家電製品レビュー

【洗濯機4連続レビュー:3】スマホ連携で、洗濯初心者でも最適な洗濯コースが選べる、シャープの洗濯機

 我が子の中学校入学を機に、学生服に体操着、部活用の練習着、ユニフォーム……と一気に洗濯物の量が増え、洗濯事情とライフスタイルが激変した我が家。

 およそ7年愛用しているドラム式洗濯機もそろそろ寿命も近いので、これを機に洗濯機の買い替えを検討し始めた。仕事柄、これまで製品発表会などの機会を通じてさまざまな製品を見聞きして、それぞれ製品特長などは理解しているつもりだが、実際の使い勝手や実生活との相性は使ってみなければわからない。そこで、メーカーにご協力をいただき、気になる製品を一定期間お借りして試させてもらうことにした。

シャープの個性的なデザインが目を惹く「ES-W112」

 3製品目となる今回は、シャープが7月25日発売したドラム式洗濯乾燥機の2019年モデル「ES-W112」だ。売場でも個性的かつ先鋭的なデザインが目を惹く商品だが、基本性能を押さえつつも、省エネ性能、独自性のある機能を搭載しており、中身も実力派と感じていたドラム式洗濯機の最新モデルだ。

シャープのドラム式洗濯乾燥機「ES-W112」。本体前面にハーフミラーガラスを全面的に使用した近未来的なデザイン
メーカー名シャープ
製品名ドラム式洗濯乾燥機「ES-W112」
実売価格276,558円

 というわけで、発売されるや否や我が家に到着した洗濯機は、640×728×1,104mm(幅×奥行き×高さ)の本体サイズ。容量は洗濯11kg、乾燥6kgと、フラッグシップモデルとしては業界で標準的な仕様だが、サイズは若干大きめである。特に高さがあり、購入を検討する際は給水栓までの高さの確認が必須だ。

 幸いにも我が家は問題なく設置できるサイズだったものの、盲点だったのが扉部分だ。本製品の扉は、一般的なドラム洗濯機のようにドラム槽の投入口に取り付けられているのではなく、投入口をまたいで上から下まで一枚板のガラス板の仕様となっている。そのため、洗濯機の手前の床の上に洗濯カゴなどを設置したい場合には、高さによっては開閉時に妨げになってしまう可能性もあるので確認が必要だ。

扉が全面的なため、開閉時は要注意。通常のドラム式洗濯機に比べると、前面にスペースの余裕が必要。扉の裏側は"ひまわりの種"を模した形状で、凹凸部分で衣類を擦り洗いする効果もある

スマホ連携で、最適な洗濯コースがすぐ分かる

 本製品は昨年モデルから無線LANに対応し、クラウド上にあるAIとネットワーク経由でつながり、発話機能なども備える。例えば、風呂水を使用して洗濯すると、「節水上手ですね」と褒めてくれ、朝早くに洗濯機を運転させると「朝早くからご苦労様です」というようにねぎらいの言葉をかけてくれる。そのため、はじめのうちは「よくしゃべる洗濯機だなぁ」と思っていたが、次第に愛着を感じるようになる。

 洗濯機の機能として、本質的に必須か否かと言えば、なくても構わない機能でもあるが、他にも天気予報の情報と連動して、「今日は猛暑日。お洗濯日和です」などとアドバイスしてくれたりもするので、お洗濯にまつわる"気付き"を与えてくれる。

 無線LANを通じて、スマホとも連携する。専用アプリ「COCORO WASH」には、残り時間など洗濯機の運転状況や、次回の洗濯に役立つ洗濯レポートを通知してくれる機能がある。

 毎回の洗濯後に、洗濯機のセンシング機能によってどのような修正が行なわれたかを把握できる。ただ、個人的に欲を言うと、レポートの内容から次回以降の洗濯のアドバイスまでしてくれるようになるとうれしい。

 また、現状では運転状況の確認はできるものの、遠隔操作や外出先からの予約時間の変更には対応しておらず、今後追加されることを期待したい。

洗濯レポート。洗濯終了時に毎回センシングによりどのような調整が行われたかが報告され、センシングの効果を実感できる
一覧からレポートの履歴の確認も可能
運転中の状況は、スマホ上でリアルタイムに確認できる。本体の目の前まで行かなくても残り時間がわかるので家事を効率化できるのがうれしい

 一方、スマホ連携でもっとも便利と感じたのは、おススメの洗濯コースをナビゲートしてくれたり、本体にはないコースをダウンロードで追加できる機能だ。

 本製品は、フラッグシップモデルとしては洗濯機本体に内蔵されているコースは少なめな印象だが、アプリと連携することで拡張していくことができる。

 例えば、本体では手洗い用のコースは「ホームクリーニング」の一択になる。だが、アプリ上では40種類以上の洗い方の中から最適なコースを選ぶことができ、例えば「ソファーカバー」や「カーテン」「水着・ラッシュガード」など非常に細かいアイテム別に専用コースが並んでいる。一覧を見ていると「そんな洗い分けもできるんだ」「あぁ!これも洗濯機で洗えるんだ」という新たな気付きを与えてくれる。

 確かに本体にこれだけ細かなコースが内蔵されていたら、家庭によっては使わないコースもあり、かえって操作性が悪くなってしまうので理にかなった機能だ。

「洗い方ナビ」では、アイテムごとに本体には内蔵されていないコースを選択できる
「落としたい汚れ」ごとにコースの選択も可能
洗い方や目的によってもコースをナビゲートしてくれる
選択したコースは、「洗濯機へ送信」ボタンを押すと、本体側に送信でき、「ダウンロード」コースで設定可能だ。転送できるコースは1つ

 ちなみに、本体に内蔵されているコースは、大きく洗濯、洗濯〜乾燥、乾燥に分かれ、それぞれに共通しているのは、「標準/おうち流」、「時短」、「毛布」の3コース。この他に洗濯は、「サッと予洗い」、「温水極め洗い」、「ホームクリーニング」、「香りプラス」の4コース、乾燥は「シワ抑え」、「ホームクリーニング」の2コース、洗濯〜乾燥は「温水極め洗い」、「シワ抑え」の2コースが用意されている。数は少ないとはいえ、どのコースも目的が明確で選びやすい。

タッチ式の操作部。洗濯、洗〜乾、乾燥などメニューボタンを押すと、洗濯できるコースだけがLED表示される
洗濯〜乾燥メニューのコース一覧
乾燥メニューのコース一覧
プラズマクラスターメニューでは、プラズマクラスターイオンを噴き付けて洗濯槽の清掃と、槽内に衣類を入れて消臭する2つのメニューを利用できる

 中でも本製品が特徴的なのは、"時短"を意識したコースが2つも用意されている点。「時短」コースは10分で洗濯が終了するコースで、標準に比べると簡易的だが、あまり汚れていないものや汚れがつきにくい化繊などを、手短に洗える。洗濯物の量が多く、1日での運転回数が多い家庭や急いで洗濯したい場合にはとても重宝するだろう。すすぎが1回なので節水にもなる。

 もう1つの「サッと予洗いコース」もユニークだ。微細な水滴の高圧シャワーを約5分間噴射することで、洗剤なしの水だけで汚れを洗い流すというもので、他の洗濯物まで汚れ移りしそうなほど酷く汚れた物を、洗濯前に予洗いしたり、簡易的にサッと水洗いしたい場合に有効。おむつなどの汚物の下洗いや、食べこぼし汚れが多い乳幼児がいる家庭では特に重宝しそうだ。

 また、汗や油、泥汚れなど酷く汚れた洗濯物には、「温水極め洗い」コースも用意されている。衣類の温度を35℃前後にすることで洗剤の効果を高め、しっかり洗ってくれる。

付属の超音波ウォッシャーは予洗い用として便利

 それ以外に、ユニークなのが本体下部に同社のハンディタイプの洗濯ツール「超音波ウォッシャー」を装備している点。単体でも発売されているアイテムだが、超音波による微振動が引き起こす微細な泡で、衿や袖などに多く黄ばみの原因となりやすいたんぱく質汚れを引き剥がす。洗濯機で洗う前の予洗い用として併用する以外にも、手洗い時などあると何かと重宝する。非接触給電式を採用し、置いておくだけで随時充電もしてくれるのも便利だ。

本体下部には"超音波ウォッシャー"を装備。非接触の給電方式の充電器も兼ねており、洗濯機の稼働中に充電が行なわれる仕組みだ
超音波ウォッシャーは、皮脂汚れなど繊維の表面に付着した汚れを微細な泡で剥がし取ることが得意。シャツの襟袖汚れ以外にも我が家では野球帽の内側の汚れ落としに大活躍

 乾燥機能は、省エネ性能の高いヒートポンプ式に加えて、サポートヒーターも備えるハイブリッド式を採用。60℃の温風を吐き出せるサポートヒーターが、ヒートポンプ式の弱点である仕上がり時のカラッと感が弱いところを補い、天日干しのようにカラッと乾かしてくれる。これにより、洗濯〜乾燥時の消費電力量は600Whと省エネ性を保ちながらも仕上がりもアップしている。1kg以下であれば「シワ抑え」コースも選択でき、たっぷりの風量でよりシワを低減した乾燥ができる。衣類の種類や量によっては、少し湿っぽいと感じる時もあったが、許容範囲内。シワに関しては、普段着であればほとんど問題のないレベルだった。

標準の乾燥運転後のタオル。繊維のキメが揃っており、ふわふわの仕上がりで、「シワ抑えコース」ではないが、かなりの上出来だ
ペチャっと平らな部屋干し乾燥(右)のタオルと比べてみると、ふわふわさがわかる
標準コースで乾燥運転後の子ども用のデニムと靴下。ふんわりと乾くので着心地もいい。乾燥ジワも普段着であれば気にならないレベルだ

気軽にメンテナンスできる点が魅力!

 本製品で何より魅力と感じたのはメンテナンスの手軽さ。特に、通常は運転のたびに手入れが必要な乾燥フィルターには自動お掃除機能があるため、1日1回の運転であれば週に1度のゴミ捨てで済む。フィルターに付着したゴミが、可動式のブレードでこそぎ落とされて、ダストボックスに溜まる仕組みだ。だいたい約7回ごとの乾燥運転後にお掃除サインが表示されるが、捨てる際はゴミが既に圧縮されてまとまっているため、手間がかからない。

乾燥フィルター。一般的なものに比べると少し大きめだが、内側にはお手入れの手間を省く秘密が隠されている
内側にある可動式のブレードでフィルターの網目に付着したゴミを自動でこそぎ落してくれる。そのため、お手入れの際は既にゴミが塊になっていて簡単に捨てられる

 外側からは確認できないが、乾燥ダクトと排気口部分にも自動お掃除機能を搭載している。これは洗濯時の給水を利用して、乾燥ダクトや排気口に残る糸くずや洗剤カスを毎回自動で洗い流してくれる機能。通常は他の製品ではユーザーの手が届かない部分にまで自動でケアをしてくれ、乾燥性能の低下の防止にもつながる。

糸くずフィルター。糸くずの発生が少ないのかあまり溜まっておらず、お手入れの頻度は少ない印象

 ハーフミラーガラスとLEDが灯るタッチ式の操作画面を採用した操作・表示部は見た目のカッコよさだけでなく、電源を入れると、操作に必要なキーと表示だけが光るため、操作がわかりやすい。ただし操作画面は「戻る」操作ができないため、操作を誤った際にはもう一巡して設定し直すか、一度電源を切り、もう一度起ち上げ直さなければならない。この点は少々不便に感じたので、今後改善してほしいポイントだ。ミラーガラスは手垢がつきやすいが、フラットなので手入れはしやすい。

ドラム槽内にはLED照明を装備。オンにすると、運転中も中の様子を見られる
扉を開いた際にも自動でLEDが点灯。槽内が見やすく洗濯物の取り出し忘れなども防いでくれる

スマートな掃除がしたい人や洗濯に詳しくない人にもオススメ!

 1カ月ほど継続的に使ってみて、本製品をおススメしたいのは、スマートな掃除を求める人。洗濯そのものに細かいこだわりがあるわけではないが、お手入れも含めてとにかく手っ取り早くてスピーディーに済ませたい人だ。さらにスマホ等のデジタルガジェットや新しい技術が好きで、先進的な外観や操作性に魅力を感じる人には、特に満足度が高いと思う。

 洗濯機による洗濯方法や洗い方などを提案してくれるので、あまり洗濯に詳しくない人にもおススメだ。洗濯機としては見た目も機能も独自路線の個性派だが、もちろん基本性能や省エネ性など抑えるべきポイントはきちんと押さえており、毎日のお洗濯をしっかりと任せておけるドラム式洗濯機だ。

標準コースで洗濯後、部屋干しした形状記憶繊維のシャツ。叩き洗いの効果で皮脂汚れもしっかり落とせ、通常の汚れなら問題なし。洗濯ジワも控えめ
洗濯前の野球着のパンツ。お尻周りの砂汚れが目立つ
標準コースで洗濯。表面の汚れはだいたい落ちているもが、繊維の奥の汚れは少し残ってしまった。毎回のお洗濯なら気にならないレベルだ
標準コースだけでは、数回洗濯後に少し黒ずみが気になったので、通常の洗剤を使用して「温水極め洗い」でお洗濯してみたところ、白さが戻った! 漂白剤などを併用すればよりキレイになりそうだ
洗剤の投入口は本体上部の左側手前に。柔軟剤用のケースは取り外して手軽にお手入れできる

神野 恵美