家電製品ミニレビュー
ルンバ vs. ルーロ、最新ロボット掃除機のガチ対決!
2017年12月15日 07:00
ボーナス前になると、会う人会う人に「ロボット掃除機買いたいんだけど、どれがいいかな?」と相談される。こういう方々は、僕なんかよりも調べ込んでいるので、最終的にアイロボットのルンバ980かパナソニックのルーロに行き着くことが多いようだ。
玉石混交のロボット掃除機市場において、進化し続けているルンバとルーロ。一体、どちらが優れているのか、読者も気になるところだろう。年末を前にガチンコ対決だ!!
メーカー名 | アイロボット | パナソニック |
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製品名 | ルンバ980 | ルーロ「MC-RS800」 |
価格(編集部調べ) | 120,000円 | 122,000円 |
ガチテスト項目はロボット掃除機泣かせの全5種目!
テスト項目は全部で5種類。ロボットとしての優秀さと、掃除機としての機能の高さをチェックしていこう!
1.定点観測によるロボット掃除機の軌跡
実際にリビングを掃除させて充電台をスタートし、充電台まで戻ってくるか?
2.ゴミ発見・回収テスト
リビングのあちこちに擬似ゴミを撒いて、掃除しなかった場所はないか? 逆に散らかしていないかをテスト。また部屋を探索するナビゲーション機能と、どこをお掃除したかを示すマッピングの正確さをテスト。
3.ゴミ回収率をチェック
150cm区画を作り、その中に規定量の擬似ゴミを撒き、何%のゴミを回収できたか?
4.猫の毛の回収率をチェック
150cm区画を作り、その中に規定量の猫の毛を撒き、何パーセントのゴミを回収できたか? あわせて回収後の吸い取り機構への絡み具合などもチェック
5.障害物競走
150cmの区画内に障害物を設置し、うまく回避しながら掃除できたかどうか? ナビゲーションやマッピングが正しくできているか?
ロボット掃除機の方向音痴テスト!
まず行なったのは、リビングでロボット掃除機を使ったとき、掃除機はどのような軌跡を描き、部屋をどのように掃除して、充電台まで戻ってくるかのテストだ。
ただ、今回のテストではロボット掃除機が苦手なものは、あらかじめどかしている。ロボット掃除機は4本脚の椅子であれば問題ないのだが、写真のように床に細長く厚さ1cmほどの木材が横たわるタイプは超苦手で、引っかかって動けなくなるだけでなく、自分の現在位置や方向を見失う原因になる。
またバスマットやキッチンマットなど、小さく固定していないものはロボット掃除機が巻き込みやすい。そこで部屋からは、椅子とキッチンマットをどけて実験をしている。
用意したロボット掃除機は、各メーカーの最上位モデル。アイロボットからはRoomba 980、パナソニックからは3世代目ルーロ(MC-RS800)だ。ともにスマホと連携できる。アプリで操作できるほか、お掃除のレポートも確認できる。
まずはルーロの掃除風景から見てもらおう。
特徴はまず時計と反対方向に部屋の輪郭を回る点。これで大まかな部屋の形状などを記憶する。次に輪郭の内側を矩形に走行し、まるで塗り絵でもしているかのように、床全体を掃除する。2回運転してみたが、その動作に違いは見られなかった。
次にルンバの動きを見ると、ルーロとはまるで違う動き。まずは部屋全体を矩形(映像でみると左右)に掃除。部屋の形状や大きさ、そして障害物らしきものを探索していた。部屋全体の掃除を終えると、今度は輪郭に沿って走行し、さらにさっきとは別の方向にラスタライズしながら、掃除をしている。
ルーロ標準のお掃除モードは、床を1回だけ掃除する方式に対して、ルンバは同じ箇所を縦と横から2回掃除する方式。そのため掃除の時間はルーロより10分ほど長くなっている。なおルーロにも同じ場所を2回掃除する念入りモードも用意されている。
ルンバでも掃除した箇所のマップを、アプリで確認できる。結果は下の通り。
床や部屋の形状をブロックとして認識している場合は、ルーロのようなマップになるが、ルンバの場合はこの情報を元にベクトル情報を割り出し、部屋の形状をより正確に割り出そうとしているように見える。
ゴミの発見・回収性能をチェック! 掃除機としての機能は?
次に行なったのは、ゴミの発見・回収の具合だ。部屋の一部分にゴミを撒き、そのゴミを回収できたかどうかを、床の目視と回収したゴミの重さで判断する。先頭部についている触覚のようなブラシは、ゴミをかき集めるものだが、かえって巻き散らかしてしまう場合があるので、そのチェックも兼ねている。
さらに今回は、眩しい太陽光が差し込んでいる部屋で実験した。これにより天井カメラが使えない場合、どのようにリカバーするかを見てみよう。
ゴミを撒いた場所は、廊下の奥隅、キッチンの奥、ダイニングテーブルの下、椅子の下、斜めのテレビ台、じゅうたんの上、窓際のじゅうたんの上。全部で7カ所だ。
夜に部屋の照明をつけて撮影したときは、ルーロもルンバも同じように部屋全体をくまなく掃除してくれたが、眩しい日差しが差し込んだらどうなるだろう。
まずはルーロの結果から。
対してルンバも掃除は快調だ。標準で縦と横から掃除をするので、歩いてみても、ジャリジャリするところはなく、掃除の仕上がりが違うのが分かる。
ルーロの驚くべき点は、レーザーや赤外線を駆使して、壁際ギリギリを走行するところ。壁際の際まで寄るのだが、本体が擦れないというのが凄い。加えて数学的な形状の「ルーロの三角形」だけに、隅っこの掃除が得意だ。
次に、回収したゴミの重さを測ってみた。今回撒いたゴミの量は、全部で10g。そのうち、ルーロは5g、ルンバは7gのゴミを回収できていた。
ルーロは部屋のコーナーのゴミも残さず掃除していたのに、なぜ回収率では負けてしまったのか。その原因をお掃除マップから探ってみよう。
掃除後のマップを確認すると、ルーロは光の当たっていた部屋の中心部の掃除ができていないことが分かる。ルーロのセンサーは、カメラに頼るところが大きく、直射日光の影響をモロに受けてしまう部屋は正しく認識するのが難しいようだ。一方のルンバは、カメラを補助的に使っているようで、縦横にラスタライズする認識が功を奏してキレイに掃除できていた。
じゅうたんに撒いた砂ゴミの吸引力テスト
以降のテストは、部屋全体だと時間がかかる上に、生活で出たゴミにも依存されてしまうので、150cmの区画に対してテストを行なった。
まずはじめに行なったのは、じゅうたんに撒いた砂ゴミの吸引力テストだ。フローリングは、部屋全体でもテストしたので、よりロボット掃除機が苦手とする、じゅうたんの毛の奥に詰った砂ゴミを吸引させてみた。
タイル状のじゅうたんの中央に、30gの砂ゴミを撒き、角にある充電台からスタートさせて、ダストボックスに溜まったゴミの重さを比較する実験。
まずルーロのムービーから見てみよう。駆動音が比較的静かで夜運転するのにはよいが、じゅうたんやラグを敷いている家庭では吸引力不足を感じそうだ。
続いてはルンバのムービー。ルンバは床材を見分け、じゅうたんやラグなどでは、吸引力を強くして吸い込む。そのため運転音がけたたましいが、じゅうたんの奥に潜んでいる砂ゴミもしっかり吸い取ってくれていそうだ。
さてどれだけのゴミを回収できたか? ダストボックスに溜まった砂ゴミの重さを測った。
ルーロのダストボックスには21gのゴミがあり、回収率は70%。
ルンバのダストボックスには28gのゴミがあり、回収率は93%。
じゅうたんのゴミ回収率は、明らかにルンバの方が上という結果になった。またブラシまわりがジャリジャリ言って気になったので、裏面の吸い込み口を分解してみた。
砂ゴミはルンバの方がやや多いか? という程度だが、ルーロの場合、ホコリゴミはどうしてもブラシに絡まってしまうようだ。一方のルンバは、ブラシではなく、独自のゴムローラーで吸い上げるので、ブラシへの絡まりが少ない。
ペットの抜け毛や髪の毛などのゴミ回収テスト
今度は、ロボット掃除機を含むどんな掃除機も苦手な、ペットの抜け毛や髪の毛の回収だ。どんな掃除機でも一応は吸い込めるが、先端のブラシに絡まって、後々のメンテナンスが一苦労なのだ。
まず両機の掃除風景から。
冬は静電気を帯びてなかなか取れない猫の毛でも、どちらの機種も1本も残さずきれいに掃除できた。
しかしそれぞれを裏返して見てみると……。
ルンバは、ササッ! とバラすと、絡まった毛がすぐに取れた。しかしルーロの回転ブラシは、ご覧の通り悲惨な姿に。
猫の毛は短いので、ブラシからほぐすのにそれほど時間はかからなかったが、長い髪の毛が巻きついているとメンテナンスが大変。ハサミやカッターを持ち出して、切らないと解けないほど絡んでいるのだ。
ロングヘアの女性の部屋、ペットのいる家庭では、ルンバ一択になりそうだ。
ロボット掃除機による障害物競走
最後のテストは、ロボット掃除機の永遠の課題。障害物の回避だ。150cmの領域に仕込んだ障害は、高さ1cmのじゅうたん、固定していないキッチンマット、高さ2cm幅3cmの木、同様に幅8cmの木となっている。これらの木は、椅子などで見かける足を模している。また直径5cmの円柱を1本置き、机や椅子の脚を模している。
まずルーロを走行させたところ、キッチンマットを引きずってしまい、木につまずき自分の位置を見失ってしまっているようだった。開始早々に充電台に戻ってしまい、スマホには掃除マップが表示されなかったところを鑑みると、エラーで途中中断したようだった。
一方のルンバは、つまづきつつも何とか完走! 障害物の位置は若干違うもののお掃除マップも正しく表示できた。
さてルーロには少し難易度が高すぎる障害だったので、机や椅子の脚の認識をチェックするべく、障害物を減らしてリトライしてみた。「えー! これは難易度下げすぎでしょ?」という声が聞こえてきそうだが、何とかして机や椅子の足回りの掃除をどのように行なうかをチェックするためのものと考えていただきたい。
ルンバの脚認識もパーフェクト。脚を「脚」として、きちんと認識しているのが分かる。
ルーロは障害物を見つけると、頭を左右に振るのが特徴的。これは頭についているレーザーを左右に振っているのだと思われる。
どちらも障害物周りのゴミ掃除はきちんとできると言えるだろう。
ロボット掃除機のリーディングカンパニーが見せ付けるルンバの実力
今回のテストで、大きな差がでたのは、メンテナンス性だった。ルンバ980のブラシは、ゴムローラーのような構造で、圧倒的に髪の毛が絡みにくく、ブラシ部のメンテナンスが本当に楽だった。ペットのいる家庭や長い髪の女性宅、もしくは家族に女性が多い家などは、ルンバ980以外に選択肢はないといってもいいだろう。
一方で、ルンバ980の弱点は、運転音の大きさだ。人によっては、「ルンバはうるさくて夜に掃除できない」「音が大きくてペットが怖がる」という人がいるかもしれない。しかし、ルンバはあくまで人がいない時間に使うことを想定して作られた製品。なので、音の静かさよりも掃除性能を優先しているということをお忘れなく。
また、部屋をマッピングすることで、より効率よく掃除できるロボット掃除機であることも実証。部屋の形状や障害物を認識するために、数々のセンサーを搭載し、その情報を総合的に判断して、部屋の掃除をしてくれた。
ロボット掃除機の要となるのが、ソフトウェア。数あるセンサーの情報のうち、どこに重きを置き、あるセンサーを利用できない時に、どのセンサーで代用し、さらに障害物などで自分の位置や進んでいる方向を見失った時に、どのセンサーをどのように利用してリカバリーするか? ロボット掃除機は、ソフトウェアの完成度で大きく左右されるのだ。
その点、ロボット掃除機ひとすじでやってきたアイロボットのルンバ980の完成度は高い。すでに1年前のモデルになるが、ルンバ980のナビゲーションシステムを超えるロボット掃除機は、まだ登場していないようだ。