長期レビュー
シャープ「ウォーターオーブン ヘルシオ AX-CX1」 最終回
シャープ「ウォーターオーブン ヘルシオ AX-CX1」 |
最終回となる今回は、ヘルシオの得意分野、焼き物と揚げない揚げ物メニューをご紹介する。
基本性能をご紹介した第1回は→こちら
蒸気を使った調理例を紹介した第2回は→こちら
■トースト(モーニングセット)
レンジ機能以外にあるとうれしいベーシックな機能、それがトースト機能だ。だが、高機能オーブンレンジのハイエンドモデルでは、庫内容量が大きくトーストが焼けない場合が多い。そのため、オーブンレンジとは別にオーブントースターを買い求める人が多いのである。今回のAX-CX1はどうだろうか。
まず、AX-CX1には、ちゃんとトースト機能が用意されている。正確には「モーニングセット」というセットメニューを用いる。これは、トーストを焼きながら、アスパラのベーコン巻きと目玉焼きが同時にできるという朝食に便利な機能だが、パン単品でも調理できるのだ。調理は水を用いる「ウォーターグリル」で行なわれるため、水タンクに水位1以上の水を入れてセットしたら、角皿に直接食パンを2枚のせて下段に入れ、「モーニングセット」を選ぶ。所要時間は11分ほどで、予熱は不要だ。
今回は、セットメニューではなく、パンだけを焼いてみた。使ったのは、ホームベーカリーで作った自家製の食パンだ。完成したトーストの表面はきつね色に色づいていたが、食感は表面はサクサクしており違和感はない。従来のレギュラーモデル「AX-X2」ではパンを焼いた時にやや凝縮感があったが、AX-CX1ではそのような凝縮はなく、従来より仕上がりは良くなっている。裏側には、焦げ目は無かったので、裏まで焼き色をつけたい場合は、裏返して、更に2~3分加熱するといいようだ。
トースト前の食パン | メニュー番号9の「モーニングセット」にセット。標準に設定 | 完成したトースト |
焼きすぎず、薄すぎず、という仕上がり | 裏側に焼き色はなかったが、トーストとしての味わいは上々だった |
単品で作ると時間はかかるが、セットメニューとして活用すれば、その価値は発揮されるだろう。
■焼き魚(塩ざけ・塩さば)
次に、2人前はあろうかという巨大な塩鮭を焼いてみた。角皿に調理網を「低アミ」でセットしたら、焦げ付き防止のために網の表面にサラダ油を塗布し、上に切り身をのせる。使用するメニューは番号16の「塩ざけ・塩さば」である。
所要時間は23分少々。完成した塩鮭は、表面の焦げ目は軽めだったが、分厚い肉もなんのその、中までふんわりとまんべんなく火が通っており、非常においしくいただけた。魚焼きグリルもいいが、オーブン調理なら、完全お任せで失敗なしがメリットだ。煙も出ないので、魚を焼くのが苦手、どうも火加減が気になってその場を離れられない、中まで焼けているか気になって仕方ない、という方の強い味方といえるだろう。
分厚い切り身に挑戦。メニュー番号16の「塩ざけ・塩さば」を選択。設定は標準 | 焼き上がりはソフト。設定を強めにしてもよかったかもしれない | 裏側の様子 |
なお、過熱水蒸気には塩分を落とす効果があるというが、実際に数値として計測したわけではないので、どの程度の効果があるのかまでは分からない。ただ、角皿には塩分らしきものが落ちていたので、一定の効果はありそうだ。
箸を入れると、しっかり中まで火が通っていた。食感は柔らかい | 角皿には塩分とおぼしきものが落ちていた |
■「ハンバーグ」をゆで卵と添え野菜とともに(ウォーターオーブン・発酵)
普段使っている、従来タイプのヘルシオでかなり重宝しているのがオーブンメニューのハンバーグだ。焼き加減を気にすることなく、任せっきりにできるのは、自動メニューならではだ。これまでは単にまとめ焼きするだけで済ませていたのだが、最近レシピを確認したところ、カレーなどのセットメニュー同様に、ハンバーグを焼きながら、ゆで卵などのつけ合わせを作れることが判明。これはいつか……と思っていたら、同じ機能がAX-CX1にも搭載されていた。というわけでさっそく試してみた。
材料は、ハンバーグ2個、生卵2個、じゃがいも1個、にんじん1/2本程度。このほかにサラダ油とバター、塩胡椒適量を用意する。角皿にアルミホイルを敷いたらサラダ油を塗布し、ハンバーグを中央よりに配置する。アルミホイルで容器を作り、カットしたじゃがいもとにんじんを重ならないように入れ、10g程度のバターを乗せて、塩胡椒しておく。生卵も1つずつアルミホイルで包み、空いたスペースに配置。
角皿1枚に、じゃがいもとにんじん、ハンバーグ、アルミホイルにくるんだ卵を配置 | じゃがいもとにんじんには、バターをのせ、塩胡椒をふっておく | 卵はしっかりアルミホイルでガード。破裂防止もあるだろうが、脂のハネを防ぐ意味もあると思われる |
この角皿を下段にセットし、手動料理の21番「ウォーターオーブン・発酵」を選び、250℃で23分加熱する。すると、ジュージューと音を立てるハンバーグとともに、2品のつけ合わせが完成した。じゃがいももにんじんも充分柔らかくなっており、ゆで卵も中まで熱が通っている。ハンバーグは焦げ目こそ薄いものの、加熱は十分だ。
加熱直後の角皿の様子 | 1回の調理で、これだけのおかずができた | ハンバーグの断面。中はジューシーなままだ |
あとはお皿に並べるだけという便利さである。これならハンバーグは作ったものの、付け合わせがなくて、皿が寂しいな、と思うことがないだろう。
使用後の角皿には、ハンバーグから出たとおぼしき脂がびっしりとついていた。フライパンで焼くと、流出した脂でソースを作ってしまいたくなるが、角皿に付いた脂の量を見ると、とてもそんな気は起こらない。
じゃがいもとにんじんは、串があっさり通るほど柔らかい | ハンバーグから流れ出た脂 | ハンバーグ4個を加熱した後に、角皿に残った脂。1個分はこの1/4だとしても、結構なインパクト |
手動加熱の設定から、ウォーターオーブンによる焼き上がりまで |
■レギュラータイプのヘルシオよりも簡単!「鶏もも肉のから揚げ」
筆者がヘルシオを欲しくなったきっかけが、この揚げない「から揚げ」だ。以後定番メニューになっており、うちで作るから揚げといえばコレ! というほどである。ただちょっと面倒なのは、下味をしっかりつけておく必要があること。AX-X2の場合、まず鶏肉に十分下味をつけたうえで市販のから揚げ粉をまぶす必要があった。ゆえに、その分だけちょっと時間がかかっていたのだ。
それが、AX-CX1で用意するのは、鶏肉とから揚げ粉の2つだけになっていた。ビニール袋の中で、鶏肉にから揚げ粉を十分にまぶしたら、油を塗った低アミの上に乗せ、メニューの「から揚げ」を選ぶだけだ。2人分なら20分程度で完成する。
使用するのは鶏のむね肉2枚に、市販のから揚げ粉だけ | むね肉1枚は4等分に。よくから揚げ粉をまぶして調理網へ。肉は大きめがいいらしい | 調理網は低アミにし、油を塗っておく |
ウォーターグリルで加熱された肉の仕上がりはしっとりめで、食べてみたところ、下味は全く不要の味だった。これはうれしい。なにせ揚げ油の準備から片付けまでまったく不要な上に、から揚げ粉をまぶしたら、すぐ調理できるのである。しかも、油を吸わないどころか、脂を落とすのでカロリーもかなり控えめになる。から揚げは大好きだけど、体重は気になるという方に、ぜひおすすめしたい。
約20分後に、揚げないから揚げが完成 | ふっくらやわらかく、おいしい! 揚げ物作りが苦手な方でも安心 | 使用後の角皿には、脂が落ちているが、醤油などによる下味処理はしていないので、流出している水分は少なめのようだ |
■「フライドポテト風おつまみ」作りに挑戦(から揚げ)
実は前述の「から揚げ」にはバリエーションが存在する。鶏のから揚げを作る際、角皿の空いたスペースにカットしたじゃがいもを乗せておくと、フライドポテト風のおつまみができるというのである。しかし、隙間と言ってもスペースは限られてしまう。それに、フライドポテトがわずか数本できてもうれしくないだろう。というわけで、じゃがいもをメインに、そのバリエーションを試してみることにした。
中サイズのじゃがいもを2個用意し、7cm前後幅のスティック状にカット。サラダ油を絡めて、アルミホイルを敷いた角皿に並べた。メニューの「から揚げ」を選んで待つこと20分。色こそ薄いものの、確かにフライドポテト風のおつまみが完成した。さすがにフライドポテトの再現というわけにはいかないが、熱いうちに塩やドライパセリなどで味付けすると、結構食べる手が止まらない一品になる。
ビニール袋の中でサラダ油をまぶす | じゃがいもをアルミホイルの上に広げる | 「から揚げ」で調理 |
見た目の変化こそ少ないが、ほくほくした「フライドポテト風おつまみ」が完成 | 味は満足。焼き色をハッキリつければ、見た目にも満足できそうだ |
AX-X2には健康サポートメニューとして「フライドポテト」が単独で用意されていたが、AX-CX1にはない。しかし「から揚げ」を使えばそれらしきものは作れることが確認できた。ときおり、無性にフライドポテトが食べたくなる身としては、嬉しいメニューだ。
■「こんがりパン粉」と「ポテトコロッケ」
揚げ物の最後は「ポテトコロッケ」に挑戦してみた。ヘルシオでは、コロッケやトンカツなどパン粉を使った料理を作るには「こんがりパン粉」が必要だ。こんがりパン粉とは、本来油で揚げられたときにつく色を、あらかじめパン粉全体につけてしまうことで、ムラのないこんがりした焼き色を演出するという、ヘルシオの定番ともいえる材料である。
レシピではレンジ機能を使った作り方が紹介されているが、筆者の経験上、フライパンで、手早く作ることもできる。作り方は簡単で、サラダ油をまぶしたパン粉30gをフライパンで炒めるようにして色をつけるだけだ。フライパンで作ると、パン粉の変化もわかりやすく、手間もかからないからお勧めだ。
パン粉30gとサラダ油大さじ1.5を用意 | 5分とかからずきつね色に変化 | これがちょうどポテトコロッケ2人前分の量になる。冷凍保存も可能 |
ポテトコロッケそのものの材料に特別なものはなく、じゃがいも、みじん切りの玉ねぎ、牛挽肉、バターなどだ。味付けには塩、こしょう、ナツメグ、マヨネーズを用いる。レンジ機能を使って下ごしらえをし、コロッケの具を作って整形。薄力粉、溶き卵、こんがりパン粉の順で衣をつけたら、低アミの上に並べる。その後、「手動加熱」を押してから20番の「グリル」を選び、予熱なしで17分加熱した。
始めから衣に色がついているため、グリルが済んでも見た目に大きな変化はない。脂がジュージュー音を立てるわけでもないので、揚げて作ったコロッケほどのインパクトはないが、パン粉をまとったノンフライの「ポテトコロッケ」が確かにできあがっていた。
ポテトコロッケの材料 | 挽肉、みじん切りした玉ねぎなどの下ごしらえはレンジで行なう | ジャガイモの下ごしらえもレンジで行なう |
材料をすべてあわせる | 衣をつけて、調理網に並べる | 調理後のポテトコロッケ。見た目では調理前と変わらない |
表はグリルされたパン粉が固くなり、ザクザクと音を立てるのに対し、裏はややしっとり。気になるときはひっくり返して、さらに5分ほどグリルするといいかもしれない。味は非常にさっぱりしている。
カロリー控えめのポテトコロッケ。こんがりパン粉をもっと濃くしてもよさそう | 脂っこいものが苦手でも食べられそう |
完成したポテトコロッケの様子 |
■ヘルシオデビューにぴったりのおすすめサイズ!
今回ご紹介したメニューはごくスタンダードなものばかりだが、付属のクックブックには、彩り豊かなメニューが豊富に紹介されている。ぜひ参考にしていただきたい。
改めてAX-CX1を振り返ってみよう。手元に届いたときから感じていたのだが、やはり、まず第一にこのコンパクトさが素直にうれしい。それでいて、レギュラーサイズと同じ、ウォーターオーブンやウォーターグリルが使える。庫内はフラットなので、コンビニのお弁当でもらくらく温めなおせる広さはあるし、電子レンジ料理用のポット類も扱えるだけの高さがある。一人暮らしならこれで十分だろう。
上下2段の同時調理はできないため、AX-X2で試した酢豚のようなちょっと複雑な料理には対応していないが、蒸し物、焼き物、揚げ物、いずれも角皿1枚でできる、便利なセットメニューが豊富に取りそろえられているので、積極的に活用すれば、手間を省いて効率よく調理できる。
操作性に関しても、奇をてらったところがなく、よく使うボタンが独立していて使いやすい。メニュー、温度、加熱時間の順で設定が必要な「手動調理」キーの場合、回転つまみと上下キーを併用するため、慣れるまでは少々戸惑うかもしれないが、慣れれば問題ないだろう。運転音も従来より静かになっているような気がするし、加熱終了を知らせるアラーム音は消すこともできるので、真夜中に使用することが多い方にも親切だ。
ヘルシオの調理機能は気になっていたけど、本体サイズがネックで手がでなかった方には、絶対おすすめできる1台である。
2011年3月16日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)