家電製品レビュー

【洗濯機4連続レビュー:1】至れり尽くせりで執事のような、日立「ビッグドラム」

 春から息子が中学生になり、洗濯事情が激変した我が家。普段着る服は学生服となり、今までのようにザブザブ洗うわけにもいかず、思った以上に家事の負担が増えた。何より予定外だったのは、部活動の練習着。

 野球部に入部した息子は朝練には体操着を着用し、放課後の練習には上下真っ白な練習着。これに加えてアンダーシャツや靴下、アンダーソックス、試合のある日はユニフォームもあり、一気に洗濯物量と頻度が増えた。

 当然ながらどれも毎日真っ黒に汚してくるため、その下洗いだけでも結構な負担だ。他のご家庭はどうしているのかわからないが、とにかく我が家の洗濯ローテーションは激変し、洗濯機の買い替えを検討し始めた。

 これまで筆者宅で使っていた洗濯機は、日立のドラム式洗濯機の2011年モデル「BD-S7400L」。時速約300kmというジェット機並みの高速風で衣類を乾燥させる"風アイロン"機能を搭載しながらも、本体幅が60cmとスリムな設置性とデザイン性に魅力を感じて購入した。

 当時、子どもはまだ保育園児。働く母として少しでも家事の負担を減らしたいとの思いで、当時の他社製品に比べても抜群に優れた乾燥機能と、節水・省エネ性を重視して選んだドラム式だ。

 しかし、今回買い替えを検討するにあたり、泥汚れを考えると縦型にすべきかどうかで悩んでいる。とはいえ、やはり少しでも家事負担を減らしたいという思いは変わらず、やはり本命はドラム式。

 ふだん出席している新製品発表会のデモでも、ドラムの洗浄力も年々アップしていることがわかっている。とはいえ、果たして泥だらけの衣類にどの程度まで対応できるのかに少し不安があり、購入候補となる気になる4製品に絞り込み、各メーカーのご協力のもと実機をお借りして順に試してみることにした。

まずは、後継の日立「ビッグドラム BD-SX110C」を試した

 というわけで、トップバッターは、日立のドラム式洗濯乾燥機「BD-SX110C」だ。2018年10月に発売されたフラッグシップモデルの1つ。同社のドラム式には「BD-NX120C」というもう1つのラインのフラッグシップモデルもあるが、無線LAN接続によるスマホ連携機能がない代わりに、「液体洗剤・柔軟剤自動投入」機能を搭載している。この機能とデザイン性以外の機能はほぼ同じだ。

ドラム式洗濯乾燥機「ビッグドラム BD-SX110C」。スッキリとしたシンプルで落ち着いたデザインで、どんなサニタリー空間にも違和感なく調和するはず
メーカー名日立グローバルライフソリューションズ
製品名ビッグドラム BD-SX110C
実売価格197,800円

 デザイン性に関しては、正直もう一方の「BD-NX120C」ほうがカッコいいし、わずかではあるが洗濯容量は1kgだけ大きい。しかし、レビュー用に到着した実機は、想像していたよりも好印象だった。

 もともと所有していた「BD-S7400L」は、本体幅がスリムなことも選んだ理由あったが、既に7年ほど経った最新モデルではスタンダードなサイズになっており、外形寸法はほとんど同じでまったく違和感なく、受け入れられた。シンプルでスッキリとした好みを選ばないデザインだと思う。

 本体サイズはほぼ変わらないのに、洗剤の自動投入機能用のタンクや投入経路といった内部の部品が組み込まれていることにも感心する。

我が家で使用していた7年前のモデルと外形寸法はほとんど同じ。操作部は独立したボタン式で、電源以外は上部の液晶モニターにLEDで表示されたメニューを、その下の各ボタンを押すことで切り替え・設定できる

必要ないと思っていた「洗剤自動投入機能」が、案外時短に!!

 この製品の一番の目玉とも言える「洗剤自動投入機能」は、パナソニックに続いて、日立もこのモデルから搭載したものだが、洗剤の計量ぐらい大した手間とも思っておらず、試す前は個人的には必要ない機能と思っていた。

 ところが、いざ使ってみるとこの面倒のなさは手放せなくなる機能だと実感。第一に初めて使用した際に、今まで自ら計量していた洗剤量がいかにアバウトだったかに気付かされる。

洗剤自動投入用のタンク。左側が液体洗剤用、右側が柔軟剤用でそれぞれ独立したタンクを備える
タンクは丸ごと取り出せる。上に取っても備えているので引き出しやすい
液体洗剤タンクの容量は約1000ml、ほとんどの詰め替え用のパウチが丸々1本一度に投入できる。柔軟剤用は約700ml
洗剤タンクはフタを丸ごと取り外すことができ、中も広口なので洗いやすい
洗剤タンクの手前側には手動投入用の投入口も。通常のお洗濯と同様に1回ごとに洗剤を入れたり、漂白剤との併用も可能だ

 運転をスタートすると、洗濯機がまずは衣類の重量を計測し、それに合わせて適切な洗剤量をディスプレーに表示してくれるのだが、今まで使用していた洗剤量がかなり多めだったことが判明した。実は洗剤量は、衣類の量に適していないと、汚れ落ちに影響するほか、すすぎの水の量などにも影響する。

 今まで「多いぶんには問題ないだろう」とかなりの目分量だったが、実際に目視で自分で判断していた「だいたいこれくらいの量だろう」という洗濯物量と、洗濯機が示す量はあまり一致しておらず、かなりいい加減だったと気づいた。洗剤量だけでなく、使用水量までムダにしていたと思うと、後悔と反省の念に駆られるばかりだ。

 洗剤の計量は、本当にひと手間と思えばその程度なのだが、実際に洗剤を収納場所から取り出し、フタを開けて量って投入口に入れて、またもとに戻してという一連の作業はよく考えると決してひと手間ではない。

 また、最初に洗剤をタンクにセットする必要はあるが、毎回の作業が減るため、洗剤をこぼして周囲を汚したりというリスクも激減する。このことを思うと、小さなことではあるものの、毎回の積み重ねの省略がいかに時短になるかというのを思い知らされた。

「AIお洗濯」は効率がいいだけでなく、時短にも

 もう1つの独自にして目玉機能となるのが「AIお洗濯」だ。複数のセンサーにより、例えば洗剤の種類や洗濯物の布質、汚れの量、水の硬度、布動きなどのを検知し、状況に合わせた洗い方や運転時間などを自動で判断・設定して運転してくれるのだ。

「AIお洗濯」を実行したい時には、左端のAIボタンをオンにする。ただし、設定できる洗濯コースや併用できるほかの機能は限られている。とはいえ、スタートボタンを押すだけで、洗濯量や洗剤の種類、汚れ度合いなどによって最適な洗濯を行なってくれるため、時間はもちろん、洗剤、水量のムダがないのがうれしい

 「AIお洗濯」は、目に見えないのでわかりにくい機能ではあるが、実感するのは洗濯時間が、最初に表示されたあとで自動変更されたとき。この機能を有効にするためには「AIお洗濯」のボタンをオンにしておく必要があるが、単純に洗濯物の重量のみで判断されるオフ時の場合とでは、終了時間が平均すると数分程度は短縮される。

 最初は「コレがAIによるお洗濯なのか!」と一人感動していたのだが、実は「AIお洗濯」を設定していなくても、毎回洗濯時間が短縮されることに途中で気づいた。

 日立グローバルライフソリューションズへ改めて確認したところ、「AIお洗濯」は設定のオフ時にも洗剤、布量、布質、布動きの4つはセンシングを行ない、自動調整をしているとのこと。これに加えて、オンの時には、汚れの量、水温、水硬度、すすぎ具合、脱水具合の全部で9つのセンシングを洗いやすすぎ、脱水の工程で行なっており、洗濯時間の増減を判断・調整しているそうだ。

 膝を打つほどに「なるほど!」とその効果を実感するほどではないものの、単に洗濯物量からだけで判断された運転方法で洗濯するよりも効率がよく、時間に加えて、洗剤や水量などのロスも少ないとは言えるだろう。

 洗濯~乾燥までを連続運転する場合は、特に急いでいる時以外は、基本的に洗濯機にお任せなので、洗濯時間そのものを気にすることはあまりない。ところが、学生服のシャツやスポーツ着など、最近の衣類は化繊のものが多い。これらの繊維は、汚れやシワが付きにくいというメリットがある反面、タンブラー乾燥がNGなことが多い。

 そのため、洗濯~乾燥までを一度に行なわず、途中で洗濯物の一部を取り出して残りの洗濯物だけを乾燥させる必要があり、夜寝る前だったりすると、洗濯運転が終わるまでの待ち時間が結構苦痛だったりもして、少しでも早く終わらせたいもの。そこで、たった20分ほどではあるものの、洗濯にかかる時間が短くなるのは、日中不在となる働く主婦にとってはとてもありがたい。

 ただし、「AIお洗濯」を設定できるのは、標準コースのみに限定される。風呂水からのお湯取り機能を使った際に利用できないなど、利用が限られてしまうのが少々残念だ。個人的には、場合に応じて少しカスタマイズできるようにできるとありがたい。

 例えば、「温水ミスト」という洗濯前に衣類を温めることで洗剤の効果を活性化してくれる便利な機能も備えているのだが、これと併用できると、例えば40~60℃程度で活性化する酵素系の漂白剤を利用した予洗いから洗濯完了までの行程が洗濯機内で完結できて、よりお洗濯が楽になるなど、さらに便利で効果的な使い方ができるだろう。

 もう1つ密かに気に入った機能が「温風ほぐし」。設定しておくと、脱水時に衣類に温風を噴き付けなが絡みをほぐしてくれる機能だが、干した後に衣類がシワになりにくいので重宝した。さらに冬場は、水分でひんやりと湿った衣類に触れなくても済む。

個人的に密かに便利だと思ったのが「温水ミスト」と「温風ほぐし」。どちらも洗濯時間や電気代は上がってしまうが、仕上がりに違いが出るので、必要に応じて利用したい機能だ
「温風ほぐし」を設定した洗濯終了後のドラム内の衣類。繊維がフワッとほぐされているので、冷たい水で固く絞られた後のような感じがせず、既に絞りシワのようなものも少ない

ホテル並みのふんわりタオルを実現してくれる"風アイロン"

 前述のとおり、日立のドラム式と言えば"風アイロン"が代名詞。これまで使用していた所有機も乾燥能力を一番の魅力と感じて購入したので、その優秀さについては個人的には疑う余地はなく、本機でもその能力はもちろん健在。

 時速約300kmの高速風は、槽内で衣類を大きく舞い上げて乾かしてくるので、シワを伸ばしてくれるのはもちろん、干す以上にふんわりと乾かしてくれ、パイルが起き上がったタオルの肌ざわりは、ホテルに滞在しているような気分だ。

 ヒートリサイクル式による乾燥のため、布へのダメージも少なく、消費電力も控えめ。乾燥時もセンシングにより時間の見直しが図られるため、最初の表示より1時間程度は早くなる傾向にあり、1.5~3時間程度ですべて乾くため、雨天が続く梅雨時などはとても重宝する。

乾燥終了後のタオル。パイルが起き上がっていて、フワッとした肌ざわり。吸水性もよいので肌の水分を拭き取った後も気持ちがよい
左側が乾燥機を使用した布団カバー。右側は部屋干しで自然乾燥させたもの。同じ素材、厚みだが、折りたたんだ時の厚みが違う。乾燥機を使ったほうが繊維が空気を含んでフワッとして肌ざわりも心地いい
乾燥機でそのまま乾かしたTシャツと部屋着。目立ったシワもなく、まったくヨレヨレしていない。普段着であればアイロンなしでも十分だ

 ただし乾燥機能を使用した後は、ドラム槽の投入口周りのゴムパッキンやドアの表面に大量のホコリが付着する点は、約7年前の機種とあまり変わっていない。そのままの状態で使い続けると、次に洗濯した際に衣類に付着してしまうので、衣類を取り出した後に、軽く自動でケアできる機能があるとありがたい。

 乾燥フィルターはお手入れしやすい仕様に改良されていた。ボックス状の乾燥フィルターは、取っ手を引くと内側のボックスを引き抜きながら内側に付着したホコリが剥がれ落ちる構造で、毎回の手入れの負担を軽減してくれる。

乾燥機使用後の乾燥フィルター。内側にはホコリがビッシリ
黄色いハンドルを手前に引っ張ることで、ボックス状の乾燥フィルターを分解できる仕組みだ
分解すると同時に、内側に付着したホコリを削ぎ取るギミックも。ブラシなどで内側を擦ったりしなくても大まかにゴミが取れてしまうので手入れの手間を軽減してくれる
フィルターの網はもちろんそのまま水で洗い流すことも可能

 同様に、糸くずフィルターもクシ状のものを採用し、振り落とすだけでゴミが取り除ける設計で、以前よりもかなり手入れがしやすい。ただし、7年前のモデルに比べると、糸くずの量が極端に少なかった。

 メーカーに確認したところ、捕集性能は同等ではあるものの、たたき洗いに加えて、押し洗いやもみ洗いを追加したことなどによる、衣類に伝わる機械の力が低減されていることから、糸くずの発生量も抑えられている点が要因として挙げられるとの回答を得た。

糸くずフィルターは本体下部に。排水に混ざった糸くずなどのゴミをここで受け止める
クシのような形状の糸くずフィルター。ゴミはクシの間に絡まったり挟まったりしているので、手間なく取り除ける

 日立のドラム式洗濯機は、2013年のモデルから"ナイアガラ洗浄"と呼ぶ、少ない水量でありながらも循環した大流量の水で洗浄力をアップする機能を搭載している。この機能により、2011年のモデルでは何となく気になっていた黒ずみ汚れや黄ばみも確かに目立たなくなり、泥で汚れた野球の練習着や靴下でもドラム式だと言っても特に洗浄力に不満を感じることはなかった。

 また、洗い方自体も、汚れは落ちやすいが布が傷みやすい"たたき洗い"だけでなく、"押し洗い"や"もみ洗い"の機能も加わっていることから、所有している7年前のモデルに比べると、洗浄力はもちろんだが、布の痛みも軽減されたように感じた。

砂まみれの野球用の練習着。スライディングの際に砂が付着する膝周りが毎回特に汚れている
特に予洗い等はせずにそのまま他の洗濯機と一緒にAIお洗濯を設定して洗ったが、少ない水で洗うドラム式でも気にならないこの程度までキレイになった
体操着に付着した泥跳ね汚れ。この手の汚れは時間が経つと意外に落ちにくいものだが、とりあえず何もせずにそのまま洗濯してみた
ふつうに洗濯しただけで、問題なくキレイになった
"おしゃれ着″コースを使えば、手洗い表示の学生服の洗濯ももちろんオーケー(洗濯ネットに入れる)。ドラム式だが、槽に水を溜めて、ドラム槽を少しずつ揺らすような制御で優しくゆすり洗いしてくれる
ドラム槽を回転させずに乾燥させる"静止乾燥"機能も便利。ある程度の高温の熱風に耐えられる靴や帽子などの乾燥に非常に活躍した

至れり尽くせりで執事のような洗濯乾燥機

 本機を3週間ほど試して感じたのは、執事的な存在の洗濯機だということ。効率的で効果的なお洗濯を、機械まかせでやってもらいたいという人に最適で、あまり細かいことは考えたり、気にしたりはしない人にはピッタリだ。

 抜群の乾燥機能に加えて、洗浄力など洗濯乾燥機としての基本性能のレベルが総じて高く、洗剤の自動投入機能などのちょっとした手間を省く機能や自動おそうじ機能といったお手入れのための機能も充実しており、さすが日本の大手メーカーのフラッグシップといった印象だ。

 ただし、至れり尽くせりな反面、細かな設定や機能の組み合わせなどの柔軟性や融通性といったところでは機能が限定されることもあり、能動的に"マニアックなお洗濯"をしたい人や、洗濯にこだわりがあったり、凝ってみたい人は、物足りなさを感じることがあるかもしれない。

神野 恵美