまどヒーターの熱を閉じこめられ、熱が対流しやすくなったという
右が新モデルの内釜。なべ底にかなり角度がついているのがわかる

 また同社独自の「プレミアム対流」機能も新たに搭載した。炊飯工程の中でも一気に強い火力を加えたい“中パッパ”工程では、最大で業界最高の1,450Wの高火力で甘みを引き出すほか、沸騰中にかけ続けている1.15気圧の圧力を後半で一気に1.5気圧まで高め、そこから1.15気圧に減圧することで、甘み成分が浸透するという。

最大1,450Wの高火力と1.5気圧の高気圧が甘みを引き出す

内釜は熱伝導率と蓄熱性が高い日本の伝統工芸、南部鉄器

 「極め羽釜」シリーズの最高級モデルの内釜に引き続き搭載しているのが、岩手県の職人が1つ1つ作る伝統工芸、南部鉄器。南部鉄器は、蓄熱性が高くIH加熱との相性もいいそうで、もっとも高火力が必要な“中パッパ工程”でも、熱を素早く伝えてくれるという。

 ここで、炊きたてのご飯を試食させてもらった。一口食べたところ、かなり水分を含んだもっちりした食感で、甘みも強く感じられた。また同時に食べ比べたが、4時間前に「お弁当メニュー」で炊いたというご飯。こちらは、沸騰維持が始まった早い段階で、1.5気圧の高圧力をかけることで、みずみずしさが長持ちするご飯になるという。こちらは炊きたてのご飯とは違い、粘り気がかなり強く、やわらかい食感が印象的だった。

向かって左が炊きたてご飯、右が4時間前に「お弁当メニュー」で炊いたご飯
つやつや、もっちりしていて、とても甘い

業界初! フタが自動で閉まる「スマートクローズ」機能

 さらに使いやすさにもこだわり、業界で初めて、ボタンを押すと自動でフタが閉まる「スマートクローズ」機能を搭載した。フタが開いた状態で、「CLOSE」ボタンを押すと、ウイーンとモーターが稼動し、自動でゆっくりしまるもの。茶碗としゃもじを持ち、両手がふさがった状態でもフタが閉められるという

 さらにフタ部分の構造を改良し、従来は使うたびにお手入れが必要だった蒸気口セット3点分の省略を実現。お手入れするパーツの点数が6点から3点に大幅ダウンさせ、家事の手間を軽減している。

 本体サイズは305×400×245mm(幅×奥行き×高さ)で、重さは11.5kg。本体カラーはプライムブラック。

従来モデルでお手入れが必要なパーツは、内釜を入れて6つ
蒸気口セットがなくなり、内釜を入れて3つに激減
「スマートクローズ機能」は両手がふさがっているときに便利

10万円を超える高級炊飯器は、かまど炊きに近いおいしさを再現

 同社によると炊飯ジャーは各メーカーが、昔ながらのかまどと羽釜で炊いたご飯のおいしさに近づけることを目標に開発に取り組んでいるという。肝となるのが、圧力、強火、均一加熱の3要素。そして10万円を超える高級炊飯ジャーは、この3要素を最新の技術で適正にコントロールしているため、かまど炊きに近いおいしさが再現できるという。

 一方、同一メーカーでも価格が安くなればなるほど、これらの技術が徐々に削ぎ落とされてしまうため、かまど炊きのおいしさを再現するのが難しくなってくる。同社広報部の西野尚至部長は「私自身、5万円と10万円の炊飯器は何が違うのかと聞かれることも多いが、こういった違いをより広く理解していただけるよう説明していきたい」と話していた。