家電製品ミニレビュー

システムトークス「スゴイ扇風機」

~本当に凄かった充電式扇風機
by 伊達 浩二

どこに行っても品薄な扇風機

 最近、扇風機が買えないという話を良く聞く。

 実際に大型家電店でも品切れの店が多く、入荷していても「お一人様1台限り」などと書かれている。東京だけではなく、節電が差し迫った問題になってきた関西方面でも、扇風機が入手しくにくくなってきている。

 これも節電が合い言葉になってから、エアコンの代わりに扇風機で涼を得ようという人が増えたからだろう。お店によっては、去年の3~4倍の在庫を売り切ったという例も聞いた。

 在庫が少ない国内メーカーの扇風機に代わり、通販市場を中心に急速に伸びているのが、海外製のバッテリー内蔵型扇風機だ。

 去年までは、まったく扇風機を扱っていなかったようなメーカーが、見たこともないような扇風機やサーキュレーターを、どんどん売っている。中には、“販売目標1万台”とか、“在庫2,000台限り”という恐ろしいような数字が書かれた販売サイトもある。

なんでも「スゴイ」、システムトークス

スゴイ扇風機

 今回紹介する、システムトークスの「スゴイ扇風機」もその1台だ。パソコンの周辺機器が主力の会社で、製品名に「スゴイ」を付けるという特徴がある。たとえば、「スゴイケーブル」というのは2台のパソコン間でデータをやりとりするUSBケーブルで、このジャンルでは代表的な製品だ。ほかにも、「スゴイカード」とか「スゴイハブ」とか、なんでも凄くしちゃう会社なのだ。

 そんなシステムトークスが、発売した扇風機なので、やっぱり商品名は「スゴイ扇風機」なのだった。今回は、この扇風機のどこがスゴイのか紹介していこう。


メーカーシステムトークス
製品名スゴイ扇風機
販売価格7,980円
購入場所直販サイト

直輸入ならではの仕様

 到着した「スゴイ扇風機」の箱は思ったよりも小さかった。ファンの直径が20cmなので、それを基準に考えてもらえば大きさがわかるだろう。ちょっとムリすれば、机の上に置ける大きさだ。重さは2.6kgなので、本体に付いた手提げで持ち運ぶのも無理なくできる軽さだ。

 まず、仕様が凄い。扇風機だけでなく、LEDライト、AM/FMラジオ、時計、電機蚊取り機が一体となっている。

派手なパッケージ機能は満載だ

 電機蚊取り機というのは、昔あった「ベープマット」などの蚊取りマットを暖めて、殺虫成分をばらまくというアレだ。また、時計も凄くて、いまどきアナログ時計なのだ。

 ここまで見てくれば、これが日本国内市場を対象にした製品ではなく、海外製品を日本市場向けに改変したものであることが、おわかりいただけるだろう。

 ラジオのFMバンドが広くて76MHz~108MHzまであるのは、海外仕様の製品を国内向けにした時の定番だ。国内向けFM放送の76~90MHzだけではなく、東北地方の被災地3県のみになってしまったが、アナログTV放送の1~3チャンネルの音声も聞ける。

機能は豊富なのだが使いにくい

 結論からいうと、確かに機能の多さはすごいけど、それぞれの機能がちょっとづつ物足りない感じだ。

 まず、扇風機はファンの口径が、さきほど紹介したように20cmと小さいので、風量を得るために回転数が高い。なので、強と弱のどちらを選んでも、そこそこうるさい。耳ざとい方は、枕元に置くことはお勧めしない。風の質も扇風機というよりはサーキュレーターのそれに近い直進性の強いものだ。

ファンは口径20cmの三枚羽根ファンの角度はこんなふうに斜めの軸を中心に回る。ちょっと地球儀のようだ操作パネル。アナログ時計が目を引く

 バッテリは鉛蓄電池で、12時間~14時間で満充電となる。これで扇風機は5~8時間動くという。実際に試してみると、満充電になると「バッテリー強」が点灯するのだが、最初の1回目は15時間ぐらいかかった。ちなみに、ACアダプタの入力コネクタは、本体前面にある。普通は背面か横にあるので、ちょっと戸惑った。

電源入力端子が前面にあるACアダプタはPSE規格準拠の小型タイプ

 扇風機を「強」にして動かしてみると、7時間半ぐらい動く。意外とバッテリの持ちは良いようだ。暑い夜に、「弱」にしてベランダにおいてみたら、涼しい風が朝まで送られていた。実質8時間は持ったことになる。サーキュレーターとして考えれば充分な実用性はある。

 ただ、ファンの方向を変えるのが難しい。ファンは斜めを軸にして角度を変えることはできるのだが、床などに置いて、顔に風を当てようとするのは至難の業だ。だいたい自分の居る方向に風を送ることができるぐらいに考えた方が良い。

 あと、使用した個体単体の不具合だと思うのだが、風量を「弱」に設定しても、風量を示すLEDは「強」が点灯する。スイッチの位置で風量は分かるので、不都合はないが、ちょっと気持ちが悪い。

 LEDライトは、36灯のLEDが内蔵されており、そこそこ明るい。角度も変えられるので、実用性もある。手元の本を読んだり、テーブルの上に置いて食事の際の灯りにするぐらいのことはできる。

LEDライト。このままでも手提げライトとして使える本を読むときや、卓上を照らすときは、こうする。充電中にLEDライトが使えないのは惜しい

 難点は、充電中は点灯しないということだ。また、動作させるときの動きが固いので、必ず両手で操作することをお勧めする。明るさは「強」と「弱」が選べるが、使用した個体ではスイッチに不具合があり、弱を選ぶことが難しかった。弱にしても切に戻ってしまうことが多く、3回に1回ぐらいしか選べないのだ。

本体背面。ラジオのロッドアンテナを伸ばした状態

 AM/FMラジオは、どちらも感度が高くなく、昼間のビル内だと聞き取れる局が少ない。FM用のロッドアンテナも内蔵されているが、これを伸ばしてもあまり変化がない。夜間に屋外で試したところ、それなりに選局できたのでキャンプ用と思った方が良い。

 また、使用した個体では、ラジオを受信中に扇風機を回すとノイズが入った。モーターの回転が高まるにつれて、「ヴヴヴヴ、ヴィーン」とノイズも高まっていく。ノイズはAM/FMを問わず入るので本体内のアンプ部分の、シールドが甘いのだろう。

 時計は、単三乾電池が1本必要で、それは付属していない。凄いのは、時刻の設定方法だ。なんと、回すべきダイヤルがフタの部分から5cmほど奥にあるので、指が届かない。どうするのかと思ったら、フタの裏に、設定用の棒がついており、これを使えという。やってみたが、とても難しい。熟練と勘を必要とする作業だと思う。

本体背面の蓋を開けた状態。左が時計で、右がバッテリ。あとで分かったが、バッテリ部分のフタは開けてはいけないと取扱説明書に書かれていた。また、左のフタのところにある黒い棒がダイヤル操作用のスティック取扱説明書の注意書き

 電機蚊取り機は、まず蚊取りマットを入手するのが大変だった。うちは猫が居て、この手の蚊取り機を使わないので知らなかったのだが、いまや蚊取り機の主流は、一夏の間、交換が不要のリキッドタイプが主流であり、1日に1枚使用するマットタイプは過去の存在になっていたのだ。

 我が家の周辺では、大きいドラッグストアでのみ販売されており、スーパーの雑貨売り場では入手できなかった。ようやくマットを入手し、屋外で使用してみたが普通に効果はあるようだった。また、マットの周辺は熱くなるので、ファンの角度を変えるときなど、触れないように注意したい。

電機蚊取り機はファンの横にある裏から見た状態。マットを入れるときはフタを開ける

来年は日本市場向けの製品がほしい

 1週間ほど使ってみた感想は、機能は凄いけど、できないことが多くてストレスを感じた。だんだん、扇風機以外の機能は使わなくなってしまった。

 システムトークスも、小型で安全なACアダプタを用意するなど、頑張っているのは分かるのだが、やっぱり、基本的に目指している市場が異なる製品なのだと思う。購入を考えている方は、この記事にある取扱説明書の注意事項を良く読んでから決断することをお勧めしたい。

 現状では、アジア市場向けの製品ってこんなに凄いのかという異文化への驚きが先に立ってしまい、肝心の充電式扇風機の性能という部分のスゴサが伝わってこないのだ。

 東日本大震災をきっかけにした節電の動きは、この夏で終わるものではなく、たぶん数年にわたって、私達の生活態度を変えていくと感じている。システムトークスは、本当に凄いパソコン周辺機器を作れる会社なのだから、ぜひ、来年はもっとオリジナリティのある日本市場向けの製品を投入して欲しいと思う。






2011年7月26日 00:00