家電製品ミニレビュー

15,000円の小さな折り畳みソーラーパネルは実用的? 最大出力30W「EP-30SP」で充電してみた

クマザキエイムの折り畳みソーラーパネル「EP-30SP」

クマザキエイムから、最大出力30Wの折り畳みソーラーパネル「EP-30SP」が15,000円という手ごろな価格で発売された。USB型での5V出力を持っており、スマートフォンをはじめとするUSBバスパワー駆動の機器を充電したり、動作させることが可能。18V出力もあり、ポータブル電源などを充電できる。実際どんな形で使えるのか、出力レベルなども含めてチェックした。

いざというときのための発電手段

いざというときに持っておくと安心なのがソーラーパネル。自宅の屋根に設置するとなると100万円以上してしまうので簡単ではないし、マンション住まいだとそもそも設置することが不可能。そうした中、興味を持つ人が多いのが小型のソーラーパネルだろう。キーホルダータイプの小さなものから、畳一枚分くらいのものまで、さまざまなものがあるが、今回試してみたのは、広げると960×340×18mm(幅×高さ×厚さ)、折り畳むと340×250×40mm(同)というコンパクトなもの。これならば普段はしまっておいて、いざというときに持ち出して広げて使うことも可能。重さも1.4kgなので、リュックにでも入れて気軽に持ち運べるサイズだ。ちなみに3枚のパネル自体は固いので、曲がるわけではない。

折り畳むと340×250×40mm

先に手帳サイズ程度の小さなソーラーパネルの実用性について紹介しておくと、2011年に「藤本健のソーラーリポート」の連載で試してみたところ、当時の製品はあまり使い物にならなかったのが実情。ましてキーホルダーやストラップタイプの小さなパネルとなると、単なるアクセサリーであって実用性はほぼなかった。ソーラーで充電してランプが光るように見せかけつつ、中を開けるとボタン電池でランプがつく仕掛けで、パネルとは配線もされていない……なんてことが多いので、小さすぎるものは実用性は期待できないと考えておいたほうがいいだろう。

一方で、今回紹介するモデルのように30Wの出力があるとだいぶ状況は変わってきそうだ。クマザキエイムの製品紹介ページを見てみると、変換効率19%の単結晶シリコンの太陽電池が使われているとのことなので、このサイズに収められているようだ。

iPhoneやAndroid端末を充電してみた

製品の箱を開けてみると、デニムのバッグのようなソーラーパネルが収められている。裏返すとポケットがあり、この中に接続端子と、ケーブル類が収納されている。接続端子部を見て、ここに小さな単三形のニッケル水素バッテリーでも入っているのかな? と思ったが、そういうわけではなく、あくまでもUSB出力と、DC18Vの出力となっている。

パッケージ
入っていたソーラーパネルは、デニムバッグのよう
裏面にはポケットがある
ポケットにはケーブル類が収められている
接続端子部はUSB出力とDC18Vの出力

晴れた日、これを持って屋外に出て、太陽の当たる場所で広げてみた。平らにすることもできれば、ちょっと角度をつけて置くことも可能。すでにこれだけで発電はスタートしているが、内部に充電池が入っているわけではないから、何も接続していなければ何も起こらない。

晴れた日に太陽の当たる場所で広げてみた
ちょっと角度をつけて置くこともできる

この状態でジッパーを開いて接続端子部分を見てみると、LEDが青く点灯している。これが発電中を意味するランプであり、パネルを閉じれば消灯する。

発電中はLEDが青く点灯

そこでさっそく、USB端子に付属の充電ケーブルを接続。先端はLightning、USB Type-C、micro USBで、手元にあったiPhone(Lightining)、iPad Pro(USB Type-C)、Android(micro USB)をそれぞれ接続してみた。これですぐに充電がスタートするため、キャンプなどアウトドアで活用できそうだ。iPhone、iPadとも、バッテリー残量が95%以上だったため、すぐに満充電状態になってしまったが、確実に充電できるようだ。

USB端子に付属のケーブルを接続
Lightning/USB Type-C/micro USBの端子に機器を接続

一方、Androidを見ると「低速で端末を充電中」という表示が出た。付属ケーブルを使ったためか、iPadやiPhone合わせて3つ接続していたのが悪かったのか、低速となってしまった。とはいえ、そのとき49%の充電状態だったのが10分後には59%になっていたので、問題ないレベルではある。

Androidでは「低速で端末を充電中」の表示が出たが、問題ないレベルで充電できた

小さな影も充電に大きく影響するので注意

仕様を見てみると、このEP-30SPは米Qualcommが策定したQuick Charge(QC) 3.0という規格に対応しており、クイックチャージ機能を搭載したスマートフォンやモバイルバッテリーなどを高速に充電することができるとのこと。うまい組み合わせをすれば、より効率のいい充電ができそうではある。

先に今回の実験について、一つ反省点を上げるとしたら、これらスマホやタブレットはソーラーパネルの下などに入れてしまうべきであり、直射日光の元にさらしておくべきではなさそうだった。冬であれば問題ないとは思うが、秋の日差しでも、結構な熱を帯びてしまうので、機材にとってはあまりよくないだろう。

一方、1時間単位で充電することを考えると、太陽の向きは刻々と変化していく。できるだけ、日差しに対して垂直な角度でパネルを設置するのがいいので、ときどき様子を見てみるといいだろう。また、場合によっては木などの陰に入ってしまうこともあるので、場所を移動させる必要もありそうだ。

ここでもう一つ調べてみたのは、18VのDC出力端子の出力レベル。仕様を見ると開放電圧は21V、動作電圧は18Vで1.66Aとなっている。この端子に付属ケーブルを取り付け、晴天の日の正午ごろにテスターを使ってチェックしてみたところ、19.65V。多少上がったり下がったりするが、ほぼ定格通りに出ているようだ。

ちなみに少しパネルを折り畳んでパネルを隠してみると3.70Vまで急低下したが、折り畳んだときとは異なる場所をiPadで遮ってみると定格と大きくは変わらない。これはソーラーパネルにおけるセルの配置/配線がどうなっているかによるもの。この現象のように、小さな枝の影が出力の大幅な低下を起こす可能性があるため、影には要注意なのだ。

18VのDC出力端子の出力レベルを調べる。まずは端子に付属ケーブルを取り付ける
テスターを使ってチェックしてみたところ、19.65Vだった
パネルを少し折り畳んだら3.70Vまで急低下
iPadでパネルを遮ったところ、19.38Vと定格どおり

ポータブル電源と組み合わせると100VのAC変換出力も。いざという時の備えに

18Vという出力は、クマザキエイムが発売しているポータブル電源などを充電するためのもの。逆流などしないようになっており、ある程度の安定化も図られているようなので、クルマ用の蓄電池など、それ以外の充電器に接続して利用することもできるとは思うが、安全性を考えると推奨のポータブル電源を使うのがよさそうだ。

なお、今回試したわけではないが、同社のポータブル電源「EP-100R」の場合、充電した電気を100VのACに変換して出力することも可能なため、応用はさらに大きく広がりそうだ。せっかく発電した電気を無駄にすることなく貯められるという面では理想的な組み合わせといえる。

クマザキエイムのポータブル電源「EP-100R」

ただ、このソーラーパネルは15,000円なのに対し、ポータブル電源のEP-100Rは30,000円と、倍の価格であることを考えるとちょっと躊躇するところ。可能であれば2つセットで揃えておくと安心だが、とりあえずソーラーパネル側だけ持っていれば、災害でライフラインが止まった場合などでも、まずは携帯電話の充電などで利用できるという面でメリットはありそうだ。

藤本 健