藤山哲人のモバイルバッテリー診断

今買うならこれだ! 「モバイルバッテリー・オブ・ザ・イヤー」が決定

「モバイルバッテリー診断」は、スマートフォンの外部電源として普及しているモバイルバッテリーをレビューするコーナーです。(編集部)

 毎月数本ずつモバイルバッテリーの性能を検証しているこの連載。ここらで、ビシーーーーッ! と総集編として「モバイルバッテリー オブ ザ イヤー」をお届けしておきたい。

 モバイルバッテリーの連載をはじめて約1年、紹介した製品の数はキリがよくない上に素数の19本。しかも記事公開は、2013年のまとめでも、2014年度の始まりでもない2014年2月っ! ここまでキリがよくないのに「モバイルバッテリー オブ ザ イヤー」をやることに清清しさを感じないかい? もうね、さわやかサワデー♪って感じ。

 能書きはさておき、今回はモバイルバッテリー オブ ザ イヤーを決めると同時に、これまで紹介した19製品を、「スマートフォンをだいたい何回充電できるか? 」という容量別に4クラスに分け、それぞれのクラスでお勧めの機種も紹介していこう。

モバイルバッテリー オブ ザ イヤーは、MJTSの「Model 816」に決まり

 「ごちゃごちゃした説明は不要。どれを買ったらいいのかを教えてくれ! 」という方に、まずモバイルバッテリー オブ ザ イヤーを発表しよう。

MJTSのModel 816。表示容量6,000mAh、実容量率は69%と高く、4,166mAhあるので、スマートフォンを2回以上フル充電できる

 MJTSの「Model 816」は、とにかく使いやすく便利なモバイルバッテリーだ。実容量率は非常に高く69%(4,166mAh)。電気的な出力も非常に安定しているほか、出力は3.3Aあるのでタブレットとスマートフォンの同時充電が可能。

 一番の魅力は、スマートフォンの画面のように、指が触れないと電源のON/OFFをしない点だ。カバンの中に入れておいてもスイッチが勝手に切れたり入ったりすることがない。しかもカラーバリエーションもあり、美しい金属の地肌を活かしたデザインなので、とても3,700円には見えないのだ。

 とりあえずモバイルバッテリーを1台買いたくなったら、あれこれ迷うぐらいなら、MJTSの「Model 816」を注文するといいだろう。

表示容量と実容量の違いに注意!

 各クラス別のオススメ製品を挙げる前に、モバイルバッテリーを選ぶ際のポイントとなる、表示容量と実容量の違いをおさらいしておきたい。表示容量とは、モバイルバッテリーのパッケージなどに必ず書かれている○○○mAhという数値のこと。バッテリーが蓄えられる電力の多さを示していて、数値が大きいほどスマートフォンを何回も充電できる。

 次のグラフは、今回のランキングの対象となった19製品のパッケージに記載されているバッテリー容量と、実際にスマートフォンの充電に使える容量を示したものだ。グラフ全体の長さが表示されている容量で、実際に充電に使える実容量がオレンジの部分。水色の部分は、モバイルバッテリーの内部回路などによるロスを示している。なおグラフは上から順に、実容量の少ない順に並べている。

ランキング対象製品のバッテリー表示容量と実用量の違いを示したグラフ

 注意しておきたいのは、表示容量の電力すべてをスマートフォンの充電には使えないという点だ。モバイルバッテリー内部の回路が使ったり、充電中を示すランプを点灯するのに使う電力があるので、実際にはその60%程度のみしか使えない(グラフのオレンジ部分)。つまり40%はロスする(グラフの水色部分)ということだ。

 この記事では、スマートフォンの充電に使える電力の量を「実容量」と呼んでいる。また実容量は製品ごとに異なるため、実験結果を元に実容量を測定している。

ガラケーにピッタリ! 2,000mAh以下クラスは、ソニーの「CP-VLSVP」

2,000mAh以下のクラスは、フィーチャーフォンをフル充電、スマートフォンを半分程度充電できる。近郊移動中用のモバイルバッテリーと言える

 表示容量2,000mAh以下のオススメは、出力が1Aあるソニーの「CP-VLSVP」(1,400mAh)。

  スマートフォンをだいたい50%充電できるが、フル充電はできないため、近郊移動用のモバイルバッテリーと言い換えてもいいだろう。

 CP-VLSVPは実容量率が低く、1,200mAhの「MiLi Power Visa」よりも容量が少ないが、スマートフォンとガラケーの両方で使う場合は、スマートフォンを急速充電できる1A出力が使い勝手を大きく左右する。 

ソニーの「CP-VLSVP」がクラス内でオススメ。ロスは多いが、このクラスでスマートフォンを急速充電できる1A出力を備えている製品は少ない。スマートフォンならだいたい50%まで充電でき、ガラケーならフル充電できる

 なお最近では従来式のフィーチャーフォン、いわゆるガラケーの電池の持ちが再び注目され、スマートフォンと合わせて持ち歩く「2台持ち」が多くなっている。ガラケーの内蔵バッテリーは1,000mAh前後なので、このクラスのモバイルバッテリーはガラケー1回充電用としてもピッタリだ。

 もしガラケー専用のモバイルバッテリーとするなら、パナソニック「QE-QL102」や「MiLi Power Visa HB-T12」でもいいだろう。

どこでも手に入るモバイルバッテリーの1つパナソニックのQE-QL102もオススメできるが、0.5A出力なのでスマートフォンの充電には時間がかかる
コネクタが特殊なのでガラケー用には変換コネクタが必要になる。オシャレに持ち歩くなら「MiLi Power Visa HB-T12」
充電時間が長すぎるので普段使いではオススメしないが、通話しながら充電する必要性が高い場合に便利なイーサプライのリストバンド型モバイルバッテリー
2,000mAh以下クラスの表示容量と実用量
製品名表示容量実容量実容量率出力コネクタ市場価格サイズ重さ充電時間
イーサプライ リストバンド型1,500mAh927mAh62%0.75A14,000円253×35×13mm79g7:26
パナソニック QE-QL1021,430mAh827mAh58%0.5A12,000円66×66×16mm58g3:29
MiLi Power Visa HB-T121,200mAh822mAh69%0.5A13,500円56×86×5mm36g2:58
ソニー CP-VLSVP1,400mAh733mAh52%1A11,700円37×121×16mm62g3:14

※出力は「合計最大出力」、コネクタは合計コネクタ数、市場価格はおおよその実売価格、サイズは幅×奥行き×高さを示す

スマホを1回充電したいなら、パナソニック製

 スマートフォンをほぼ1回充電したいなら、2,500~4,000mAhのモバイルバッテリーがいい。オススメは、家電量販ならどこでも手に入るパナソニック製。カード型なら「QE-QL104」、筒型なら「QE-QL103」が定番中の定番といえるだろう。

パナソニックの「QE-QL104」は、カード型モバイルバッテリーでオススメ。スマートフォンと同じサイズでポケット入れて重ねて充電するのにも便利で、ちょうど1回フルチャージできる
スマートフォンが登場して以来、長年の定番となっているパナソニックの「QE-QL103」。筒型ボディーに巻き取り式のUSBケーブルもセットになっていて便利に使える

 このクラスになると、出力は1~1.5Aとなっていて、スマートフォンの急速充電に対応している。また1回の充電が基本なので、ほとんどの製品はUSBコネクタが1つしかなく、2台同時充電はできない。

 デザインは好みや価格に応じて異なってくるが、基本性能はほぼ同じで、サイズや重さも同じと思っていい。使い勝手を大きく左右するのは、モバイルバッテリー自身の充電時間になるだろう。表を見て分かるとおり大きな開きがあり、2時間程度で充電できるものから5時間以上かかるものまである。

act2の「MiPOW Power Tube SHAKE」は、豊富なカラーリングと円柱形のデザイン、カラーでバッテリー残量が分かるというオシャレさを全面に出した製品
こちらもカラーリングや柄が色々あって、家電量販店などでもよく見かけるエレコムの「DE-M02L-3010」。同じデザインで、容量が色々あるほか、充電時間が長いのに注意
アルミボディーがオシャレなソニーの「CP-F1LSAVP」。1.5A出力できるのでソニーのスマートフォンXPERIAなどで採用されている、1.3A必要な超急速充電にも対応
マスタードシード「SUMOBA UM-SMB350」。ちょっと値が張るが1.5A出力や充電時間、サイズにデザインに重さと一番オススメのモバイルバッテリー。難点は手に入りづらいところ
2,500~4,000mAhクラスの表示容量と実用量
製品名表示容量実容量実容量率出力コネクタ市場価格サイズ重さ充電時間
マスタードシード SUMOBA UM-SMB3503,500mAh2,121mAh61%1.5A14,980円63×118×9mm90g2:25
ソニー CP-F1LSAVP3,500mAh2,062mAh59%1.5A13,600円70×128×9mm125g4:00
エレコム DE-M02L-30103,000mAh1,830mAh61%1A14,000円61×107×14mm90g5:15
パナソニック QE-QL1032,900mAh1,769mAh61%1A13,000円40×90×24mm95g1:49
act2 MiPOW Power Tube SHAKE2,600mAh1,619mAh62%1A14,000円24×92×24mm148g3:56
パナソニック QE-QL1042,420mAh1,488mAh61%1A12,500円100×60×11mm85g2:46

スマートフォンをほぼ2回充電したいなら、日立マクセル「MPC-C5000」

 4,000~6,000mAhのモバイルバッテリーは、スマートフォンをほぼ2回充電できるクラスだ。新幹線で長距離移動するときにちょうど良い容量で、外回りの多い営業職にもピッタリ。どのメーカーも主力製品を投入しているので、個性溢れる製品がラインアップされ、製品選びに一番困ってしまうクラスでもある。

 オススメは、スマートフォンだけで使うなら、日立マクセルの「MPC-C5000」か、バッファローの「BSMPB04」がいい。タブレットでも利用するならMJTSの「Model 816」がカラーバリエーションも豊富でオススメだ。

このクラスオススメの1つ、スマートフォンを充電するmicroUSBケーブル&コネクタと自身を充電するUSBケーブル&コネクタを装備した日立マクセルの「MPC-C5000」。USBコネクタの差し込みも備えている
国産なのに2,500円という安さで5,200mAhのモバイルバッテリーが買えるバッファローの「BSMPB04」。スマートフォン2台の急速充電に加え、第3世代iPadの充電にも対応している

 このクラスのバッテリー選びのポイントは、USBコネクタの数と出力の2点だけ。まずスマートフォンを2台同時充電する可能性がある場合は、コネクタが2つついている製品を選ぶ。次にタブレットを充電する可能性がある場合は、タブレットに付属しているACアダプタの出力以上の製品を選ぶこと。2A以上出力できるものなら、たいていのタブレットは充電可能だ。

タブレットにも使うならMJTSの「Model 816」がオススメ。出力が3.3AとパワフルなのでiPadの急速充電をしながら、スマートフォンも急速充電できる

 どれを選んでも大差ないのは大きさ(体積)と重さだ。薄くて面積が広い、分厚いが面積が狭いなどデザインの違いはあれど、体積と重さはどれをとっても互角なので、製品選びから除外していい。また充電時間も8時間以内であれば、よっぽど忙しい人でない限り不便に感じることはない。

ルックイーストの「Power-Pond Fit」は、USBケーブルを本体内に収納できる。さらにケーブルを取り出し、スマートフォンやガラケーの内蔵バッテリーを本体内にセットすると、内蔵バッテリーを直接充電できる。難点は充電に何時間もかかる点
ミニカーとしての完成度が異様に高い日本トラストテクノロジーの「GT5200 クーペ」。カッコよさの追求のため、ヘッドライトやテールライトが光るなどして実容量が少ないが、これ以上の話題性はない
数年前までは定番のパナソニックの「QE-PL203」。今では魅力的で高性能な製品が続々とクラス内になだれ込み、影を薄めてしまっている。とはいえどこでも買えるの、最初の1台としてはオススメ
4,000~6,000mAhクラスの表示容量と実用量
製品名表示容量実容量実容量率出力コネクタ市場価格サイズ重さ充電時間
MJTS Model 8166,000mAh4,166mAh69%3.3A23,700円67×122×12mm153g7:24
パナソニック QE-PL2035,800mAh3,722mAh64%1.5A24,200円90×64×24mm165g6:16
バッファロー BSMPB045,200mAh3,570mAh69%2A22,500円42×101×24mm140g6:09
日立マクセル MPC-C50005,000mAh3,257mAh65%2A24,600円69×115×20mm170g4:17
日本トラストテクノロジー GT5200 クーペ5,200mAh3,025mAh58%1A14,000円45×110×37mm130g7:27
ルックイースト Power-Pond Fit4,600mAh2,976mAh65%1A13,000円70×126×16mm200g10:20

ヘビーユーザーにはロジテックの「LPB-78U2」

 6,000mAh以上のモバイルバッテリーは、スマートフォンのヘビーユーザーやタブレットユーザーに適している。

 オススメは、出力やコストパフォーマンス的にも優れているロジテックの「LPB-78U2」。バッテリー残量も25%刻みの4段階となっている。

スマートフォンと第3世代iPadの同時充電が可能なロジテックの「LPB-78U2」(写真はiPad2)。タバコの箱程度の大きさで、スマートフォンなら2.5回充電できる

 このクラスのモバイルバッテリーは、価格差が激しいのが特徴。電池類は中国で生産されるものも多く、性能に見合った適正価格の判断がつきづらいのが現状だ。ここで紹介したモバイルバッテリーは5,000円~6,000円台だが、市場は3,000円~4,000円台の中国製が多く、中には1,000円台の値をつけるものもあり、適正価格や相場が混沌としてしまっている。

 もし激安モバイルバッテリーを見つけたなら、ネットでよく評判を調べてから購入しないと、粗悪品を掴まされることになるので注意したい。具体的には、容量が明らかに少ない、数回使っただけで充電できなくなったほか、電池の代わりに砂袋が入っていた例さえある。

 さてこのクラスのモバイルバッテリー選びのポイントは2点。第1のポイントは、モバイルバッテリーの充電時間だ。たいていの製品は、一晩の8時間以内でフル充電できるようになっているが、中には10時間以上かかるものなどもあるので注意したい。

 第2のポイントは、スマートフォンでこのクラスの大容量モバイルバッテリーを使う場合は、残量計の段階数に注意したい。1万mAhになると3~4回充電できるので、残量計は最低でも25%刻みの4段階欲しいところだ。中にはデジタル表示で1%刻みに表示するものもある。

 またこのクラスのモバイルバッテリーは、タブレットの充電が想定されているため、ほとんど出力は2A以上ある。しかし先に紹介したとおり怪しい製品もかなりあるので、2A以上の出力を確認したほうがいいだろう。

「enep ACL66U606」は出力が最大2.2Aなので、スマートフォンと第3世代iPadの同時充電はできないが、スマートフォンなら2台同時充電できる。また充電用ACアダプタを内蔵していて、そのままコンセントに挿して充電できる
ソニーの「CP-F10LSAVP」は、1万mAhと大容量だが残量計が大雑把で3段階しかない点を除けば、十分合格点のバッテリー。ソニーだけでないが国産メーカー勢は、中国製の優秀な大容量バッテリーに押され気味になっている
6,000mAh以上クラスの表示容量と実用量
製品名表示容量実容量実容量率出力コネクタ市場価格サイズ重さ充電時間
ソニー CP-F10LSAVP10,000mAh6,751mAh68%3.6A26,500円70×131×16mm260g7:33
ロジテック LPB-78U27,800mAh5,128mAh66%3.3A25,000円65×107×24mm190g8:03
長信ジャパン enep ACL66U6066,600mAh4,422mAh67%2.2A25,000円61×102×22mm190g6:45

コストパフォーマンスと軽さから見た、オススメのモバイルバッテリーはこれだ

 ここまで、充電回数でクラス分けした中でオススメの製品をランキングしてきた。なかでも、とにかくコストパフォーマンスが良いものと、軽く小さいものをランキングしてみよう。

【高いコストパフォーマンス性】

群を抜いてコストパフォーマンスがいいのは、バッファローの「BSMPB04」。5,200mAhなのに2,500円で買える

 使い勝手などは無視して、どのモバイルバッテリーが一番コストパフォーマンスが高いかを計算したのが次のグラフだ。横軸は1,000mAh辺りの価格を示していて、19製品中のベスト10を示している。およそ半分の製品のランキングになっているが、上は1,700円、下は700円とかなりの差があるのが分かる。

 傾向としては大容量バッテリーがコストパフォーマンス的には優れているのが分かるが、5,200mAhながら2,500円という低価格をつけているバッファローの「BSMPB04」が健闘しているのがよく分かる。

1,000mAhあたりの価格比較ベスト10

【とにかく軽量】

 ほとんど外で電池切れになることはなく、もしものためになるべく軽いモバイルバッテリーを用意しておきたいという場合は、次の製品がオススメだ。

とにかく薄く軽いのが「MiLi Power Visa」。ICカード乗車券(SuicaやPASMO、ICOCAなど)を3枚重ねた程度
スマートフォンを1回充電したい場合は、クラス内で一番軽いパナソニックの「QE-QL104」がいい

 OTASの「MiLi Power Visa」がキャッシュカードサイズで一番軽く小さい。意外に健闘していたのは、スマートフォンをちょうど1回充電できるのに軽いパナソニックの「QE-QL104」。傾向として、軽さで選ぶならプラスチック製の筐体を選ぶといいようだ。

軽さを比較してベスト10を算出。最軽量の「MiLi Power Visa」は36gだ

 さまざまなモバイルバッテリーがあるが、それぞれの特徴を見極めて、自分にベストマッチな製品を見つけて欲しい。

藤山 哲人