家電レビュー

なぜDJIがポータブル電源を? 使ってわかった「DJI Power 1000」の良さ

4月に発売された「DJI Power 1000」

最初はアウトドアやオートキャンプを中心に広がっていたポータブル電源だが、災害時の備えも考慮して、家庭内にも置かれるようになっている。筆者もベランダに仮設したソーラーパネルを併用し、昼間に発電した電力をEcoFlow(エコフロー)の「River 2 Pro」に貯めてパソコンやテレビを駆動する毎日だ。

そんなおり、DJIから登場したポータブル電源「DJI Power 1000」を試用することができた。DJIといえばドローンのメーカーとして世界的トップブランドで、アクションカメラなども好調である。

一方でポータブル電源は、有象無象のメーカーが乱立した中からそろそろメジャーメーカーが固まりつつあり、よほど特徴がないと後発参入は難しいところに来ている。

シンプルになぜDJIがポータブル電源を? という疑問もあるわけだが、その辺りを実際に使いながら探ってみたい。

シンプルに振ったポータブル電源

まず製品の概要をざっとおさらいしておこう。「DJI Power 1000」の発売は今年4月で、公式ストア価格114,400円となっている。容量は1,024Whで、ポータブル電源のポジションとしては中型クラスとなる。同時発売で容量が半分の「DJI Power 500」もある。こちらは公式ストア価格58,300円。

単体でスペックを羅列してもよくわからないので、EcoFlowの製品の中から容量が同じの「DELTA 2」と比較してみる。ちなみにEcoFlowは、元DJIのバッテリー技術者がスピンアウトして立ち上げたメーカーである。

       DJI Power 1000   EcoFlow DELTA 2

容量       1,024Wh        1,024Wh
AC最大出力    合計2,000W       合計1,500W
重量       約13kg         約12kg
サイズ      448×225×230mm    400×211×281mm
電池の種類 (共通)      リン酸鉄リチウムイオン
サイクル寿命    4,000回以上       3,000回以上
充電タイプ (共通) 家庭用電源(コンセント)、車内電源、太陽光発電
AC充電時間    70分(80%まで50分)  80分(80%まで50分)
出力ポート    140W USB Type-C×2   100W USB Type-C ×2
        24W USB Type-A×2   12W USB Type-A×2
        SDCポート×1      126W シガーソケット
        SDC Lite×1       38W DC5521×2
        AC出力×2        AC出力×6

EcoFlow DELTA 2はAC出力の数が6と豊富で、これらは全て背面にある。全面はUSB系のみと割り切っている。一方DJI Power 1000は、すべての端子を前面に配置しており、背面には何もない。壁ぎわや椅子の上に乗せてもポートにアクセスできるようにという配慮だろう。

端子類はすべて正面に配置
背面には何もない
両サイドに通気口

DJI Power 1000にはソーラー入力やシガーソケット入力がないが、これらは別売アクセサリーをSDCポートに繋いで拡張していくというスタイルをとっている。今回はソーラーパネル アダプターモジュール(9,680円)も合わせてお借りしている。これはソーラーパネル接続で一般的なXT60端子が3つ搭載されたアダプタだ。本体横にアダプタを固定するためのブラケットも付属している。

別売のソーラーパネル アダプターモジュール

多くのポータブルバッテリーには、ソーラー入力が1系統もしくは2系統しかなく、複数のパネルを接続するには二又や三又になったケーブルを別途購入して並列繋ぎすることになるが、このアクセサリーがあれば最大6パネルがそのまま接続できる。

1個のアダプタに3入力。アダプタは本体に2個接続できる
ボルトで側面に固定できる

なおSDCポートを利用する、DJIドローンのバッテリー充電器用ケーブルも多数ラインナップされている。通常ドローン用バッテリー充電器は、ACアダプタを介して充電するわけだが、Power 1000との接続ではDC直結となるので、多くのドローン用バッテリーに対して残量10%から30分程度で95%まで充電できる。

ドローン用の充電は別売ケーブルで対応

昨今のドローンは省電力化とバッテリー軽量化が進み、1本のバッテリーで30分以上フライトできるものも多いので、バッテリー2本とPower 1000があれば、長時間の撮影にも対応できる。

ドローンは屋外で飛ばすものなので、Power 1000も屋外での使用を中心に考えているようだ。DJIでは専用のキャリーケースまで用意している。左右のハンドル部に放熱用の開口部があるほか、パネル部にはツバがあり、電源ポートを保護する。本体は防滴防水仕様ではないので万全ではないが、ある程度の悪天候での使用も想定しているようだ。

専用キャリーケースもある
ケースに入れたまま使用できる

とはいえ、普通の人はドローンを頻繁に使わないということもあり、今回は一般家庭で電源として使った場合にどうなのか、という点で評価したい。

大出力対応が魅力

まず充電スピードだが、AC入力に1,200Wと600Wの切り換えがある。急速充電したいなら1,200W一択だが、他にも大電力の機器があるばあいは、ここで70分占有するとブレーカーが落ちてしまうことがある。実際他のポータブルバッテリーと一緒に充電したら部屋のブレーカーが落ちてしまったので、急いでいないときは600W運用のほうが望ましい。

AC入力は1,200Wと600Wをスライドスイッチで切り替える

ソーラーパネルは、アダプタ経由で接続した。本機にはスマホによるコントロールなどはできず、本体機能がすべてである。ACとソーラーを併用する場合、通常はACの方が大電力なので、ソーラー側がまだ発電しているのに満充電になってしまう。

EcoFlowのバッテリーはスマホアプリでソーラーぶんの空き容量をあらかじめ指定できる機能があるので問題ないが、本機はこうした併用の運用のことはあまり考えられていないようだ。つまり家庭内に置いて常設設備として使うというよりも、パッと充電して屋外で使う、あるいは屋外でソーラー充電しながら使うという方向性のようだ。

SDCポートは、入力と出力が兼用になっている。ソーラーアダプタもそうだが、シガーソケットもアダプタ経由でここから充電する一方、ドローン用バッテリーの充電もこのポートから行なう。ドローン用バッテリーはサイズや容量で端子の形状が違うので、それらすべてを用意するより、変換ケーブルで対応した方が得策という考え方のようだ。すでにアクセサリーが豊富にラインナップ(https://store.dji.com/jp/list/accessories?tab=103&sort=recommendation&page=1&category=101%3D101.219.1)されているので、Powerシリーズも後継機はSDCポートで柔軟にやっていく、という方向性になるだろう。

シガーソケットからの充電も別売アクセサリーで対応

出力がACで2,000Wというのは、かなり頼りになる。容量が1,024Whなので、2,000Wを全力で出し続けられるのも30分程度だが、調理家電は消費電力が大きいものがあるので、キッチンのリリーフとしては役に立つ。

最大2,000W出せるAC出力

筆者宅では同時に調理家電を使うとブレーカーが落ちることがあるが、その原因はわかっている。炊飯器だ。炊飯器は0Wから1,200Wぐらいまで大きなサイン波を描きながら消費電力が刻々と変わっていくので、これがMaxで電力を食っている時に他の調理家電の利用が集中すると、ブレーカーが落ちるというわけである。

そこで炊飯器をPower 1000で動かしてみた。これで変動が激しい機器を系統電力から切り離せるので、同時に複数の調理家電を使っても問題なく完了することができた。炊き上がりまでにPower 1000で消費された電力は10%ぐらいなので、1回充電しておけば10回分ぐらいは炊飯できる。こうした調理時の電力消費の平坦化に使えるのは魅力だ。

USB出力は、Type-CがPD 3.1プロトコルに対応しており、柔軟な出力が可能だ。電流は5A固定で、電圧は5/9/12/15/20/28(EPR)Vに対応する。USB Type-Cポートは2系統あるが、チャンネルごとに最大140W出力できる。MacBook Proは高速充電時に5A/28Vの140Wを要求するが、これも問題なく使用できた。また5A/5Vという出力はACアダプタでもあまりない見かけない出力で、これを要求する特殊なデバイスも動かせる。

USBは各2個ずつだが、出力が柔軟なのがポイント

使ってみて感じたのは、静音性だ。両脇に大きな通気口があるわけだが、かなりの出力を出しても突然ファンがうなり出すという感じもなかった。仕事で集中しているときも、急にファンが回り出して気が散るということもない点では、ワーケーションで使っても良さそうだ。

ポータブルバッテリーに、専用キャリングケースがあるのは珍しい。DJIは割と持ち運びケースにこだわるメーカーで、ドローンも各モデルに毎回デザインが違う専用ケースが付属するほどである。

元々本体の両脇にハンドルが付いているが、これを使うとどうしても両手で持つことになる。一方キャリングケースを使うと取っ手がまとまるので、片手で運ぶことができる。また傷からも守ってくれるので、持ち出しが多くても外装が傷むことも少ない。

天面両脇にハンドルがある

「持ち出し」を前提としたポータブル電源

本機はそもそもDJIのドローンと組み合わせることを前提としていることから、家や事務所でガーッと充電して屋外の現場で使うということに特化している。1,024Whという中規模容量の割にAC出力は2つしかないが、2000Wの大出力が出せることから、コンセントが必須の電動工具のようなものも動かせるだろう。

レインカバー兼用のキャリングケースがあるのも、アウトドア派には嬉しいだろう。ただ本体は防水防滴仕様ではないので、濡れっぱなしで運用できるわけではない。雨天時の運用は十分に注意していただきたい。

様々な用途へは、すべて別売のアクセサリーで対応というのも潔い。シガーソケットが付いていても車で運用する気がない人には使うチャンスはないわけで、そうした本体の無駄を省いたということだろう。

一方で充放電をコントロールするためのスマホアプリのようなものは何もないので、本当にガーッと充電してガーッと放電するだけのバッテリーになってしまっているのがもったいない。そもそも遠隔でコントロールするのがメインのドローンメーカーなのに、なぜそこをやらなかったのか。例えばドローン操縦中に、次のバッテリーの充電完了まであと何分といった情報が来れば、絶対に便利なはずだ。

シンプルといえばシンプルではあるが、Wi-Fiがあれば遠隔でコンロトールできるみたいな機能があればもっと賢く使えるのに、そこが残念である。アプリでコントロールできるようになったときが、本当にDJIがポータブル電源を作って良かったな、と思えるのだろう。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。