家電ミニレビュー

電動歯ブラシの振動が苦手な人にも試してほしい、フィリップスのポップな新モデル

ポップな色の乾電池式電動歯ブラシ「Philips One」

フィリップス・ジャパンが11月19日に発売した電動歯ブラシ「Philips One」。充電式の音波式電動歯ブラシが主流のフィリップスだが、新製品は乾電池式で、手磨きのように小刻みに動かしながら使うのが特徴だ。店頭予想価格が3,400円ということもあり、高価な電動歯ブラシに手を出すのを躊躇してしまう若年層がターゲットという。

今回、電動歯ブラシを日常的に使っている20代の筆者と、普段は手磨きをしている同年代の友人で使用してみた。スリムな本体やカラーから「持ち運びたい!」と思える点で意見は一致したが、使い勝手についてはまったく異なる印象を持っていた。

単四形アルカリ乾電池1本で駆動。電池寿命とブラシの使用期間はどちらも約3カ月で、電池が切れたタイミングでブラシも取り替えるのがおすすめ

音波式電動歯ブラシとは全く異なる動き

筆者は15年ほど毎日音波式電動歯ブラシを使っているのだが、口内にPhilips Oneを入れたとき、音波式の振動とまったく異なっていた。Philips Oneの1分間あたりの振動は音波式の約3分の1にあたる13,000ストローク。音波式電動歯ブラシの振動は強く、「歯を磨けているのだな」と感じるが、Philips Oneは正直に言えば「なんか歯ブラシが動いているかも」程度の振動だ。

そのため、通常の歯ブラシとは異なり、手磨きと同じように細かく動かしてブラッシングを行なう。振動が小さいため、ブラシを動かしても歯ぐきが痛いといったことはない。ブラッシングしている感覚はほとんど手磨きと変わらない印象だ。

重さは27gと、通常の手磨き用ブラシの2倍程度。同社の音波式電動歯ブラシ「ソニッケアー 9900 プレステージ」の重さが約116gであることを考慮すると、かなり軽量だ。音波式電動歯ブラシは重さゆえに、握る持ち方以外は難しい。一方で、Philips Oneは軽いため、ペンのように持つ「ペングリップ」も可能だ。ペングリップでは歯ブラシを小刻みに動かしやすいので、手磨きのような磨き方をする際に向いている。

細かく動かしやすいペングリップで持てる太さ・軽さなのは嬉しい

磨き終わったときの歯は、手磨きに比べて歯ぐき付近の磨き残しは少ない体感だ。一方で、歯間の汚れは音波式電動歯ブラシほど落とせていなかったので、手磨き同様、歯間ブラシやフロスを併用したい。

気になった点といえば、手磨きに比べれば振動数が多いためか、歯磨き粉が発泡しやすい場合に泡が多く発生するように感じたこと。外出先やオフィスのトイレなど人目につく場所で磨くときは、あまり発泡しない歯磨き粉で磨きたい。

初めて電動歯ブラシを使う人は振動が気になる可能性も

同製品のターゲットは「10~20代の、初めて電動歯ブラシを使う人」。手に取りやすい価格やデザインのPhilips Oneをきっかけに、電動歯ブラシを使っていってほしいというのが、フィリップス・ジャパンの狙いだ。そこで、Philips Oneを筆者の友人に使用してもらった。

友人は20代女性で、普段は手磨きをしている。その友人が初めてPhilips Oneを使用した感想は「振動が気になる」というもの。初めて歯ブラシを手にしたときは「手がしびれそう」と話しており、実際に磨いたときもブルブルとした振動で「口がかゆい感覚になった」という。電動歯ブラシユーザーの筆者にとって振動がかなり少ない印象だったので、友人の反応は予想外だった。

友人が振動に驚いていたのはもっともで、同製品の振動数は音波歯ブラシの3分の1とはいえ、手磨きの50~100倍にもなる。3日間ほどPhilips Oneを使ってもらったが、「振動にはまだあまり慣れていないかも」とのことだった。

ブラシの形状については、毛の凹凸のフィット感が気に入った一方で、ヘッドが大きく感じたようだった。Philips Oneのブラシ部の長さを計測したところ、約2.4cm。ドラッグストアなどで販売されている手磨き用歯ブラシは、レギュラータイプで2.5cmほど、細かな部分を磨きたい人向けのコンパクトタイプで2cm以下が多い印象だ。コンパクトタイプを使っていてPhilips Oneに移行しようとした場合にヘッドを大きく感じるかもしれない。

上から、サンスター「ガム・デンタルブラシ」の3列コンパクト、Philips One、ガム・デンタルブラシのレギュラー

これは筆者も気になっていた部分でもある。通常の電動歯ブラシとは異なり手磨きのように磨くとなると、大きなヘッドでは細かい部分を磨きにくい。女性や小さなヘッドの歯ブラシに慣れている人向けに、小さめのブラシヘッドを選択できれば使用しやすそうだ。

ポップなカラーで持ち運んで使いたい

軽量で細身なことに加え、ポップな色あいも持ち運びたくなる一因だ。ポップな色2色、シックな色2色の合計4色から選べるため、性別やファッションを問わず持ち運べそうだ。20代女性でカジュアルな服装の多い筆者の場合は黄色の「マンゴー」カラーを持ち歩いているが、スーツを着ることの多かった数年前であったらシックな色の「ミント」を選んでいたかもしれない。

カラフルな色が特徴。右上からサンゴ、ミント、ミッドナイトブルー、下がマンゴー

歯ブラシの振動が気になっていた友人も、電動歯ブラシのデザインは気に入っていたようだ。ガーリーな服装の多い友人は、ピンク色の「サンゴ」を使用。自宅で使うというより、「かわいいから、外出先で使いたい」と話していた。ただ、振動の音はもう少し小さければ嬉しいとのことだった。

ちなみに、振動音を歯ブラシから50cmほど離れた場所で計測したところ、45~50dBほど。環境省のサイトによれば、美術館や図書館の館内の騒音の目安が40~50dBという。電動歯ブラシの音は、周囲から「うるさい」と思われる値ではなさそうだ。

また、歯ブラシのブラシをあえて別の色にする使い方も気になっている。製品発表会でこの使い方を知ったとき、10年ほど前に、カラフルなデオドラントウォーターの蓋を友人同士で交換するのが中学生や高校生の間で流行っていたことを思い出した。Philips Oneでは、自分でブラシ部分を買い替える際に異なる色を買うのでもよいし、デオドラントウォーターのように友人や家族で始めにブラシやケースを交換してから使うのも楽しそうだ。

ブラシやケースの色を取り替えるのも楽しそう

「電動歯ブラシの振動が苦手な人」にも試してほしい

電動歯ブラシユーザーの筆者にとっては「振動少なめ」、電動歯ブラシを使わない友人にとっては「振動が気になる」と、使い心地がまったく異なった同製品。友人の感想を聞いて気付いたのは「電動歯ブラシの振動が苦手で使っていない人におすすめの製品ではないか」ということ。

電動歯ブラシについてインターネットで調べていると、「振動が苦手で使うのをやめてしまった」という意見をしばしば見かける。振動数の多い音波式電動歯ブラシなどの振動が苦手だった人にとって、振動数が3分の1ほどのPhilips Oneであれば振動に慣れるきっかけになるのではないか。価格も3,000円ほどなので、高価な電動歯ブラシを購入したものの戸棚に眠らせてしまっている人にも、電動歯ブラシに慣れるきっかけとして試してほしい製品だ。

また、製品ターゲットである若い人にもおすすめだ。おしゃれなカラーが多いのと、軽量なことから、カバンが小さな日でも、荷物が多い日にも持ち運びやすい。電動歯ブラシは手磨きに比べて歯垢除去力があるため、口腔トラブルを防ぐ予防歯科において有用といわれている。「色がかわいかったから」といった理由でも、電動歯ブラシを使う入り口になればよいのではないか。

以上の理由から、Philips Oneは電動歯ブラシの振動が苦手で手磨き派の人や、かわいいデザインのものを持ち運びたい人におすすめできる。希望を言うとすれば、もう少し小さなサイズのブラシヘッドが発売されれば、女性や細かい部分を磨きたい人にとっては嬉しいかもしれない。

大塚 愛理