家電製品ミニレビュー

パナソニック「ポータブル電源 CB-LS01H」

~停電時に頼りになる家庭用リチウムイオン充電池
by 藤山 哲人
パナソニック製「ポータブル電源 CB-LS01H」

 懸念されていた8月の電力事情だが、全国的に停電を回避できた。とはいえ、昨年は9月でも35℃を越す日はあったし、気象庁の季節予報でも、九州・四国・中国地方を除いて、40%の確率で平年より暑くなるとされている。秋が過ぎ冬が到来すると、今度は暖房需要で電力需要が増加する。東京電力では「原則、計画停電は行なわない」としているものの、いつ計画停電が再開されるか予断が許されない状況と言えるだろう。

 そんな中、パナソニックから「もしも」の計画停電をしのぐのに最適なパーソナル向けの蓄電池「ポータブル電源 CB-LS01H」が発売された。

 本製品は、リチウムイオン電池を使ったポータブル電源なので、発電機のような騒音も排気ガスもなく、室内に置いて手軽に使えるのが最大の魅力だ。さらに、家庭用コンセントと同じ100Vが取れるだけでなく、USBコネクタも備えているので、携帯電話やスマートフォンの充電もできる。

 今回は、この蓄電池がどれぐらい使えるものなのか検証してみよう。


メーカーパナソニック
製品名ポータブル電源 CB-LS01H
参考価格99,800円(ヨドバシカメラ)


 デスクスタンドとパソコンで2時間半の計画停電が過ごせる

 本製品でまず疑問に思うのが、「どれだけの機器が、どれだけの時間使えるか」ということだろう。実際に、さまざまな機器をつなげ、利用できる時間を調べてみた。実験内容は、以下の(1)~(4)の通り。

(1)消費電力13Wの電球型蛍光灯が何時間点灯できるか?
(2)パソコンで1分に1回Webページのリンクをたどりつつ、(1)の蛍光灯を点灯して何時間利用できるか?
(3)100W(60W形+40W形)の白熱電球が何時間点灯できるか?
(4)60Wの白熱電球を何時間点灯できるか?

蓄電池に色々な機器をつなげてみて、利用できる時間を調べてみる

 いずれも、蓄電池をフル充電にした状態からスタートしている。なお部屋の全体照明としては、天井に付いているシーリングライトやペンダントライトを使う人が多いだろうが、ここでは計画停電時を想定して、デスクスタンドで灯りを取るものと仮定している。

 またパソコンは、インターネットで調べ物をしている場面を想定し、「1分に1回リンクをたどる」というプログラムを作り、実行している。暇つぶしでゲームをプレイする場合などは、さらに消費電力が増えて利用できる時間が短くなるだろう。

 この実験の結果が、以下の表だ。なお表中には「消費電力(W)」と「消費電力(VA)」という2つの数値があるが、消費電力(VA)は厳密にいえば「皮相電力」というもので、蓄電池を利用する際に重要なポイントとなる。このVAについては後述する。


製品消費電力(W)消費電力(VA)利用できた時間
10W蛍光灯1本13W22VA7時間4分
パソコン+蛍光灯40W(平均)75VA(平均)2時間6分
60W白熱電球51W51VA2時間8分
100W白熱電球100W100VA57分

 震災後に実施された計画停電の場合、停電時間はだいたい2時間30分~40分。この蓄電池を使ってデスクスタンドで灯りを取れば7時間も持つので、 十分すぎるほど利用ができる。しかし、蛍光灯をつけた状態でパソコンを付けっ放しにすると、2時間6分ほどと、一気に短くなる。状況に応じて照明の種類や 使用機器を使い分けた方が良いだろう。

 なお大型液晶テレビや冷蔵庫などは、蓄電池の出力をオーバーしてしまうので、利用できない。計画停電中に見るテレビは、20型以下のポータブルタイプにして、冷蔵庫を開け閉めしないようにするといいだろう。なお、液晶テレビはそれなりに電気を食うので、情報は小型のラジオかパソコンを 使うことをお勧めする。

過電流保護回路が働くと、バッテリー残量計とAC100Vのランプが点滅する。40Wと60Wの電球を一度にスイッチONすると、突入電流で保護回路が作動した

 また、もう一つ注意したいのが、スペックギリギリの消費電力100Wの機器は、たまに使えないことがある点だ。本製品の最大出力はおよそ100W相当の「100VA」となっているが、消費電力40Wの電球と60Wの電球を一度にスイッチONにした場合、「突入電流」という一時的に流れる大きな電流が発生するため、電気の流れすぎを防いで蓄電池を保護する「過電流保護回路」が作動、自動停止してしまうことがある。

 100Wの電球はそのまま点灯できたものの、複数の機器を使って消費電力が合計100Wとなる場合は、何秒か間をおいて順次スイッチを入れるようにするといいだろう。


利用できるのは合計消費電力が60~80Wまで

 本製品では注意する点がもう1つあって、それは利用できる家電の合計消費電力の目安は、だいたいが60~80W程度まで、ということだ。これを超えると、先ほどの突入電流と同様、電気が給電できないおそれがある。

 しかし、本製品の最大出力は、先ほど述べた通りおよそ100W相当の100VA。突入電流を考慮するにせよ、最小で60Wというのは、いくらなんでも少なすぎる。しかしこれには、「W」(有効電力)と「VA」(皮相電力)という単位の違いが影響している。

 「W」については、色々な家電にも明記されている通り消費電力を表す単位だ。「白熱電球の消費電力は60W、電気ストーブは1,000W」などという感じで使われる。一方で「VA」も電力を表すものだが、厳密に言えば交流機器に供給された電圧と電流を合わせた数値であり、機器が電気をどれだけ効率よく使うか否かによって、その値が左右される。

 例えば、白熱電球や電熱線の場合は電気エネルギーの100%を光や熱に変えるので、W=VAとなる。これは先に掲載した表における、白熱電球の欄を見てもらえば分かるはずだ。 

白熱電球の場合は、53W(左)と53VA(右)で同じ値

 しかし、モーターや電圧を制御する「コイル」、電気を一時的に溜める「コンデンサ」などの部品が入っている家電製品では、ほとんどが電気エネルギーの100%を使えない。今回実験に使った10Wの蛍光灯の場合、Wで表す消費電力は13Wだが、VAで調べると22VAとなる。この22-13=9の差が、ロスしてしまった電気エネルギーというわけだ。つまりVAは、〔実際に機器が消費した電力〕+〔ロスした電力〕の合計を示している。

電球型蛍光灯の場合は、11W(左)と20VA(右)で1.8倍の差がある
LED電球の場合は、7W(左)と11VA(右)で1.5倍の差
コンセントの最大出力は100VA、USBの出力は500mA(1口あたり)と表示されている

 さてこの知識を元に、この蓄電池のスペック表に書いてある「最大100VA」がどういう意味かを考えてみよう。白熱電球や電熱線ならVAイコールWなので、100Wの機器まで利用できるが、それ以外のほとんどの家電では、W数からだいたい1.2~1.7倍の数値が、VA値となる。「100W」と表示されている家電をVAに直すと、効率によっては120~170VAとなる機器もあるだろう。この場合、蓄電池の最大出力を超えてしまい、この蓄電池では使えないことになる。

 では、どのぐらいのW数まで利用できるのだろうか? 蓄電池の最大100VAをW数に換算してみると、最大電力はおよそ60W~80Wとなる。複数の機器を蓄電池につなぐ場合は、消費電力の合計値がこの値の範囲内に収めることが、賢く使うためのポイントとなる。


メーカー発表の容量は130Wh。うまく使うにはLED照明が良い

 使用できる機器の範囲が分かったところで、電池容量についても触れておこう。

製品裏に貼ってあるシールには「充電式リチウムイオン電池:25.2V/5130mAh」と記されていた。これは回路のロスを差し引いていない、内蔵電池の蓄電容量になる

 蓄電池の容量は、メーカーの発表によれば130Wh(5.13Ah)となっているが、これは内蔵している電池容量をそのまま示しただけの数値。実験では、100Wの白熱電球が57分、60Wの電球が2時間8分利用できたので、実際に100Vとして利用できる蓄電容量は100~110Wh程度だと思われる。内蔵電池から100Vに変換する回路などのロスが発生したのだろう。

 しかし、エネルギーロスがある一般的な家電で考えると、実際に使える家電製品は、先程述べた通り消費電力が60~88Wまでの機器に限られる。2時間半の計画停電の間、ずーっと使い続けるには、機器の総消費電力は24~36W以内のものに限らないと、途中で電池切れが起きてしまうおそれがある。

 うまく使うには、蛍光灯よりもLED電球を利用するのが良い。LED電球は、明るさ40W相当で消費電力が7W、皮相電力が11VAで、10Wの電球型蛍光灯(13W、22VA)より電力を消費しない。計画停電中の灯りとして1つ備えておくと、パソコンやテレビに充てる電力が少し増やせることになる。

波形は“合格点”のサイン波。使う機器を選ばない

 使える利用時間とともに気になるのが、出力される波形だ。すでに家電Watchでおなじみになった「波形ショー」の始まりだ!

 この波形が、家庭のコンセントで出力されるきれいな波線「正弦波」に近いほど、接続する家電製品は正常に稼働する。自動車のシガープラグから家庭用コンセントに変換する「DC/ACインバーター」なる機器が自動車用品店などで売られているが、安いものだとコンセントの波形とな似ても似つかぬ凸凹の波形になっている。

4,000円程度で手に入る自動車用のDC/ACインバータ。1つあれば重宝するが、使える機器が限られるのが難点というのも、安いDC/ACインバータの波形は「擬似サイン(正弦)波」と呼ばれるもので、家庭のコンセントに供給される波形とはかなり異なる

 家電はもともと家庭用コンセントに挿すことが前提に作られているため、波形が凸凹のコンセントで動かすと、モーターが唸ったり、誤動作を起こしたりする。また最近のデスクトップパソコンの電源は、「力率改善回路」という省エネ回路が搭載されていて、凸凹の波形ではまったく動作しなかったりする(逆に白熱電球や、携帯や携帯ゲームの充電器、ノートパソコンなどは使えたりする)。

 では、下段の右の写真を見ていただきたい。これが、この蓄電池から出力された波形だ。コンセント並みにキレイとは言えないが、正弦波が出ているので、コンセントで動作するものはすべて動作するハズだ。停電に関係なく、自動車のDC/ACインバータが使えない家電を1~2時間動かしたいという場合にも重宝するだろう。

コンセントの出力波形。写真は東京電力管内のもの「ポータブル電源 CB-LS01H」の出力波形。コンセントほどキレイではないが、ちゃんとしたサイン波になっている

 また、スイッチにより、出力する100Vの波形を西日本向けの60Hzと東日本向けのは50Hzに切り換えも可能となっている。

 さて、こうした蓄電池は、機器をたくさん接続するほど電圧が下がることが多いが、調べてみたところ、ほぼ誤差なしという感じだった。

残量ボタンを押すと、バッテリ残量が5段階で表示される。充電中に押せば、どのぐらい充電できたかの確認も可能。その下にある周波数切り替えスイッチで西日本と東日本仕様が切り替えられる電圧を見てみると、何も接続していない状態では104.7V(右側の表示)。やや高めだが、そもそも接続してない状態で使うケースはないので、無視していいだろう60W相当の電球(消費電力は48VA、48W)を点灯した状態だと98.6Vとなる。家庭のコンセントの電圧は95~107Vまでが許容範囲となっているので、問題ない
蓄電池の限界の100VA(左側の表示)を使った場合でも、98.3V(右側の表示)で許容範囲内100VAを一斉にスイッチONすると89.0Vにまで下がる。が、直後に過電流防止回路が働き自動的にOFFになる


使い道の多いUSBコネクタ×2口で携帯やスマートフォンの充電も簡単!

携帯電話やスマートフォン、タブレットPCの充電器としても使えるUSBコネクタがあるのはうれしい

 本製品には、携帯電話やスマートフォンなどが使えるUSBコネクタも2口付いている。計画停電中などは、携帯やスマートフォンを活用することも多いので、この機能は重宝するだろう。

 ただし2口で1A以上の出力を取ろうとすると、これも保護回路が働いて自動的に供給を止めてしまう点に注意。USBハブを使っていくつものUSB機器を繋げたりするのはやめた方が良い(出力は1口あたり500mA。1口から1Aは取れない)。

 なお100Vのコンセント出力もUSB 5Vの出力も、同じ内蔵バッテリから供給している。

 今回はこのUSB充電について実験できなかったが、メーカーの発表によれば、USBのみの給電なら、18時間も持つという。USBが2口で1A取れるということから、モバイルバッテリーでおなじみの容量表記「mAh」にあわせると、18,000mAh(18Ah)と計算できる。これはどのくらいの容量かというと、スマートフォンの満充電12回程度となる。

 これらの値は、スマートフォン側の充電ロスを考慮していない単純計算のため、実際にはもう少し少なくなるだろう。またiPadをはじめとするタブレットPCは、1口あたりの出力が500mAに制限されているため充電できるかどうかは微妙なところだが、コンセントを経由すれば急速充電も可能だ。

 このように計画停電用の一時的な電源としてだけでなく、超大容量のモバイルバッテリとしての利用価値も併せ持っている。ただし、モバイルと言っても、重量は3kgあるので、自動車での移動となるだろうが。


充電しながらの使用/停電時の自動給電開始は不可

 この蓄電池の利用時間と価格から、パソコンのUPS(無停電電源装置;停電時を検知した瞬間、コンセントに変わりパソコンへ100Vを供給し電源遮断によるデータ損失を防ぐ装置)としても使えるのでは? と思った読者も多いだろう。

ACアダプタを抜いたり、停電になると左端のLEDライトが光り、同時にブザーでその所在を知らせる

 しかし残念ながら停電時の自動給電開始はできないので、UPSとしては使えない。停電になるとブザー音でお知らせをするとともに、操作パネル面についてる懐中電灯代わりのLEDライトが5分点灯し、その場所を知らせるようになっているが、スイッチを押さないと100Vの出力は開始されない。

 また蓄電池を充電しながら、100VやUSB 5Vを使うこともできない。あくまでも充電モードと利用モードの排他関係になっている点に注意が必要だ。

 ただし蓄電池が電池切れすると、自動的に100VもUSBも自動的に出力を停止するので、蓄電池にACアダプタやシガープラグ(いずれも標準添付)など を接続しておけば、電池切れと同時に、自動的に充電が開始されるようになっている。ただ難点があり、出力の100VA目いっぱいまで使うような機器を接続 した場合、自動出力停止の前に、過電流防止機能が働きエラーとなってしまう場合がある。この場合は手動で100Vの出力を停止しないと、充電状態にならない。

25Vのリチウムイオン電池を内蔵しているとだけあって、ACアダプタはノートパソコンの2,3倍の大きさがある

 なお電池が空になった状態からフル充電にかかる時間は、同梱のACアダプタで3時間10分~3時間半ぐらいのようだ。今回は実験できなかったが、メーカーによれば自動車のシガープラグから充電する場合は4時間半ほどかかるという。大容量の電池だけに、これだけの時間でフル充電になるのは早いと言ってもいいだろう。


計画停電を乗り切るベストアイテム

 さて、およそ2時間半の計画停電をしのぐ電源としては、“発電機”も候補に挙がる。確かに発電機は1,000VA~2,000VAの大電力を10時間程度得られ るメリットはあるものの、その反面、騒音が大きく、排気ガスが出るため本体を室外に設置しなければならず、重量も何十kgと重い。手軽というには程遠い存在 だ。特に都心部では「発電機は使いたいけど、うるさいのでご近所に迷惑になるかもしれない」という葛藤に近い決断に迫られるはずだ。事実、筆者がガスを燃料とする発電機「エネポ」を実験した際は、発電機としては静かな部類に入る製品であるものの、長時間の実験でご近所から苦情がこないか心配だった(笑)。

 しかしこの蓄電池「ポータブル電源 CB-LS01H」は、騒音はまったくせず、部屋の中に置いて利用でき、重量も3kgと女性でも運べる手軽さ。使うことに対してのためらいは一切ない。

折りたたみ式のハンドルがあるので持ち運びも楽ハンドルの脇には、標準添付のショルダーストラップをつけることも可能だ

 このポータブル電源は、いつ起こってもおかしくない停電を、数時間しのぐための電源としては非常に手軽だ。停電中もノートパソコンで作業を続けたい人や、 灯りとノートパソコン、または小型の液晶テレビさえ使えればいいという人には、停電時の緊急電源としておすすめしたい。それ以外でも、住居がマンションやアパートなどで発電機が使えないという人や、屋外の計測などで1~2時間電源を確保したいという人、あるいは大きさを問わずタブレットやPCの大容量バッテリが必要な人などにも、ベストチョイスな電源となるだろう。






2011年9月7日 00:00