【年末特別企画】

今年の家電を総おさらい!――戸井田園子さんと神原サリーさんの特別対談

~オーブンレンジから空気清浄機まで2011年のお勧めはコレ!
by 阿部夏子

戸井田園子さん(左)と、神原サリーさん(右)に今年の新製品に関して色々とお話を伺った

 今年1年も様々な出来事があったが、家電製品のジャンルでもそれは同じ。毎週のように新しい製品が発売され、店頭には様々な製品が並ぶ。ただし、白物家電製品というのは難しいもので、使い始めてみないとなかなかその製品の良しあしがわからなかったりする。

 今回は年末特別企画と称して、家電コーディネーターの戸井田園子さんと、家電コンシェルジュの神原サリーさんに今年の新製品に関して色々とお話を伺ってきた。お2人とも、家電製品の発表会にはほぼ全て出席されているほか、実際に製品に触れる機会も多い、まさに「家電のプロ」とも言える方だ。暖房器具から掃除機、オーブンレンジまで、各ジャンルのお勧めの製品について、じっくりお話を伺ってきた。

今シーズンおすすめの暖房器具は?~快適さならオイルヒーター、省エネならエアコン

デロンギ・オイルヒーター ドラゴンデジタル TDD0915W

――初めに伺いたいのは、今が本番の暖房器具についてです。お2人のお勧めの製品ってどんなものでしょう。

神原:私は断然デロンギのオイルヒーターをお勧めしたいですね。共働きで、昼間誰もいないようなお宅には薦めづらい製品ではあると思いますが、空気が汚れないし、安全性も高いので、赤ちゃんや小さいお子さんがいらっしゃる人にはぴったりの製品です。

 私自身の経験からいうと、二男を産んだ時の夜の受乳タイムが本当にきつかったんです。一晩に3~4回も泣いてせがむことがあって、その時に部屋がひんやりしていて、大変でした。あの時に、オイルヒーターがあれば――と思いますね。

戸井田:オイルヒーターの問題はやっぱり電気代ですよね。1日使うとなると、弱に設定していても100円は超えてしまう。1カ月で3,000円は超えてしまいます。

神原:でも、1日オートモードで使っていると意外なほど電源が切れている時間が多いのも事実。タイマーをうまく使うことで、電気代を節約できる点も見逃せないです。何より、オイルヒーターのあの暖かさはほかの暖房器具ではなかなか再現できません。

省エネ性を追求するなら最新のエアコンがおすすめだという。写真はシャープのB-SXシリーズ

戸井田:快適さを取るか、経済性を取るかですよね。やっぱり省エネ性で言ったらエアコンが断トツですね。ただし、いつのエアコンを使っているかがかなり問題。7年前とか、10年前のエアコンを使っているとだめです。

神原:本当にメーカーの省エネ化は年々進んでいて、びっくりしてしまいます。3年前の冷蔵庫やエアコンの消費電力と、最新のものは全く違う。これまでの電気代ってなんだったの? って思ってしまうこともあるくらいですよね。

戸井田:それを言ったら、冷蔵庫は大容量が断然お勧めですよね。200Lクラスの製品の電気代と600Lクラスの電気代を比べると、実は600Lクラスの製品の方が断然省エネ。大容量クラスは、メーカーのフラッグシップモデルに当たるので、省エネ技術も各社力を入れているんです。電気代の違いを考えると、置ける範囲で一番大きいクラスを買った方が良い。

――なるほど、それって面白い考え方ですね。確かに今まで白物家電でその後のランニングコストまで考えて、物選びしていなかったかもしれないです。戸井田さんはいつも、そこを意識されているんですね。

戸井田:私はいつも“生涯コスト”を考えています。まず、初期投資、その後何年で元が取れるか、その上でどちらの製品にするか。たとえば、フラッグシップモデルを買って、お金が一括で出てもその後の電気代を安くすませるのか、購入時の費用を抑える分その後の電気代は少し多くかかる、要は電気代で分割払いするのかっていう考え方ですよね。

――省エネ性を考えたら、古いエアコンや冷蔵庫はすぐにでも買い替えた方が良いと。店頭で値段だけを見ると、ついついスタンダードモデルに惹かれてしまいますが、エアコンや冷蔵庫に限っては、省エネ性に優れたフラッグシップモデルを買った方が、場合によってはお得なんですね。

洗濯機~日立の「洗濯槽自動お掃除機能」と「ビックドラムスリム」が好感触

戸井田さんは今年気になった製品として日立の洗濯機を挙げた

――次に洗濯機について伺いたいと思います。今年、何か気になる製品ってありましたか?

戸井田:私の場合、製品というよりも、日立の洗濯機に搭載された「洗濯槽自動お掃除機能」が良かったと思います。よく洗えるとか、白くなるとか、洗濯機のアウトプットからは外れた地味な機能ながら、でもそこに着手した日立は偉いなって。目に見えないところでよく頑張りましたって感じですね。

神原:私も日立の製品になってしまうんですけど、サイズが小さくなった「ビックドラムスリム」ですね。日立が偉いのが、省エネ性とか機能面も妥協することなく、きっちり小さくしてきたところ。塗装とかもこだわっていて、日立のいう「プレミア感」がうまく出ていたと思います。

洗濯の度に洗濯槽の裏側などに付いた汚れを洗い流す「自動おそうじ」機能。写真は120回洗濯した後の洗濯槽。黒カビなどが全く付着していない日立「ビッグドラム BD-9400」左からシャンパンとパールホワイト「ビッグドラム スリム BD-S7400」右からシャンパン、パールホワイト、メタリックブラック

 もう1つ、関連して言いたいことがあるのが洗剤についてです。最近の洗濯機って節水一辺倒で、洗剤もすすぎ1回の濃縮タイプが主流。節水ってやっぱり単純に使う水が少ないから、洗剤カスとかつきやすいじゃないですか、だからこそ、洗濯槽の自動お掃除機能も必要になったのかなって思いました。

戸井田:確かに洗濯機に付属の説明書には、洗剤の種類や濃度によって、コースや水量を変えるように、たとえばなんとかだと何分の何杯とか、濃縮タイプだったらなんとかとか、洗剤によっても入れる量が違っていたりするんですよね。

――まぁ私たちはこういう仕事してますから、一応説明書に目を通すけど、なかなかあそこまで見る人っていないですよね。

戸井田:ユーザビリティからしたら洗剤濃度とかも全部一緒にして、自動計測とかもできれば、もっと便利。そっちの方が絶対いいのに。たとえば、洗濯機の種類にあった洗剤とかもありそうだし。

神原:洗剤メーカーも、濃度とかもしっかり規格を決めて欲しい。このタイプの洗濯機にはこの洗剤という風にしたら、ずっと分かりやすくなると思います。

――そこは是非、検討してもらいたいところですね。

掃除機は三菱が優秀! 海外メーカーではダイソン!

――掃除機についてはいかがでしょう。

戸井田:掃除機で今年頑張っているなと感じたのは三菱電機ですね。サイクロン式の「風神」も紙パック式の「雷神」もきちんと作られているなと感じました。前、ダイソンのエンジニアの方にお話を伺った時も、他のメーカーはともかく、三菱のものはサイクロンと言えるって言っていました。サイクロン掃除機としては後発だった割には、すごく頑張っていると思います。

三菱電機のサイクロン式掃除機「風神 TC-ZXA20P」三菱電機の紙パック式掃除機「雷神 TC-BXA15P」

神原:私は国内メーカーのコンパクトサイズの掃除機ですね。最近はますます小型化が進んでいますよね。特に高齢者をターゲットとしたシャープの「EC-PX200」や、東芝のトルネオミニ。この流れは歓迎していきたいですね。逆にハイエンドモデルは女性が使うのにはちょっと大きすぎるように思います。

重量2.7kgのサイクロン式掃除機。シャープ「EC-PX200」重量2.5kgの東芝「TORNEO mini (トルネオ ミニ) VC-C11」

戸井田:あと、国内メーカーの掃除機で評価したいのは、排気のきれいさですね。空気中の微細なホコリを検知する専用の測定器で、各メーカーの排気を調査したんですけど、やっぱり日本製は強かったですよ。特に、日立の掃除機は、店頭で計測した時に6万近くあった粒子が1ケタ代まで減っていて、圧倒的だった。いろんな企画で何度か調べてみましたけど、結果が覆ることはなかったですね。

 だから喘息とかハウスダストで悩んでいる人は国内メーカーの紙パックがお勧めです。やっぱりサイクロンはゴミを捨てる時にどうしてもゴミが舞い上がっちゃう。紙パックだったら、今のお勧めは紙パックの容量が従来の2.4倍になった三菱の「雷神」かな。

社内のデザイナーが装飾したという「デコ雷神」

神原:デザインも特徴的で、私も好きですね。内覧会ではデコっているのも見せてもらったんですけど、あれも可愛かった。逆に、日本のサイクロン掃除機で気になるのが、使い終わった後のフィルター自動お掃除機能の音。電源を切るとその度に「ガタガタガタ」という音がする。あれはかなり気になります。

戸井田:確かに! あれは私も気になりました。静音性を謳っているわりにかなり大きな音がしますよね。メーカーの人にそこを言っても、「止められます」って言われたけど、止めたら基本的な機能に支障が出てしまうから、あの機能を搭載しているわけでしょ。

神原:しかも、あれを止める方法ってものすごく分かりにくいんですよね。もちろん、説明書には書いてあるけど、かなり読み込まないとだめ。基本的には止めて欲しくないんだろうなっていうメーカーの意図が伝わります。

「DC36 carbon fibre turbinhead(カーボンファイバータービンヘッド)」と、ジェームズ ダイソン

戸井田:それを考えるとやっぱりダイソンのフィルターなしっていうのは魅力的。特に今年の「DC36」は優秀。あれは使いやすい。コロコロしていて、たとえ蹴飛ばしても転ばないんですよ

――やっぱり主婦にとって、掃除機の取り回しってすごい大事ですよね

戸井田:そうなの。とり回しがスムーズなだけで、掃除の時のストレスが激変する。でも、それって家事をしない男性にはなかなか共感してもらえない。もう1つダイソンが偉いのが、あのボールテクノロジーを搭載するために、本体サイズを大きくしているところ。これって絶対日本ではやらないから。「機能性を追求する」というダイソンらしさが出ている反映されている製品だと思います。

――おそらく、お2人のご自宅には複数の掃除機がたくさんあると思うんですが、その中で好んで使っているものってあります?

戸井田/神原:実は掃除って主人の仕事なんです(笑)

――それは羨ましい限りです。では、ご主人のお気に入りは?

戸井田:うちはダイソンボールと、三菱の雷神使っているみたい。でも、雷神はダイソンボールに比べたら動きがニブイって怒ってた(笑)

神原:確かにうちもダイソンボール使っているけど、彼いわく「まだ動きが足りない」って言ってました。でも、今までの製品に比べるとやっぱり使いやすいみたい。

――そうなんですね。私はルンバとダイソンDC35を組み合わせて使ってます

神原:私もダイソンのDC35大好きです。壁に取り付けて使うと、使いやすさが倍増しますよね。

戸井田:ルンバの新モデルもかなり進化しているし、共働きの夫婦にとって実はそれって最強の組み合わせかもしれないですね。

ダイソン「DC35」を壁に取り付けた状態アイロボット「ルンバ780」

オーブンレンジは三菱電機のZITANGが断トツ!!

――次にオーブンレンジについて伺います。今年も様々なオーブンレンジが発売されましたが、気になるものはありましたか。

三菱電機「ZITANG(ジタング) RG-FS1」

戸井田/神原:それが偶然にも、2人とも今使っているのは三菱電機の「ZITANG」なんです。

神原:仕事柄色々な製品を使っているけど、サイズの小ささや全てを自動で設定できるところが気に入って、ZITANGを使い続けています。

戸井田:そう、メニュー番号がないところが良いんだよね。仕事の時はもちろん、色々なメニュー番号を使って、色々な料理を作るけど、普段はそこまで使わないというのが本音。その点、ZITANGなら庫内に食材を入れて、スイッチを押すだけで良い。

神原:シャープのヘルシオもお借りして何回か使ったことあるんですけど、確かに良いところもいっぱいある。実際ヘルシオで作ったものはおいしいし、でも使いこなせないんですよね。

戸井田:焼き加減でいうと、私はパナソニックの3つ星がお勧めかな。火力が強めでパリっと焼きあがるのが良い。我が家では、ZITANGと3つ星ビストロの2台並べて使っているんだけど、面白いのが男性陣の評価。息子も夫もZITANGは小さすぎるっていうんです。料理を作る側としては、ZITANGのサイズ、容量は充分なんだけど。「庫内スペースが小さすぎて手が当たる」とまで言ってました。

シャープ「ウォーターオーブン HEALSIO(ヘルシオ) AX-PX2」パナソニック「3つ星ビストロ NE-R3400」
神原さんのお宅では、三菱電機のZITANGをメインで使っているという

神原:分かる! うちの夫にも最初は「小さい!」って不評だった。でも、とりあえず調理ってところ押せば大丈夫って教えてあげたら、その後は結構自分でも使ってたみたい。

戸井田:我が家もそう! しばらくして慣れたら良く使っているみたい。それと、私はあの三菱の潔さを評価したいんですよね。スチームを一切なくしちゃったり、サイズをバサッと小さくしたり。ZITANGに新しく搭載した「レンジ→グリル」の加熱方法も目からうろこだったし。確かに自分でもこれまでレンジで加熱してから、オーブントースターに移すってことをよくやっていたんですよね。短時間で揚げ物はカラっと、サクサクに仕上げられるし、しかもそれをスイッチ1つで自動でやってくれるのは良い。

神原:やっぱりオーブンレンジってもともと、「早くて便利」を求められているものですよね

戸井田:電子レンジこそ、直感的に使えないと、使わなくなるよね。

神原:本当にそう思う。たとえば、鶏のから揚げを自宅でやる時に、いちいち鶏の分量なんか量らないし、スーパーのパックを買ってきて、だいたいこんなもんでしょって感じで作っちゃいますよね。今までのオーブンレンジでは、付属のレシピの分量通りに作るというのが前提だったけど、ZITANGでは、それを自動で加熱してくれる。しかもZITANGの良いのが、出来上がりの甘かったり、焼き目が欲しいときは、加熱時間を簡単に延長できるところ。

戸井田:今までのオーブンレンジはオートの方向にばっかり進んでいたけど、ZITANGでは、オートにアナログの部分も組み合わせているから、使いやすいのかもしれないですね。

空気清浄機はフィルターをチェック!

ブルーエアの空気清浄機3機種。左から650E、450E、270E

――空気清浄機で気になるモデルっていうと何ですか?

戸井田:私はブルーエアーかな。フィルターでしっかりゴミを濾し取るっていうあのシンプルさが良い。フィルターでゴミは取るから、後は捨ててくださいって基本のスタンスがはっきりしているところが好きなんですよね。

――確かに、日本の製品とは全く目指すところが違いますよね。

戸井田:10年間フィルター替えないっていうのはやっぱりちょっと気になる。能力半分になるかもしれないし、半分になっててもサインが出る訳じゃないのに、長持ちするっていうところを強みにしているのにはちょっと違和感感じますね。

神原:最近、特に思うのが原点回帰が大事だなって思うんですよ。日本のメーカーの製品は色々機能を搭載しすぎて、そもそも何をしたい製品なのかっていうところがボケちゃっている気がして。特に空気清浄機のジャンルではそう感じることが多かったですよ。その点、ダイキンの製品は、空気清浄っていうところにきちんとフォーカスを当てていて、好印象です。ダイキンでは、フィルター性能は10年後には70%になるとか、ちゃんと明記していて、ユーザーにもわかりやすい。

戸井田:確かにあの分かりやすい感じはいいですね。ダイキンの今年のモデルは、給水タンクとか細かいところが使いやすくなっていたのも良い。ブルーエアはやっぱり高級品で、ランニングコストも高いので、掃除機でいうダイソンみたいな存在。国内の他のメーカーの立ち位置とはまた違う感じはしますね。

ダイキンの加湿空気清浄機「うるおい光クリエール MCK70M」(写真左)。右は前年モデル給水しやすいように斜めに自立する給水タンク

三洋電機がなくなったのは悲しい

対談は最後まで和やかな雰囲気で行なわれた

――最後に今年の家電業界であった印象的な出来事ってありますか?

神原:やっぱり三洋電機のことですね。パナソニックへの統合が本格的に始まって、三洋ブランドの白物家電製品が市場から消え始めたことです。

戸井田:寂しいよね。GOPANのパナソニック版の発表会の時に、一言も三洋電機の話が出なかったのはなんか寂しい気持ちになってしまいました。

神原:壁際の幅木に溜まったホコリまで取り除く「逆立ちブラシ」とか、他社とは全く違う消費者目線の面白い製品をたくさん作ってくれましたよね。「おどり炊き」やGOPANといったヒット製品は三洋電機ならではって感じがしますね。製品ごとにユーザーが求めるものは何かってことを、追求した結果の製品だと感じます。

パナソニックブランドから発売した「GOPAN SD-RBM1000」三洋の紙パック・サイクロン両用掃除機「エアブロックサイクロン SC-XW55M」などに搭載されていた「逆立ちブラシ」。壁に付着したホコリまで取り除ける三洋電機の高級炊飯器「匠純銅 おどり炊き ECJ-XP2000」。純度99.9%の「銅釜」を採用した高級炊飯器の先駆けともいえる製品

――GOPANやエネループがパナソニックの下でどう変わっていくのか、来年も目が離せないですよね。ところで、今年は東日本大震災の影響でかなり節電に注目が集まりました。

戸井田:夏は凄かったですよね。都内なんか、どこもかしこも真っ暗で。

神原:でも、今改めて思うのが、「やっぱり明るい」っていいなってことですね。夏の時は「今までが明るすぎたんだ」って議論も出ていたけど、節電が落ち着いて街に灯りが戻ってきて心底ほっとしました

戸井田:今年は確かに計画停電とかもあって、実際に逼迫した状況ではあったけど、がんばりすぎは良くないですよね。おそらく、来年も節電傾向は続くだろうけど、節電ではなくて適電で、必要なところにはしっかり電気を使うという風に考え方もシフトしていくんじゃないでしょうか。

――本日は、ありがとうございました。






2011年12月13日 00:00