長期レビュー
ブリヂストン「アンジェリーノアシスタDX」 その3
ブリヂストン「アンジェリーノアシスタDX」 |
ブリヂストン「アンジェリーノアシスタDX」の長期レビュー第3回目。前回は3人乗りならではの便利な機能についてご紹介した。[1回目はコチラ、2回目はコチラ]
今回はいよいよ、電動アシスト自転車の能力が発揮される、急な坂道に挑戦だ。さらに、遠乗りにもチャレンジしたい!
●子供2人を乗せて、急な坂道をのぼってみよう
まずは坂だ。我が家はなだらかな丘の上に位置しており、買い物へ行くのも、幼稚園などお迎えへ行くのも、アップダウンを避けては通れない。特に、買い物に行く途中にある急斜面はかなりの難所。1人乗りでも、大抵の人は降りて、ゆっくり押しているほどだ。
その急坂を、アンジェリーノアシスタDXで上ってみることにした。前と後ろに2才の息子と5才の娘2人を乗せて登るのは、これが初めての挑戦だ。ちょっと怖いが、我が家のまわりにはこのような坂がたくさんあるので、これをこなしてくれないとはっきりいって買った意味がない。
ギアを一番軽い「1」、アシストモードは「強」で、慎重にスタートした。
これが難所の坂道。こちらは下から見たところ | 坂の上から見下ろしたところ。スケール感が分かっていただけただろうか |
結果的には、立ちこぎなしで、座ったままで登りきることができた。やはり、ペダルを漕ぐとグーンと後ろから押してくれるアシスト力は何とも頼もしい。子供を2人乗せてかなり重いはずなのに、急な斜面を立ちこぎしなくてOKだなんて、なんてパワフルー! と、ニヤニヤする余裕もありながら、登りきってしまった。かなり頑張ってアシストしてくれたようで、坂を上り始めると「ウィーン」というモーター音が、急に大きくなった。
もちろん、最初から最後まで「ラクラク」というわけではない。こぎ続けているとさすがに足に負担がかかり、途中からやや疲れが出てくる。しかし、そこまで激しく疲れるわけではないので、“立ちこぎしようかな”とか、“降りて自転車を押そう”といった気持ちにはならなかった。全国にはこれよりももっと急な坂がたくさんあるだろうが、子供を2人乗せて登り切れたのは、感無量である。
最初からぐらつかず、誰かが押してくれているみたいにスーッと登ることができた。ただし、さすがに後半はスピードが落ちている |
実を言うと、この急坂でギアを「2」、アシストモードを「標準」で挑戦したところ、登り切ることができなかった。「強」モードは最もアシスト力が強い(詳しくはアンジェリーノのホームページを参照)ので、「急坂だ!」と察知したら、妙なチャレンジ精神は捨てて、すぐにモードを「強」、ギアも一番軽い「1」にして漕ぎやすくしておくことをおすすめする。
ここで試しに、以前使用していた電動アシスト自転車「エナクル」で、5才の娘を乗せて同じ道を走ってみた。こちらもアシスト機能があるため、登り切ることはできたが、ハンドルがグラグラ曲がってしまい、走行が不安定だった。前に子供を乗せていないのでアンジェリーノアシスタDXより総重量は軽いはずなのだが……改めてアンジェリーノアシスタDXの安定感に感心したのであった。
上り坂がラクなのは分かったが、下り坂では注意が必要だ。何しろ、自転車だけでも31.6kgと重いのに、それにさらに大人1人と子供2人が乗っているため、総重量は余裕で100kgを超える。予想以上にスピードが出るので、ブレーキをかけながら、スピードを調整してゆっくり降りるようにするのが良いだろう。一歩間違えれば重大な事故につながる可能性もある。つい子供ばかりに目がいってしまいがちだが、車や歩行者にも充分気をつけながら運転しなければならない。
その点を考えると、初めて通る道は、坂道の程度や標識、人通りの状況を見て、どこのルートを通るかを事前に確認しておいたほうが良さそうだ。
自転車は基本的に「車道」を走ることが義務づけられているが、我が家は田舎のため歩道が広く、「自転車および歩行者専用」の標識が立てられている。この場合は歩道を走ってOK | 自転車用の道と歩道が完全に分離されている場合もある。このような道は比較的安心して走ることができる。ここでは右側が自転車、左側が歩道となっている |
●10kmの遠乗りに挑戦……アラ! 思ったより疲れない
さて、今度子供を乗せて自転車で“遠乗り”をしてみたい。ただし、子供を乗せて出かけるとなると、スーパー、幼稚園、図書館などが多いはず。遠乗りとはいっても、片道数キロの範囲から出ることは稀だろう。
というわけで今回は、娘のサッカー教室の送迎に、片道5kmほど先にある公園へ行ってみることにした。正直、坂道も多く、子供を2人乗せて走るとなると、かなりしんどそうなコースだ。この酷暑の中、サイクリングするのは気が進まなかった……。
車社会の田舎のため、自転車はほとんど見かけず。この道は「自転車および歩行者専用」のはずだが、誰もいない…… |
しかし、いざ走行してみると、アシストが強力なので、子供2人乗せていてもスイスイ進んでいく。通常は標準モードだが、上り坂になれば先ほどのようにアシストモードを「強」にしておけば、平坦な道と同じようにどんどん進んでいく。
長く乗っていてもお尻が痛くならなかったも良かった。サドルが大きく安定感があるためだろう。信号待ちではしっかり両足をついて待つことができるし、走り出すときのふらつきもほとんどないので、こまめに停止することも苦にならない。
と思っている間に、公園に到着! 5kmの道のりは意外に近く、ビックリしてしまった。この日は35℃を超える酷暑日だったが、へっちゃらだった。このままもっと走っても大丈夫かも、と思ってしまったほどだ。
運転していてちょっと怖いなと思ったのは「段差」だ。前シートに体重10kg以上の子供を乗せているので、小さな段差に乗り上げただけで、ハンドルがとられ気味になることがある。なるべくなら段差を避けて走行し、避けられない場合は、道路の状況を見ながら、スピードを抑えて走行するとよいだろう。
また、急な方向転換はバランスを崩すのでやめたほうがよさそうだ。例えばUターンする場合は、なるべく広い場所で、大きく回るようにして方向を変える。大きくハンドルを切るのは避けたほうがよさそうだ。
自宅から5kmほど離れた大きな公園に到着。子供2人をのせているのに、意外とラクだった。ここに自転車で来たのは初めて! | ただし、段差があるとハンドルがとられ気味になる。写真の程度なら大丈夫だが、気をつけたいところ |
今回の遠乗りで一番驚いたのは、バッテリーの持ちの良さ!
アンジェリーノアシスタDXの電池はリチウムイオンバッテリーで、電池容量は6.0Ah。子供2人を乗せて片道5km、つまり往復10km運転したにもかかわらず、電池残量を示すパネルの目盛りが1つも減っていないのだ。
以前使用していた電動アシスト自転車のバッテリーはニッケル水素で、電池容量は2.8Ah。2年ほどで劣化し、電池がもたなくなってしまったので、先日新調したばかりだ。しかし、新品のバッテリーでも、娘1人を乗せて往復10km走ると、残りの目盛りが3つから1つになってしまう。回生充電機能(ブレーキ時に発生した電気をバッテリーに充電する機能)付きでこれなのだから、電池容量は電動アシスト自転車には重要な問題だ。
その点、アンジェリーノアシスタは、重い子供を2人乗せても、非常にバッテリーの持ちが良い。これなら遠乗りするのも安心だ。
本体の操作パネルにも、バッテリー本体にも、LEDの残量インジケーターが付いている。残量がわかりやすい | 充電は、自転車からバッテリーを取り外して、充電器に差すだけと簡単。約3時間で満充電となる。電気代は1回の充電で約10円。継ぎ足し充電ができるので、リフレッシュ(電池残量を使い果たしてから充電すること)の必要もなく、手間がかからない |
●夜間走行もLEDライトが明るい! 太陽発電のテールランプも便利
今回最後に紹介したいのが、暗い夜道を照らすライト。アンジェリーノアシスタには前後にLEDランプが搭載されているが、使っているうちにこれが便利だった。
まず前方のライトだが、電源はアシスト用のバッテリーからとっている。摩擦式の発電ライトでは、ペダルが重くなってしまうのが難点だが、これなら自転車の運転にまったく影響しない。ON/OFFも手元のパネルでできるし、とても明るい白色のLEDは、道の遠くまでしっかりと照らしてくれる。
またテールランプには太陽電池を採用しており、暗くなると自動点滅する。運転中だけ点滅するので、駐輪時にチカチカ……ということもない。
我が家のような田舎では、街灯も少なく、夜になると真っ暗になってしまう。懐中電灯をぶらさげて歩く人もいるほどだ。自転車のライトは前方を照らすだけでなく、周りの自動車や歩行者に自分の存在を知らせる重要な役割があるが、アンジェリーノアシスタDXなら、面倒くさがらずに簡単に気持ちよく点灯できる。
前方のライト。電源はアシストのバッテリーから取っているため、ペダルが重くなることはない | テールランプの電源は太陽電池 |
前方のライト。点滅用のライトも一緒に点灯するのは嬉しい | テールランプの動画。暗い中で後ろから見るとかなり目立つ |
そんなわけで、子供2人を乗せても疲れにくく、あらゆる面で安全性を重視しているアンジェリーノアシスタDX。坂道もプチ遠乗りも安心して運転できるので、子供を連れて色々なところへ行きたくなる。
しかし、「子供ってすぐ大きくなってしまうので、たった数年のために高価な3人乗りアシスト自転車を買ったらもったいないんじゃないの?」という声も多く聞かれる。というわけで、最終回となる次回は「子供が乗れなくなったその後」について、お話したい。
2010年8月23日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)