家電製品ミニレビュー

穏やかで快適な暖かさを実現するデロンギ“究極のヒーター”

10万円の高性能ヒーター

デロンギ マルチダイナミックヒーター(MD HEATER) MDH15-BK

 今回紹介するのは、デロンギ・ジャパンが今シーズン新たに投入したヒーター「デロンギ マルチダイナミックヒーター(MD HEATER) MDH15-BK」(以下、MDヒーター)だ。希望小売価格10万円(税抜)と、取り付けではなく、独立タイプの暖房機器としてはかなり高級部類に入る。

メーカー名デロンギ・ジャパン
製品名デロンギ マルチダイナミックヒーター(MD HEATER) MDH15-BK
希望小売価格100,000円(税抜)
購入場所Amazon.co.jp
購入価格69,800円

 デロンギのヒーターと言えば、オイルを循環させて緩やかに室内を暖めるオイルヒーターが有名だが、MDヒーターの熱源はオイルではなく、シーズヒーター。これまでにない細かい熱制御によって、従来のヒーターにはない快適性を実現しているという。デロンギは、イタリアのメーカーだが、MDヒーターは日本からの要望で開発をスタートした製品で、究極の快適さを目指したとしている。

 本体は、オイルヒーターに似た形状ながら、よりスマートでクールなデザイン。日本の暖房器具にはちょっとないオシャレな雰囲気がある。とはいえ、この製品の一番の特徴はデザインではなく、性能にある。

 内部には5つの独立した熱源を備え、周囲の温度を秒単位で分析し、稼働数、稼働場所を切り替える。0.5℃単位での細かい制御で、たとえばエアコンによる暖房で感じる暖めすぎや、深いな温風とは無縁の「ひなたぼっこしているかのような暖かさ」を実現しているという。

製品本体
本体上部
右がMDヒーター、左がデロンギのオイルヒーター。形は似ている

運転音ゼロ。緩やかで、穏やかな暖かさ

 実際に自宅で使ってみた。説明書によると、本体の置き場所は窓際あるいは、外気に触れている壁際が良いという。ヒーターの熱が冷気の進入をブロックすることで、部屋の暖房効果が高まるそうだ。

 もう1つ気を付けたいのが、電源の確保。本体は消費電力1,500Wなので、タップなどを使ったたこ足配線ではなく、壁のコンセントから直接電気を供給する。また、その際2口タイプのコンセントであっても、片方は空けて、単独で使う必要がある。他の器具と併用して、消費電力の容量がオーバーすると、異常発熱などの危険性がある。

窓際に置くと暖房効果が高まるという
コンセントは単独で使う。写真は消費電力を計測するための器具を取り付けた状態

 本体サイズは、275×495×665mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は12.5kg。決して小さなものではないが、キャスターが付いているので、本体の移動は楽にできる。本体の操作は基本的に全て付属のリモコンで行なう。本体にはそのときの電力レベルや運転モードが表示される。

 使い始めてまず驚いたのが、運転音がほぼゼロだということ。付けているのか、付けていないのか、本体のディスプレイを確認しないとわからないほどだ。これはエアコンやファンヒーター、カーボンヒーターと比べても圧倒的に小さい。

本体付属のリモコン。本体の操作は基本的に全てリモコンで行なう
キャスターが付いているので本体を移動しやすい
キッチン横に本体を移動させたところ

 使い始めの消費電力は1,325W。一般的な暖房器具に比べると消費電力は大きい。室温の上がり方はオイルヒーターに比べると早いが、やはりエアコンやファンヒーターに比べると遅い。室内温度16℃から20℃まで暖めるまでにだいたい1時間ほど時間がかかった。

 暖まり方は、オイルヒーターに近い。本体から温風が出てくるわけでもなく、本体がすごく熱くなるわけでもなく、部屋全体がじんわりと暖まってくる。輻射熱の効果で身体がじんわりと暖かくなってくるのがとても気持ち良い。暖房器具で室内を暖めているというよりも、まるでその日の天候や気温がちょうど良いような暖まり方なのだ。

 また、エアコンやファンヒーターによる暖房と一番違うのが、長時間使い続けても不快感がないということ。独自の制御機能で、例えば設定温度を23℃にしていると、1日中その温度をキープし続けることができる。室内が暖まりすぎて頭がボーッとしたり、肌が乾燥してカサカサしてしまったりということは一切ない。運転音もないので、本当に暖房を付けていることを忘れてしまうくらい快適だ。それだけに消し忘れには注意! 実は2回ほど電源を消し忘れてしまった……

運転スタート直後の消費電力は1,325Wだった
20分後は1,139W
4時間40分後は1,127W。制御によって、消費電力が上下しているのがよく分かる

 1つ気になることとして、足下がやや寒いように感じた。本体に手をかざしてみると、上部からの方がより熱が放出されているように感じた。立ってみると、確かに室内の上部の方がより暖まっているようだ。

 我が家では天井にシーリングファンを使っているので、それを使ったところ、室内の空気が攪拌されて、足下の寒さも解消された。MDヒーターをメインの暖房として使うのならば、サーキュレーターなどと組み合わせて使うのがいいだろう。

タイマー設定はヨーロッパスタイル

 立ち上がりから、室内が暖まるまである程度時間がかかるので、リビングなどでメイン暖房として使うのなら起床時間の前から運転するのがオススメ。本体ではタイマー設定もできるが、その方法がヨーロッパ式なので少し注意が必要だ。

 一般的な日本の暖房器具のタイマー設定の場合、ON/OFFを切り替えて設定するが、MDヒーターでは、ON/OFFではなくモードを切り替える仕組み。「太陽マーク」と「月マーク」、*マークの3つのモードが用意され、それを組み合わせて調整する。

リモコンでプログラム1を選択した状態
取り扱い説明書ではプログラムを表で解説する

 パワフルに運転したい時は、太陽マーク(10~28℃)、就寝時など運転を控えめにしたい時は月マーク(8~25℃)、外出時などは*マーク(5℃固定)という風にプログラムを設定する。デロンギはヨーロッパのメーカーだが、寒さが厳しいヨーロッパでは就寝中も含めて、1日中暖房を付けっぱなしにして使うというのが一般的で、外出中も、観葉植物などが凍らないように、5℃程度の室温を保つという。

 本体には、あらかじめ3つのタイマープログラムが搭載されており、例えば平日の朝と夕方だけ太陽モード、それ以外の時間は月モード、休日は朝から夜まで太陽モードで、夜間のみ月モードというように生活スタイルに併せて選べるようになっている。また時間とモードを自分で組み合わせて設定することもできる。

 1日中室内を快適な温度に保てるというのは魅力的だが、そこで気になるのが電気代。例えば、4時間ほどフル運転をすると電気代は約140円ほどになる。それを朝と夜合計で1日8時間ほどした場合、単純計算で約280円、毎日8時間運転すると1カ月の電気代は8,400円(30日の場合)という計算だ。

 もちろん、エアコンやファンヒーターにはない快適さを実現しているので、多少の電気代はかかっても良いという考え方もあるだろうが、我が家の場合は、プログラム運転ではなくて、その都度つけるようにしている。立ち上がりまでに時間がかかるので、朝はエアコンとダブルで運転して、ある程度部屋が暖まってきたら、エアコンを消してMDヒーターのみという方法だ。そのときは、消費電力を抑えて運転する「ECOモード」を選択。お休みで1日家にいるときなどは、そのまま夜までほかの暖房器具を付けることなく、快適にすごしている。

設定温度を0.5~2℃下げて、消費電力を抑えて運転する「ECOモード」
本体にも運転モードが表示される

自宅での時間を大切にしたい人に

 ヨーロッパスタイルを踏襲した製品なので、日本で使うにはちょっとクセがあるのは事実だが、快適性においてはかなり優秀。ただし、ライフスタイルによって合う、合わないはある。我が家のように、自宅で過ごすのは朝と夜の数時間という人にとってはメイン暖房として考えると、もどかしく感じる時があるかもしれない。

 例えば、授乳中で夜中に何度も起きなくてはならないママの寝室用の暖房としてはこの製品はベストだと思う。また、自宅で仕事をしている人にとっても、満足度が高いだろう。自宅での時間を大切に、より快適にしたいと思うのなら、一度チェックしてもらいたい製品だ。

阿部 夏子