家電レビュー
ちょっと良いパン毎日食べる幸せ。パナの小さめホームベーカリーは使い続けられそう
2024年10月31日 08:05
朝食はパンとコーヒーの生活を始めてから、もう20年は経っている。ご飯も大好きだが、どうしても朝はパンとコーヒーの香りの誘惑に勝てないのだ。
でも、いつの間にかコーヒーは豆を挽いて淹れるようになったのに、パンはずっと買ってきたものを食べている。そろそろパンにもこだわろうかな、と思ってホームベーカリーを調べ始めると、気になる製品が出てきた。それがパナソニック「SD-CB1」だ。
まず価格が21,780円(直販)と安い。それにキッチンに置きやすそうな小さめのサイズやシンプルな操作性、洗い物の少なさなど「初心者が使い続けられるホームベーカリー」であるように思える。本記事では筆者がそのように感じたポイントを、実際に使ってみながら紹介したい。
シンプルだから使いやすい機能、食べきりサイズがうれしい
SD-CB1を魅力に感じたポイントは、第一に本体が小さいこと。A4程度のスペースに設置できる18.8×28.5×24.3cm(幅×奥行き×高さ)というサイズは業界最小(2024年7月3日現在、国内ホームベーカリー市場において。同社調べ)だということで、新しいキッチン家電を購入する際の置く場所問題のハードルがグンと下がる。
サイズでいえば、焼き上がるパンのサイズがちょうど良い。約0.6斤のミニ食パンが焼けるのだが、これが絶妙で、1人なら2食分、2人なら1食分くらいの食べきりサイズになっている。ホームベーカリーでは1斤~2斤のタイプが多い中、正直この量だと家族構成によっては数日かけて食べることになるため、焼き立てを味わえるのも数日に1回になってしまう。
とはいえ、「毎日焼き立て」ということは「毎日作らないといけない」ことでもあり、その作業が大変だと続けられなくなるはずだ。実際に作っての具体的な感想は後述するが、SD-CB1には“シンプルな機能”がそろえられている。これは結構重要なポイントだと思う。
なぜなら、多彩な機能があると感心はすれど、詳しい人以外には使いこなせない、というか使う機会が限られるかもしれないためだ。数カ月に1回出番があるかないかの機能のために操作が複雑になるより、いつものメニューが迷わず使える仕組みのほうが、結果的に長く使い続けたくなるはず。SD-CB1はそういった点で、使い勝手が良い。
材料は全部パンケースに、洗い物も少なくて済む
本体のボタンを見ると「START(スタート)」と「CANCEL(キャンセル)」のほかは「MENU(メニュー)」「COLOR(カラー)」「TIMMER(タイマー)」、そしてメニュー選びや時間設定などに用いる上下の選択ボタンだけ。あとは作業工程などが表示されるディスプレイのみと、デザイン的にもスッキリとしているのはうれしい。
メニューボタンからは「ねり」「ねかし」「発酵」「焼き」の工程を自動で行なってくれるオートメニューが選択できる。オートメニューの数は20種類(具入りを含めると30種類)用意されていて、パンだけで10種類(具入りを含めると18種類)、生地が3種類(具入りを含めると5種類)、お菓子などその他7種類といったラインナップになっている。
オートメニューの種類やそれぞれの配分が書かれたレシピは付属の取扱説明書、およびレシピブックから確認できる。他の製品だと、豊富なオートメニューを本体にプリントしてくれているモデルもあるが、SD-CB1はそういった要素はなく真っ白なルックスをしている。
カラーボタンではパンの焼き色を「淡」「標準」「濃」の3パターンから選択可能。パンのアイコンで表示されるのがかわいらしい。
とにかく簡単においしいパンが焼き上がる
シンプルで使いやすいといっても、肝心のパンのできばえがイマイチでは仕方がない。色々なメニューが用意されているが、最もスタンダードで作る機会が多いであろう「デイリーパン」を作ってみよう。
材料はドライイースト、小麦粉(強力粉)、バター、砂糖、塩、スキムミルク、水。このうち、バター以外は付属の計量スプーンで必要な分量を測ることができる。
手順としては、パン羽根をセットしたパンケースに、前述のようにまずドライイーストを入れ、それから残った材料を入れていく。計量スプーンを使うと簡単だが、ちょっとした分量の差が仕上がりに影響するのがパン作り。まずはスプーンで計りつつ、デジタルスケールも持っているなら、分量に慣れるまではぜひ活用したい。
あとはパンケースを本体にセットして、デイリーパンのメニュー番号「1」を選択、焼き上がり時間を設定したらスタートボタンを押すだけ。もし途中で操作をやり直したかったり、スタートを押した後に中止したい場合はキャンセルボタンを長押しする。
こうして文章で説明することが少ないことからも、とにかく簡単なのは伝わるかと思う。
材料として公式では小麦粉に日清製粉ウェルナ「カメリヤ」、ドライイーストに同じく日清製粉ウェルナ「スーパーカメリヤ」が推奨されているが、もちろんそれ以外でも作れる。パン用として売られている小麦粉も色々あるので、好みを探すのも面白い。
焼き上がったパンは、正直にいってスーパーに並ぶ有名ブランドの食パンよりもおいしかった。自分で作った(ほとんど全自動とはいえ)ひいき目が多少入っているかもしれないものの、たまの贅沢で買うちょっと良い食パンくらいにおいしい。
SD-CB1のパンはもっちり4割、しっとり3割、ふわふわ2割、カリカリ1割といった塩梅。気泡のキメも細かく、小麦の香りもふわりと広がり、ジャムやバターをつけずにパクパクと食べられる。
筆者は普段は身体を気遣って全粒粉食パンを買うこともある。SD-CB1でも作ることができたので試してみた。公式レシピを確認すると小麦粉と全粒粉(パン用)をおよそ2:1の割合でブレンドする以外は、使用する材料はデイリーパンと同じだ。
焼き上がった全粒粉食パンは、デイリーパンほどの高さはないがそれなりに膨らんでくれた。より小麦の風味が強まり、食べ応えがある食感など、しっかりと全粒粉食パンらしい仕上がりになる。
でき上がりに関しては厳密にいうと湿度や気温などの条件に左右されるものだが、材料の分量を守っている限り、何度作っても違いはほとんど感じられなかった。逆に目分量でざっくりと作ると小麦粉が混ざりきらずダマになっていたりと影響が出たので、そこだけは気をつけたい。
日常使いはボタン2つのみで完結しそう
タイマーボタンで焼き上がり時刻を設定してタイマー予約ができるのだが、ありがたいのはでき上がり時間で表示されるところ。つまり「7時に焼き上がるようにするためには何時にスタート」のように逆算する必要がないので、直感的に操作できる。
ちなみにタイマー予約の使い方は「夜のうちにセットして朝に焼き上がる」ようにすることが多いだろう。だとすると気になるのは、うるさくないかどうか。実際にタイマーで作ってみても動作は静かで、睡眠を邪魔されるようなことはなかった。逆に、焼き上がる少し前からパンの香ばしい香りが漂い、とても気分の良い目覚めに繋がったくらいだ。
ほか、機能面ではパナソニックの上位モデルにはあるイースト菌自動投入機能が省かれた。一方でSD-CB1には、イーストを最初に入れても過発酵させないという独自のプログラムが採用されている。
そのためパンケースに他の材料と一緒にドライイーストを入れることになるのだが、多くのホームベーカリーでは小麦粉の真ん中をへこませてドライイーストを入れたり、後入れしたりするものを見かける。SD-CB1ではまずパンケースの底に取り付け軸を避けるようにしながらドライイーストを入れて、その上に小麦粉などの材料を被せるように入れ、最後に水をドライイーストに触れないように入れるよう指示されている。すぐに焼き出すのならともかく、タイマー予約を活用するのであれば、この手順を守っておいた方が無難だろう。
上位モデルのような詳細な設定が可能なマニュアル機能はなく、基本的にオートメニューにお任せになるため、毎日のパン作りをルーティン化したら、触るのはほとんどスタートとメニューボタンの2つだけになると思う。
無理せず使い続けられるから楽しい
あまり使わない機能があってもしょうがない、などと書いたものの、せっかく搭載されているなら使ってみたくなってきた。ということでガトーショコラ作りに挑戦。
材料は製菓用ビターチョコレート、無塩バター、卵、生クリーム、砂糖、薄力粉、ベーキングパウダー。パンケースにこれらの材料を全部入れて、スタートボタンを押す流れはパン作りと同様だ。卵白でメレンゲを作るなどの工程がなく、作業自体はとても簡単。
ただガトーショコラは全自動というわけにはいかず、スタートボタンを押してから20分ほどで一度、粉落としをする必要がある(具入りパンの場合も途中で具となる材料を投入することになる)。また焼き足りないときは2回まで「追い焼き」ができるが、焼き上がりから約15分間をすぎると受け付けなくなるため、このメニューは夜のうちにセットしておくスタイルには不向きかもしれない。
それより、およそ2時間で焼き上がるため、昼食後に仕込めば3時のおやつにちょうど間に合う。同じようにバターケーキは1時間5分、米粉ケーキは1時間30分程度の所要時間。家にいるときにながら作業で準備するのがちょうど良さそうだ。
焼き上がったガトーショコラは外はカリカリ、中はふんわりといった仕上がりで、クッキー生地のような食感もあっておいしい。しっとりといった感じはあまりしなかったが、チョコレートの風味は濃厚。これも使う材料や量のバランスで好みを追求できるだろう。
SD-CB1の機能性について、ある程度の使用歴があるホームベーカリーユーザーや「毎食パン」というパン好きだったら、もしかすると物足りなさが出てくるかもしれない。でも初心者にとっては必要十分であり、また使い続けやすい機能にまとめられている。
焼き上がったパンはおいしいし、材料費を考えても“ちょっと良い食パン”を買い続けるよりはコスパも良いと思う。もし購入を迷っていたり、材料をそろえるのが面倒なら、パナソニックの公式サブスクで「コンパクトベーカリーとパンミックスコース」(月額1,980円/最低利用期間6カ月)でお試しする手もある。SD-CB1で毎朝のパンを作れば、QOLが向上することは間違いなさそうだ。