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東芝、充電なしで電気自動車を35km走らせる「タンデム型太陽電池」開発
2021年12月23日 11:30
東芝は22日、開発中の「タンデム型太陽電池」が、一般的な「Si(結晶シリコン)太陽電池」単体での発電効率を上回ることが実証できたと発表した。
タンデム型太陽電池は、異なる性質の太陽電池(セル)を、トップセル(上部)とボトムセル(下部)として重ね合わせ、両方のセルで発電することにより、全体としての発電効率を上げるというもの。同社は低コストで高効率なタンデム型太陽電池の実現に向けて開発を進めている。
2019年には亜酸化銅(Cu2O)を用いたセルを透明化した「透過型Cu2O太陽電池」の開発に成功。現在開発中のタンデム型太陽電池では、この「透過型Cu2O太陽電池」をトップセルとし、「Si(結晶シリコン)太陽電池」をボトムセルとして採用している。
タンデム型太陽電池の発電は、太陽光により「Cu2Oセル(透過型Cu2O)」と「Siセル(結晶シリコン)」で同時に行なう。「Cu2Oセル」と「Siセル」という、性質が異なる2種類のセルを使うことで、幅広い波長の光を吸収。これまでの単層の「Si(結晶シリコン)太陽電池」と比べて、面積あたりの発電効率を高めようというものだ。
今回の発表では、開発中の「タンデム型太陽電池」の発電効率が「27.4%」と、試算された(予測値)。この予測値は、世界で最も高効率の「Si(結晶シリコン)太陽電池」が「26.7%」であるのに比べて高い発電効率とされる。
EVに活用した場合、充電なしでの1日の航続距離は約35kmと試算
同社は、現在なお「タンデム型太陽電池」を開発中だが、今回開発した「透過型Cu2O太陽電池(発電効率8.4%)」をトップセルとした「タンデム型太陽電池」が実現化されたとする(全体での発電効率の試算27.4%)。また、それをEV(電気自動車)の天井やボンネット部に実装したとすると、同社の試算によれば、EVの充電なしでの1日の航続距離は「約35km」になるという。
同社は今後、透過型Cu2Oトップセルの発電効率の目標値である10%以上を目指して開発を進める。また同時に、量産タイプのSi(結晶シリコン)太陽電池と同じ大型サイズの、「Cu2O太陽電池」の開発も開始した。
2023年度を目標に外部評価用サンプルの供給を開始し、2025年度を目標に実用サイズのCu2O/Siの「タンデム型太陽電池」の製造技術の完成を目指す。