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長期レビュー

ホンダ「エネポ EU9iGB」

〜カセットガスで発電できちゃう凄っげーヤツ!
by 藤山 哲人

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)




ホンダ「エネポ EU9iGB」
 発電機と聞いて、何を思い浮かべるだろうか? 恐らく、屋台や移動販売の軽自動車の脇に置かれ、ブンブンうるさい赤いヤツというイメージが多いだろう。もしくは、道路工事で、軽自動車サイズの低騒音タイプの発電機を使って、昼間みたいに明るい工事用照明の電源として使っているものという人もいるかもしれない。

 ともすれば業務用として思われがちな発電機だが、最近では小型化、低騒音化、そして低価格化が進み、個人で使っている人もチラホラ。レース好きな人なら、24時間耐久レースなんかが開催されるサーキットのキャンプスペースで、そこらじゅうで発電機を回している。

車輪と取っ手が付いているので移動が簡単! 小型発電機を使ったことがある人なら、この便利さを痛感するはず
 そんな中、ホンダから5月に発売された発電機が「エネポ EU9iGB」だ。燃料は何とカセットコンロでよく使われるカセットボンベ。あれ2本でエンジンを駆動でき、しかも操作は超簡単ときている。さらにデザインも、従来までの赤くごっつい黒フレームがついた、オシャレとは程遠い出で立ちから、アイボリーが基調のカラーリングになり、見た目は旅行用のオシャレなキャリーカーのようだ。

メーカー ホンダ
製品名 enepo(エネポ)
品番 EU9iGB
希望小売価格 104,790円


 今回の長期レビューでは、このホンダのパーソナル向け発電機「エネポ EU9iGB」を徹底的に使い込んでみたいと思う。見てみたいポイントは、

         ・ガス式って騒音が凄いって聞くけどウチで使っても大丈夫?
         ・どんな電化製品が使えるの?
         ・利用できる時間は? ランニングコストは?
         ・そもそも個人で発電機を使うシーンなんてあるの?

 という素朴な疑問から、

         ・自動車のDC→ACインバータとどちらがお得?
         ・発電機は使える機器が限られちゃうのでは?
         ・本当にキレイな100Vが出てくるの?

といった技術的な疑問にまで、全3回に渡ってお答えしよう。

こういうモンはとりあえず使ってみる! それがセオリーだ

 まずは製品の概要だが、ホンダのWebページにいくらでも掲載されているので後回しにしたいトコロ。とはいえ、ライターとしての責務もあるので最低限のスペックは載せておこう。


出力電圧 交流100V
定格出力 900VA(900W)
使用燃料 カセットガス2本
連続運転時間 最大でおよそ2.2時間(負荷およそ230W時)
重量 19.5kg(エンジンオイル・ガス含まず)

 ホントに必要最低限の情報になってしまったが、責務は果たしたので、さっそく発電機を使ってみよう! 以下、手順の使用法を紹介するとともに、エネポのメリットも併せて紹介する。

(1) 燃料となるガスを入手

 まずは燃料のガスだが、マニュアルによれば「東邦金属工業株式会社製のカセットガスを使用すること」とある。「近所のスーパーで売ってるヤツじゃダメなのか? 出鼻くじくな〜」と思いつつ、コイツを探しに行ってみた。

 案の定、どのスーパーにも東邦金属工業株式会社製のガスなんてネーよ! カセットコンロでおなじみのIwatani(岩谷産業)のオレンジ色のガスは売っているのに……と、何気なくIwataniの隣に置いてある激安のカセットガスを手に取ると……、

イオンで3本297円で売ってる東邦金属工業のカセットガス。中身はLPG(液化ブタン)だ
 あれ? 製造元が東邦金属工業株式会社じゃん!

 近所のイオンでは、Iwataniのカセットガス3本セットが578円。そのとなりに置いてあったイオンブランドだけどOEM元が東邦金属工業のガスが297円!

 えっ! 安いガスの方がいいのかっ!

 てな具合で、即入手でき、それどころかお財布にもやさしいといいことずくめだった。

 この東邦金属工業製のカセットガス、同社ブランドでも販売しているようだが、残念ながら見たことがないものばかり。ホンダのバイク屋さんに行くと買えるというのだが……そこで同社に電話してOEM先と聞き出すと、あるわあるわ!

【東邦金属工業製のカセットガス OEM先】
※本来OEM先などは公開しないものですが、東邦金属工業さんのご好意により、許可を得て特別に公開しています。ということで、他言無用ということで……
店舗名 ブランド名
イオン/マックスバリュー/メガマート/マルエツ ファミリー カセットボンベ
ダイエー サリブ ガスボンベ
ジョイフル本田 シャトルJH
ニトリ/コメリホームセンター/コジマ シャトル カセットボンベ


 ちなみにキャンプ用のガスも各社にOEMしているんだとか……そんなに大手だったのか! というわけで、これならガスの入手に困ることはないだろう。ちなみにこの情報、2010年6月14日現在の話なので、OEM供給元が変わっていることもあるかもしれない。必ずパッケージ裏の製造元が「東邦金属工業」になっていることを確認して欲しい。


(2) カセットガスの装填はコンロと一緒

 本体の上ブタを開けると、カセットガスが2本刺さるようになっている。最近のカセットコンロのロックは磁石式が多いが、エネポのロックはレバー式なので、ガッチリ固定可能だ。

フタの裏にある説明どおりにカセットガスをセットして、ロックレバーを押し込む

 ガスの向きをフタ裏のシールにしたがってセット。あとはレバーを奥に押し込むだけでOK。もしガスの向きが違っていたりすると、レバーを置くまで押し込めないようなセーフティー機能もあるので安心だ。


(3) ダイヤルを運転側に回してスターターレバーを引くだけ!

 エンジン(発電機)の始動は超簡単。

 運転モードに切り替え、スターターレバーを引くだけ!

 これがガソリン式発電機や他社のガス式発電機の場合、スタート時に燃料の混合比を高めるため、通常は「チョーク」という弁を引いてやったり、「始動モード」に切り替えて、始動後、しばらく暖気運転してから「運転モード」に切り替える必要があったりする。時には始動レバーを何度引っ張ってもエンジンがかからず、燃料切れか? プラグかぶったか? と調べてて、単純にチョーク引き忘れかよ! なんてことも。使ったことがある人なら分かるだろう。

 しかし、エネポでは本当にレバーを引くだけ。スターターレバーも結構軽く、本体を押さえて思いっきり引かなくても、片足で本体を押さえておけば座った状態でも引っ張れる。中学生やお母さんでも簡単にエンジンを始動できる。エンジンに関する知識は一切不要だ。

本体各部に手順の番号が印刷されているので、操作に迷うこともないだろう スターターレバーを引っ張るとエンジンがかかる

(4) コンセントを差し込んでドコでも電気が使える!


 エネポのエンジンは、起動後にすぐに安定して、ブロロロロと低い咆哮を立てる。が!

 これが静かなんだわ……

 実は以前、屋外で照明を焚いて自動車の撮影をするって仕事があり、他社のガス式発電機を使ったことがあったのだが、カメラアシスタントを会話もできないほどの騒音だった。測定はしなかったが、地下鉄の駅構内で会話が聞き取れない感じだったので、おそらく1m離れた場所で100〜110dBといったところだろう。まるで排気管の壊れかかった原付きバイクがアクセル全開にしているようだったので、エネポを始動するのもちょっとドキドキだったのだ。

エンジンが安定すると数秒もかからずに、出力表示灯が緑に光る。これで100Vの準備ができたというサインだ およそ1m離れた場所で83dBなので、通勤電車の中や大型幹線道路道路の騒音程度。閑静な住宅地だと、家の中にいてアイドリングしている自動車が外にいるなっと分かる程度だろう

 この静かさは本当にありがたかった。ただでさえ、平日でも家でプラプラしている筆者。仕事で工作もするので、家の前で鉄板切ったり、木材加工したり、しかも超高級そうなカメラで撮影もしているので、ご近所で「あのおっさん何者?」とウワサになってしまうことも。その上、爆音の発電機なんて使ってたら、さらに変なウワサ流れるし、ご近所迷惑になるなぁ〜という心配もあった。しかし、この静かな運転音を聞くと、そんな心配は一瞬にしてどこかへ吹き飛んだ。これはイイ!

 本体サイド部には、コンセントが2口用意されており、エンジンON中に差し込むことで、電化製品が使用できる。これについては、第2回目でより詳細に解説しよう。


(5) 使い終わって簡単に収納

カセットガスを外して1分ほど運転すると、燃料経路にあるガスをすべて使い切れる
 使い終わった後でも、エネポの良いところはまだまだある。後処理がカンタンなところだ。

 これがガソリン式の発電機だと、使用後は残りのガソリンを抜いて、タンクに戻してやらなければならないのだ。シュコ! シュコ! シュコ! って。あまり知られていないことだが、ガソリンってのは長期間放置しておくと腐ってしまう。

 だがエネポの燃料はガスなので、残っていても腐らない。一応、使用後は安全のため、燃料経路にたまっているガスを吐き出させる必要があるが、操作は簡単。カセットガスを抜いて、再びエンジンを始動させればいいだけだ。これで経路にあったガスが完全に抜ける。


(6) 車輪が付いているので移動も簡単!

 発電機は鉄の塊なので、ガスだろうとガソリンだろうと激重。6畳間用の石油ファンヒーターとほぼ同じサイズながら、重量はファンヒーターの燃料を満載したのと同じぐらい。だから発電機と台車、固定用のロープは常にワンセットになっている。

 しかしエネポの場合は、重量は19.5kgと決して軽くはないものの、車輪とハンドルが一体になっているので台車いらず! ロックを解除し移動用の取ってを引き上げると、旅行用のカートのように楽々引っ張っていけるのだ。収納は横置きでも縦置きでもOKだし、車のトランクにもすっぽり、しかもデッドスペースなく収まる。

積み下ろしの際は、上部にある取っ手を使う ハンドルにあるロックを解除すると、ハンドルが引き出せる
ハンドルを使って、キャリーバッグのように簡単に動かせる! 車に積み込むときは、写真のように横置きにしてもOK。四角いのでデッドスペースも少ない

オプションのカバー。横にはマニュアルを入れるポケットもあるので、本体とマニュアルがバラバラにならない
 またオプションのカバー(別売で税込み定価7350円)を買えば、倉庫などに保管するときにホコリよけになって、機器をより長くベストな状態で保管できるだろう。

 エネポの使用手順は以上。従来の家庭用発電機よりも使いやすいことが分かっていただけたと思う。

発電機としてのエネポを評価するために、家庭用コンセントの仕組みを学ぼう

 使いやすさが分かったところで、今度は発電機としてのエネポを評価したい。

 発電機の良し悪しを知るには、家庭用のコンセントに来ている電源を知っておく必要がある。なぜならコンセントを使う家電は、コンセントから電源を取ることを前提に設計されているからだ。「そんなの百も承知!」と怒られてしまうかもしれないが、実は安い発電機というのは、コンセントに来ている電気とは似ても似つかぬものが多いのだ。

 ここからはエネポから話が逸れるが、エネポの良さを伝えるために、家庭用コンセントがどのように家庭に電気を供給しているかを説明させてほしい。



【5分でわかる家庭用コンセントの仕組み

東日本と西日本で、コンセントに届く電気の周波数が異なる。その境界線は、北は新潟県の糸魚川を基点に、長野県の諏訪湖を経由して、静岡の富士川まで続く
 家庭用コンセントで一般に広く知られているのが、西日本と東日本ではコンセントに届く電気が違うという点。50Hz(ヘルツ)やら60Hzという言葉を目や耳にしたことがあるだろう。今ではほとんどの家電が50/60Hz両対応になっているので、関西から関東またはその逆などに引っ越ししても、ほとんどの家電が問題なく動く。

 でも安い(国内メーカーも含め)電子レンジや蛍光灯、洗濯機は、未だに専用機が売られている。

 通販サイトのAmazonで「60Hz専用」と入力してみれば、まだこんなにあるのか!とビックリするほど出てくる。もし通販サイトや秋葉原で購入した50Hzの電子レンジを、60Hzの大阪で使うと、故障や誤動作の原因になってしまう。その境目は、日本を大きく2分するフォッサマグナに近い糸魚川静岡構造線という断層で分かれている。

 これを境に、蛍光灯や扇風機、工場から電車までもが西では60Hz、東では50Hzで動いているのだ。唯一の例外は、東海道・山陽新幹線だけ。糸魚川静岡構造線に関係なく、東京〜博多間を60Hzで疾走するのだ。

東日本50Hz/西日本60Hzの唯一の例外は、東海道・山陽新幹線。写真は東京駅←→新横浜駅だが、全区間を60Hzの2万5000Vで 疾走している。一方、在来線の東海道本線は、変電所に巨大なACアダプタがあり、電池と同じ直流(だけど1500V)で動くため、周波数に依存されない 東日本を疾走する東北・上越新幹線は、もちろん全区間50Hz。電源の境目を微妙にトレースしてしまう長野新幹線は、軽井沢付近で走行中に 50←→60Hzを切り替えるなんて芸当をやってのけるのだ! (写真は東海道新幹線だけど)

 なんで同じ日本なのに電気が違うのか?って理由は単純だ。街の外灯がガス灯から電気に変わった明治時代、西ではアメリカから60Hz、東はドイツから50Hzの発電機を輸入してしまったから。

 テレビを地デジに統一する前にHzを合わせろ!

と言いたいところだが、これだけ普及してしまった今となっては統一のしようがなく、家電が50/60Hzの両対応になるのを待つばかりとなってしまった。

 さて地域によって電気の種類が違うのが分かったが、根本的なHzっていったい何だろう? 電圧は西も東も100Vなのに……。

 Hzとは「周波数」のことだが、これを理解するためには、乾電池とコンセントの違いを認識する必要がある。

 よく知ってのとおり、乾電池にはプラスとマイナスがあり、マニュアルでは「間違って入れると発火や故障などの原因になります」なんて注意書きが冒頭にデカデカと書いてある。でも、コンセントにも2つの穴があるけど「左右を間違って……」なんてくだりはマニュアルのどこにもない(オーディオ機器のようにグランド側を指定している例もあります)。

 これはコンセントにはプラスとマイナスがないためだ。オシロスコープという機器を使うと、これがひと目でわかる。

これがオシロスコープという測定器。一般のご家庭には、あまり――ないよなぁ〜。結構、高価なモノなので自分でも実験したいという人は少ないと思うが、100Vの測定は危険なので注意して! 設定を1つ誤るだけで、測定器が即破損! 乾電池の電気をオシロスコープで見たところ。縦1目盛りが0.5Vなので、1.7Vが出つづけている コンセントの電気をオシロスコープで見たところ。縦1目盛りが50V、横1目盛りが0.02秒。わずかな時間にプラス100V、0V、マイナス100Vが波のように切り替わる

 乾電池は、1本の直線が表示されているが、これはプラスの電圧「1.5V」が常に出ていることを示している。かたやコンセントは、大きく規則的に波打っているのが分かるだろう。先に「プラスとマイナスがない」と言ったが、「コンセントにある2つの穴はプラスにもなるしマイナスにもなる」というのがより正解だ。

 先の波のグラフは、横軸が時間を示している。写真の場合は1目盛りが0.02秒間の波形だ。つまり50Hzというのは、コンセントの右の穴が「プラス100V」になり、再び「プラス100V」に戻るまでのワンセットの波形(1波長)が、1秒間に50回繰り返されているというわけ。西では60Hzなので1秒間に60回となる。

 カンのイイ読者は「波形が0Vになっているときは電気が流れないじゃないか!」と心配するかもしれない。確かにその通りだが、それはほんの一瞬なので、機器に悪影響が出ることはない。具体的な例では、蛍光灯をシャッター速度を上げて撮影すると、灯っていない一瞬が見られるのがそれだ。興味のある方はぜひ実験してもらいたい。

シャッタースピード1/2000秒で連射すると、蛍光灯が点滅している様子を見られる

 この50/60Hzの違いでちょっぴり得や損をするのが扇風機だ。扇風機のモーターはHzに応じて回転する速度が変わる。だから東京から大阪に引っ越すと、おなじ扇風機でもわずかに羽が高速回転し、風が強くなる。逆に大阪から東京に引っ越してくると、風が弱くなって損した気分になるのだ。電気代は同じなのに、なんだか不公平……。


車のDC→ACインバータでも100Vが取れるけど、擬似!

 さてコンセントに届く電気の違いが分かったところで、話を徐々にエネポへ戻していこう。エネポをはじめとする発電機はコンセントの代替えなので、できるだけコンセントと同じ電気であることが、発電機としての良し悪しに関わってくる。

 さっきも少し触れたが、安い製品だとコンセントに届く電気とは似ても似つかぬものが多い。具体的な例だと、車のシガーソケットから100V電源が取れるという「DC→ACインバータ」と呼ばれる機器だ。安っすいヤツだと2,000円程度で買えちゃうものも。

 確かに数万円もするDC→ACインバータだと切り替えスイッチがついているが、ほとんどのものはスイッチがない。おそらく東で製造されたものは50Hz、西なら60Hzだろう。パッケージにも周波数が明記されいない場合も多い。中国製となるとなおさらで、いったい何Hzの電気が出力されるのか?神のみぞ知るって感じだ。

実験に使ったDC→ACインバータ。車のシガーソケットから100V、120Wまでの電源が取れるのでキャンプなどでは便利 パッケージを見てみると、交流100±10Vが出力され、120Wまで取れると書いてある。波形には、擬似正弦波とあるが、Hzまでは書かれていない

 Hzの意味が分かった今、「DC→ACインバータ」の出力をオシロスコープで見ると、衝撃の事実がっ! 右下の写真に注目!

え? これが擬似正弦波? 俺には初代ファミコンのサウンドで使われてた矩形波(凹凸の波)に見えますが……
 パッケージには、出力波形が擬似正弦波って書いてるけど、これが擬似なの? ってぐらい偽者。そして波形を見て判明できたのは、コイツが50Hzを出力するという点だ。写真は1目盛りが5ms(ミリ秒)なので、山から山までがちょうど20ms。なので1秒÷0.02秒=50Hzというワケ。この中国製のインバータは東日本仕様だった! (ちなみに「出力Hzがどうしても気になる!」という読者は、消費電力メーターやマルチテスターという機器で、調べられるものもある。価格はオシロスコープの1/100程度で3,000円〜1万円ほど)

家電Watchではおなじみの消費電力メーター。電圧を測ってみると0Vですか? えー!電灯が付くのに! 電圧0Vなので消費電力も測定不能 Hzを調べてみると……。あれ? 33.4Hz? 消費電力計が誤動作してる!
マルチテスターで電圧を測ると77.8V。オシロスコープで見た結果と違うなぁ。こちらも誤動作気味 Hzはなんとか計測できて53Hz。オシロスコープで見たのと少し違うケド……

 このように安価なDC→ACインバータは、滑らかな正弦波を出すというには程遠く、1秒間に50(あるいは60回)スイッチをカチカチと切り替えている感じだ。そのため近くにスピーカーや音響機器などがあると、「プーン!」というノイズが混入する場合もある。事実、実験したインバーターは、何も音のしていないスピーカーから「プーン」(笑)。

 DC→ACインバータを全否定するわけじゃないし、たいていの家電が動くので致命的な問題ではないが、注意書きにある通り「機器によっては動かないものもあります」。それが安いDC→ACインバータの宿命なのだ。

 動かないものの代表例が、さっき誤動作していた消費電力計やテスターだが、それ以外にもボリュームなどで回転数を変えられる機械系の動きモノがある。写真は自作した可変用回路なのだが、このような回路はきれいな波を想定して作られているので、階段状になった電気を可変回路に入れると、波形がメチャクチャになってしまうのだ。

左の写真は可変用回路(トライアック)で最大電力にしたところ、なんか0V付近にノイズが乗ってる。右は絞ったところだけど、段階的に100Vが出るのではなく、瞬間的に100Vが出ちゃってる。ちょうどスイッチをカチカチと入れたり切ったりを高速にしている状態

 具体的な例では、扇風機などのモーター系。DC→ACインバータを使うと少し「唸る」場合がある。実用上は問題ないが、唸りを上げてるのは機器が無理をしているという意味に他ならないので、気になる人は利用を避けよう。

 「パソコンなんて精密機器はもっとダメじゃないの?」という人もいるかもしれないが、実は意外と安全に使える。階段状の波形であっても、ACアダプタが電池と同じ直流に変換する際に、安定した直線の電源に変えてくれるのだ。なのでACアダプタやスイッチングレギュレータ(パソコンの電源や携帯の充電器)を使う機器は、まず問題なく動くし、電灯などの光モノや電熱線の熱モノの類も問題ない(IHヒーターはほとんどが50/60Hz両用だと思うが、安いのだと周波数依存するかも?)。

 階段状の波形が出力されるDC→ACインバータだが、発電機も安いものだと同じような電気を出力するものがある。なにせキレイな正弦波を出力するDC→ACインバータが数万円もするのだから、発電機に同じ回路を入れたらどれだけ高くつく発電機になることか? これが原因なのだ。


家電Watch読者なら飛びつく発電機の波形はこれだ!

 そこで、エネポの波形である。

 ここまで出し渋ってきたエネポの波形だが、それにはワケがある。なぜなら、先に言っちゃうけど、凄いから! では見せてもらおうか! ホンダのガス発電機の力を!

エネポの波形。この美しい波形をとくとご覧あれ!
 淒っ! 凄すぎっ! コンセントよりも理想の波形じゃん!

 実は、コッチで予想してたのは、16段階、凄くて100段階ぐらいの階段波形だろうと思っていたのだが、パーフェクトな正弦波。ダテにアシモなんてロボット作ってる会社じゃなかった!

 こんなにキレイな電気を出力し、しかも出力900Wとパワフル、そしてガス式なので運転もメンテも楽で、10万円ってのはちょっと衝撃だ。でもホンダのWebページでは、このキレイな波形を一切売り文句にしていないところが、奥ゆかしい。っつーかもどかしい。

 波形の写真を載せただけで家電Watch読者の何人が速攻買うか!?

 というぐらい凄いインバータなのに――だ。

 そこで感銘、いやすっかり洗脳されてしまった筆者が、ホンダに変わって凄さをPRしてあげようじゃないか! 例によって原稿料が増えるわけでも、広告料を貰ってるワケでもないが!

 ではあらためて、コンセントとホンダのエネポの波形を見比べてみよう。

こちらはコンセント50Hzの波形 一方こちらは、エネポの50Hzの波形。美しい…… 60Hzだと少し波の間隔が短くなる。にしても、美しい……

 この波形も1目盛りが5msとなっていて、コンセントは50Hzの波形が出ている。中央はエネポの50Hz、右が60Hzの波形だ。同じ50Hzの波形を比べてみると、


 ええっ!エネポの方が理想的な正弦波!

 コンセントの波形は、なぜか山の頂点がつぶれた感じになっていて、少し訛(なま)った波形になっちゃってる。この謎は東京電力のエンジニアに聞いてみないと、ちょっと原因不明だ。もしかすると発電機の特性で、別の地域で見ると波形が違うのかも?

 右の波形はエネポの60Hzの波形になっていて、波のサイクルが若干短めになっているのがわかるだろう。だいたい1.7〜1.8msなので、1秒÷0.017秒=58.8Hz。なるほど計算どおりだ。

 こんなキレイな正弦波なので、マニュアルには「機器によっては動かないものもあります」なんて注意書きはない。そりゃそうだ、この波形で動かない機器があったら、コンセントで動いているほうが不思議だ! 受ける制限は出力だけだ。

 さららに波形を拡大してみると……。

波形をさらに拡大。写真はコンセントの波形。なお、これ以降の写真はすべて50Hzのもの エネポの波形。やっぱりキレイ

 やっぱりエネポの方が、きれいな正弦波を描いているのを証明するばかりだ。意地悪してさらに拡大!

波形をさらに拡大。こちらはコンセント。波形は滑らか エネポの波形。あ! ちょっとデジタルっぽいジャギーが見えてきた!

 ここに来てようやく違いが見えてきた。でもほんの僅か。左のコンセントは、滑らかで実にアナログっぽい波形だが、右のエネポは超細かい階段状になっているのが見え始めてきた。さらに拡大したのが次の右下の写真だ。もうオシロスコープの限界に違いぞ!

こちらは1目盛り0.2msまで拡大したエネポの波形、相当きめ細かな電圧調整をしているのが分かる
 この写真から予想するに、どうやらコンピュータを使ってきれいな正弦波を再現している様子だ。画面の1目盛りは0.2msなので、0.1ms単位で電圧を調整しているのが分かるだろう。周波数にすると10,000Hz(10kHz)で制御している計算。携帯電話は8kHzで声をサンプリングしているから、エネポのインバータは音声だって再現できちゃう分解能を持っているという計算だ。どうりでキレイな正弦波が出せるってもんだ。ホンダのエンジニアは、なんとかきれいな正弦波を出したい! という情熱を持って開発したのがよく分かる。偉い!

 ここからは推測だが、0.1V刻みに持った正弦波テーブル(データの羅列)を持っていて、これを10kHzのPWM制御(パルス幅変調制御)で刻々と電圧を変化させているのではないだろうか。興味のある読者は、ぜひ続きを研究して欲しい!



 さて、ここまで若干遠回りしながらエネポのファーストインプレッションをレポートしてきたが、パーソナルユースに最適な発電機というのが分かっただろう。

(1)燃料の入手が簡単 (2)始動が簡単 (3)メンテナンスが簡単 (4)持ち運びが簡単

 と簡単づくし。さらに

(5)コンセントよりキレイな電気を出力 (6)50/60Hzの切り替え可能

 ときている。

 しかも数万円はする高性能なDC→ACインバータを内蔵しているのに、ガス式エンジンを搭載して10万円という価格だ。「個人用の発電機が欲しい!」という人にとっては、かなり安い買い物であることに間違いない。とくに後者の2点は「実験用にきれいな50、60Hzの正弦波を出力する100Vが得られないだろうか?」と頭を抱えている、大学の研究室などにもお勧めできる。

 来週は、エネポをテストするためのオリジナル実験機材を、エネポを使って工作し、家庭でどのぐらい使えるのか? を検証してみよう!



その1  /  その2  /  その3


2010年6月28日 00:00